放課後デイサービスに入れない――。障害の重い子が排除される矛盾 現場で起きていること #こどもをまもる
「障害が重い子どもに10:2で対応するのはまず無理です。でも、事業所が得られる基本報酬は、子どもの数と日数で決まり、職員の数が増えても変わりません。基準以上の職員配置や、ケアニーズの高さや専門性に応じた加算がついても、増えた分の人件費をカバーできるほどではありません。強いこだわりや行動障害がある子どもを受け入れ、10:5や6といった手厚い配置で支援すると、経営的には苦しくなる構造なのです。結果として、障害が軽い子を対象とする事業所は増える一方で、障害が重い子を受け入れる事業所は増えず、そこに利用ニーズが集中するので空きがないのです」 Hさんは結局、3カ所の放デイを掛け持ちすることにした。 「子どもが行きたくないと言い出すかもしれませんし、放デイ側からいつ追い出されるかもわからない。突然閉鎖されることもあると聞くので、1カ所に頼るのは危険だと思ったんです」
事業所側から突然サービス打ち切りを宣言され
実際、追い出されて放デイ難民となったのが前出の田中さん親子だ。就学時に預けたのは「週5日ぜひ来て」と言ってくれた新規開業の事業所。屋内での活動が中心で、「強度行動障害」の診断を受けている息子に合わないのではと懸念したが、「子どもたちの状況に合わせプログラムは変えていく。外出も増やす予定」という言葉に望みを託した。 異変が起きたのは小3の春休み。それまでも事業所内でのけがは多かったが、その日は高い所から落ちて足を強打し、一番ひどいけがを負った。 「スタッフの目が届いていないのでは?とずっと気になっていましたが、普段の様子は見せてもらえず、体も大きくなっていく中で大丈夫なのかと不安になって、人員体制について具体的に尋ねるメールをしたんです。すると急に、事業所を運営する社会福祉法人の理事から『こんなに動きの多い子は施設に入所させて矯正するしかない。うちで運営してる施設にまず短期で入所してはどうか』と言われ、パニックになりました」 提案された「施設」とは「福祉型障害児入所施設」。虐待を理由に児童相談所の判断で「措置」として入所させるケースが多いと言われる。 「まだ幼いこの子が、なぜ親元から離れて暮らさなきゃならないのか。夫も私もこの子を心から愛して可愛がっている。ただ、家族の生活を成り立たせるために、誰かの手を借りたい。学校や家庭以外の居場所で同じ年頃の子どもたちから刺激を受け、成長してほしい。望んでいるのはただそれだけなのに」 田中さんは、戸惑いつつも「専門家が勧めるのなら」と試験的に短期入所施設に入れることに同意した。ところが、いざ入所すると職員から「息子さんは(家庭生活が難しいという)入所の対象に当てはまらない」と言われ、家に戻された。 「もはや、体のいい『追い出し』じゃないのかと感じ、思い切って区の窓口に相談しました。担当者はトラブルを仲介するため、私から相談があった旨を法人側に伝えたそうです。そしたら、その日のうちに法人の理事長から電話があり、サービスの打ち切りを宣言されました。『役所に余計なことを言ったでしょう。お母さんのわがまま一つひとつに付き合っていられません』と。びっくりして窓口に『私が間違ってるのでしょうか』と尋ねたところ、『間違ってはいません。ただ、事業所にも事情がありますから』と言われ、もう絶望するしかありませんでした」 息子と2人、放課後を自宅で過ごす日々が続いた。興味の範囲が限定される特性があるため試行錯誤する毎日。ヘリコプターの発着を2時間眺めていたこともある。 「家族全員の生活が一変しました。下の娘たちの行事にも参加できなくなり、家族経営の自営業ですが、急に職場から離脱したので、従業員にも迷惑をかけました。一番感じたのは、馴染んでいたはずの世の中から突然拒絶されたような疎外感です。一体この子が何をしたというの?なぜ誰も息子の権利を保障してくれないの?と本当に苦しかった」