WAVファイルのタグへのソフト対応状況
- 2017/11/20
- 21:47
「WAVファイルにはタグが無い」、と言い切る方をたまに見かけます。
さすがにこれは無知が過ぎる少数派(或いは、敢えて大袈裟に言っている?)ですが、「WAVのタグに対応してるソフトは非常に限られる」と仰る方は結構多いようです。また、「WAVのタグは各ソフト独自のもので互換性がない」なんてことも時々耳にします。「MP3等を真似て後付でタグが作られた」なんてことをもっともらしく言ってる人もいます。
さて、これらは本当でしょうか?
実はWAVに楽曲情報を記録するタグは幾つもあります。
http://wavmetadata.blogspot.com/
WAVには元々タグがあったんですが、規格が非常に古く、しかも音声と動画の兼用(RIFFコンテナの音声用がWAV、動画用がAVIであり、タグは両者共通仕様)て、非常に欠点の目立つものだったため、これの改良版や全く新たなタグが色々考案された結果です。
しかし、多くのソフトや機器が対応してるのは、下記3種類です。
1.LISTチャンク - INFOサブチャンク(システムデフォルトコード、日本語WinではシフトJISコード)
2.LISTチャンク - INFOサブチャンク(utf-8コード)
3.id3 チャンク
LISTチャンク - INFOサブチャンクのことを「RIFFタグ」、id3 チャンクを「ID3タグ」と呼ぶ場合もあります。
WAV(RIFF)の仕様書に元々規定されていた本来のタグは1です。
http://web.archive.org/web/20160317062723/http://www.kk.iij4u.or.jp/~kondo/wave/mpidata.txt
(2-14 INFO List Chunk を参照)
この仕様書はMicrosoftとIBMが1991年に規定したもので、MP3のタグより遥かに古いものです。
(因みに、MP3のID3v1タグは1996年にとあるメーカーが自社ソフト用に独自に開発したタグが、後に一般化したもの。ID3v2は初版が1998年に規格化されたもの。)
正確には、LISTチャンクの中のINFOサブチャンク内に楽曲情報の各項目が記録されます。
尚、この仕様書では文字コードについては特に規定が無く、文字コードを全く意識せずにソフトを作り使用すれば自然とシステムのデフォルトコードになりますから、「文字コードはシステムデフォルトコード」と解釈するのが一般的です(これなら、どの地域のどの言語でも扱えます)。
しかし、稀に「文字コードはASCIIコード」と当然のように決めつける傲慢な欧米ソフトがあるので注意が必要です(これだと、英語しか扱えない)。
このタグは特に日本では特殊事情により大昔からよく知られ、利用されました。
https://web.archive.org/web/20240830100515/https://hp.vector.co.jp/authors/VA005308/help/wav2mp3/rmpinfo.html
例えば、ニ十数年前の超有名国産タグエディタ・mp3infp、Super Tag Editorなども対応してましたので、中上級者さんや古くからデジタルオーディオを扱ってきた方なら皆さんご存知だと思います。
1は基本的に多言語を同時には扱えません。
2はその点を克服するために文字コードをユニコード(utf-8)に変えたもの。1と2は構造は同じですが文字コードが違うので日本語は互換性が無く、文字化けします。半角英数文字に限り ASCII と utf-8 は同じコードになるため1と2は互換性があるので、2は特に欧米でよく使われる欧米傲慢仕様ですね。
尚、2のみに対応してる変換ツール眺めると、コマンドラインのマルチ変換ツール・FFmpegに変換処理を丸投げしてるような安直なものばかりに見えます。実際、そうなのでしょう。FFmpegはWAVの2のタグに対応していて、特に指定せずとも勝手に2のタグを読み書きして変換先に引き継ぐようです。ですので、良かれと考えて2のタグを選んだわけではなく、結果的に2のタグ対応になっただけ、というものが多いのかも。
3はMP3のID3v2タグを丸ごとid3チャンクという新たに規定したチャンク(データブロック)内に収めたものです。仕様上、WAVではID3v2タグはそのままでは使えない(WAVはファイル冒頭に「RIFF」という文字列が必要だが、ID3v2はファイル冒頭に「ID3」という文字列が必要なため、両立は不可)ため、このような手段を採っています。因みに、アートワーク埋め込みが出来るのは3だけ。
3は構造そのものが1や2とは全く異なるので互換性は皆無ですが、最も高機能。AIFFの主流のタグがこれですが、WAVではまだマイナーですね。ただし、高機能なソフトを中心に近年利用が増えており、e-onkyo、OTOTOYなどで販売のWAVにも3のタグが書き込まれていますね。
尚、1or2と3は同一ファイル中に共存が可能です。
尚、1と2はファイル先頭付近(音声データより前)に置くか、ファイル末尾付近(音声データより後)におくか、という作法の違いもあります。ファイル末尾付近に置くのが普通の作法ですが、Microsoftは昔は先頭付近に置くべきと主張しており、実際に昔のWindows Media Playerやエクスプローラのプロパティはそう作られていました。それが、いつの間にか宗旨替えして末尾派に変わったようです。ソフトやそのバージョンや機器によっては、この置き場所の違いでタグが読めなかったり、或いは異常動作を引き起こすことも稀にあります。
主なフリーの音楽管理ソフトの2017春時点(一部、その後の改変に伴い修正済み)のWAVタグ対応状況は・・・
【初級者向け】
●Windows Media Player・・・・・・LISTチャンク(シフトJIS):ライブラリ登録時の読み込み、CDから作成時の書き込みのみ可能(基本的にはそれ以外はライブラリに記録された楽曲情報のみを読み書きする)・・・例外もあるようでよく解らない、但しタグは音声データより後ろにないと読めない場合あり
●Groove ミュージック・・・・・・LISTチャンク(シフトJIS):読み込み可能、但しタグは音声データより後ろにないと読めない場合あり
●iTunes・・・・・・非対応(ライブラリに記録された楽曲情報のみを読み書きする)
●x-アプリ・・・・・・LISTチャンク(シフトJIS):読み書き可、但し音声データより前に書き込む(→ 認識できないソフトあり)、またトラック番号は書き込まない
●Media Go・・・・・・id3 チャンク/LISTチャンク(シフトJIS):読み書き可、但しLISTチャンク(シフトJIS)のトラック番号を何故か「TRCK」という項目名で書き込む(これはID3v2タグの項目名、普通は「ITRK」)ので、LISTチャンク(シフトJIS)のみ対応の他ソフトはトラック番号は認識できない
●Music Center for PC・・・・・・LISTチャンク(シフトJIS):読み書き可、但し音声データより前に書き込む(→ 認識できないソフトあり)、また、トラック番号を何故か「TRCK」という項目名で書き込む(これはID3v2タグの項目名、普通は「ITRK」)ので、他ソフトはトラック番号は認識できない
【中上級者向け】
●foobar2000・・・・・・id3 チャンク/LISTチャンク(シフトJIS):読み書き可(但しLISTチャンクは書き込みにバグあり日本語書き込み不可)
●MusicBee・・・・・・id3 チャンク/LISTチャンク(設定により、utf-8 または シフトJIS):読み書き可(但し複数値の扱いなど少々不具合があるのか、不安定な場合あり?)
●MediaMonkey・・・・・・LISTチャンク(設定により、utf-8 または シフトJIS):読み書き可、id3 チャンク:読み込み 及び 既存id3 チャンクの編集(要設定)のみ可(但しアートワーク除く)
●J RiverMediaJukebox・・・・・・非対応(書き込みは不可、環境によってはLISTチャンク(シフトJIS)の一部情報は読む?)
●Winamp・・・・・・非対応、ただし拡張プラグイン追加でLISTチャンク(シフトJIS)の読み書き可
http://www.win32lab.com/fsw/wpplugin/index.html
●AIMP・・・・・・id3 チャンク/LISTチャンク(シフトJIS):読み書き可
●Helium Music Manager・・・・・・LISTチャンク(utf-8):読み書き可
●VLC Media Player・・・・・・id3 チャンク:読み書き可
●TuneBrowser・・・・・・id3 チャンク/LISTチャンク(シフトJIS):読み書き可
因みに、Windows10のプロパティ-詳細やWMP12 で表示出来るのは、LISTチャンク(シフトJIS)で、かつそれがファイル末尾(音声データより後ろ)に書き込まれてる場合だけのようです(昔は逆で、Microsoftはファイル先頭に置くべきと主張dしており、末尾付近にあると読めなかったりしたのですが・・・)。なので例えばx-アプリ、Music Center for PCなどはファイル先頭(音声データより前)にタグを書き込むため、これらで記録したタグは表示不可です。普通のソフトはどちらでも表示可なんですけどね・・・。また末尾にある場合でも表示が出来るだけで、編集は不可。LISTチャンク(utf-8コード)は半角英数以外は文字化けし、id3 チャンクは認識できません。
・・・当方が主要ソフトと思っているものにつき挙げてみましたが、いかがでしょう(勿論、これで全てではありません)。
当方未確認ですが、窓の杜に紹介されたことで知名度が上がったマルチプラットフォーム対応のClementineなんかも最近は id3 チャンクが読めるらしいです(当方が大昔に試した時は非対応だったが・・・)。
実際、当方ではMediaMonkeyでWAVに付けたタグ(シフトJISのLISTチャンク)が、WMP、x-アプリ、Media Go、foobar2000、MusicBeeでフツウに表示されてます。
因みに、5、6年前ですとMedia Go、x-アプリ、foobar2000、MusicBee、AIMP、VLC Media PlayerはまだWAVタグ非対応でした(尚、Groove ミュージックはまだ無かった)。また、今のJ RiverMediaJukebox(v14)は非対応ですが、これは5年ほど前の有料ソフト・J RiverMediaCenter14をベースに制限を加えた、作りの古いソフトです。
つまり、ここ5年ほどで主要ソフトのWAVタグ対応が今更になって進んでいる、ということみたいです。今や、主要ソフトで完全に非対応なのはiTunesくらいなものでしょう。因みに、有名な有料ソフトのJRiver Media Center、Audirvana などもid3 チャンクに対応していますね。
「対応ソフトは殆ど無い」?
「互換性がない」?
こういう事を仰る方は、最近の状況を把握しておらず、昔の古い情報や知識を元に仰っているのかも知れません(PC関連は変化が早いですから)。
そもそも、これらを仰る人って主要ソフトで唯一非対応のiTunesユーザーが多い印象を受けます。iTunesは元々Macのソフトで、Windowsではあくまで外様。Windowsのファイル形式であるWMAやWAVへの対応は当初から他と比べてイマイチでした。iTunesを「フツウ」だと考えない方がいいでしょうね。アレはむしろ特殊かと。例えば、主要ソフトでFLACに非対応なのも最早iTunesだけでしょ。ですので、iTunesしか知らない方に知ったかぶりされると困るんですよね^^; 「WAVファイルにはタグが無い」のではなく、「iTunesで作ったWAVファイルにはタグが無い」のです。
因みに、3のid3チャンクとAIFFのタグは基本的にはほぼ同じものですので、Appleさんはやろうと思えば簡単にiTunesをWAVのid3チャンク対応に出来るはずなんです。でもそれをしようとはしない。FLACにも対応しようとしませんしね。
結局、Appleさんも自分の利益を追求する一企業ってこと。WAVやFLACよりもAIFFやAppleロスレスを使って欲しいんでしょう。そして、それがユーザー側の利益と一致するとは限りません。
もっとも、WAVのタグって使い勝手はもう一つです。大元の規格が1991年のものですので、欠点が目立ちます。
LISTチャンクはアルバムアートが扱えないし。LISTチャンク(シフトJIS)は多言語が扱えないし。元々の規格になかったトラック番号やアルバムアーティストなど一部項目はソフトにより対応が異なり、互換性がイマイチだし。
また、ファイル中でのタグの記録位置についても混乱(Microsoftは元々冒頭を推奨していたが、殆どのソフトは巨大ファイルでの実用性の面から末尾に記録するのが普通で、それれを受けてかMicrosoftもWin10からは末尾派に転じたっぽい)があって、これが原因でトラブルが起こったケースも過去何度もありました。
id3 チャンクならそうした制約や問題は無いですが、こちらは対応ソフトや機器が増加しつつありますが、まだ充分とはいえず、汎用性に若干難がありますし、id3 チャンクがあると誤動作を起こして再生できないお粗末な古いソフトや機器もたまにあるようです。
可能であれば、FLAC、ALAC、APEなどの、タグ対応がしっかりしていて、汎用性もそこそこある可逆圧縮形式を利用した方がいいでしょうね(ただ、一番有望なFLACがiTunesでは使えないのは痛い・・・)。
WMAロスレスやTAKはほぼWindows専用、WavPackは対応ソフトが全体的に少なく、汎用性に難があります。TTAは公式なタグの規定が無く、「ID3タグとAPEタグが利用可能」とされてはいるが、どちらが優先かも決まっておらず、ソフトによりID3タグ対応/APEタグ対応/両対応、のようにバラバラなので、イマイチです。
【おまけ1:WAVのタグに対応してる主な変換ソフト】
●dBpoweramp Music Converter・・・・・・id3 チャンク/LISTチャンク(シフトJIS):読み書き可
●XrecodeⅡ・・・・・・id3 チャンク:読み書き可(書き込みは要設定)、LISTチャンク(シフトJIS):読み書き可(書き込みは要設定)、LISTチャンク(utf-8):書き込み可(要設定)
●Xrecode3・・・・・・id3 チャンク:読み書き可、LISTチャンク(シフトJIS):読み書き可(書き込みは要設定)、LISTチャンク(utf-8):書き込み可(要設定)
●XMediaRecode・・・・・・LISTチャンク(utf-8):読み書き可、但し音声データより前に書き込む(→ 読めないソフトあり)
●MediaHuman Audio Converter・・・・・・id3 チャンク:読み書き可、LISTチャンク(utf-8):書き込み可
●Moo0オーディオ変換器・・・・・・LISTチャンク(utf-8):読み書き可、但し音声データより前に書き込む(→ 読めないソフトあり)
●fre:ac・・・・・・id3 チャンク:読み書き可、LISTチャンク(utf-8):設定により読み書き可、LISTチャンク(シフトJIS):設定により半角英数のみ読み書き可(日本語NG)
●EZ CD Audio Converter Free・・・・・・id3 チャンク:読み書き可、LISTチャンク(シフトJIS):読み書き可
【おまけ2:WAVのタグに対応してる主なタグエディタ】
●dBpoweramp Music Converter・・・・・・id3 チャンク/LISTチャンク(シフトJIS):読み書き可
●STEP_K・・・・・・LISTチャンク(シフトJIS):読み書き可(プラグイン追加でid3 チャンクも読み書き可)
●mp3infp・・・・・・LISTチャンク(シフトJIS):読み書き可
●MP3Tag・・・・・・id3 チャンク:読み書き可、LISTチャンク(utf-8):読み込みのみ、LISTチャンク(シフトJIS):読み書き可
●TagScanner・・・・・・id3 チャンク:読み書き可、LISTチャンク(utf-8):読み込みのみ
●AudioShell2・・・・・・id3 チャンク/LISTチャンク(シフトJIS):読み書き可
●TagKaeru・・・・・・id3 チャンク/LISTチャンク(シフトJIS/utf-8):読み書き可
音楽管理ソフトが続々とWAVのタグに対応していることを受けてか、MP3TagとTagScannerも2016年になって新たに対応しました。
その他、dBpowerampやXrecodeⅡもタグエディタとして利用可能。
当方は試してませんが、Windows含むマルチプラットフォーム対応でMacやLinuxでよく利用される Kid3、Picard も id3 チャンクに対応してるようです。
あと、編集はできませんが、タグの確認がしたい時はこちらが便利。
http://www.iridoatelier.net/apps/riffinspector/
【追記】
波形編集ソフトのAudacityは、以前はLISTチャンク(utf-8)対応だったのですが、いつの間にかid3 チャンク対応(但しアートワーク除く)+LISTチャンク(ASCII?、非ASCII文字がある項目は書き出さない)対応に変わっていました。Media Goも最近になって新たにid3 チャンクにも対応したようです。正直、変化が早くて当方でも掴みきれません。
WAVのタグに新規対応するソフトもid3 チャンクが多いようですし、どうやら高機能なid3 チャンクへとシフトしていく流れがあるようです。最近では音楽配信サイトでもWAVにid3 チャンクを書き込んでる所も出てきているようです(OTOTOYとか)。
id3 チャンクとLISTチャンクは1ファイル中に共存が可能ですので、現状では高機能で流行りのid3 チャンクと昔ながらのLISTチャンク(シフトJIS)の両方を、音声データより後ろに書き込んでおくのがベストかもしれません。
【追記2】
id3チャンクは基本的にID3v2タグと同じものなので、当然バージョン(v2.2/v2.3/v2.4)や文字コード(ISO8859-1/utf-16/utf-8)の違いというものがあります。ただ、当方が知る限りではv2.3の利用が主流です。また文字コードはわざわざ古い仕様のISO8859-1なんぞ使うはずもないので基本はutf-16です。これらは固定のものも多いようですが、中には設定で選べるものもあるので要確認。
と言うか、複雑でややこしいID3v2でなくAPEv2にでもすれば、もっとシンプルになったと思うんですけどねえ・・・。
【追記3】
楽曲配信・OTOTOYのWAVの説明が、簡潔ですが的を射ていますね。
https://ototoy.jp/feature/format
"WAV(RIFF)本来のメタデータ規格が古く規格更新もされないので、ID3v2を埋め込む方法がデファクトスタンダードとして普及しつつある。このため、VLCやfoobar2000などの対応アプリではID3v2で可能なデータは全て入れられる。(OTOTOYでは2020年4月よりID3v2埋込に対応)"
つまり、本来のタグ=LISTチャンク(システムデフォルトコード)は最早使い物にならないので、デファクトスタンダードとなりつつあるid3 チャンク対応に切り替えた、と。
註1:既にお判りと思いますが、ソフトのタグ対応状況はバージョンにより異なる場合があります。
註2:この記事は当初他の所にアップしていたものですが、そのサービスが終了したのでこちらに転載しました。
さすがにこれは無知が過ぎる少数派(或いは、敢えて大袈裟に言っている?)ですが、「WAVのタグに対応してるソフトは非常に限られる」と仰る方は結構多いようです。また、「WAVのタグは各ソフト独自のもので互換性がない」なんてことも時々耳にします。「MP3等を真似て後付でタグが作られた」なんてことをもっともらしく言ってる人もいます。
さて、これらは本当でしょうか?
実はWAVに楽曲情報を記録するタグは幾つもあります。
http://wavmetadata.blogspot.com/
WAVには元々タグがあったんですが、規格が非常に古く、しかも音声と動画の兼用(RIFFコンテナの音声用がWAV、動画用がAVIであり、タグは両者共通仕様)て、非常に欠点の目立つものだったため、これの改良版や全く新たなタグが色々考案された結果です。
しかし、多くのソフトや機器が対応してるのは、下記3種類です。
1.LISTチャンク - INFOサブチャンク(システムデフォルトコード、日本語WinではシフトJISコード)
2.LISTチャンク - INFOサブチャンク(utf-8コード)
3.id3 チャンク
LISTチャンク - INFOサブチャンクのことを「RIFFタグ」、id3 チャンクを「ID3タグ」と呼ぶ場合もあります。
WAV(RIFF)の仕様書に元々規定されていた本来のタグは1です。
http://web.archive.org/web/20160317062723/http://www.kk.iij4u.or.jp/~kondo/wave/mpidata.txt
(2-14 INFO List Chunk を参照)
この仕様書はMicrosoftとIBMが1991年に規定したもので、MP3のタグより遥かに古いものです。
(因みに、MP3のID3v1タグは1996年にとあるメーカーが自社ソフト用に独自に開発したタグが、後に一般化したもの。ID3v2は初版が1998年に規格化されたもの。)
正確には、LISTチャンクの中のINFOサブチャンク内に楽曲情報の各項目が記録されます。
尚、この仕様書では文字コードについては特に規定が無く、文字コードを全く意識せずにソフトを作り使用すれば自然とシステムのデフォルトコードになりますから、「文字コードはシステムデフォルトコード」と解釈するのが一般的です(これなら、どの地域のどの言語でも扱えます)。
しかし、稀に「文字コードはASCIIコード」と当然のように決めつける傲慢な欧米ソフトがあるので注意が必要です(これだと、英語しか扱えない)。
このタグは特に日本では特殊事情により大昔からよく知られ、利用されました。
https://web.archive.org/web/20240830100515/https://hp.vector.co.jp/authors/VA005308/help/wav2mp3/rmpinfo.html
例えば、ニ十数年前の超有名国産タグエディタ・mp3infp、Super Tag Editorなども対応してましたので、中上級者さんや古くからデジタルオーディオを扱ってきた方なら皆さんご存知だと思います。
1は基本的に多言語を同時には扱えません。
2はその点を克服するために文字コードをユニコード(utf-8)に変えたもの。1と2は構造は同じですが文字コードが違うので日本語は互換性が無く、文字化けします。半角英数文字に限り ASCII と utf-8 は同じコードになるため1と2は互換性があるので、2は特に欧米でよく使われる欧米傲慢仕様ですね。
尚、2のみに対応してる変換ツール眺めると、コマンドラインのマルチ変換ツール・FFmpegに変換処理を丸投げしてるような安直なものばかりに見えます。実際、そうなのでしょう。FFmpegはWAVの2のタグに対応していて、特に指定せずとも勝手に2のタグを読み書きして変換先に引き継ぐようです。ですので、良かれと考えて2のタグを選んだわけではなく、結果的に2のタグ対応になっただけ、というものが多いのかも。
3はMP3のID3v2タグを丸ごとid3チャンクという新たに規定したチャンク(データブロック)内に収めたものです。仕様上、WAVではID3v2タグはそのままでは使えない(WAVはファイル冒頭に「RIFF」という文字列が必要だが、ID3v2はファイル冒頭に「ID3」という文字列が必要なため、両立は不可)ため、このような手段を採っています。因みに、アートワーク埋め込みが出来るのは3だけ。
3は構造そのものが1や2とは全く異なるので互換性は皆無ですが、最も高機能。AIFFの主流のタグがこれですが、WAVではまだマイナーですね。ただし、高機能なソフトを中心に近年利用が増えており、e-onkyo、OTOTOYなどで販売のWAVにも3のタグが書き込まれていますね。
尚、1or2と3は同一ファイル中に共存が可能です。
尚、1と2はファイル先頭付近(音声データより前)に置くか、ファイル末尾付近(音声データより後)におくか、という作法の違いもあります。ファイル末尾付近に置くのが普通の作法ですが、Microsoftは昔は先頭付近に置くべきと主張しており、実際に昔のWindows Media Playerやエクスプローラのプロパティはそう作られていました。それが、いつの間にか宗旨替えして末尾派に変わったようです。ソフトやそのバージョンや機器によっては、この置き場所の違いでタグが読めなかったり、或いは異常動作を引き起こすことも稀にあります。
主なフリーの音楽管理ソフトの2017春時点(一部、その後の改変に伴い修正済み)のWAVタグ対応状況は・・・
【初級者向け】
●Windows Media Player・・・・・・LISTチャンク(シフトJIS):ライブラリ登録時の読み込み、CDから作成時の書き込みのみ可能(基本的にはそれ以外はライブラリに記録された楽曲情報のみを読み書きする)・・・例外もあるようでよく解らない、但しタグは音声データより後ろにないと読めない場合あり
●Groove ミュージック・・・・・・LISTチャンク(シフトJIS):読み込み可能、但しタグは音声データより後ろにないと読めない場合あり
●iTunes・・・・・・非対応(ライブラリに記録された楽曲情報のみを読み書きする)
●x-アプリ・・・・・・LISTチャンク(シフトJIS):読み書き可、但し音声データより前に書き込む(→ 認識できないソフトあり)、またトラック番号は書き込まない
●Media Go・・・・・・id3 チャンク/LISTチャンク(シフトJIS):読み書き可、但しLISTチャンク(シフトJIS)のトラック番号を何故か「TRCK」という項目名で書き込む(これはID3v2タグの項目名、普通は「ITRK」)ので、LISTチャンク(シフトJIS)のみ対応の他ソフトはトラック番号は認識できない
●Music Center for PC・・・・・・LISTチャンク(シフトJIS):読み書き可、但し音声データより前に書き込む(→ 認識できないソフトあり)、また、トラック番号を何故か「TRCK」という項目名で書き込む(これはID3v2タグの項目名、普通は「ITRK」)ので、他ソフトはトラック番号は認識できない
【中上級者向け】
●foobar2000・・・・・・id3 チャンク/LISTチャンク(シフトJIS):読み書き可(但しLISTチャンクは書き込みにバグあり日本語書き込み不可)
●MusicBee・・・・・・id3 チャンク/LISTチャンク(設定により、utf-8 または シフトJIS):読み書き可(但し複数値の扱いなど少々不具合があるのか、不安定な場合あり?)
●MediaMonkey・・・・・・LISTチャンク(設定により、utf-8 または シフトJIS):読み書き可、id3 チャンク:読み込み 及び 既存id3 チャンクの編集(要設定)のみ可(但しアートワーク除く)
●J RiverMediaJukebox・・・・・・非対応(書き込みは不可、環境によってはLISTチャンク(シフトJIS)の一部情報は読む?)
●Winamp・・・・・・非対応、ただし拡張プラグイン追加でLISTチャンク(シフトJIS)の読み書き可
http://www.win32lab.com/fsw/wpplugin/index.html
●AIMP・・・・・・id3 チャンク/LISTチャンク(シフトJIS):読み書き可
●Helium Music Manager・・・・・・LISTチャンク(utf-8):読み書き可
●VLC Media Player・・・・・・id3 チャンク:読み書き可
●TuneBrowser・・・・・・id3 チャンク/LISTチャンク(シフトJIS):読み書き可
因みに、Windows10のプロパティ-詳細やWMP12 で表示出来るのは、LISTチャンク(シフトJIS)で、かつそれがファイル末尾(音声データより後ろ)に書き込まれてる場合だけのようです(昔は逆で、Microsoftはファイル先頭に置くべきと主張dしており、末尾付近にあると読めなかったりしたのですが・・・)。なので例えばx-アプリ、Music Center for PCなどはファイル先頭(音声データより前)にタグを書き込むため、これらで記録したタグは表示不可です。普通のソフトはどちらでも表示可なんですけどね・・・。また末尾にある場合でも表示が出来るだけで、編集は不可。LISTチャンク(utf-8コード)は半角英数以外は文字化けし、id3 チャンクは認識できません。
・・・当方が主要ソフトと思っているものにつき挙げてみましたが、いかがでしょう(勿論、これで全てではありません)。
当方未確認ですが、窓の杜に紹介されたことで知名度が上がったマルチプラットフォーム対応のClementineなんかも最近は id3 チャンクが読めるらしいです(当方が大昔に試した時は非対応だったが・・・)。
実際、当方ではMediaMonkeyでWAVに付けたタグ(シフトJISのLISTチャンク)が、WMP、x-アプリ、Media Go、foobar2000、MusicBeeでフツウに表示されてます。
因みに、5、6年前ですとMedia Go、x-アプリ、foobar2000、MusicBee、AIMP、VLC Media PlayerはまだWAVタグ非対応でした(尚、Groove ミュージックはまだ無かった)。また、今のJ RiverMediaJukebox(v14)は非対応ですが、これは5年ほど前の有料ソフト・J RiverMediaCenter14をベースに制限を加えた、作りの古いソフトです。
つまり、ここ5年ほどで主要ソフトのWAVタグ対応が今更になって進んでいる、ということみたいです。今や、主要ソフトで完全に非対応なのはiTunesくらいなものでしょう。因みに、有名な有料ソフトのJRiver Media Center、Audirvana などもid3 チャンクに対応していますね。
「対応ソフトは殆ど無い」?
「互換性がない」?
こういう事を仰る方は、最近の状況を把握しておらず、昔の古い情報や知識を元に仰っているのかも知れません(PC関連は変化が早いですから)。
そもそも、これらを仰る人って主要ソフトで唯一非対応のiTunesユーザーが多い印象を受けます。iTunesは元々Macのソフトで、Windowsではあくまで外様。Windowsのファイル形式であるWMAやWAVへの対応は当初から他と比べてイマイチでした。iTunesを「フツウ」だと考えない方がいいでしょうね。アレはむしろ特殊かと。例えば、主要ソフトでFLACに非対応なのも最早iTunesだけでしょ。ですので、iTunesしか知らない方に知ったかぶりされると困るんですよね^^; 「WAVファイルにはタグが無い」のではなく、「iTunesで作ったWAVファイルにはタグが無い」のです。
因みに、3のid3チャンクとAIFFのタグは基本的にはほぼ同じものですので、Appleさんはやろうと思えば簡単にiTunesをWAVのid3チャンク対応に出来るはずなんです。でもそれをしようとはしない。FLACにも対応しようとしませんしね。
結局、Appleさんも自分の利益を追求する一企業ってこと。WAVやFLACよりもAIFFやAppleロスレスを使って欲しいんでしょう。そして、それがユーザー側の利益と一致するとは限りません。
もっとも、WAVのタグって使い勝手はもう一つです。大元の規格が1991年のものですので、欠点が目立ちます。
LISTチャンクはアルバムアートが扱えないし。LISTチャンク(シフトJIS)は多言語が扱えないし。元々の規格になかったトラック番号やアルバムアーティストなど一部項目はソフトにより対応が異なり、互換性がイマイチだし。
また、ファイル中でのタグの記録位置についても混乱(Microsoftは元々冒頭を推奨していたが、殆どのソフトは巨大ファイルでの実用性の面から末尾に記録するのが普通で、それれを受けてかMicrosoftもWin10からは末尾派に転じたっぽい)があって、これが原因でトラブルが起こったケースも過去何度もありました。
id3 チャンクならそうした制約や問題は無いですが、こちらは対応ソフトや機器が増加しつつありますが、まだ充分とはいえず、汎用性に若干難がありますし、id3 チャンクがあると誤動作を起こして再生できないお粗末な古いソフトや機器もたまにあるようです。
可能であれば、FLAC、ALAC、APEなどの、タグ対応がしっかりしていて、汎用性もそこそこある可逆圧縮形式を利用した方がいいでしょうね(ただ、一番有望なFLACがiTunesでは使えないのは痛い・・・)。
WMAロスレスやTAKはほぼWindows専用、WavPackは対応ソフトが全体的に少なく、汎用性に難があります。TTAは公式なタグの規定が無く、「ID3タグとAPEタグが利用可能」とされてはいるが、どちらが優先かも決まっておらず、ソフトによりID3タグ対応/APEタグ対応/両対応、のようにバラバラなので、イマイチです。
【おまけ1:WAVのタグに対応してる主な変換ソフト】
●dBpoweramp Music Converter・・・・・・id3 チャンク/LISTチャンク(シフトJIS):読み書き可
●XrecodeⅡ・・・・・・id3 チャンク:読み書き可(書き込みは要設定)、LISTチャンク(シフトJIS):読み書き可(書き込みは要設定)、LISTチャンク(utf-8):書き込み可(要設定)
●Xrecode3・・・・・・id3 チャンク:読み書き可、LISTチャンク(シフトJIS):読み書き可(書き込みは要設定)、LISTチャンク(utf-8):書き込み可(要設定)
●XMediaRecode・・・・・・LISTチャンク(utf-8):読み書き可、但し音声データより前に書き込む(→ 読めないソフトあり)
●MediaHuman Audio Converter・・・・・・id3 チャンク:読み書き可、LISTチャンク(utf-8):書き込み可
●Moo0オーディオ変換器・・・・・・LISTチャンク(utf-8):読み書き可、但し音声データより前に書き込む(→ 読めないソフトあり)
●fre:ac・・・・・・id3 チャンク:読み書き可、LISTチャンク(utf-8):設定により読み書き可、LISTチャンク(シフトJIS):設定により半角英数のみ読み書き可(日本語NG)
●EZ CD Audio Converter Free・・・・・・id3 チャンク:読み書き可、LISTチャンク(シフトJIS):読み書き可
【おまけ2:WAVのタグに対応してる主なタグエディタ】
●dBpoweramp Music Converter・・・・・・id3 チャンク/LISTチャンク(シフトJIS):読み書き可
●STEP_K・・・・・・LISTチャンク(シフトJIS):読み書き可(プラグイン追加でid3 チャンクも読み書き可)
●mp3infp・・・・・・LISTチャンク(シフトJIS):読み書き可
●MP3Tag・・・・・・id3 チャンク:読み書き可、LISTチャンク(utf-8):読み込みのみ、LISTチャンク(シフトJIS):読み書き可
●TagScanner・・・・・・id3 チャンク:読み書き可、LISTチャンク(utf-8):読み込みのみ
●AudioShell2・・・・・・id3 チャンク/LISTチャンク(シフトJIS):読み書き可
●TagKaeru・・・・・・id3 チャンク/LISTチャンク(シフトJIS/utf-8):読み書き可
音楽管理ソフトが続々とWAVのタグに対応していることを受けてか、MP3TagとTagScannerも2016年になって新たに対応しました。
その他、dBpowerampやXrecodeⅡもタグエディタとして利用可能。
当方は試してませんが、Windows含むマルチプラットフォーム対応でMacやLinuxでよく利用される Kid3、Picard も id3 チャンクに対応してるようです。
あと、編集はできませんが、タグの確認がしたい時はこちらが便利。
http://www.iridoatelier.net/apps/riffinspector/
【追記】
波形編集ソフトのAudacityは、以前はLISTチャンク(utf-8)対応だったのですが、いつの間にかid3 チャンク対応(但しアートワーク除く)+LISTチャンク(ASCII?、非ASCII文字がある項目は書き出さない)対応に変わっていました。Media Goも最近になって新たにid3 チャンクにも対応したようです。正直、変化が早くて当方でも掴みきれません。
WAVのタグに新規対応するソフトもid3 チャンクが多いようですし、どうやら高機能なid3 チャンクへとシフトしていく流れがあるようです。最近では音楽配信サイトでもWAVにid3 チャンクを書き込んでる所も出てきているようです(OTOTOYとか)。
id3 チャンクとLISTチャンクは1ファイル中に共存が可能ですので、現状では高機能で流行りのid3 チャンクと昔ながらのLISTチャンク(シフトJIS)の両方を、音声データより後ろに書き込んでおくのがベストかもしれません。
【追記2】
id3チャンクは基本的にID3v2タグと同じものなので、当然バージョン(v2.2/v2.3/v2.4)や文字コード(ISO8859-1/utf-16/utf-8)の違いというものがあります。ただ、当方が知る限りではv2.3の利用が主流です。また文字コードはわざわざ古い仕様のISO8859-1なんぞ使うはずもないので基本はutf-16です。これらは固定のものも多いようですが、中には設定で選べるものもあるので要確認。
と言うか、複雑でややこしいID3v2でなくAPEv2にでもすれば、もっとシンプルになったと思うんですけどねえ・・・。
【追記3】
楽曲配信・OTOTOYのWAVの説明が、簡潔ですが的を射ていますね。
https://ototoy.jp/feature/format
"WAV(RIFF)本来のメタデータ規格が古く規格更新もされないので、ID3v2を埋め込む方法がデファクトスタンダードとして普及しつつある。このため、VLCやfoobar2000などの対応アプリではID3v2で可能なデータは全て入れられる。(OTOTOYでは2020年4月よりID3v2埋込に対応)"
つまり、本来のタグ=LISTチャンク(システムデフォルトコード)は最早使い物にならないので、デファクトスタンダードとなりつつあるid3 チャンク対応に切り替えた、と。
註1:既にお判りと思いますが、ソフトのタグ対応状況はバージョンにより異なる場合があります。
註2:この記事は当初他の所にアップしていたものですが、そのサービスが終了したのでこちらに転載しました。