「数の力」へ動く実力者 始まった「派閥回帰」、首相が変えた風向き

森岡航平

 自民党で「派閥回帰」の動きが活発になっている。派閥を舞台とする裏金問題について、高市早苗首相(党総裁)が不問に付す姿勢を鮮明化したことを追い風に、党内の実力者たちが再び「数の力」を求めて動き出した格好だ。

 25日夜、東京・赤坂の中国料理店。旧安倍派幹部の萩生田光一幹事長代行、西村康稔選挙対策委員長ら約20人が集まった。出席者によると、食事をともにしたのは旧安倍派の所属議員ばかりで、萩生田氏が「派閥はなくなったが、バラバラにならないように行動していこう」と呼びかけたという。

 この日は、かつて岸田派を率いた岸田文雄元首相も都内で会食していた。複数の党関係者によると、その相手は、先の衆院選で自身が応援演説に駆け付けた若手議員らだったという。また旧茂木派の所属議員ら約10人は26日、衆院議員会館の一室で昼食をともにした。

 各派は裏金問題で解散に追い込まれ、残るのは今や麻生太郎副総裁が率いる麻生派のみ。政治不信を引き起こした経緯から、派閥単位の政治行動を自重する空気感が漂っていたが、風向きは変わりつつある。

 きっかけは首相の政治姿勢にある。就任まもなくの党人事で、裏金問題で党内処分を受けた萩生田氏を幹事長代行に起用。衆院選後の人事では、さらに旧安倍派幹部の西村氏、松野博一元官房長官を抜擢(ばってき)し、同派幹部らの要職への起用を避けた前政権からの方針転換を明確にした。

 「裏金問題を気にしている国民は少ない」(衆院ベテラン)。こう考えるかつての派幹部らは、「数の力」の確保に動き始めたというわけだ。現在、麻生派が勢力を急拡大させているが、旧安倍派はかつて100人を擁した最大派閥。結束を強めるとなれば、数が必要な党総裁選などで存在感が増すのは確実だ。

 派閥回帰の動きは強まるのか。「政治とカネ」の問題にとどまらず、主要派閥が人事や政策立案に影響力を行使する様には否定的な見方もある。閣僚経験者の一人は懸念を口にした。「再興すれば、必ず派閥を温床とした問題が起きる。自民はそれを繰り返してきた」

自民党の主な派閥をめぐる動き

【存続】

麻生派(60人) 衆院選後に新人議員を含む18人が入会

【解散】

旧安倍派(96人) 25日夜に一部の議員が会合

旧岸田派(46人) 岸田文雄元首相らが個別に会食

旧茂木派(45人) 茂木敏充外相らが定期的に昼食会

旧二階派(38人) 近く会合を開催予定

※麻生派は26日、その他は解散表明時の人数

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この記事を書いた人
森岡航平
政治部|首相官邸担当
専門・関心分野
国内政治
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    木下ちがや
    (政治社会学者)
    2026年2月26日21時15分 投稿
    【視点】

    果たして派閥回帰なのだろうか。 派閥擁護論者であった故・渡辺恒雄氏は、派閥の発生要因を①人事②資金③中選挙区制④総裁公選制としている。③はともかく、領袖による資金の調達・分配によってメンバーの結束を図り、数の力で総裁選出において取引し、その見返りとして得た役職を派閥メンバーに差配しという派閥の機能は、高市政権下で復活するのだろうか。 確かに麻生派はまだあり、旧安倍派も再結集するかもしれない。だがそれはただの「集まり」であり、かつてのような安定的な権力移行を可能にした集団形成がふたたびなされるとはとても思えない。 「主要派閥が人事や政策立案に影響力を行使する様には否定的な見方もある」というが、派閥は自民党内の多様性を担保してきた。時々の主流派に対するけん制の足場であり、それこそが自民党の国民政党たる幅の広さの源泉でもあった。 だが高支持率を維持し、政策ではなく「私」の審判を委ねた総選挙で歴史的圧勝を成し遂げた高市政権の下では、人事をはじめとする権限は総理に集中していく。領袖の資金調達と分配にも制約がかかり、膨張した自民党議員を抱え込むのは困難だろう。そして高市総理が支持率をある程度維持し、次期総裁選に臨むとしたら、総理が派閥を頼りにするとはとても思えない。 したがって派閥回帰ではなく、派閥はますます希薄化し、総理の一元的な支配がよりすすむ方向に向かっているのではないだろうか。

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