アーチャーラブレター便
せっせとアーチャーがランサーにラブレターを運ぶ話です。
現パロ、学生、槍弓です。
字書きさんでは無いので(絵描きさんでも無いですが)下手ですみません。
槍弓可愛いです。
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アーチャーラブレター便
この学校にはアーチャーラブレター便、というものが存在している。
アーチャー、というのは1年2組 エミヤ・A・シロウを指す。
彼のミドルネームがアーチャーであり、かつ弓道の特待生でもある彼は校内の有名人の一人だ。
アーチャーラブレター便と聞くと、アーチャー宛のラブレターのように聞こえるがそうではない。
「エミヤ君!良かった!これ、お願いします!」
今回は茶髪のふんわりした印象の小柄な女生徒だ。
「分かった。必ず渡しておく」
ラブレターはアーチャー経由、クーフーリン宛である。
クーフーリンとは、アーチャーのクラスメイトである陸上の槍投げ特待の生徒だ。
アーチャーと並べて、皆「ランサー」と呼ぶ。
成績はそこそこ。理数は抜群によく、英語もネイティブに近い。
運動神経は抜群。はっきり言って、どんな陸上競技でも彼はトップクラスだ。
家柄も良いようで、とある商社の御曹司とも聞く。ついこの春海外から移住してきたそうだ。
ルックスは、、、
「んだよ、また貰ってんのか」
さらさらと流れる蒼い髪。透き通るような白い肌。
どのような血が交じり合えばその色になるのか、深紅の虹彩。
鍛えられた身体にはしなやかな筋肉が付き、贅肉など一切ない。
そう、ルックスは極上。
「本命以外意味ねえから、捨てても気にしねえよ?」
性格は少々他人に厳しい。
しかし身内に対しては兄貴肌で、特に後輩からの信頼が厚い。
「そういう訳にはいかないし、捨てるとしても君が捨てたまえ」
「まあ、また金曜に貰うから暫く預かっといてくれ」
そう。アーチャーラブレター便の回収は金曜。
このご時勢に何故ラブレター、となるがそれはランサーの趣味らしい。
曰く、メールより電話、電話より手紙、手紙より直接。
アーチャーラブレター便の仕組みは、月~木にアーチャーにラブレターを渡し、
金曜にランサーが回収し、ランサーの気になる子がいれば土曜に約束を取り付け、
日曜にデートもどき。である。
デートもどき、というのはランサーには本命がいるからである。
彼女たちはそれを分かっていてこのシステムを続ける。
ランサーは本命のための練習に、彼女たちの”理想のデート”を遂行する。
よってラブレターにはいくつか制約がある。
・一度デートして貰ったらラブレターは出さない
・理想のデートコースなどを明記
・氏名や連絡先をきっちり書く
・日曜の予定を空けておく
・1枚の手紙にまとめる
ここまでしてデートしたいか?と思わなくも無いが、はっきり言ってアーチャーには、
積極的な彼女達がうらやましい。
出会ってまだ1月程度だが、彼の魅力は十分同性にも伝わり。
デートに行けた幸運な彼女達の話はどれも輝いていて。
「モテる男は苦労する」
少々苦い気持ちを抑えつつ、そんなありふれた台詞を言うのが精一杯である。
☆☆☆
アーチャーが俺にラブレターをくれる。毎週くれる。金曜日にくれる。
字面は凄くいい。問題がひとつある。
アーチャーの書いたラブレターではない。
そう、俺の本命はアーチャーなのだ。
褐色の肌はチョコレートのように見えるし、鋼色の瞳はたまに飴玉に見える。
白髪に近い銀髪も触れるとやわらかく、どこもかしこも美味しくみえて仕方ない。
そして弓を射るためにつけられた上半身の筋肉の美しさ、引き締まった腰。
、、と、あまり考えると下半身によろしくない。
入学式当日、時差ボケか遅刻ギリギリになってしまい走っているところに、
並走してきたのがアーチャーだった。俺の脚についてこれる奴はそういない。
寝坊仲間でかつ陸上仲間だと思って、なんとか間に合った入学式後に話しかけると、
遅刻の理由は”道に迷ったご婦人を案内していた””その後子猫が木に、、”
とのことで、しかも特待は特待だが弓道で、陸上は体育以外したことがないとのこと。
じゃあその足の速さはなんだ、とかそんなベタな遅刻理由あるかとか、
とにかく興味が尽きなくて毎日部活が終わった後に一緒に帰るように取り付けた。
アーチャーは押しに弱い。
一緒に帰りながら、
「ハンバーガーでも食ってくか?」
と聞くと
「いや、晩御飯もあるし今日は、、、」
と断ろうとするが。
「そっか、もう少し話してたかったんだが・・」
とか、ちょっとしょんぼりしてみれば
「それならコーヒー1杯分だけ」
と折れてくれる。ちょろいぞアーチャー。
ジャンクばかりでは、と弁当を作ってくれたりもする。しかも滅茶苦茶うまい。
本人は自覚が無いが、実は結構モテるのも厄介だ。さっさと俺のものにしたい。
で、ラブレターの話だ。はっきり言って、ほかの奴からのラブレターに興味は無いし、
ぶっちゃけ定期的にアーチャーと話すためだけの物だ。
(部活の後も一緒だけどな!話す機会は多ければ多いほどいい)
ただ我ながら女々しいとは思うが、毎回
「友人として忠告するが、さっさと本命を公開したまえ」
と”友人”を強調されると苦しい。
こちとら日曜にデートもどきで遊ぶ女子は、できるだけ変な気が起こらないよう
極力アーチャーと共通点の無い子にしているのだ。
つまり料理が下手で、小柄で、がんばらない。そんな感じ。
口へのキスもそれ以上もしない。そんなものがなくても欲しい言葉をあげれば、彼女達は幸せそうだからだ。
それに、キスもそれ以上も本命にとっておくべきだ。お互いに。
さて、次の金曜でアーチャー便も4度目だ。
”友人として”せっせとラブレターを運んでくれるアーチャーには申し訳ないが、
遊園地・水族館・映画となんとなくやり方をつかんだので、もう彼女達は不要だ。
そろそろ本命に集中しなければ、逆に愛想を尽かされてしまう。
よし、次の金曜日の分は受け取らないことにしよう。
☆☆☆
遊園地では観覧車で頬にキスを落としてくれた。
水族館では一番水槽がきれいに見える館内のレストランに席を取ってくれる。
映画ももちろん女子が見たい方を優先して、寝ることもなく一緒に見て、
その後レストランで楽しく感想を言い合える。
荷物はすっと持ってくれて、歩幅も歩調もあわせてくれる。
デート代は全額ランサーが払ってくれる!!
きゃあきゃあ、と話す彼女達はランサーとの低確率のデートチケット(?)に当たった猛者だ。
皆小柄で、可愛らしい。
私は勝手に彼は黒髪ロングの色が白い深窓の令嬢タイプが好きなのかと思っていた。
その上芯が強く、隣に並びたてるような・・・。
無駄に具体的になってしまった。何故だろう。
どちらにしても私とは似ても似つかない。
大きな身体。彼と比較し身長は同じ位だが、筋肉のつき方が違う。
あんなにしなやかで完成された美しい身体を見せられると、自分の身体は嫌に醜く感じる。
彼に頬にキスをされたり、エスコートされたり、映画の感想を言いあったり。
それも素晴らしい。私なら、食事を作ってやりたい。今もしているが、戯れに
「本当に美味いなあ。一生食えたらいいのに」
なんて言われると罪悪感と幸福感で泣きそうになる。
綺麗な君には不釣合いだ。本当にそう思う。
彼はラブレターを捨てても良いと言った。
実際には全て目を通しているのを知っている。ああ見えて義理堅い男なのだ。
ただし”制約外”は別だ。彼はルールに厳しい。無記名は読まずに捨てる。
次の金曜日に渡すためのラブレターのストックを見る。
ざっと20通はある。この中に自分からの物を混ぜてもバレないのではないか?
口調を変えて、筆跡を変えて。
それで、無記名にして”制約外だから”と捨ててもらえばいい。
私の気持ちを捨ててもらえばいい。
それはとても良い考えに思えた。
☆☆☆
そして金曜が来た。部活動後、私たちは正門前で待ち合わせた。
私は自分の書いたラブレターを一番下にした。
あたかもサイズ順に並べました、という風に。
我ながら姑息であるが、彼女達の思いの上に私の思いを乗せるわけにはいかない。
彼女達の手紙は1枚の紙にまとめるという制約と、思いのたけが混じりあって比較的大きな封筒だった。
可愛らしい文字、封筒、きっと便箋も可愛らしいのだろう。
私のは小さく、地味だ。封筒も便箋も家にあったものだ。買うと足が付きそうで怖かった。
すこし緊張したが、あとはうまく演じるだけだ。
封筒が捨てられても”誰かの思いが可哀想だ”という顔に見えるといいと思う。
「今週の分だ。うけとりたまえ」
「あ、わりい今週の分から、受け取れない」
「え・・?」
突然の事態に硬直してしまった。
存外責めるような声になってしまったのかもしれない。彼があわてて言う。
「いや、もうデートもどきは十分だし、これからは本命一筋でいきたいなあと」
「そうか・・・」
私の気持ちは受け取って捨てられるのではなく、受け取らずに捨てられるのか。
自分の思いを自分で捨てることになるとは。
それはこの素敵な友人に恋をした私への罰としてはちょうどいいのかもしれない。
「これは”制約外”だから私が捨てておくが、せめて制約内のものは見てから捨ててあげてくれ」
といって他の20通を手渡す。ランサーが受け取ってカバンに入れる。
「ってお前、中身みたのか?それ」
「え?あ、いやだが封筒に宛先もなければ名前もない。これは・・」
そうか。中の手紙に連絡先が書いてあるパターンもあるのか。失策だった。
手紙と言えば封筒に必ず返送先があるものと認識していた。
「俺が判断したい。なあ、その手紙、くれよ」
中身にも連絡先がないと分かればすぐに捨ててもらえるはずだ。
大丈夫、と自分に言い聞かせ彼に自分の手紙を渡す。
と、何故か彼は手紙の匂いを嗅ぐ。
「なっ!!」
その後中身を見た彼は目を細めてやわらかく笑った。
ななななんだその顔は!!大丈夫だバレてない、バレてないぞ私・・!!平静平静
「こ、香水でもついていたのかね?その手紙に」
「ああ、おう。匂い嗅ぐと大体どんな奴が書いたか分かるんだよ」
「バカな・・・」
「この手紙のやつはなあ、身持ちが固くてとっつきづらくて面倒くさくて・・・」
な、なんだとこの狗!!と思うが平静を保つ。
「料理上手で掃除も洗濯も家事全般が好きな、俺の本命だ」
ーーー、今、彼はなんと言った?
「本命?」
いや、それは盛大な勘違いだ。だってそれは、、、
「そう、大本命。変だな、俺のこと一番知ってるのにラブレターが来るとは思わなかった」
直接が良いって言ったのに。まあ、直接みたいなもんか。
くつくつと笑いながら呟く彼に違和感を覚える。直接みたいなもん?どういうことだ。
振り向いた彼は爆弾を落とした。
「俺の本命はアーチャーだ」
世界が静止した。
彼が私の便箋を私に見せて、言う。
「だから、是非この”理想のデート”をやりたい。日曜まで待てない。OK?」
男臭い笑顔のウィンクをされる。
「ちが、わ、わた、では、、、」
「匂い。筆跡。数あるラブレターの一番下。で、さっさと捨てようとするお前。証拠は十分」
ぐうの音も出ない。というか、状況証拠が悪すぎて物的証拠すら否定できない。この狗。
「なんか失礼なこと考えてねえ?とりあえず俺のマンションに帰ろう!」
爽やかな笑顔の裏に何かが見え隠れするのは気のせいだろうか。
「らん・・!」
「両思いになれてうれしい。なあ、エミヤ。俺のこと、好きって言って?」
「こんな往来で言えるか、たわけ!!」
「じゃあさっさと帰ろうなー」
その土日、ランサーは誰も女の子を誘わず。
アーチャーラブレター便は本命とくっついたと公言するランサーによって廃止となった。
☆☆☆
好きです。
私の理想のデートは、あなたに家でオムライスを作ることです。
良ければ付き合ってください。
☆☆☆
END