資格取らせても若手は次々転職…「これでは運転士養成機関だ」 人員不足で運休続く肥薩おれんじ鉄道 利用者離れ拍車を懸念
鹿児島県薩摩川内市と熊本県八代市を結ぶ第三セクターの肥薩おれんじ鉄道が持続可能な運行へ正念場を迎えている。2004年の九州新幹線一部開業に合わせ、JRから経営分離された並行在来線を担ってきた。発足当初からの赤字経営脱却が求められる中、近年は運転士不足が顕在化。沿線の人口減や鉄道施設の老朽化に歯止めがかからず厳しい状況が続く。住民の移動と街のにぎわいを支える地域鉄道の役割を考える。(連載「正念場のおれ鉄 かごしま地域交通①」より) 【写真】〈肥薩おれんじ鉄道の車体は白基調のシンプルなデザイン〉「助っ人運転士」として活躍するくま川鉄道の永村大飛さん=16日、出水市
2月16日、出水駅に入ってきた肥薩おれんじ鉄道の列車を運転するのは永村大飛さん(31)。熊本県の第三セクター・くま川鉄道(人吉温泉-湯前、24キロ)からの「助っ人運転士」だ。 くま川鉄道は2020年7月の熊本豪雨で被災し一部区間が運休中だ。運転士不足のため減便に入ったおれんじ鉄道の打診を受け、昨年4月、運転士2人を出向させた。 永村さんは24年12月に免許を取得した。「くま川に比べ運行速度が速く、カーブも多い。運転の難易度が上がる分、ブレーキの感覚を身に付けるいい経験になっている」とこの10カ月を振り返る。 「同じ三セクとして助け合いの思いで協力している」とくま川鉄道の担当者。ただ、運休区間は26年9月までに復旧する見込みで、「全線再開となれば、うちも運転士が不足する状況」という。出向は3月末で終了となる。 □■□ 「これでは養成機関と変わらない」。おれんじ鉄道の中村誠希社長(61)は、運転士不足の現状をこう表現する。
おれんじ鉄道によると、23、24年の2年間で20、30代の若手運転士を中心に18人が退職した。25年4月時点の在籍者は27人と必要定員(37人)に10人届かない。26年3月末までにさらに4人が職場を後にする予定だ。 運転士養成には研修や資格取得で1年ほどかかる。JR九州からの人員支援で複数出向中の運転士は中高年が多い。おれんじ鉄道は定年や体調不振による年3、4人の退職に備え新型コロナウイルス下も計画的に採用を進めてきたはずだった。 退職者急増の背景には、コロナ禍が落ち着き、鉄道各社がそれまで控えていた採用を再開したことがある。おれんじ鉄道の運転士は全国から集まっており、地元出身が少ない。待遇面で優位な大手鉄道への流出や地方鉄道へのUターン転職を促しやすい環境だったといえる。 昨年2月からは運転士不足により一部列車の運休を開始。8月には上下51本のうち3割超に当たる18本に拡大した。観光列車「おれんじ食堂」も運休中だ。中村社長は「利用者の利便性が損なわれただけでなく、経営的にも大打撃」と残念がる。