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The Works "士郎くんとアーチャーくんは実は仲がよかったようです お知らせあり" is tagged "士弓" and "スクロールバー仕事しろ".
士郎くんとアーチャーくんは実は仲がよかったようです お知らせあり/Novel by さく

士郎くんとアーチャーくんは実は仲がよかったようです お知らせあり

10,007 character(s)20 mins

冒頭サンプルです。
付き合ったのはいいけどいつまでも友達感覚?が抜けない2人が段々相手を意識するようになるお話。

というエア新刊です。一度はやってみたかった。コミケが楽しみすぎて浮かれてます。

10/18追記
エアじゃなくてマジで本作りました。このお話の続きを書いています。
準備ができ次第、通販のお知らせをしますので欲しい方がいましたらよろしくお願いします。

10/21追記
通販始まりました。
https://saku14.booth.pm


2015/11/5
完売しました!ありがとうございました。

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 昨日までうんざりするほど降っていた雨があがり、ようやく晴れた日の昼下がりは気持ちのいいものである。俺の家に居候している女性たちもその気持ちよさに誘われ、皆で新都までショッピングをするのだと言って意気揚々と出かけていった。
 …………だというのに天気なんて関係ないじめじめとした暗い土蔵の中で俺とアーチャーは並んで座っている。それぞれの手には藤ねえがどこからか拾ってきたか壊れた機械とアーチャーのお勧めで買ったお揃いの愛用ドライバーが握られ、忙しなく動いていた。

「なあ、それ取ってくれ」
「ほら」
「さんきゅ」

「おい、あれはどうした」
「ん? …………組み込むの忘れてた」
「たわけ、しっかりしろ」

 会話はぽつぽつと途切れがちだったが、沈黙の時間が気まずいわけでもなく、俺としてはむしろ落ち着いた心地良い時間だ。

「最近さ」
「ああ」
「お前と一緒に料理作ったり、土蔵にこもって機械いじくってる時が一番楽しい気がする」
「なんだ藪から棒に。まあでも、癪ではあるがおおよそ同意見だな」
「お前料理とか家事うまいから見てて参考になるし、趣味が同じだからとことん話し合えるし、一緒にいて気を使わなくていいから楽だし、あと、」

 アーチャーと一緒にいて楽しい理由を一つ一つ並べていくと、まだ言うことはあったのに「もうやめろ」と軽く頭をこづかれる。その口調は普段と変わりなくそっけないものだったが、横目でアーチャーの顔を窺うと本人は気づいていないのか口元に笑みを作っていた。それを見て、よくもまあこんなにほだされてくれたもんだなーと俺も小さく口元に笑みを作る。

     ◆

 初めてアーチャーに出会った時本能的に思ったのは、『コイツとは絶対に仲良くなれない』ということだった。一目見たときから嫌味な大人オーラが感じられたし、アーチャーの話すこと全てが癇に障る。俺がそうやってアーチャーを気に入らないようにアーチャーも俺が気に入らないんだろうなってこともすぐにわかった。そんな険悪な雰囲気に関わらず俺とアーチャーの考えややること成すこと、少しずつ違うにせよそっくりなものだから周りには同属嫌悪だなんてからかわれてさらにイライラしていた。
 でも確かに同属嫌悪とは言いえて妙で、お互い面白いと感じることや興味を持つモノの対象が同じ、味覚や女性の好みも一緒、ふとしたときの仕草や困っている人がいたらつい手を貸してしまうところなんかは( あいつは否定していたが)まるで同じ人間かってくらい似通っていた。
 それに気づいてしまえば、あいつを否定することは俺の否定にも繋がる気がしてなんとなく文句を言いづらくなってくる。でも、これじゃ俺自身があいつと似ていると認めているようなものだ。そう思ってしまう自分が嫌で、代わりに俺とあいつが同属じゃない証拠をなんとか見つけようとアーチャーをこっそり観察してみたが、観察すればするほど悲しいことに似通った箇所を見つけてしまう。しかも、料理にしろ家事にしろ全てにおいてあいつのほうが上だというムカつくことにも気づいてしまった。
 俺のアーチャー観察は大した成果も得られないまま、ただただ俺とあいつが似ている事実を再認識するという散々な結果で終わってしまったが、ここで何もかも諦めてしまうには勿体無いと気を取り直す。俺がやりたいことやらなければならないことをアーチャーもやっていて、しかもアーチャーの方が実力が上だということがわかったのならば、せっかくの機会だしあいつの持っているものを全部会得してやろうと開き直ってやった。

     ◆

 それからというもの「迷惑だ」というあいつの後ろを雛鳥のごとくついてまわって、これはどうやったんだとか何でこれを選んだんだとか俺が納得するまで質問攻めにした。その度に数々の罵倒と少々の暴力を受けたが、それをものともせず答えるまで離れないという謎の気合を見せた俺に、アーチャーは無視するよりも早めに答えて追い払った方がマシと思ったのか、不本意な顔をしながらも色々と教えてくれた。意外だったのはその教えた方が思ったより丁寧でわかりやすかったことで、ついには
「中途半端は性に合わん。どうせならとことん教えてやる」
と俺を商店街に引っ張って行き新鮮な野菜の見分け方を伝授してくれたり、図を交えた料理のレシピまで用意する徹底振りだ。急に距離が近くなった俺らに遠坂は、「最近、仲がいいのね」なんてニヤニヤと笑っていた。
 はっきり言ってしまえばアーチャーと一緒に過ごす時間は悪くなかった。ちゃんと話せばあの口の悪さもそんなに目くじらたてるほどのことじゃないってわかったし( ムカつかないわけではない)、基本的に女性の割合が高い俺の家で、俺と同じように肩身が狭い思いをしている仲間と
『遠坂が自室にこもって何か企んでいるようだ』とか
『セイバーがからあげを食べたいと言っていたから夕飯はからあげにしよう』とか
『今日は桜の機嫌が悪いから近づかないほうがいい』など、
土蔵で密かに情報共有できるのは心強かった。おかげで最近は女性陣の地雷を踏みぬくことが極端に少ない。
 今では意味も無く土蔵に集まって、そこらへんに転がっている機械を二人でいじっている。あいつはかなりの道具マニアなのか、家電や武器について一旦語り始めると止まらない。でもそれを煩わしいと感じることは全く無く、むしろ聖杯戦争中は口を開けば嫌味しか言わなかったコイツが饒舌に熱く語るという意外な一面を見るのは面白かったし、結局俺も道具マニアの気があるので、お互いの話に共感したり反論しあったりと何時間も議論するのは楽しかった。

     ◆
 アーチャーに色々聞いた結果、知識や技術は多少身に付いたが料理の腕はまだまだ差が付いたままだ。もらったレシピ通りに作っているつもりだが、完成品を味見してもあいつの作ったものと何かが違うと首を捻る。あいつには『経験の差だ』と言い切られてしまったが、それに納得して諦めてしまうのは悔しい。
 ということで何とか差を埋められないかと昨日もらったばかりのレシピを参考に肉じゃがを作ることに決めた。肉じゃがは普通に作るのなら、切って味付けして煮込むだけのお手軽料理だが、本当に美味しいものを作るとなると実は難しい。
 食卓に出すものだからご飯が進むように少々濃いめの味付けを、その味付けをしみこませる為に煮込むのは重要だが、煮込みすぎると辛くなったり形が崩れぼろぼろになる。レシピに書かれた手順や分量を間違えないようにしっかりと頭に叩き込み、日課の魔術鍛錬に負けないぐらい肉じゃがを作る作業に没頭した。
手間暇かけやっと肉じゃがを完成させる。しかし、ある意味ここからが本番だ。最終的な味見をする為に皿に盛り付けたじゃがいもを箸で切り崩して口に運ぶと、

「おっ」

思わず声がこぼれた。前にお手本として作ってもらったアーチャーの肉じゃがとまったく同じではないが、これはかなりいい線いってるんじゃないかと思う。自分でも満足の出来に居ても立ってもいられなくなって、皿に盛られている肉じゃがを零さないように気をつけながらアーチャーを急いで探す。

「アーチャー!おい、アーチャーどこにいるんだ!」
「うるさい、そんなに叫ばなくても聞こえている。家の中を走りまわるなど何考えて、」
「アーチャー!これ!」
「肉じゃが?……あぁ、昨日渡したやつか」
「早く食べてみろって!」
「ここでか?」
「ここで!」

 今、俺たちがいるのは浴室で、風呂掃除をしていたアーチャーの手は塗れたままだ。食べ物を食べるには適さない場所だったが居間に戻るまでの時間も惜しく、すぐにでも食べてもらい感想を言ってほしかった。顔をしかめながらも皿と箸を受け取り、口に運ぶまでのアーチャーの一つ一つの動作も見逃さないようにドキドキしながら見守る。

「ふむ、及第点ってところか」
「そこはお世辞でも旨いって言えよ」
「お世辞でいいのか?」
「嫌だ」

 それでも、いつもは俺の作った料理をぼろくそに酷評するアーチャーが「及第点」と評価したのは、ようやく第一歩目を踏み出せたと喜ぶべきところだ。でも、そんな俺の喜びは「どっちだ…」と呆れているアーチャーのせいで全て吹き飛んだ。アーチャーは笑っていた。素直に笑ったというよりも呆れて苦笑したというほうが正しいかもしれないが、確かに笑っていた。

「!? 俺、お前の笑った顔初めて見たかも。いや、俺のこと見下したような憫笑とか嘲笑とかは見たことあるんだけど」
「ほう、こんな感じか?」
「あっ、そんな感じ……………って、そうじゃない!何で元に戻すんだよ」
「知らん」
「ほら、さっきみたいに笑ってみろって」
「知らん」
「アーチャー!」
「知らんと言っているだろうが。しつこい男は嫌われるぞ」
「くそっ、次こそは旨いって言わせてその表情崩してやるからな!だから、また次の教えろよ」

 俺がそう言うとアーチャーは眉間に皺を寄せ、何か言いたげにしばらくもごもごと口を動かす。俺なんか変なこと言ったか?先ほどまでの会話を思い出すがそんな酷いことを言ったつもりはない。いつもは俺の言葉をばっさりと斬り捨てるアーチャーにしては、はっきりとしない態度が珍しくその様子を黙って眺めていると、やがて意を決したように

「そうだな。お前が望むなら、…………次も教えてやってもいい」

と言って仏頂面のまま顔を背けた。しかし、前までの俺ではわからなかっただろうが、今の俺にはわかる。あれは確実に照れている。

「士郎?」
「えっ!?えーと、どうした?」
「私はいつまでこの皿と箸を持ってなければならんのだ」
「わ、悪い。すぐ片付ける」
「頼む。それと、ご馳走様でした」
「おお、お粗末様でした。……これからよろしく」
「こちらこそ」


あれ、なんか仲良くできそうかも。

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