日銀の審議委員人事におけるリスク
政府は25日、国会の同意が必要な人事案を衆参両院の議院運営委員会理事会に提示した。
注目されていた日銀審議委員には、中央大学名誉教授の浅田統一郎氏と青山学院大学教授の佐藤綾野氏を充てる。
3月31日と6月29日にそれぞれ任期満了となる野口旭氏、中川順子氏の後任となる。任期は5年。
両氏とも金融緩和と積極財政を重視するリフレ派とされている。
高市早苗首相が日銀の植田和男総裁と16日に会談した際、追加利上げに難色を示していたとされるが、それを裏付けるような今回の人事案となった。
浅田統一郎氏は昔からよく知られたリフレ派の1人。ロイターにもあるようにアベノミクス政策以前から大胆な金融緩和を主張し、論拠を学術的に支えてきたとされる。同氏を知る関係者によると、元日銀副総裁の若田部昌澄早大教授や、元日銀審議委員の原田泰氏とも関係が近いそうである。
佐藤氏もリフレ派の経済学者として知られており、同じリフレ派で元日銀審議委員の原田泰氏との共著もある。2023年2月に開かれた自民党の「責任ある積極財政を推進する議員連盟」の勉強会で講師を務めていた。
2人の審議委員候補がそろって利上げに慎重なリフレ派系の人物になるとの観測が2月上旬にも出ていたようである。これに対し財務省と日銀は巻き返しを図った模様だが、やはり官邸案のまま決まったとの見方が出ていた。
これである程度、高市首相のスタンスが明確になった。そもそも「責任ある積極財政」そのものもリフレ色が強かった。
これによって日銀は早期の利上げを進めづらくなる可能性も出てきた。特に日銀執行部は官邸の動向をかなり気にしているとされる。
ただし、リフレ派以外の審議委員達は違うかもしれない。3月以降の日銀金融政策決定会合での結果も注目されよう。
これを受けて外為市場ではさらに円安が進むことが予想される。
今後一時的に物価は2%割れで推移することが予想されているが、円安や利上げの遅れもあって、予想外の物価上昇を迎える懸念もある。
円債には売り要因となろう。25日の現物債市場では早期利上げ観測の後退で中期債が買われた半面、超長期債が大きく売られ、長期債も売られた。
インフレが想定より長引く可能性、そして日銀がさらに後手に回るリスクが高まり、いずれ急速な利上げに追い込まれるとの可能性も意識か。
「高市首相はこのままではトラスになるか、メイになってしまうのではないか」とのベッセント財務長官の予言も現実味を帯びてきそうである。