プルデンシャル生命の「悪の根源」/間原寛前社長ら旧経営陣に損害賠償請求も

2026年3月号 BUSINESS

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引責辞任した間原寛氏(写真/宮嶋巌)

社員ら107人が約500人の顧客から約31億円を詐取した不祥事で、プルデンシャル生命保険が存亡の瀬戸際に立たされている。保険解約が相次ぎ、コールセンターもパンク状態。ライフプランナー(営業社員、LP)も続々と離職している。

日本事業からの撤退も囁かれるほど信頼を失墜させた元凶は、2月1日まで社長兼最高経営責任者(CEO)を務めた間原寛だ。1月16日に調査報告を公表した際には「記者会見を開く必要はない」と突っぱねた張本人だ。

世間の非難を浴びて、約1週間後に慌てて会見を開いたが、肝心な質問には「答えられない」「差し控える」といった発言を繰り返し、結局、何のために記者会見を開いたのかわからないものとなった。

そんな間原は2月1日、社員向けに最後のメーセージを送った。書きぶりが「脳内お花畑な人」の見本で、現場の怒りと顰蹙をかっている。

間原は不祥事について一切触れず、「江戸時代の冬は今よりずっと寒かったそうです」と唐突に書き出す。「高気密、高断熱ではない当時の家でどうやって昔の人は冬を生き延びたのか? それは、『人の体温を借りること』でした」とし、「背中を合わせたり、抱き合ったりして暖をとることで、ひとときの心の平和を得ることができた」などと記した。

「諸行は無常です。皆さんのこれからの長い人生の中でこの状況が永遠に続くことは絶対にありません」「いつか乗り越えたその年の桜は、皆さんのために咲くんです。きっと。」と、自己陶酔さえ感じさせるきざなセリフで終わっている。

悪い奴ほどよく眠るというが、そうは問屋が卸すまい。

新社長に就任した得丸博充は、予定された間原の顧問就任を撤回し、間原が拒んだ第三者委員会の設置を決めた。その任務に過去の経営陣の役割の検証を盛り込んだ。

10日の会見では「(現在および過去の経営陣に対して)適切な措置を取っていきたい」と明言。間原ら前経営陣への損害賠償請求の可能性を示唆した。

グループ会社のPGF生命保険の社長から急遽、プル社の社長に起用された得丸は、同社での経験はないが、誠実で懸命な姿勢が「混迷するプル社にあって唯一の救い」(金融庁関係者)と評価された。

とはいえ「時すでに遅し」かもしれない。90日間の営業自粛を決めたプル社の業績予想は、利益が3億~3.5億ドル(約460~540億円)押し下げられる(米国の親会社が開示)。しかし、これは超楽観的な数字だ。

同社は、販売ペースが26年は半減、27年は90%になると見通しており、一時的な大逆風としてしか見ていないようだ。ビジネスモデルの存廃が問われているのに――。

LPは保険の販売実績に報酬が連動する「フルコミッション制」になっている。生命保険の営業は「入ってくれそうな顧客(見込み客)」の発掘が最も難しい。国内生保の多くが企業・団体と関係を構築し「職域」や「団体保険」などの営業基盤を持つ。CMやテレマーケティングなどに莫大なお金をかけている。

一方、プル社はLPが自力で見込み客を開拓するビジネスモデル。会食やゴルフ、商材などの経費は全て自己負担。代わりに好業績のLPには高報酬が約束される「ハイリスクハイリターン」な過酷な仕事である。

見込み客は、顧客から紹介してもらうしかない。古参LPは「これだけ信用がなくなると、いったい誰がプル社のLPに大切な知人や友人を紹介するのだろうか」と呻く。

そもそも毎年500人が離職するような劣悪環境だ。相当数の優秀なLPが代理店や他業種に転職するだろう。プル社の自壊を止められるか、新社長の手腕にかかっている。

(敬称略)

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