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【士弓】お題アンソロジー「12」【ちくわぶ分サンプル】/Novel by ちくわぶ

【士弓】お題アンソロジー「12」【ちくわぶ分サンプル】

5,182 character(s)10 mins

※ちくわぶ主催のアンソロジー「12」(illust/89095349)内のちくわぶ執筆分サンプルです。

サークル名:竹風
版権元:Fate/stay night
カップリング:衛宮士郎×アーチャー(五次)
タイトル:
概要:アンソロジー 130P
会場頒布予定価格:1400円

HARUコミでの頒布開始予定でしたが、欠席し書店委託により頒布開始しています。
とらのあな
https://ec.toranoana.jp/joshi_r/ec/item/040030891860/
フロマージュ
https://www.melonbooks.co.jp/fromagee/detail/detail.php?product_id=812422

※どちらも取扱い期間が終了したため、現在はサークル竹風のBOOTHより頒布受付しています。

https://wabuwabuwabu.booth.pm/items/3952310

書店在庫戻っています。

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1作目

かつての運命

 久しぶりに髪を切ることにした。
 何せこれでも、封印指定を受けている身だ。髪一本ですら神経質にならざるを得ない。切った髪を憂いなく処分するには結構な時間と手間が必要で、伸びた髪を邪魔に思っても、中々切れるものではなかった。それが今夜は清潔なシーツのシングルベッドにシャワーまで付いた部屋に泊まれたのだ。これはもう切るしかない。
 バスルームにある唯一の鏡は水垢で白く曇っていたが、硬水のお国柄仕方のないことだろう。どうしても気になって備え付けの歯磨き粉を使って軽く掃除したところ、まあ見られるくらいには回復した。
 投影仕立ての切れ味抜群の小刀で、サリサリと切り落としていく。
 髪はいつのまにやらすっかり白くなっており、曇った鏡では非常に見づらかった。無意識に目を眇め、眉間にも皺が寄る。
「……見たことのあるような顔になったな」
 あらかた髪型を整えた鏡の向こうの自分は、元の色合いにまったく掠りもしていないのに、不思議と見覚えがある気がした。
 肌が灼けて髪が脱色されていく行程では、まだら模様の自分に違和感しか感じなかったものだが。完全に色変わりすると、一周回って落ち着くものなのだろうか。
 首を傾げながら片付けて、バスルームから出る。服も色々洗ってしまいたいし、道具の整備もしておきたい。やりたいことが大量にあるのだ。折角のベッドだが、なかなか就寝できそうにない。
 できる限りテキパキと手を動かして、照明の明るさに感動しながら銃器の解体に移る。
 銃弾にあわせて銃を選ぶという中々に本末転倒なことをしているので、物としては型落ち品だ。それを砂埃の中連れ回していたので、いつジャムるか正直気が気じゃなかった。ようやく整備できて一安心である。
 銃弾の方は整備しようがないので、精々無事発射されることを祈って磨くくらいしかできない。これらもいよいよアンティークの域で、本番できちんと発射されるのか。信頼性は微妙なところだ。それでも、雨の日も風の日もこの弾丸を大事に持ち運んで重用するのには理由があった。
 起源弾――というらしい銃弾は、一般人に使うと口径どおりの威力のライフル弾なのだが、魔術師に使うと別の意味があった。魔術回路の構造を破壊するという、珍しい特性を有していたのだ。
 〝魔術回路〟というものは、まさに電子回路さながら、構造全体が揃って初めて役割を果たすものだ。四肢が欠損しても活動を続けられる人体とは違って、魔術回路は一部が欠けるだけで機能を果たさなくなる。そして、魔術回路というのは五体すべてを使って構成されているもので、その分布は人体急所と一致しない。左腕に多くの回路が集中している俺自身が好例だろう。
 つまり、この弾丸を使えば、命を奪わなくても魔術師を無力化することができる。これは協会に追われる俺にとって、非常に都合のいい性能だった。古臭く取り回しの悪いライフルを担ぐ価値もあるというものだ。
 かなりぼったくられながらも奮発して九発手に入れた起源弾も、もう残り三発となってしまった。投影できればよかったのだが、構造解析をかけたが最後、その特性が俺の魔術回路にも発揮される可能性がある。ある分を大事に使うしかない。防水防塵の専用ケースに戻しておいた。


 散らかした荷物を片付けて、一息つく。
 腰掛けたベッドはやや硬かったが、柔らかすぎるよりはむしろ落ち着いた。
 そういえば、と思い出して、項にかかるチェーンに手をやる。そのまま手繰れば、服の下に隠れていた胸元のペンダントトップが姿を現した。
 サイズも透明度も最高峰の宝石だ。これを換金すれば、起源弾ももう数発は買えただろう。
 だが、手放す気は起きなかった。かつて命を救われたことを思えば、ある意味、これは俺の命よりも価値があると言える。
 しかし如何せん、ずっと首から提げているので少し輝きがくすんでいるように思えた。せっかく綺麗な水と布が手に入る部屋にいるのだ、こちらもちゃんと手入れしておこう。
 ベッドから立ち上がって洗面台に向かう。ペンダントを首から外し、蛇口を捻ろうと手をかけたところで、不意の予感に顔を上げた。
 白髪で浅黒い肌の男と目があう。
 鏡に写った自分の姿は、何か腹立たしいくらいに、自分以外の誰かに似ている。

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