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設定温度は24度/Novel by yosihito

設定温度は24度

2,821 character(s)5 mins

麦茶っくすだと熱中症のリスクが高いので、今年の夏は推しCPにはエアコンの効いた涼しい部屋でさせましょうね〜っていう提案がツイッターで流れてきたので、それに乗ってみました。
ホロウ軸(っぽい)士弓。アーチャーはアパートで一人暮らし。ほんのりできあがってる感じの二人です。

べったーに投稿したものに、アーチャー視点のその後を書き足しました。

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「アーチャー、いるか?って、え、涼しっ……!?」
勝手知ったるアーチャーの部屋。
その扉を合鍵で開けながら、士郎はいつも通り室内に声をかけた。
何度も訪れているとはいえ、無言で入るのは未だに躊躇われて、部屋の主がいるいないに関わらず、入る際にはこうして声がけを行うようにしているのだ。
猛暑の続くここ最近、こうして訪れた部屋が蒸し風呂の様相を呈していることも珍しくない。
今日もそれを覚悟して戸口をくぐった士郎は、いつもと違うひんやりと心地良い室温に拍子抜けしてしまう。
見れば、先日まではなかったエアコンが窓の上部に設置され、部屋の快適な温度を保つべく絶賛稼働中だった。
「エアコン……?」
「そうだが」
「わ!!」
間近でかけられた応えの声に思わず飛び上がる。
「い、いたのかよ……?」
士郎の反応が面白かったのか、アーチャーはわずかに口の端を上げ、あがれと顎で促すと洗濯物の取り込み作業に戻っていく。
士郎は靴を脱ぎながら尋ねた。
「あれ、どうしたんだ?まさかと思うが投影したのか?」
何気なく尋ねる士郎に舌打ちを返し、手に持ったタオルをきっちりと畳んで置くと、アーチャーは体ごと向き直った。
「お前は昨今の家電製品が、どれだけの技術の粋によって作られているのか知らんのか?」
「はぁ?」
「加工技術の蓄積と研鑽、試行錯誤により一つ一つ洗練されていった部品とその組み合わせから出来た精密な機構、微細なセンサー類、それらを制御する電子基板とプログラム、おいそれと投影で再現できるものではないーー」
そもそも、とエアコンのみならず家電の技術の進歩とその素晴らしさについて熱弁を振るうアーチャーからそっと目を逸らして、エアコンを見やった士郎は、ふと気づいた。
そもそもといえば、そもそもサーヴァントにはエアコンなんて必要ないじゃないか。
ーーだから、これはつまり……

ここは、この町でアーチャーが生活するための拠点として遠坂凛が手配したアパートの一室だ。
現界を維持し、この地へ留まることを了承はしたが、そのための糧である魔力を遠坂凛から供給されることを、この男は断固として拒んだ。
当然、危機的な魔力不足に陥ってしまうこともある訳だが、様々な経緯を経て、士郎がアーチャーへの魔力供給を担うようになり今に至っている。
だが、正式なマスター契約を結んだ訳ではない士郎とアーチャーの間には当然パスは通っておらず、供給のたびに擬似的なそれを形成して、魔力を融通するという手段を取っていた。
ようは、性交による魔力供給の儀式だ。
定期的に、士郎はこのアパートを訪れてはアーチャーにそれを施していた。
だが、ここ連日の猛暑、エアコンのないこの部屋での行為(ぎしき)は士郎の健康被害へのリスクが高い状況となってしまっていた。
事実、儀式の際に士郎が熱中症になりかけた事も一度や二度ではなかった。
そのため、このところの魔力供給は簡易的なものにならざるを得ず、それによる供給効率の低下を士郎は気にかけていた。
この男は絶対に口には出さないだろうが、実のところかなり渇々なのだと踏んでいた。
何より、単に魔力供給するされるの関係ではすでにないと認識している士郎には、それだけでない想いもあったのだが。

「そんなに、エアコンの内部構造に詳しいって事は、あんた一応投影しようとしてみたんだな……?」
士郎の指摘に、アーチャーはバツが悪そうな顔で口をつぐんだ。
だが、面白がるような相手の視線に気づくと、むっとして反論を始めた。
「た、たまたまだ!通りかかった家電売り場でエアコンのフェアをやってたので、どんなものかと確認したまでだ。……おい、何をしている?」
アーチャーの弁明を聞き流しながら、士郎はエアコンのリモコンを手に取った。
ピ、ピ、ピ、と軽い電子音がなり、その手元の液晶画面を覗き見たアーチャーは首を傾げた。
「なぜ、温度を下げ……」
尋ねる言葉は、自分に向けられた士郎の目を見て飲み込まれた。
強い光を讃えるその琥珀は真っ直ぐに自分の顔を映り込ませている。
その奥底にちらちらと情欲の昏い炎が覗くのに気づいた途端、自身の中に潜む渇望にアーチャーは気付かされてしまった。
冷えていく部屋と対称的に体は熱を上げていく。
どちらからともなく絡めた指も寄せた顔も、それが一方的でない事を伝えてきて、それで小難しい理屈はリモコンとともに放り投げた。


「っくしょん!」

間近で上がったくしゃみの音で目が覚めた。
少しまどろんでいたようだ。
サーヴァントの自分が眠るというのもおかしな話だが、この現界は諸々がイレギュラーづくしであったし、何より常に現界ギリギリの自分の状況では、結局は人の営みをなぞる方が効率が良いと気付いてしまったのだ。
つまり、人と同様に食事をし、眠りによって体を休める事で、魔力の自然回復をはかっていくのだ。
それでもどうしても足りない時は、こうやって衛宮士郎から補ってもらう事になっているのだけれど。
その士郎は、裸のまま間抜け面をさらして隣で寝入っている。
派手なくしゃみをしたことで目覚めるかと思ったが、そんなタマではなかったらしい。
寒いだなんだとむにゃむにゃと寝言を言いつつ、シーツ代わりにしているタオルケットを引き寄せるとそれにくるまり丸くなった。
その姿に、呆れて鼻を鳴らしたアーチャーは、ふと部屋の温度がやけに低い事に気がついた。
「そういえば、ずいぶんと温度を下げていなかったか?」
リモコンを手に取り確認すれば『24℃』と表示されていて、いくらなんでも低すぎだ馬鹿め、とひとりごちた。
だが、なんのためにこんな温度にしたのかという原因の一端が自分にもあると知っているアーチャーは苦々しげに口を歪めた。
それはともかく、もう少し冷房を弱めようとボタンに指をかけた時だった。
「!」
余程寒かったのか、眠ったままの士郎が温もりを求めてアーチャーにすり寄ってきたのだ。
普段であれば鬱陶しいと即座に引き剥がす所だ。
だが、アーチャーの脳裏に先日テレビで見た熱中症を予防するポイントが思い起こされた。
就寝時の熱中症を防ぐには、しっかりと部屋の温度を下げる事が重要で、もしそれを肌寒いと感じるのであればかけ布団などで調節すると良いというような内容だった。
手元のエアコンの温度表示を見る。
次に士郎の寝顔に目を向けた。
逡巡したのは僅かな時間だった。
ーー仕方がない。
アーチャーはリモコンを枕元に置くと、薄手の肌布団を投影した。
幸い、この程度の投影に困らないほどの魔力は目の前の小僧に供給されたばかりだ。
それを自分たち二人を覆うようにかけると、士郎へと向き直り、その体に腕を回して抱え込んだ。
触れる肌の冷たさが、自身の体温に馴染んで同じ温度になっていくのを感じながら、アーチャーはゆっくりと目を閉じた。

END

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#7 -----

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