剣の丘より愛をこめ
色々書き散らしながらも久しぶりにまともに書き上げることができたので、そろりとUP。
キャスニキが弓さんといちゃいちゃしながら、槍手に入れてヒャッハーしてるだけの話です。
fate知識の浅いニワカが捏造の重ねがけでお送りしていますので、どうかもろもろご容赦ください(汗々…)
成分(成分?)としてはキャス弓と槍弓を含みます。
しかし3Pとか複数Pとか主食かってくらい大好物なんですが、
それを同一人物(?)でできるとはなんておいしい…!
しかし書くのはとても難しい…!(無念)
支部の女神さまたちの作品を漁り崇める毎日です…ありがたや…。
- 6,198
- 5,993
- 92,914
「あー、槍ほしー………」
カルデアの中庭に創成した自前の神殿内。
緑と清水とそよ風に満ちた、遠き故郷をほうふつとさせる自然のなかで。
ぼそり、とまったく清々しくないぼやきをこぼしたオレに、すぐ隣でまたか、とため息をつく気配がした。
「またか、とはなんだコラ。好き放題好きな武器を四次元的ポケットから出せるお前と違ってこっちは切実なんだよチクショー」
「ポケット言うな。というか、武器ならきちんと強力なものを持っているだろう。キャスターとしての」
「キャスターとしてのじゃなくて、ランサーとしての武器が欲しいんだよ!いやわかってるよ、そりゃ今のオレはキャスターですけど!?んなこと関係ねぇんだっつの!」
いや関係はあるだろう。と、たぶん突っ込みたかったのであろう相手が、頬の内側をキュッと噛んで耐えるのを見て、はぁぁと後頭部を乱暴に掻く。
ふだん皮肉に赤を着せたような男が、こんな時だけ要らぬ気遣いを見せないでほしい。
いや、そのくらいこちらの鬱屈がひどく見えているのだろうか。それはそれで、また情けない話だが。
「………その、君の槍に対する執着は今に始まったことではないが。今日は一段と煮詰まっているみたいだな」
「アーソウデスネー。そりゃ最近カルデアも段々と大所帯になってだな。槍のオレやバーサーカーのオレや若いオレが次々と現れてだな。それに加え叔父貴や師匠まで………なぁおいエミヤさんよ、こんだけケルトの脳筋が集結したら何が起きると思う。なぁ何が起きると思う?」
「ちょ、キャスター近い」
「二人でいるときはキャスターって呼ぶなつってるだろ。で?」
「う。………そ、それは、ええと……いや、私の口からは………」
「いいんだよそう気を遣うな、わかってるよなお前いつも近くで聞いて、いや聞かされてるもんな。……そーだよめっちゃ野次られるんだよ!やれ槍持ってねぇほうのオレとか年食った方のオレとか!果ては『なんだセタンタその格好は。イジメか?』『いやいやきっと罰ゲームでしょうはっはっは!』とか!うるせーわオレだって好きでこんな陰気くさいインドアクラスで喚び出されたわけじゃねーわ!なのにあいつらときたらいちいちいちいちそのネタで絡んできやがって……!」
「お、落ち着けキャス……クー!その発言はいろいろな方面から反感を買うぞ!(主にメディアとか)。し、しかしだな。君の同胞たちのあれは親愛の挨拶のようなもので……けして悪気があるわけでは……」
「はっ、どうだかねぇ。悪気はなくとも軽く見られてんのは間違いねぇだろうさ」
愛しい者になんと言葉を選んで慰められようと、溜まりに溜まった不平不満は簡単にはなくならない。
仮にも導く者ドルイドとしてあるまじきやさぐれモードだったが、それでも背後からつたわってくる必死そうな気配に、ふ、と寄りっぱなしだった眉間がゆるむ。
まま、ごろんと相手側に向き直れば、予想通りそこにあったのは、困ったような途方にくれたような稚い顔。オフのくつろぎタイムということで、すっかりおりている前髪が、いっそう見目の若さを助長させる。
あぁ別にこんな顔させたいわけじゃないのにな。というか二千ウン歳も年上のくせして、ひがんでスネて何も非のない恋人にご機嫌とってもらうとか、なにやってんだかと冷静に思う。思うことは思う。
けど、オレのこの年甲斐もない、焦りにも似たモヤモヤは、決してお前と無関係というわけでもないわけで、
「成程、だいぶ根が深いのだな。………。………そんなに欲しいのか、槍」
「欲しいなーめっちゃ欲しいなー。……そりゃあよ、キャスターの利点ってのも確かにある。それは理解してる。だが知ってのとおりオレは―――オレだ」
「………あぁ」
「単騎駆けできねぇのはつまんねぇし、後衛に徹するのも性にあわねぇ。燃やすより穿つ方がよっぽど滾るし、じかに止めを刺しにいけねぇのも苛々する。―――それに何より、」
お前と並び立って戦えないのが 一番もどかしい
「……………クー」
「まぁ要するにオレは、オレが一番己に相応しいと思う姿でいてぇワケだ。………お前が最初に惚れてくれた、槍持つ戦士の姿でな」
「!?な、ん……っ///」
「おー、いい反応。あ、もちろん茶化してもからかってもないぜ。これは、紛うことなきオレの本心だ」
ぺろ、と見せ付けるように舌をなめずって、心からの想いをぶつけてやれば、一瞬ポカンと呆けた童顔が、直後ぼふっと発火したように真っ赤に染まる。
あーやべ。自分で仕掛けといてなんだが可愛いな。つか、もうけして短くもねぇ付き合いだってのに、ちょっとマジ顔で口説き文句を乗せるだけで未だこのうろたえっぷり。そんな凛々しい外見してるくせ、いつまでも経っても消えない新妻感がもうホント堪らない。襲いたい。襲っていいかな。いや殴られるか。
そもそも今日は、常日頃レイシフトにおさんどんに戦闘員にオカン役にと忙しく働きまわってる恋人を、少し休息させるという名目で誘ったのだ。間違っても別の運動でいっそうの疲労に追いやるためではない。
おだやかな木漏れ日のなか、簡易にあつらえた白亜の寝所で、うとうとと無防備にまどろむ姿はたいそう愛らしく、気に入ってもいる。ここで欲望のまま約束を反故にして、この特権を失うのは惜しかった。
「とはいえ、スマン。益体もない愚痴こぼしてる自覚はある。……他じゃ一応折り合いはつけてるつもりなんだが、お前の前だとついつい甘えが出ちまうな」
「………そんな……むしろ、君にそうしてもらえるほうが、私は………」
「ん?」
「な、なんでもない。………でも、そうか、そこまで……。………。………クー、よければすこし手を」
「へ?おぉ、どしたエミヤ、珍しいな……」
広めに作ったベッドに寝そべって、互いにのんびりくつろぐ体勢をとっていたのだが。ふいに傍らの影がもそと動いて、オレの手をそっと握ってくる。
その仕草に、別に性的な匂いは一切なかった。んだが、生憎相手ほど初心にも慎ましやかにもできてないため、滅多にない恋人からの自発的接触というだけで、さっきの自戒なぞあっさり自壊しそうになる。
なんだなんだどうした。と、顔だけは平静を取り繕うオレの健気な男心を知る由もなく、エミヤはしどけなく寝転んだまま、つかんだ手を、手首を、それに続く腕をじっと見つめる。
―――かつてのオレが、きっと最初に惚れ込んだ、月光を弾くような白刃の眼で。
「………エミ、ヤ」
「もし、」
「ん?」
「もし今の君が、ほんとうに槍を使うとしたら……やはり、身体はルーン魔術で強化を?」
「……?……あー、まぁ、そうだな。別にキャスターだからってんじゃなく、ルーンでの身体強化はオレの基本戦法だ。今は肉体値が低い分、より底上げが必要だが……その上げ幅は反比例であがった魔力で十分補えるしな」
と、口にしてみてなんだが、身体能力なぞ得意のルーン操作でどうとでもなるだけに、余計相棒たる武器がない身の上が悔やまれる。
そりゃ状況に応じて同じく強化した杖で殴ったり叩いたりと、わりとアクティブな魔術師やってる自覚はあるが、それは求めている戦闘とは違う。決定的なまでに違う。
槍のオレがよく訓練と称してコイツを引っ張り出し、嬉々として矛を交えてる様子なんかを見ると、特に。
「………ふむ。では参考までに、どの程度か“示して”みてくれないか?」
「んぁ?」
「系統は違えど、強化魔術は私にとっても原点だ。……先達たる君の妙技を体感してみたい」
ダメだろうか、といつになく殊勝にねだられて、軽く目を見張ったものの。すぐに口元を緩ませ「いいぜ」と応諾する。なにしろコイツからのおねだりなど―――いかに内容が色気のないものであったとしても―――ほんとうに、ほんとうに、滅多にない椿事であったから。
お手軽に浮き立つ心を抑えつつも、特に気負うこともなく。瞬きや呼吸に似た自然さで、彼が触れる腕をはじめ、全身の回路へ強化の息吹を送り込んでいった。
あえて一切の殺気や闘気を消してなお、周囲の空気がぴりと張り詰め、皮一枚隔てた躯体がビキ、ビキリ、と力をはらみ漲っていく。それにつられてか、エミヤも少々の緊張を湛えながら、片時も目をそらさずオレの霊基の変遷を見守っていた。
素の肉体値と、魔力量。強化に防御に攻撃力。もし今の己が槍持ちて強敵と肉薄するならば、手持ちの総合力をどう割り振るか。頭の中でできるだけ鮮明にイメージしながら、理想に近い配分を模索し、その通りに練り上げていく。
ランサークラスとはだいぶ勝手が違うため、最初は少々戸惑ったものの、コツさえつかめばあとは早かった。敵を翻弄する速力、一点の隙を狙い穿つ爆進力、激突に耐えうる筋力、実際の戦闘に立てば都度こまかな補正は必要だろうが、まぁ、おそらくはこんなもの。
「………あぁ。すごいな、やはり……私など及びもつかぬ、神代の技だ……」
しだいに落ち着いていく霊基から、オレの中でもろもろの擦り合わせが完了したことを感じ取ったのだろう。終始一貫、こちらの魔力の組成をつぶさに“観察”していたエミヤが、思わずとといった調子で感嘆をもらすのに、少し笑ってその髪をくしゃりと撫でる。
甘んじてそれを受け、オレの掌に頬を寄せて目を閉じる姿は、いつもながら気位の高い猫のようだ。ただ、うっとりと安らいで見えるその瞼の奥では、今、物凄い勢いでオレから得た情報を解析しているのだろう。
コイツは常に学ぶことを、吸収することを、自らを一歩先へ進めるための努力を怠らない。
良くも悪くも完結した英霊の群像の只中にあって、唯一、この瞬間も進歩し続ける異質な存在。
―――錬鉄の英雄、とはよくぞ言ったものだ。
神の子でもない。怪物でもない。その血に神性はなくその身に信仰はなく、英霊たるものの不可欠の要素とさえ言える、“力ある”背景をひとつも持たない。そんな、本当に、ただの人間であった筈の子が。
どのような道を辿れば、いかなる果てに行き着けば、まがりなりにも神代の伝承の化身たるクー・フーリンと、向こうを張って鎬を削る、そんな類稀な戦士と相成れるのか。
何度考えても、考えても、―――考えるほど、その有り得なさに身震いがして。あれから幾度の邂逅を経ようとも、コイツはオレの中でいっとう“すさまじきもの”だった。
「なにをぬかす。そう謙遜すんなやエミヤ。強化と投影を極めに極めて、英霊にまで昇り詰めた男がよ」
「!い、いや……そうでなくて。君の強化術はなんというか……悠然たる大河のようで、私のとは全然アプローチが違って……改めて、恐れ入った。神性に満ちた最上質の魔力を、このような手法で紡ぎ上げると、ここまでステータスが跳ね上がるのか……そう考えると、君にとっては事実、クラス補正などあってないようなものなのだな」
「まぁなぁ。キャスターとしては明らかに過分だろうが、少なくともこんくらいには底上げしとかねぇと、槍の反動でズッタズタになっちまうからな。オルタのアイツがいい例だろ」
ちっとでも投擲と防御に割く力配分を間違うとああなる。と、付け加えてやれば、エミヤは神妙な顔つきでこくりと頷く。その顔色が若干ならず冴えないのは、往時の“アレ”を思い起こしているからだろう。
かの地で狂王と呼ばれたオレの成れの果ての戦い方ときたら、そりゃもうここに来た当初は無茶苦茶で、毎回対軍宝具をアホみたいな火力でブッ放しては反動で半身をスプラッタにしていた。いくら潰れていくそばから復元できるとはいえ、あのグロ光景はマスターにも盾の嬢ちゃんにも、そして弓兵の心臓にもよくなかったことだろう。
成れの果てとはいえオレは確かにオレで、そしてこいつは一度懐に入れた者に対しては、際限なく甘くなる奴だから。
「んで。ケルトのドルイド(仮)のしがない術技はお眼鏡に叶ったかね、錬鉄殿」
「だからカッコカリとかそういう言い方はよせと……いや、うん、とても満たされた。こんな無理な頼みをきいてくれて感謝する、クー」
さらさらの白い髪から、名残惜しくて手が離せぬオレに、面映そうにしながらも。エミヤは新たな“知識”を得れたことがよほど嬉しかったのか、ふわりと笑って満悦そうに眼を閉じる。
さっきのおねだりといい、そのあまりにやわらかな微笑みといい、なんだなんだマジでどうした今日は可愛いエミヤの大盤振る舞いですかありがとう!でも手ぇ出せないんだからそれ以上はヤメテくんないかな!と、いろいろ感極まるのに忙しかったオレは、それが故に持つべき疑問を持てなかった。
そんならしくもない大盤振る舞いをがんばってまで、彼が本来無用の長物ともいうべき“キャスターのオレの強化術”を観たがった、その真意というものに。