みなみかわさんの宣伝効果について真面目に考えてみた
みなみかわさん以前のシステマのイメージ
みなみかわさんの活躍によって、システマの知名度が一気に上がった。
だが同時に「芸人のネタ」というイメージが浸透した。
これについて「知名度があがった」というポジティブな捉え方と、「誤ったイメージが広がった」というネガティブな捉え方の2通りの受け止め方があると思う。
ことあるごとに言っていることだけど、私個人はシステマの知名度向上に多大なる貢献をしてくれたみなみかわさんには感謝しかない。
みなみかわさんがシステマのネタを披露した時点で、私はすでに十数冊のシステマ本を世に送り出していた。それにも関わらず「システマ」に対する世間のイメージはもっぱら歯ブラシならびに歯磨きの「システマ」であり、システマについて説明する時に「ロシアの特殊部隊から始まった武術でして。。。」と、いちから話さなければならなかった。「これだけやっても、ここまで認知度は上がらないものなのか」と無力感を感じた時期でもあった。2016年に「人生は楽しいかい」を出して以降、2025年の「達人の条件」まで9年間書籍を出せなかったのは、その無力感が一因でもあった。
しかしみなみかわさんによる、あの呼吸法のネタのおかげで、システマといえば「ああ、あの芸人さんが呼吸するやつ?」という会話の糸口が生まれた。みなみかわさんのシステマ芸は、システマについて説明する時の会話のオープナーとして、非常に重宝するのである。システマと言って、「デンター?」と聞き返されてた時代からすると、隔世の感がある。
私がおそれているのは、システマが届けば助かったはずの人が、システマが届かないがために、苦しみ続けるということである。私がミカエルから教わったシステマの考え方には、多くの人を救う力がある。だが届かなければ、その人は救われない。しかしどんな形であれ、システマの欠片が伝われば、その人が救われる可能性が生まれる。
それが、芸人のネタというかたちであろうと。
もちろん「システマ?あの芸人さんのネタの?」と、冷笑気味に言われることもある。それでもそれが会話のオープナーとなり、システマについて紹介するきっかけとなればそれでいい。かつて私は知人の誘いであるイベントに参加した際、「ロシアの殺人術の先生」と紹介されたことがあった。その知人は冗談のつもりだったのだろうけれども、それを聞いた参加者たちの私を見る目が一斉に本物の人殺しでも見るような怯えた目に変わった。当然、私に話しかける人もおらず、こちらが話しかけても距離を取られてしまう。それで居た堪れなくなって、途中で帰ってきたことがある。あの体験に比べたら、「芸人のネタの?」と笑われるほうが、はるかにマシだ。
もちろん「みなみかわさんのおかげで誤ったシステマのイメージが広がった」と危惧するのも理解できる。(そもそもみなみかわさんのシステマ芸が「誤っている」と断じるには、「正しいシステマ」を明確に提示できなければいけないのだが、その辺はとりあえず置いておく)
しかしみなみかわさんがいなければ、「誤ったイメージ」どころか、システマの存在そのものが全く知られなかっただろう。知名度が0と1では、全く違う。いまだに「デンター?」と聞き返される状況が続いていたかもしれない。あるいは仮に「殺人術」などいうそれこそ誤ったイメージが広がったら、さらにまずいことになっていただろう。笑われるどころか、恐れ忌み嫌われる存在になっていたかも知れない。そう考えると、親しんでもらいつつ認知度向上を図るという意味では、芸人のネタという扱いはあんがいちょうど良かったのではないかという気さえする。
十億円の価値
それと現金な話なのだが、私はもともと宣伝に関わる仕事をしていたこともあって、つい宣伝費に換算して考えてしまう。とはいえとある上場企業で宣伝とマーケティングを担当する部署の末席に座っていた程度だが。
例えばそこそこ売れている雑誌に広告を打つなら、1回で百万円くらい簡単に飛ぶ(最近はもっと安くなってそうだけど)。年間契約などで一号あたりの広告費を安くしたりできるけど、それでもかなりの金額がかかる。広告は単発では全然効果がなくて、継続することでようやく意味を持つ。それがテレビCMならなおさらだ。さらにタイアップで番組の本編で取り上げてもらうならさらにお金がかかる。人気芸能人に「システマ」と言ってもらうだけで、とんでもないお金がかかる。もし広告費を投入してゴールデン番組や人気番組に「システマ」と取り上げさせるとしたらどのくらいかかるのだろうか。それもみなみかわさんのシステマネタでブレイクしてからの約10年間、あらゆるメディアに露出した分をあわせたらどのくらいになるのか?
正確な数字はわからないので推測でしかないが、年間数億円はかかると思う。全期間トータルでいえば十億円ではきかないだろう。つまり日本のシステマ界隈には、突如として十億円規模の宣伝費が投下されたようなものである。これを僥倖と言わずなんと言おうか。
ちなみに参考としてChatGPTに「中堅お笑い芸人を起用して、10年間全国キー局に30秒のTVCMを週に5回ペースで打ったらどのくらいかかるか?」と聞いてみたら、制作費込みで「36億円〜59億円」との返答だった。30秒CMは1本あたり放映費だけで120万〜180万円だそうなので、総額ならそのくらいになるだろう。当然、みなみかわさんによる宣伝効果はTVCMの比ではない。多くの人はTVCMが始まった途端にトイレに立ったり、他のチャンネルに変えたりしてまともに見てないだろう。しかしみなみかわさんのネタは番組の本編で行われるため、その番組の視聴者がちゃんと見るのである。そう考えると、みなみかわさんの功績を広告宣伝費に換算すると、とんでもない金額になる。
もちろん「誤ったイメージが」というのもわかる。だがこれはみなみかわさんが期せずして与えてくれた千載一遇のチャンスだ。しかも同じネタが十年も擦られ続けるなど、もはや異例の事態といえよう。これを活かし、いかにして世界に貢献するか。千変万化する状況に対応する「システマ」を伝える者の腕の見せどころなのではないかと思う。
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