初遭遇!ドーピング検査
先日、どことは言いませんがドーピング検査がある開催に初遭遇しました。
せっかくなので、検査対象になって検査レポを書きたかったのですが、残念ながら対象とはなりませんでしたけどね。
まあ、ぼくに検査をおこなっても検査費用を無駄にするだけなので、ある意味業界のためにはなっていますが…(笑)。
当ブログでは、ドーピングに関する記事をいくつか書いた事があります。
【ドーピングについて詳しく知ってる?】
【ドーピングに揺れた競輪界】
この記事内でも触れているし、当記事タイトルも「初遭遇!」になっているのでお察しの通りですが、ぼくは2015年にデビューしてから11年間、一度もドーピング検査に遭遇したことがなかったんです。
自身が検査を受けるのはもちろん、やっている開催にすら遭遇しませんでした。
つまり「ほんまに検査やっとるんか?」というスタンスでずっと選手生活を送ってきましたよ。
シュレディンガーの猫ですね。
一応、検査開催に当たった事があると話す選手は稀にいたのですが、本当に稀レベル。
同支部で1人や2人とかだったんですよね。
※最近はグレードレースで検査が頻繁に行われているそうなので、改めて皆に聞いたら検査開催に当たった選手は増えているかもしれません。
ましてや検査を受けた事がある選手なんて、幻レベルですよ(笑)。
そんな事情で、ぼくに限った話ではなく業界全体に「ほんまに検査やっとるんか?」という空気感が漂っているのが現実なんですよ。
そんな中、なんの前触れもなく開催中にドーピング検査が行われました。
まあ、どこで、誰に…と言うのを書くのは流石に検査を受けた方々のプライバシーがあるのでぼかしておきますが、最前線で観測したぼくが「競輪界のドーピング検査はどんな感じで行われているのか」を紐解いていきますぞ!
当ブログで大活躍のいらすとや。
ドーピング検査のイラストは流石にありませんでしたが、こちらの画像は「無意識にドーピングをしている人」だそうです。
たしかに、わざとではない感じで薬を飲んでいますが、心なしか筋肉がこんもりとついていますね…。
いらすとや、なんてニッチなイラストを掲載してるんだ…いつもありがとうございます。
さて今回、検査があったのは、いわゆるA級開催、FIIでの開催でした。
(ブログ更新時と記事執筆時にはかなり時差があるので、更新直近のFIIで検査があった!という訳ではありませんので悪しからず)
行われたのは2日目の中日、準決勝の日。
レース後に突然、競輪開催中にあまり見かけないような、スーツ姿のスタッフが現れたのです。
JKAスタッフは開催中、JKAロゴ入りのジャージを着用していますし、運営スタッフ(JPFや日本トーター社員)も、社名の入った衣服を着用しているので、お堅いスーツ姿の人々が現れると、開催中の競輪場でちょっと浮くんですよね。
そして、スーツ姿の男たちが突然1人の選手を取り囲み、なにやら説明を開始。
検車場ではない棟へと連行されました。
そう、突然のドーピング検査です。
この手の検査って、ある程度の事前告知があるんだと思っていましたが、本当に突然はじまります。
まあ、抜き打ちなので当然と言えば当然なのですが、競輪界のゆるさとは違ったガチガチの仕様だったので、皆が困惑してましたよ(笑)。
ドーピング検査って、内容自体は採尿をするだけです。
ただ、健康診断の検尿と違うのは“検査員の前で”採尿をしないといけない所です。
つまり、尿のすり替えや不正がないよう、男であればおしっこがきちんと本人のイチモツから尿がでているかどうか、を検査員が間近でガン見する、という訳です。
というのも昔、プライバシーを考慮して少し離れて採尿を監視していた時代があったそうです。
するとどうでしょう、ガチガチのドーピング違反者が検査時に偽物のチンチンを用意して、何らかの形で事前に用意したおしっこを偽チンから出して検査容器に入れ、提出するという違反が実際に行われたことがあるんですよ。
そんなこんながあり、レースから採尿までの間に何らかの仕込みや、新たな薬品接種がないよう、レース直後に検査員に取り囲まれ、監視下に入り、放尿の瞬間をガン見されるという訳です。
この検査、すぐにおしっこが出れば早期に解放されますが、選手はレース前の待機時間にトイレに行っているので、緊張もあっておしっこが出ない人もいる訳です。
そういった場合は、検査員から貰える水分を補給(ポカリやミネラルウォーターを貰える)しつつ、時間がかかりそうなら着替えも許されます。
その際、着替えを取りに控え室に行く…などの移動がある場合、もちろん検査員がピッタリとマークして不正ができないように監視しますよ。
開催中に謎のスーツ男に付きまとわれる選手を見るのは、とても異様な光景でした(笑)。
ちなみに、検車場ではない棟に連行されるのは「検査用のトイレ」が必要だからです。
他の選手やスタッフが使用するトイレで検査を行うのは色々と問題がありますから、少し離れた専用のトイレを用意する、という訳です。
そして、検査員の前で放尿するという辱めを受けた選手が解放され「ドーピング検査受けたんだよ」と周囲の選手に愚痴る、という流れがお約束って訳ですね。
この検査行程については公表されているので、我々も知識としては知っていたのですが…。
実際に検査を受けた選手の口から迫真の検査内容を聞くと「うわぁ、結構キツイなぁ…」と思ってしまいますよね。
この検査内容は、女子選手であっても同様です。
当然すぎますが、女子選手の検査は女性検査員が立ち会う事になっています。
今開催は、検査員として派遣された方々が男性ばかりだったので、ガールズのレースでの検査は行われませんでした。
ちなみに女子選手の場合も、服を捲り上げてお股からおしっこが出ているのを目視確認されるそうですから大変です。
ほんと、プライバシーもクソもないですよね。
「ドーピング検査結果はもちろん、検査を実施したなら誰にいつ行ったのか情報を開示しろ」という意見を、お客様はもちろん選手コラム等でもよく見かけます。
実際、それができればやましい事は一切なくなりますし、疑われる選手も減り、クリーンな話です。
ぼくもそう思っていた時期があったのですが…。
この検査内容を考えると、ちょっと恥ずかしいと思う人もいるのではないでしょうか?
まあ、男子は別にええやろ…と思っちゃいますが、それをやると女子選手も平等に公表する必要が出てきますもんね。
うちの業界の“隠蔽体質”と呼ばれがちな部分は、こういうプライバシーの部分が大きい訳です。
せっかく検査を行っているのにもったいない話ですが、我々選手はプライバシーを守ってもらっている立場ですから…。
なんだか、もどかしい話題ですね。
さて、この開催では、検査対象となるレースは準決勝レースのみでした。
11レース制FIIだったので、チャレンジの3、4レース、A級の9、10、11レースが対象です。
その中で、1、2着の選手からランダムで選定され、先述した検査を受けます。
しかし、どのレースとは言いませんが、何故か1着でも2着でもない選手が連行されたレースがあったんですよ。
恐らくですが、どこかしらでドーピング疑惑や噂が挙がった選手をピックアップして、狙い撃ちで検査しているんだと思います。
競輪選手間では、これを「決め打ち」と言っています。
この、噂レベルの疑惑の部分をどうやって選手会やJKAが認知しているんだ?という部分は、競輪選手にとって永遠の謎です。
競輪選手の噂なので信憑性はゼロに等しいですが、競輪選手内にスパイ(そういう噂を収集して報告する役割の者)がいる説や、シンプルに支部や役員に「アイツ多分やってますよ!」と直接チクっている選手がいて、バカ正直に報告が上がる説など、様々な憶測が飛び交っています(笑)。
ちなみに、ぼくも準決勝レースを走ったのですが、決め打ち検査には選ばれませんでした。
正直、昨年夏に肩の脱臼骨折という大怪我をして、自分でも驚くくらい早期復帰、そこから成績が右肩上がりですから…。
一瞬、「まさか、ぼくのために来たのか!?」などと自惚れましたが、現実はそう甘くないようです。
というか、もしドーピングして88点しか取れなかったら、ぼく、泣いちゃうかもしれません(笑)。
こうやってドーピング検査を(傍からではありますが)観測すると、違反物質に日頃から気を遣っている方のぼくでも、やはり気が引き締まります。
過去記事でも書きましたが、ドーピング違反のほとんどを占めるのが「うっかりドーピング」。
筋肉を増強させるぞ!と意気込まなくても、特段強い訳ではない市販薬や漢方薬などに入っている物質でも、検査に引っかかる可能性が十分ありえるのです。
めっちゃ私事ですが、こんな時に限ってレース前に風邪を引いておりまして、処方薬を飲んだりしていたんですよね。
ぼくは、市販薬はアンチドーピング協会発行の使用可能薬リストから選択し、かつ処方の際もわざわざスポーツファーマシストの薬剤師さんの元で処方してもらうなど、かなり気を遣っているんです。
それでも何となく「もし検査に当たって、なにかの間違いで違反物質が出たらどうしよう」といらん怖さを感じるものなんです(笑)。
これは、スポーツ選手になった者にしかわからん恐怖感ですよ(笑)。
ちょっと話がそれましたが、後日、検査対象選手には結果報告が送られ、万が一違反物質が検出された選手がいれば、本部に呼び出しを喰らい事情聴取、斡旋保留が行われる、という流れです。
同じ開催だと「誰が検査を受けた」という話はどうしても分かってしまうので、もし後日あっせんが止まる選手がいれば「あの人違反物質出たんだ…」となってしまうのは仕方ないですよね。
今回の検査は、誰も引っかからないことを信じています。
まあ、心の声を漏らすと「S級戦でやれよ…」という話ではあるのですが、FIIでも検査に当たる可能性がある!という事実は、本当に気が引き締まる思いでした。
今後も、これまでに増して違反物質には気を遣っていこうと思います。
では、また次回!
1995年3月30日生まれ。滋賀県出身。 日本競輪選手会 奈良支部所属107期の競輪選手。現在はA級2班。同期には新山響平、山岸佳太、簗田一輝など。 ……以上はすべて仮初めの姿であり、本業は某アイドルのプロデューサーであるともっぱらの噂。 ドール、カメラ、声優など、さまざまな「沼」に足を踏み入れている。