柳洞寺へ向かう長い階段を早足で駆け上る。今日の目的は一成に会うことでも散歩でもない。暇そうにしていた寺の門番に「お疲れさん」と声を掛け門をくぐると、目の前には箒を持った女性がせっせと境内の落ち葉を掃いていた。
そこには魔女と呼ばれ、恐れられた女の姿はどこにもない。ここに居るのは旦那を支える健気な若奥様だけだ。その若奥様は俺に気づくと手を止め、にっこりと笑みを浮かべた。
「あら、やっと来たの?遅かったのね」
「これでもアンタの飛ばした使い魔からの伝言を見て、出来る限り早めに駆け付けたんだけど」
「そう?それはご苦労様」
「……キャスター。そんなことを言う為に俺を呼んだのか?頼みごとをしたいってあったのは嘘だったりしないよな?」
「そんな訳ないでしょう。用がなかったらわざわざ使い魔を放ってまで坊やなんかを呼ばないわ」
『わざわざ』という言葉を強調し、呼び出した張本人であるキャスターは俺に背を向け、さっさと寺の中に入っていった。
使い魔をいきなり俺の家によこしたことについての謝罪は無しかよ……。敵が攻めてきたとばかりにいきりたったセイバーをようやく宥め、こちらこそ『わざわざ』ここまで駆けつけてきたというのに。前言撤回。やっぱりキャスターはキャスターだ。健気なんて言葉は全く似合わない。
今すぐにでも帰ってしまいたかったがここでとんぼがえりしてしまえば、何のために敵の本陣まで行ったのかとセイバーに呆れられてしまう。そう思いなおして、置いていかれないように慌ててその後ろ姿を追った。
キャスターと葛木先生が普段間借りしている部屋に通され、何故か俺が入れた温かいお茶を飲んでやっと一息ついた頃にこちらから話を切り出す。
「それで俺に頼みごとって何なんだ?」
「貴方にはこれを預かってもらいたいの」
目の前に布に包まれた小さな塊が差し出される。キャスターが丁寧にその布を開くと、そこからは持ち手の部分が鮮やかな赤色のハサミが出てきた。
あのキャスターが俺に頼むぐらいだからもっとおどろおどろしい物を預かるように強制されると想像していたのだが、どう見てもどこにでも売っているようなハサミである。
「何でハサミなんか……」
「持ってみればわかるわ」
「えっ、これ持っても大丈夫なのかよ」
「大丈夫よ、貴方の体に害は及ぼさないわ。あら、私の言葉が信じられない?」
包み隠さず本音を言えば、信じられないというのが正直なところだ。
キャスターには敵だった頃から散々酷い目に合わされてきた。いや、過去形ではなく今でも俺たちは『敵』かもしれない。だから、おいそれと頼みに応じる訳にはいかない。
というか素直に応じてしまったら俺がセイバーにたたっ切られそうだ。俺の疑いの目に気づいたのかキャスターは困ったようにため息をついた。
「私だって守りたい人がいるのよ。その人の為にも、今更敵を作るような真似はしないわ。もちろん、貴方たちが私の平穏を壊さないことが前提だけど」
「…………キャスター」
「余計なこと言ったわね。それより話が進まないから早く持ってみなさい」
再度促され、もう一度ハサミに視線を戻す。信用した、という訳ではないが嘘をついているようにも見えなかった。そう思ってしまう俺はやはり甘いのだろうか?一瞬、褐色白髪の男の呆れたような溜息が聞こえた気がした。
俺もいつまでもここにいるわけにはいかなかったし、話を早く終わらせて帰りたかったので、意を決してハサミに手を伸ばす。そうして手に取ったハサミを様々な角度から観察してみたが、やはり何の変哲もない普通のハサミだ。キャスターの言う通り、持ってみても何も起こらな……………。
と思った次の瞬間、急に俺の視界は赤く濁り、赤い靄が目の前を覆っていった。慌てて数度瞬きをすると、赤い靄は一過性のものだったらしくだんだん薄れていき、数秒もしたら俺の目は何事も無かったかのように光を取り戻す。
やっぱり罠だったのか?キャスターに怒りを向けるより先に、他に異変はないか体のあちこちを確認する。そうしているうちに、俺の左手の小指に真っ黒な糸が結ばれているのに気がついた。糸の先は小指から30cmほどのところでぷつりと切れている。幻覚かと思い触れてみるが、糸の感触は確かにある。こんなものはさっきまではなかったはずだ。
顔を上げキャスターを見ると、同じようにキャスターの小指にも1本の糸が結ばれていた。しかし、俺の糸とは違い、キャスターの糸はハサミの持ち手と同じような鮮やかな赤色をしている。
さらに赤い糸はこの部屋の出入り口までのびていて、その先がどこに繋がっているのかまではわからなかった。キャスターは俺の驚いている様子を見ると嬉しそうに顔を綻ばせる。
「貴方には糸が見えるのね?成功していたようで何よりだわ」
「キャスター……、この糸の正体を知っているのか?」
「ええ。これは貴方たちの言葉で言うと『運命の赤い糸』よ」
『運命の赤い糸』
その話なら俺でも知っている。いつか結ばれる相手とは1本の赤い糸で繋がっているらしい。国によって足首やら手首やらに糸が結んであるということも聞くが、日本では小指に結んであるという話が一般的だろう。
「アジアの古い伝説だって聞いたわ。買い物をしていた時に、主婦友達から聞いたの」
「主婦友達って……。アンタ、意外と現世に馴染んでるんだな」
「当たり前よ!宗一郎の嫁になるのだからこれくらいはこなさなきゃ!!……っと話がそれたわね。とにかく、そのハサミを持った者には、将来結ばれる者同士が赤い糸で繋がって見えるようにしたの」
「どう?ロマンチックでしょ?」と自信満々に同意を求められたが、俺にはよくわからない世界だ。赤い糸が見えるだけなら確かに害はないのだが……。
「何だって俺に預けるのさ。さっさとこのハサミを持って、自分と葛木先生が赤い糸で繋がっているか確かめればいいだろ。その為に作ったんじゃないのか?」
「貴方、女心をわかってないわね!もし私の糸と宗一郎の糸が繋がっていなかったらどうするつもりなの!」
「どうするもなにも……」
どうもしないつもりである。ただ、これを言うとめんどくさいことになるのは分かっていたので大人しく口を噤む。
「いつかは確認するつもりだけど、今は無理だわ。もしもの場合、私は何をしでかすかわからない。でも、持っていたら誘惑に負けてしまいそうで怖くて」
「ああ、それで俺に」
「ええ。他の者に預けて悪利用されても困るの。その点、坊やにはそんな度胸なんてないだろうし」
「一言余計だ。とりあえず事情はわかった。別に預かるだけなら構わないよ」
「ありがとう。話が早くて助かるわ」
ハサミを元の場所に置くと、糸は最初から無かったかのように見えなくなった。なるほど、効果を発するのはハサミを手にしている時だけらしい。これなら、管理さえきちんとすれば何も問題はないだろう。ただ確認しておきたいことがある。
「なあ、このハサミを持っている本人も自分の糸って見えるのか?」
「ええ、そうよ。そうでなくちゃ作った意味が無いもの。貴方にだって小指に糸が結んであるでしょう?」
「あるにはあるけど……」
自分の小指にあった黒い糸を思い出す。運命の人と繋がっているという赤い糸。俺の糸が黒く、誰とも繋がっていないということは、この先運命の相手が現れないということなのか?無理に恋人を作ろうとは思わないが、そういう事実を突きつけられると無性に寂しいものがある。
目の前のサーヴァントでさえ運命の相手がいるというのに……。なんだかやるせない気持ちを抱えたまま、ハサミを再度布に包みなおす。用は済んだとばかりに追い出しにかかるキャスターを背に俺は寺を後にした。
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「遅かったな。貴様、どこをほっつき歩いていた」
家に着くと何故かアーチャーが玄関先で待ち構えていた。俺が出かけたのと入れ違いにコイツはここに来ていたらしい。
「別にどこ行こうが俺の勝手だろ。何でお前にとやかく言われなきゃならないんだよ」
「私だって貴様の行き先なんぞに興味はない。ただ、凛にお前の様子を見てこいと言われて仕方がなく来ただけだ。………ついでに夜はここで食べるから夕飯の準備を手伝ってこいともな」
遠坂には柳洞寺へ向かうことは言ってないから、大方俺のことを心配した桜に相談でもされたのだろう。だからといってコイツに頼むことなんてないのに。
「セイバーと桜君は出かけた。2人とも夕飯までには帰ってくるらしい」
「ふーん、それで?お前は本当に俺の手伝いをするのか?」
「………夕飯の支度は私1人で十分だ。台所借りるぞ」
「は!?俺は了承してないぞ!」
「私はマスターの命を守らなければならん。かと言ってお前と並んで作るのも願いさげだ。邪魔だから大人しく座っていろ、たわけ」
「それはこっちの台詞だ!」
もちろん、コイツの横行に大人しく従う義務はない。そんなものはどこにもないのだが、俺だって2人並んで料理を作りたくはなかった。
………あぁ、もういいや。こんなにも自信満々なのだからアーチャーに全部任せてやる。その代わり、コイツの過去である俺より料理の腕が落ちていたら嫌みの1つでも言ってやろう。
黙って座布団の上に座りこんだ俺を見て、アーチャーはやれやれと言わんばかりに肩をすくめた。相変わらずコイツといると些細なことでもイライラさせられる。
蒔寺や氷室、三枝の3人なんかはアイツのことを格好いいとかモテそうとか噂していたが、それはアーチャーの外面の良さに騙されているだけだ。あんな口を開けば嫌味しか出てこないような奴がモテるわけがない。
……………それとも、俺が気づいていないだけなのか?
頭に浮かんできた馬鹿な考えを追い出そうと慌てて頭を振る。アイツを好きになるだって?そんな物好きがいるわけない。
「ないない、絶対にない」
「…………さっきから独り言がうるさい」
「えっ!俺声に出してたか?」
「自覚がなかったのか?何を言っているかは知らんが、ぶつぶつ呟く声が耳障りだ。大人しく座っていることもできんのかお前は。邪魔をするのならどっかに行ってろ」
「なっ!」
その言葉に思わずカチンときた。邪魔だって?俺の居場所を勝手に侵略しているのはお前だろ!?そう言い返しても、口ではコイツに負けることがわかっているのでぐっと耐える。しかし、やられっぱなしは性に合わない。なんとかコイツに一泡吹かせる方法は無いものか?
ふと、キャスターから預かったハサミの存在を思い出した。キャスターの小指に赤い糸があったようにコイツにも運命の相手とやらいるのだろうか。
いや、こんな嫌味野郎なんかにそんな大層な相手がいるとは到底思えない。それに過去の衛宮士郎には運命の相手が存在しないのだからコイツだっていないはずだ。
ただ一度そう考えると、いくら思考を切り替えようとしても、俺はアーチャーの糸がどうなっているか気になって仕方がなかった。
まあ、別に糸を見るくらいなら誰かに被害がいくわけでもないし、俺と同じ黒い糸がアーチャーの小指にも結ばれているのを見たら、一泡吹かせられなくてもこのイライラが幾分かおさまるかもしれない。そう自分でも訳のわからない言い訳しながら俺はハサミを包んでいた布を取っ払い、ハサミを手に取る。
しかし、アーチャーを目にした瞬間、信じられない光景が飛び込んだ。
キャスターと同じようにアーチャーからも赤い糸が伸びており、それは廊下の先まで続いている。この家には俺とアーチャーしかいないのだから、これはコイツの糸で間違いないはず。すなわちアーチャーには運命の相手が存在するということだ。
「……嘘だろ」
なんでなんでとそればかりが俺の頭の中を埋め尽くしていた。アーチャーが料理に没頭しているのを確認し、のびている糸まで近づいて触れてみる。見間違いとか勘違いの可能性も考えたが、糸の感触が紛れもなくこれが現実なのだと突き付けてきた。
アーチャーの運命の相手。キャスターがこの時代で葛木に出会ったように、アーチャーも大切にしたいと思う誰かと出会っているのか?
「………物好きな奴もいたもんだな」
確かに他のサーヴァントを思い出してみれば、ランサーなんかは色んな女の子に声を掛けているようだし、アサシンだって三枝と仲が良い。これは別段驚くようなことでもないのかもしれない。………だいたいアーチャーに運命の相手がいようがいまいが俺には何も関係のないことだ。
シャキン
鋭利な刃物の音にびくっと体が反応する。音の出所は自分の手元。無意識に持っていたハサミを鳴らしてしまったようで、それを意識した瞬間、ぶわっと汗が噴き出た。このハサミで何かを切れるかどうかは知らないが、目の前の糸は刃を食い込ませればすぐにでも切れてしまいそうで。一歩間違えれば俺はこの糸を切ってしまう可能性だってありえたのだ。
キャスターは何故赤い糸を見る為のアイテムをわざわざハサミの形にしたのか?葛木の運命の相手が誰なのか確認するだけだったらこの形である必要はないはずだ。それこそ、キャスターの言うロマンティックさを求めるなら指輪でもアクセサリーの類でも何でもよかったのだ。
本当にキャスターの目的は糸を見ることだけだったのか?アイツは自分の手元に置いておくのは危険だと口にしている。つまり、このハサミには糸を見る他にも何か使い道があるんじゃないか?
……………例えば、2人の運命そのものを断ち切る力とか。
シャキン
ハサミを今度は自発的に鳴らす。そして、開いたハサミの間にアーチャーの糸を挟み込んだ。俺が右手に少しでも力を込めてしまえばこの細い糸は簡単に分かたれる。そうすれば、アーチャーと顔も知らない誰かさんとの縁は完全に断ち切られてしまうのかもしれない。
刃先を動かす。それだけだ。それだけで俺は………。
…………………ということができるはずもなく。
少しふざけ過ぎたな。いくら普段からアーチャーにムカついているとはいえ、こんな報復が卑怯だってことは俺にもわかる。それにどこにでもいるような一般人が、運命だとかそういうものを支配するなんて随分と勝手な話だ。やられたほうはたまったもんじゃないだろう。
アーチャーを見返したいのならこんなのに頼るのではなくて自分の力でやりかえすべきだ。
「おい、衛宮士郎」
「うわっ!」
シャキン
アーチャーのほうにぱっと顔を向ける。アーチャーは冷蔵庫の中をごそごそとあさっていた。いつも通りだ。具合が悪くなっているようにも、いきなり性格が変わっているようにも見えない。
しかし、アーチャーの左手の小指からのびる糸は赤ではなく、…………俺と同じ黒に染まっていた。
「情けない声を出すな。冷蔵庫にある卵は使っていいのか?」
「えっ、……ああ。何でも好きに使えよ」
手元を見るのが怖い。でも、見なければならない。現実から目をそらしてはいけない。
そうっと視線を自分の手元に戻すと、そこにはぷつりと切れた黒い糸が1本。やはり急に声を掛けられたことに驚いて刃先を動かしてしまったらしい。
そして、おかしいのはそれだけじゃない。1本の糸を切ったのだから、そこには2本の糸がなければおかしい。それにも関わらず、目の前にはアーチャー側の黒い糸しかなかった。
消えた!?どこへいったんだ?早く元通りにしなきゃならないっていうのに。
探しにいかなくちゃ。でも、アーチャーの糸はこのままにしておいていいのか?
俺が黒い糸のままでも平気なのだからアーチャーだって平気なのか?
いや、アーチャーはもともと誰かと繋がっていたのを無理やり俺が断ち切ってしまったのだから、今は異変がなくとも後から後遺症のようなものがくるかもしれない。
ただ単に、このままにしておけないという焦燥感と軽いパニックから咄嗟に俺は自分の黒い糸とアーチャーの黒い糸を結んだ。後から考えると、軽率な行動だったがそれくらい俺は焦っていたのだろう。おぼつかない手つきで2本の糸を結ぶと、アーチャーの黒い糸はみるみるうちにもとの赤い糸へ戻り、さらに俺の黒い糸もアーチャーと同じく赤色に変化した。
誰かと繋っていれば糸は赤くなるのか?運命の相手を変えることが出来る?誰でもいいのか?それが俺でも?だったら、
いや、……………違う。これは今考えるべきことじゃない。とにかく反対側の糸の持ち主を探すことが先だ。
その後、暗くなるまで黒い糸の行方を捜したが見つかりはしなかった。
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「…………ただいま」
「おかえりー。……じゃなくてもう!士郎ったらおそーい!私が腹ぺこで倒れたら士郎のせいだからね!」
「へいへい。悪かったよ、藤ねえ」
皆、俺が帰ってくるまで待ってくれていたらしく、俺が席に着いたことを合図に「いただきます」と声を揃えて夕飯を食べ始めた。
結局、この時間まで街中を駆け回ったが黒い糸の持ち主はどこにも見当たらなかった。こっそりとアーチャーの様子を窺う。変化なし。糸を切る前と切った後も何も変わらない。料理だって美味い。………ちくしょう、俺より美味い。
夕飯を食べ終えたらまた黒い糸を探しに行くつもりだったが、ここまで俺にもアーチャーにも変化がないのなら、アーチャーが誰かと繋がっていたということ自体が疑わしく思えてきた。
だいたいハサミで赤い糸を切ったら相手との縁も切れるというのは、キャスターから聞いた訳ではなく俺の仮説なのだ。もしかすると、本当にそんな効果があったのかもしれないが、キャスターもこのハサミを実際に使ってはいないようだったし、失敗している可能性だってある。
考え事をしながら黙々と食べていた俺をいつもの喧騒に引き戻したのは藤ねえの拗ねた声だった。
「なーんか士郎の唐揚げ、一回り大きくない?唐揚げだけじゃなくて他のおかずも士郎のほうが量多いような」
「そうか?気のせいだろ」
「ええー!気のせいなんかじゃないわよぅ。ねっ、桜ちゃんもそう思わない?」
「えっ、えーと、そうですね。うーん、そう言われてみれば大きく見えるような……。で、でも、先輩の言う通り気のせいかもしれませんし」
これに関しては俺と桜が正しい。今日の夕飯を作ったのはアーチャーだ。俺の分を多くするなんて天地がひっくり返ったとしても有り得ないし、むしろ嬉々として減らしてくるほうが合っている。
しかし、藤ねえ以外の全員はその現状を知っているからか同意はしていないが、ぐるりと周りを見渡すと皆も同じ事は思っていたらしく、不思議そうに俺のおかずを眺めている。
俺もじっと自分の分のおかずを眺めるが、如何せん考え事をしながら飯を食っていたものだから、周りとの違いがわからない。
「まったく。おかずの多さでそこまで不満をもらすのは女性としてどうなんだ。私としてはもう少し慎ましく振舞うべきだと思うが」
「ええーっ!!アーチャーさん、ご飯に関しては男も女も関係ないわ。ここはいつでも戦場!!!むしろ弱肉強食を学ぶ場所よ!!!」
「ふむ。まあ、その言い分も一理ある。それではここは私の唐揚げを譲るということで勘弁していただきたい」
「本当!?やったー!!」
「アーチャー!タイガだけに唐揚げを譲るというのはいささか不公平なのでは!?」
「セイバー。がめつく見えるので、噛みつくのはやめた方がいいですよ」
「違います、ライダー!私は公平さを説いたのであって、決してタイガがうらやましいとかそういうわけではなく………」
「いるのだったら勝手に持っていけ。どうせ私はそんなに食べないからな」
「あら、それだったら私も1つもらおうかな?今日の唐揚げは特別美味しかったし」
「あ、あの、アーチャーさん。御迷惑でなければ、後でレシピを教えてもらってもいいですか?」
先ほどまでのおかしな雰囲気はきれいさっぱりなくなり、もとのがやがやと騒がしい食卓に戻る。藤ねえも唐揚げを口いっぱいにほうばってご機嫌だ。
このやり取りにおかしな部分があることに誰も気がつかない。…………拭いきれない違和感が持っているのは俺だけだ。