緊張高まるペルシア湾と、中東戦争でアラブと米国の仲介を行った鳩山一郎政権 ―イラン戦争は国際法に違反する「予防戦争」
トランプ政権による関税措置について米連邦最高裁判所は相互関税などの関税を課す権限は大統領に与えられていないとする判断を下したが、これに対してトランプ大統領は日本を含む幅広い国を対象に10%の新たな関税を課す文書に署名し、関税措置を続ける方針を明らかにした。この尋常ではない大統領は国内での求心力を維持するために、イランを攻撃する可能性がある。
イランを攻撃すれば、それは「予防戦争」という国際法に違反する行為だ。「予防戦争」とは「侵略してくる可能性のある潜在敵国に対し、その戦争遂行能力が自国にとって危険となる前に、機先を制して攻撃し、その侵略の企図を未然に阻止するために、進んで行う戦争。」と『ブリタニカ国際大百科事典』にある。つまり、潜在的敵が軍事的に強大になる前に戦争でその能力を奪う、「戦争するならいまでしょ」ということになる。
言語学者のノーム・チョムスキーはブッシュ政権によるイラク戦争を指して「予防戦争とは、ニュールンベルク戦争裁判で『最悪の犯罪』と断罪されたものにほかならない」と主張した。予防戦争(将来の脅威を避けるための先制攻撃)は、基本的に国連憲章第2条4項の「武力行使禁止原則」に違反し、国際法上違法と見なされる。
米国の同盟国の日本は、イランとも良好な関係を築いてきたが、欧州諸国などとともに、米国のイラン攻撃を思いとどまらせるような仲介努力をいま、すべきだと思うが、高市政権にはそのような姿勢は微塵も見られない。
日本は1956年の第二次中東戦争(=スエズ危機)の際に鳩山一郎(首相在任1954年12月~1956年12月)政権の重光葵外相が米国とアラブの交渉の仲裁努力を払おうとしたことがあった。日本は自主外交の気概を示そうとしたのだが、鳩山一郎首相は第一次内閣における施政方針演説で、次のように述べている。
「外交においては、世界平和の確保と各国との共存共栄を目標とし、広く国民の理解と支持とによる積極的な自主平和外交を展開しようとするものであります。(中略)防衛問題に関する政府の基本方針は、国力相応の自衛力を充実整備して、すみやかに自主防衛態勢を確立することによって駐留軍の早期撤退を期するにあります。」(1955年1月22日「施政方針演説」)
単に米国だけに依存しない外交を目指すという点では田中角栄首相も同様だった。1973年8月ワシントン・ナショナル・プレス・クラブにおいて「単に、二国間の関係という問題意識にとどまらず、『世界的視野に立つ日米関係』という新しい視角を加えて,日米の協力関係を見直す必要があるのであります。」と語った。米国一辺倒となり、その軍事力に依存する姿勢を露骨にしてきた小泉、安倍、高市政権など21世紀に入っての日本政府のスタンスとは明確に異なる見解や姿勢を自民党の先人たちは明らかにしている。
2020年1月のソレイマニ司令官の殺害、昨年6月のイラン攻撃に対してイランは米軍に報復攻撃を事前に通告し、米兵に実質的に避難を促すなど抑制された報復を米軍に行ったが、トランプ政権が再びイランを攻撃すれば、従来とは異なった厳しい対応をとる可能性がある。
イランは昨年6月に米軍がイランを空爆すると、米軍が駐留するカタールのアル・ウデイド空軍基地に報復攻撃したが、これが将来の米軍のイランに対する攻撃に抑止的効果をもたなかったことは、トランプ政権が再びイランを攻撃しようとしていることで明らかになった。
そのため、イランはトランプ政権がイランを攻撃すれば、地域に駐留する米軍に対してより致命的で、破壊的な報復措置で対抗すると示唆している。テヘラン大学のファワード・イザーディ准教授は、イランの指導者たちは現在、米国の将来の攻撃を抑止するには少なくとも500人の米国人に死傷者を出す必要があると考えていると報告している。かりにこのような規模の犠牲が米軍に出た場合、トランプ大統領の政治生命にとって重大な打撃になるに違いない。
イランは長年にわたって米軍による攻撃に備えてきた。イランは、最新の防空システムと、弾道ミサイルやドローンを保有しており、それらを使って、カタール、サウジアラビア、クウェート、バーレーン、UAEの米軍基地、そしてイラン近海に派遣された米軍艦船などを標的に報復できる。
中東での戦闘で米海軍が無傷でいられないのは、米空母ドワイト・D・アイゼンハワーが25年1月にイエメンのフーシ派に対する攻撃など中東での9か月間の作戦を終えて以来、ノーフォークで1年以上ドックに入っていることからも明らかだ。米軍はフーシ派の攻撃によるアイゼンハワーの損傷を否定しているが、アイゼンハワーは長期間、作戦に参加できていない。米軍やイギリス、イスラエルによるフーシ派空爆が成功していないことは、その後も大型船舶はイエメン沖を回避し、また保険料も高額なままであることからもうかがえる。
いずれにせよ、トランプ政権がイランを攻撃すれば、中東地域はより不安定になることは間違いなく、日本など米国の同盟国がすべきことは米国とイランを仲裁する努力だ。特にイランと長年良好な関係を保ってきた日本にはそれが可能な立場にあり、重光葵氏のような気概や努力が今の高市政権には求められるが、高市氏にはトランプ大統領の政策に異を唱える姿勢はまったく見られない。



そもそも中東問題を始め、世界情勢に関心がないみたいですね、高市首相は。