カオ転三次 カオス転生の片隅で   作:FakePusai

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ここからは外伝というか、思いついたことを書く感じとなります。
どくいも氏からの投稿も終末後が少ないため、世界の把握がイマイチできていないので矛盾がでたりしたら予告なく直したり消したりするかもしれません。

終末にて東京崩壊後、一ヵ月くらい?


外伝
終末後①(東藤 草史郎)


東藤 草史郎

DD-Year 0年01月XX日

G県 某所

 

 私は娘婿たる六道玲治君と、県内の料亭で向かい合っている。今回供された食事は、昔に比べれば幾分か寂しいものだが、世情を考えれば仕方がないだろう。

 

 あの世界の終わり─ガイア連合が言うところの終末─からおおよそ一月ほど経つ。社会はいまだ混乱しているが、徐々に収まりつつある。ただ収まるというより、どうにもならないところを切り捨てたといった状況だ。日本政府が機能を停止し、県単体で全てに対処せざるをえなくなり、そして全てに手が回っていない。

 

 ガイア連合が言う”結界”を敷いていない地域では死者が相次いでおり、悪魔と言われる存在が人々を脅かしているという。都市の外は敵だらけ、まるで息子が遊んでいたテレビゲームのようだ。

 

 ガイア連合傘下の霊能力者達が悪魔を駆除し、警察・自衛隊による結界地域への住民避難を行っている。これでも外国よりマシというから、世界は地獄なのだろう。

 

 情報が遮断されている為、死傷者の実数も定かではない。電話、テレビ、ラジオ、無線、どれも現状では不安定で、死傷者がでたとしても何処でどの程度出ているのかも不明な状況だ。行政としてもほぼ盲目な状態で右往左往している。表向き平穏だが、実質大災害が起こった後の状態と言ってよい。

 

 そしてそれを回復する手段は、通常の手段では無いとくる。それを提供できる存在が目の前の人、ガイア連合の人間であり、我が娘婿の六道玲治君。

 

 今日は私と妻と母、そして嫁に行った娘も来ているが、食事の後別室に行ってもらっている。これから、目の前の人物にとても……とても気が進まない事を言わなければならないからだ。

 

「玲治君すまないが、県のトップ……有体に言えば王様になって欲しい」

 

 玲治君はとても……とても嫌そうな顔をしている。あえて言うならば、見た目と印象の異なる食べ物を口にしたような、眉間に皺が寄り目が細く、拒絶する気持ちが前面にでている顔だ。

 

「その……お義父さん、いや草史郎さん、それは県の総意なのですか?」

 

「君も分かっているだろう、どう見ても県の現状はガイア連合におんぶにだっこ。これから改善する余地もなさそうだし、県庁も議会も混乱しているよ。正直、オカルト的な世界で一般人がどう振る舞えばいいかさっぱりだ」

 

 玲治君の顔がさらに……さらに渋い顔になる。

 

「そりゃそうかもしれませんが、なんでそこから王とかいう話になるんですか」

 

「身を実に合わせるだけさ。武をもって皆の安全を確保し、飯を食わせる人間をなんと言うやら」

 

「はー……、そういう封建主義的な状態は好きじゃないんですけど……」

 

 まあ、そうだろうな。結局王様になってくれと担ぎ上げられるということだ。だが、その王様の扶持がなければ下々が生きていけないとなると、それ相応の立場になってもらうしかない。

 

「必要があれば、なんちゃらの守でも名乗るといいさ」

 

「そこで東藤家は藤原にでもなるんですか」

 

 土地と民の安全を保障し、立法・行政・司法を行使するなら公家というより大名のほうだろう。私は会ったことがないが、ガイア連合トップがいるという本部へ行くことは、さしずめ参勤交代かな。

 

 しかし藤原ね……天皇が力を失い外戚が力をもった結果が藤原一族だと思うけど、天皇というより大君のような力をもった存在をお飾りにできるなら、我々だけでなんとかしているのだがね。

 

「そこは呂不韋くらいにしといてくれ」

 

「不倫したとして粛清された人を上げるのはどうなんですか、まったく」

 

「はは、政治体制は人々が生きるために必要だからそれが選択される。別に前に進むばかりでもあるまい、いったん下がって体制を立て直すことも必要だろう」

 

「それはまあ、そうですが……」

 

「実際、ガイア連合の力が無ければ生きる事すら難しい状態と聞いている。君個人の資産で人々を生き残らせるなら、それにふさわしい立場も必要だ」

 

 玲治君の眉間にまた皺がよるが、別に拒絶するというわけでも無さそうだ……もう少し押せばいけるかな。

 春華を嫁に出すのは反対した身とはいえ、こうなるとこの縁、離せんな。東京で行方不明な父と息子が帰って来てくれればもう少しマシなのだが……

 特に息子はオカルトの才がある、玲治君のカウンターパートになってくれるのなら跡目を譲って、私は裏方に回ったほうが今後にはいいのだろうが……無いものねだりか。

 

「一部地域以外の田畑も悪魔がでるから耕作不能、結界地域は人の居住が可能だが、インフラの断絶で食料と消費財の供給がほぼガイアグループスに依存している。政府はどうなったか不明、隣県ですらガイア連合経由でなければ連絡不能」

 

 現状を挙げていけばガイア連合に丸抱えの現実がより鮮明になる。今は日本円が使えるが、政府の状態が不明ではいつまで使えるのやら。

 銀行も本店との通信断絶から処理ができなくなっている有様。キャッシュカードの処理はもちろん無理で、通帳対応のようだが、支店では現金をそう多く蓄えている訳でもないようで、今後対応不能になるだろう。

 遠からずGP(ガイアポイント)かガイア連合が発行する新円?が法定通貨となるだろう。

 

 法定通貨と言えば、法もどうなるやら。保証する政府が無くなったのだから有名無実となり、ガイア連合が新しい法でも発布するのかな。

 

「社会体制の刷新は必要でしょうが、王様になる必要あります?」

 

「別に名前はなんだっていいさ、それに……無理ならメシア教がでてくるよ」

 

「あー……それを言われるとね……」

 

 メシア教、ガイア連合からはメシア教穏健派と言われているが、彼らもまた生き残りの為に動いている。県下でも彼らのつくったシェルターがあり、影響力を完全に無視はできない。

 

 正直宗教勢力が力を持つのは日本の風土に合わないんだがね、戦国から江戸時代にかけて力を削がれ、坊主たちは念仏を唱えるだけになったのに、また食い込もうとするのは正直勘弁してほしい。そういうのは外国でやってほしいものだ。聞くところによるとアメリカ大陸にはそういう地域もあると聞くから、全員そちらに行ってほしい。

 

「はあ……、選ばれるのであれば表向きの理由は必要でしょう、選挙でもするんですか?」

 

 うむ、受け入れてくれたか。だが選挙は確かに皆の納得を得るには必要かもしれないが、緊急事態においては役に立たない。なにより選挙を正しく行えるような状況でもない。用紙の印刷、各市町村への配布からして困難だと思われるし、ガイア連合の手を借れば選挙の中立性に疑義が生じる。

 

「議会からの推戴を考えているよ。現状日本政府が亡くなったと仮定し、半独立国として振る舞うしかないさ」

 

「吉里吉里人みたいにですか」

 

 玲治君が呆れたように、過去の迷作小説を引き合いに出す。

 

「なに、日本政府が復活したら私が腹でも切って詫びるさ」

 

 あれも独立は失敗したのだったかな。直接読んだわけではないからオチは知らないのだ。どちらにせよ新しい形に落ち着くまで今を生き延びなければならない。

 

「むしろ日本国政府を名乗る無法者を警戒したほうがいいでしょうね……」

 

「熊沢天皇再びかい?」

 

「ガイア連合内では居ないでしょうが、所謂名家と言われる家なら言いそうな人もいるでしょうね」

 

「政府となるには武が必要だよ、なにをもって担保とするのやら」

 

「まー……勝手にガイア連合の名前を使って、うちに滅ぼされるのがオチじゃないですかね。……それに今上は生きておりますよ」

 

 陛下が生きておられる……?東京は滅んだのでは無かったのか!?

 

「それはどういう……?」

 

 私の疑問の声にこたえるのではなく、板状の機械(タブレット)をこちらに渡してくる。そこに写っていたのは、私の知らないどこか、そして何かを覆う壁。

 まさかこれが東京を覆っているという壁なのか?

 

「東京は今、概念的に隔離されている……というのが、うち(ガイア連合)の見解です。見えている壁を掘っても東京にはたどり着けませんが、行き来する方法は皆無ではありません。ですが、その道は細く険しく、一般人では通ることは難しい」

 

「君でもか?」

 

「私でも少々厳しいかもしれません。それに概念的隔離は時間の断絶も伴っております」

 

「竜宮城に行った浦島太郎になる……ということかな」

 

「ええ、そしてその逆もありえる、ということです」

 

 こちらとあちらで時の流れが異なるから、脱出したとしても年寄りででてくることもあれば、数十年後に若い姿で現れることもあり得るわけか。

 

「その中で草治君は脱出しやすいほうでしょう」*1

 

「ほう……」

 

その情報は不幸中の幸いか?

 

「ですが、皇族といっても所詮一般人。脱出は……」

 

「では我が父も……」

 

「悪魔に殺されていなければ生き残っている可能性はあります。ですが、陛下は霊的加護がある御所ですが、議員は国会議事堂です。あそこにはなにも無い」

 

 父は厳しいか……まったく面倒を押し付けて、自分だけ格好をつけるのだから、息子としてはたまらんよ。

 

「まあ父は置いておいて、仮に今上が生きておられたとしても、地方自治体の長を直接任命する時代でもなし、別に問題ないだろうさ。しかしね、生きておられるなら生き延びた皇太子殿下の立ち位置もまた面倒だね」

 

「生きているのだから法律が生きているとはとらえないんですか」

 

「何、我が国は律令があっても無視された歴史は長いさ」*2

 

「まったく……」

 

 我ら日本人は現実主義者なのだよ。守れない法律が生きることを妨げるのであれば放り出すさ。戦後の動乱期、やくざ者が仕切っていた時代よりガイア連合がいるだけマシだ。

 

「それで……私に与えられる権限は知事並ですか?」

 

「実質無制限だよ」

 

「よく議会が納得しましたね」

 

「確かに無制限はどうかという意見もあった。だがどうやってガイア連合に鈴をつけるのか。何を根拠にガイア連合から物資を引き出すのか……誰も答えられなかったよ」

 

 そう、実態はガイア連合の国に我らが所属するという事。だが、名目上だけは我々がトップを選ぶ、そういう形にしたいだけだ。

 徳という名の実力を失った皇帝から帝位を奪う時、奪い取るのではなく推戴と禅譲という形にするようなものだ。

 

太陽王(ルイ14世)なみには自由に振る舞えるんじゃないかな」

 

「独裁者が額面通り独裁できた試しは、そうは無いじゃないですか。最終的に吊るされたり*3、地下壕で頭を打ちぬく趣味はないですよ*4

 

 独裁者とて、勝手気ままに振る舞えるのは物語の中だけだ。場合よっては独裁者のほうが国民に気を使うことすらある。選挙という信託を受けているから、落選を覚悟すれば割と自由な選挙制とどっちがいいか悩ましいね。

 

「君を吊るすなり、地下壕に追い詰められる人がいるなら、それはガイア連合本部の人くらいじゃないのかね」

 

「……他の人には話をもっていかなかったんですか」

 

「聞いてみたけどけんもほろろに断られたよ。大体君の名前を挙げて、玲治君が相応しいってさ」

 

「絶対押し付けてるだけじゃねーか……」

 

 玲治君は手で顔を覆い、呻いている。受け入れざるをえない事を理解しつつも納得はできてないご様子。政治の家に生まれたわけでも、自分から望んだわけでも無い地位に就くのは、そりゃ納得はしづらいだろうさ。でもやってもらわれなければならない。我々の為にもね。

 

「あー……とりあえず私が拠出した資金で行政を動かしましょう。うち(ガイア連合)の銀行に県の口座を開設してもらってそこに入金する形にしましょうか」

 

「指定金融機関扱いということか、分かった」

 

「今の知事はどうするんですか?」

 

「引退かな。彼もあまりの事態に投げたがっているよ。君が県知事という肩書がいいならそこについてもらうさ」

 

「名前はまあ、なんでもいいんですけどね。県庁は維持しつつ、組織はその場その場でいじりつつ運用しましょうか」

 

「まあしょうがない、当座それでいこう。県庁自体は結界内だったが、職員は自宅の関係で来ていない者もいる。人数が足りないが採用するにしても募集をどうすればいいかわからないから、手が回らないかもしれないね」

 

「そこはしょうがないでしょう。まずは県内の警察と自衛隊、そして霊能者たちによる保安組織を作りましょう。そこから県内の状況把握し、安全地域の確認と確保を行い、人が住める地域を徐々に作っていきましょうか」

 

 ま、そうなるか。とにかく手を打つにしても情報が無いからな。彼の元に県の”暴”を再編し悪魔という存在と戦ってもらわねばね。

 

「給与どうしましょうかね、とりあえずGPで支払って、消費税みたいに一部回収でいきますか」

 

「現状ほぼガイア連合の専売制みたいな状況だ、販売価格に上乗せでも構わないと思うよ。後は君たちガイア連合以外まともに決済できないから、残った銀行すべて傘下に収めてでも経済状態を正常化させてほしいよ」

 

「ちひろさん……うちの事務方トップに話を通しておきますよ。ああ……そのうちガイア連合の事務方と県との話し合いの場を設けましょう、正直私も何が何やらですから」

 

「それは助かる」

 

 できるだけ彼の手を煩わせないようにはしたいが、ガイア連合の事務方、どの程度できる人間か……ううむ。

 後は県民に仕事を作らないとか。小人閑居して不善を成すとは言ったものだ。県民を生き残らせる為にも、穴を掘るだけでもいいから仕事を与えないとだ。

 

「ガイア連合でなにか労働力を要求することはあるかね」

 

「あー、食わせないとですか?」

 

「そうだ」

 

 玲治君は話が早くて助かるね。

 

「単純労働なら、まあ当てはあります。サービス業の人たちも全ては無理かもしれませんが、可能な限り維持したいですね。遊休労働人口……だせますか?」

 

「君が命じるならね」

 

「おっほん、では草史郎殿、現状の県遊休労働者数を算出し、私に提出してください。それをもってガイア連合と交渉します」

 

「拝命致しました」

 

 お互いすまし顔で命令のやり取りをする。これで彼と私の立ち位置が定まったということだろう。もちろん親族としての付き合いの場面では異なるだろうが、表ではこういう事をやっていかねばね。

 

「後……県議会はどうするんです、解散ですか?」

 

「器は残そうと考えているよ。選挙によって選ばれるのでは無く、県下のシェルターや結界付き市町村の代表者による寄り合いみたいな形になるんじゃないかな」

 

「実力者の寄り合いとか、ほんと江戸時代の大名家みたいでなんだかなぁ」

 

 つぶやきに同意する部分は多々あれど、致し方ないという感情もある。

 

 もはや一般の人々によって【リヴァイアサン】は作れないだろう。万人……今や悪魔も含んだ万人達による闘争状態か。自分の自然権を国家に委託、つまり寄せ集まって他から自分たちを守ろうというのがリヴァイアサンだ。万民の能力に極端な差が無い事が前提だったが、固まったものを一撃で粉砕できる存在がいれば前提条件が崩れる。

 

 世界が変わればしょうがないかもしれないが、私の代で来てほしくは無かったね。

 

「そういえば、草史郎さんは何かするんですか?」

 

「んー、これだよ」

 

「これって……」

 

「一般人代表として君のお手伝い」

 

「えぇ……」

 

 オカルト能力者、それもかなりの実力者に鈴をつけられる人間なんていない。人は素の能力では熊に勝てない。目の前の人間と言葉のやり取りをできるからといって撫でられて死ぬほどの実力差がある人間の前に出たい人間は多くない。

 もちろんメシア教やら県下在住の霊能力者はやりたがっていた。だが、我田引水する気満々だったのは我ら議員達から見ても明らかだったので、非霊能力者且つコネがあるということで私が選ばれたわけだ。

 

 まあ実質的には私が県知事みたいなものか?いやトップを補佐する意味合いでは関白みたいなものか……そうすると彼の言った藤原氏というのはそうそう外れていないか。

 

「ああ……ただ俺たちは終末後もファ○チキ食いたいだけだったのになぁ」

 

「ふっ、なんだいそれは、君たちの標語かい?」

 

「ま、そんなもんですよ」

 

「確かにコンビニで安心して買い物できる世界が帰ってきてほしいもんだね」

 

「こうなったのも何かの縁ですから、お互い頑張りましょうか」

 

 そう言った玲治君はひどく疲れていた。確かに縁……なのかもしれないね。

 

*1
ペルソナ勢は脱出しやすいとの情報あり

*2
明治まで生きておりました

*3
ファシスト党党首

*4
ちょび髭




一応完結させて、積みゲー消化やら艦これのイベントやってたらあっという間に三ヶ月
デイリー更新しているどくいも氏、ほんと凄いです

この話は②で終わる予定
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