日本が「賢い国」になることは、武器輸出の5類型を撤廃する高市政権へのアンチテーゼ ―防衛産業への投資では国は良くならない
高市首相は防衛3文書の改正で、「救難・輸送・警戒・監視・掃海」の「5類型」を撤廃し、殺傷能力のある武器の輸出を視野に入れている、2022年までGDP比1%だった防衛費を今年度前倒してGDP比2%増にする。わずか3年の間に倍増となったが、GDP比2%の防衛費は、日本の国家予算の10%を構成するようになる。これが私たちの生活に直結することは言うまでもない。政界やメディアでは消費減税ばかりがトピックになっているが、防衛費増をまかなうためには所得税増はもちろんのこと、消費税も増やしていかなければならない。そして私たちの社会保障費が削られていくことになる。
軍事強国になる日本を他の国々は好感をもって見るだろうか。軍事力が強い、あるいは経済力が一番あるからと言ってその国が評価されるわけではない。「強い日本を取り戻す」と言った日本の首相がいて、アメリカもトランプ大統領は「アメリカを再び偉大な国にする」と頻繁に口にしている。しかし、そのようなトランプ大統領の姿勢はアメリカ以外の国の人が聞いたらしらけた思いになる。
作家のなだいなださん(1929~2013年)は日本が「賢い国」になろうと提案していた。なださんが言う「賢い国」とは簡単に言ってしまえば、外国の人から見て好感がもたれる国で、その国の人間ならば、危害を決して加えたくなくなるような国だ。なださんはスウェーデンやノルウェー、スイスなどを例に挙げてこれらの人口の決して多くない国が「強い国」を目指しますかと語っていた。ミラノ・コルティナの冬季オリンピックで、イスラエルやアメリカの選手を、これらの国以外の人がどれほど応援したくなっただろうか。
なださんは憲法と平和についてまるで高市首相に聞かせるかのように、下のように述べていた。
「平和を守るためには、憲法だけでは不足です。例えば兵器産業。人殺しの機械や道具に投資し続ける、そのお金を貧富の差を縮めるために使ったら、どれほど国が良くなることか。こういう武器についても見ていかなくては、憲法だけに頼っていては、うっかりしていると九条までもが潰されかねません。(中略)例えばアフガニスタンで井戸掘りのボランティアをしている人がいる。マングローブを植えている若者もいる。アフリカ奥地で働いている助産婦もいる。こういったことで世界とリンクしていく。自分は出来なくても、こうした人を支えること、応援することは出来る。そういうことを一つ一つしていくことが、護憲につながっていくのではないか」
http://magazine9.jp/citizen/event/004/index.html
いまの日本はなださんが戒めていたように、兵器産業の人殺しの機械や道具に投資を行い、貧富の格差是正のための予算が軽視されるようになっている。
なださんは「戦争の世紀は第二次世界大戦までで、今や21世紀になったのだから、賢い国をつくっていくべきでしょう。」とも語っていたが、トランプ大統領の再登板で世界は第二次世界大戦以前に逆戻りしてしまった感もある。日本はこの良くない潮流をせき止めるような国になってほしいものだ。
歌手の加藤登紀子さんは、若者からどのように生きたら良いかと尋ねられた中村哲医師が「人生は思った通りに行かない。例えば、石の上に種が落ちたとしましょう。風も吹かない。そうしたら石の上に根を張ることを考えましょう。自分がどこに一隅を得たのか考えて、そこで頑張るしかない」と答えたというエピソードを紹介したことがある。
中東イスラム諸国に出かけ、日本人だと言うと、笑みを浮かべられ歓迎されるというのは、最高の安全保障のように思われてきた。暴力に遭うのは歴史的にも軍事力を背景に帝国主義的に力を誇示してきた国で、中東イスラム世界の側から見れば、具体的には英仏ロ、そして第二次世界大戦後にその輪の中に加わったアメリカだろう。中村医師は日章旗を車などに掲げることで安全が守られたと語っていた。
加藤登紀子さんは中村医師の「物を持てば持つほど、金を持てば持つほど顔が暗くなる」という言葉も紹介していた。これはイランのことわざ「屋根が広ければ、積もる雪も多い」に通じるものがある。力や金をもてばもつほど、その国のあり方も暗くなる。世界最大の軍事力、経済力をもつアメリカは第二次世界大戦後の戦争で失敗を繰り返し、また国内では途方もない貧富の格差が拡がる。
なださんの主張は安倍政権の「戦後レジームからの脱却」や「強い日本」の訴えを継承し、イスラエルとの防衛協力など武器輸出三原則の緩和などの方針をもつ高市政権に対する強いアンチテーゼとして聞こえてくる。経済同友会の終身幹事だった品川正治さんに会った時、「軍需で安直に儲けようとする発想がいけないのです。軍需を民需に転換すれば、世界は平和になります」と語っていた。高市政権の武器5類型の撤廃はこの品川さんの主張に逆行するもので、安直な金儲けとしか思えない。
5類型の撤廃で戦闘中の国への移転は原則不可とされるが、アメリカやインドなど同盟国・同志国には殺傷能力のある武器を輸出するつもりだ。アメリカはベネズエラへの軍事介入に見られるように世界で最も戦争をする国だし、インドもパキスタンとの係争地カシミールの住民たちを武力で凄惨に弾圧してきた。日本は、高市政権の下で人殺しに加担する国になろうとしているが、国会でこれを有効に止める議員の数が少ないことにもどかしさを大いに感じる。
※表紙の画像は中村哲医師
https://www2.nhk.or.jp/archives/articles/?id=D0009072624_00000



そもそも同志国って何ですかね。奇妙な言葉です。