Vol.565「偽善がダメで、理想が語れない社会」
(2026.2.10)
【今週のお知らせ】
※「ゴーマニズム宣言」…とうとう、美辞麗句が一切合切通用しない世の中になってしまった。むしろ露悪趣味の方が勝つぐらいのご時世になってしまった。これは重大問題である。美辞麗句が通用しないということは、理想が語れないということだからである。理想を語ったら、「偽善」と思われてしまうのである。それは中道の負けっぷりにも如実に表れている。中道の候補者が言うことは、全部偽善だと思われるという状態になってしまったのだ。もはや「男女平等」と言ったら、偽善の最たるものにしか思われず、むしろ「男が一番」と言った方がウケるくらいになっている。なぜ日本はこんなにもバランスが取れない国になってしまったのか?
※泉美木蘭の「トンデモ見聞録」…高市早苗は、これまで不用意な発言を繰り返し、火種をばらまいてきた。選挙では、減税ポピュリズムを安易に煽って、長期国債の価格が下落。街頭演説では、円安で輸出企業や外為(米国債)は「ホクホク」だと強調したために円売りが起きた。対中外交を不必要に緊張させた、軽率な「台湾有事」発言と同じパターンである。首相の言葉選びは、外交そのものでもあるはずだ。しかも、今の日本は「戦争が始まらない保証のない世界」に立たされている。その現状を整理しておこう。
※よしりんが読者からの質問に直接回答「Q&Aコーナー」…埼玉のクルド人排除騒動のように、日本のルールを守らない外国人もいる事によって住民の不安がある事をどう考える?安倍元総理を暗殺した山上被告の無期懲役の判決は妥当?先生がリアルタイムで肌身で感じた「バブル時代」はどんな感じだった?何故ゴシップ週刊誌は、根も葉もない皇室のスキャンダルを記事にし続けるの?今期のドラマでは何を見ている?飲食店で見かける給仕ロボットをどう思う?人手不足の代替案として、年々増え続けている引きこもり・ニートを社会に引きずり出す、ということを言う政治家がいるけど、この案は現実的?今の日本は低賃金などで移民先に選ばれない国になっているから、移民受け入れは人口減少対策としては焼け石に水では?高市に勝てそうなキャラした女性政治家っている?…等々、よしりんの回答や如何に!?
1. ゴーマニズム宣言・第594回「偽善がダメで、理想が語れない社会」
事前の選挙結果予測が出た時点である程度は覚悟していたとはいえ、ここまで高市ボロ勝ち、中道大惨敗という結果になるとまでは思わなかった。
そもそも、高市早苗が男尊女卑の女だということを誰も理解していない。それどころか、世の中に「男尊女卑の女」というものが存在しているという認識すらない。高市本人ですら、自分が「男尊女卑」であるということを自覚もしておらず、自分の感覚が普通だと思っているのだから、手のつけようがない。
選挙期間中、沖縄の自民党の演説会で応援の県議が「男女平等って皆さん言いますけれどもね、結局、男が一番だって皆さん思ってますよね、男性陣の皆さん。私もその一人ですよ」と発言したという出来事があったが、こんなことを平然と口に出すような奴に、男尊女卑だと批判したところで、絶対に理解できないだろう。その頭の悪さには、もう途方にくれてしまう。
そんな調子だから、高市早苗本人も全然自分が男尊女卑だとは思っていない。女性である自分が今、リーダーになってるじゃないかと思っているだけだ。
大相撲の「女人禁制」について「大切に守られてきた日本の伝統だ」「これからも私は相撲の土俵には上がらない」と発言したのには、高市の「男尊女卑」が実に明確に表れていた。
そこで「小林よしのり漫画ブック」で「高市早苗は伝統を知らない~女人禁制は伝統ではない~」と題して、過去に描いたゴーマニズム宣言を配信したが、それを読む人もまだ限られている。
一般に「伝統」といわれているものが、実は明治に捏造されたものが数多いということも、いくら詳しく描いて出しても、全然広まっていない。誰も問題意識を持たず、何も見てないし、気にもしてないし、関心もないという状態だ。
ただ女が首相になったというだけで、山尾志桜里までが諸手を上げて大絶賛してしまったのを見ても明らかなように、「フェミニズム」についても、根本的なところを誰も全然わかっていない。
ボーボワールが「第二の性」で喝破したが、男と女では、女の方が完全にハンディを負っている。例えば、生理というものは、圧倒的なハンディなのだ。
女性は生理が始まった途端に、調子がガタガタに崩れてしまう。もう体が言うこと聞かない。毎月一回、お腹が痛いわ、頭が痛いわとなって、どうしても男と同等には働けない。それが更年期障害になって、生理が止まるくらいになると、もっと体調が乱れてしまう。
それで子供ができたら、またハンディができる。妊娠・出産の間は十分に働けないし、子供が生まれたら育児に時間を取られてさらにハンディになる。
その上、自分の親と夫の親の両方の介護をしなければならないとなったら、もうハンディが多すぎである。男はそれを何もやらなくていいのだから、男と女ではそもそもスタートラインの位置が全く違うわけである。
わしは31年前の『差別論スペシャル』で、「結果平等」の社会は人間を腐れさせると描いた。
人間社会には競争があり、トップが出ればビリが出るものだ。ただしそれは「機会平等」、すなわち同じスタートラインに立ち、「よーいどん!」で走り出した結果でなければならない。
ところが被差別部落や朝鮮系の人は、その「機会」が均等に与えられていない場合がある。スタートラインが初めから後ろにあるようなものなのだ。
女性もこれと同じで、男に比べて人生の中で何度も何度もスタートラインを後ろに下げられてしまっている。だからこそ、結果平等を目指す「男女平等」ではなく、機会を公平にする「男女公平」でなければならないとわしは言っているのだ。
スタートラインを後ろに引き下げられている女性が、男に勝とう、あるいは同等に働こうとしたら、男よりもずっと力を発揮しなければいけない。女はその理不尽さを常に感じながら生きていかなければならないのに、男の方はそんなことには気づいてもいない。それでルサンチマンを抱え込んでしまう女もいれば、キャリアを諦めて家庭に入った方がいいという女も出てくるわけである。
今でこそこう言ってるわしだって、昔はそんなことなど全然意識してないバカチンだった。
男尊女卑の九州の風土の中で育てられてしまったから、子供の時から男は掃除なんかしなくていい、ご飯も作ってよそってくれる、他人の女でもお酌してくれる、何でも全部女がやってくれて、男は王様みたいな状態で、それが当たり前になってしまっていたから、女性にどれだけハンディがあるかというのが見えなくなっていたのだ。
それがようやく今頃になって見えてきたのは、脳溢血をやってしまって左手と左顔面がずっと痺れているからだ。
朝起きるたびに、すぐ体の痺れを意識しなければならない。これさえなければわしはめちゃくちゃ強いぞと思うのだけれど、常に不快だし、もどかしい。若い時にこんなハンディを抱えていたら、わしは成功していなかっただろう。
だから身障者の人は本当にすごいなと思う。もう日常がもどかしくてたまらないんじゃないかと思う。
女性は男に比べれば、骨格まで全部が弱くできているのだから、そのままで男女平等ということはありえない。完全に男が上になって、そのまま日々を送るということになってしまうのだ。
でも、本当は「男女公平」でなければいけない。それは男の方が、最初から女には圧倒的にハンディがあるということを認めて、それを労わるところからスタートするしかないのだ。
それは高市早苗に対しても同じで、女だからずっと乗り越えてきたものがあったのだろう、大変だったねと、思ってやる気持ちは必要だろう。
だが高市早苗の場合は、男尊女卑社会に迎合して生きてきて、男尊女卑社会だからこそ勝ってきた人間だ。男尊女卑社会の方が自分には有利だから、これを改善しようなんてことは全く考えない。他の女性のことなんか一切気にもしていない。自分のことしか考えていないのだ。
女性にもいろいろいて、ものすごく生理が軽い人もいれば、めちゃくちゃ重い人もいる。生理の前ぐらいになると、すごく体調がおかしくなって、気分が安定せず、不機嫌になる人もいる。全く人によるものだ。
さらには、歳をとって生理が終わってしまったら、逆に楽になってものすごく元気になる女もいる。高市早苗もそのタイプなのか、とにかく元気だが、元気なバカほど手に負えないものはない。もう少し頭がいいかと思っていたが、あそこまで完全にバカだとは予想外だった。
ここから先は

小林よしのりライジング
『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』の漫画家・小林よしのりが、Webマガジンを通して新たな表現に挑戦します。 毎週、気に…


Q&Aで質問された 円盤が来ない さんへの返信です。 俺が知っている範囲での話ですが、地域若者サポートステーション事業全般やB型作業所など、引きこもり・ニートの方を社会復帰させるための民間事業はあるにはあります。 B型作業所についてですが、本来は一般就労が難しい障害者のための職業訓練の…
選挙の投票で、気になった事があったので書いておきますね。 自分は去年、介護施設で少しだけ働いていました。 ある日、廊下の奥がカーテンで仕切られて、利用者は立ち入り禁止にされました。 自分は、汚物の掃除のために、カーテンの奥に入ったのですが、そこでは利用者の期日前投票が行われてい…
ゴーマニズム宣言・第594回「偽善がダメで、理想が語れない社会」拝読しました。 「正義は勝つ!」こそ美辞麗句だと思うのですが、自称保守は「アメリカの正義」というだけでそれを正当化。 実に単純で泣けてきます。
木蘭さんのトンデモ見聞録・第389回「世界が軋む時代と首相の仕事」拝読しました。 高市氏が中国相手に勇ましく振る舞えば振る舞うほど、米国相手に媚びれば媚びるほど、日本の立場は悪くなっていく一方。 円安も物価高も止まらない。 それに気づこうともしない高市支持者。 信じるものを間違…