投獄経験有りのフランス人との付き合い方を乞う
エドモン×エミヤ、Twitterでフォローさせてもらっている方がエドエミという素晴らしいカプの伝道者でいらっしゃったのでつい…、エドモンいないのでキャラにズレなどを感じるかもしれません、すみません/おまけには巌窟王が日本人男性に惚れたきっかけのようなもの、エドモンはどうしてエミヤに惚れたのかな?1構っているうちに本気になってたパターン、2笑顔に一目惚れ、3その他/追記・再臨絵を見て戦闘モード出ない時は紅いのかと思いエドモンの瞳の色をこちらでは紅色にしています、あと個人的に赤い色の瞳の相手に弱いエミヤがマイブームですので…ふへへ
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部屋に近づくほどツンとかすかに鼻をつく独特な香り、それを感じた瞬間肩をガクリと落としたエミヤは重いため息をついて仕方なく自室の扉の前に立った。
稼働音を立ててスライドしたドアの先、居住者は自分1人だけだったはずの部屋のベッドに堂々と体を休めて紫煙を燻らす男の姿に頭を押さえる。
「…またか、巌窟王。なぜこうも何度も…一体何があるというんだ?」
「愚問、ここは私の部屋だからだ」
「私の部屋なんだがね、…はぁ、またマスターに部屋の変更願いを出さなければ」
どこか対応が手慣れているのは似たような傲慢不遜の金ピカを相手にしてきたからかもしれない。こういう手合は時代を超えて、人種も超えてある一定数いるのか…。
考えたくもない可能性を頭を降って払ったエミヤはこちらを表情の読めない瞳で見つめる巌窟王、エドモン・ダンテスの視線へ肩をすくめて、朝出た時よりも散らかった部屋の掃除に入る。
そう、復讐鬼と名高いアベンジャー、エドモン・ダンテスにエミヤは何故か気に入られてしまっていた。いくら頭をひねってもきっかけはわからず、本当にここ最近で突然付きまとわれ始めたのだ。
日頃を見るに衝動性の強い人物そうなので、おそらく気まぐれの一つであろうとあたりをつけたエミヤは仕方ないのでいつか興味を失ってくれる時を待っている。
そっくり引越ししてきたエドモンの私物に眉をしかめ、淡々と部屋の隅へ選り分けていく。この部屋への襲撃も片手では足りない回数になってきたため、動作に慣れが出てきた自分が少し嫌になる。
その中から本当に数少ない自分のものをテーブルへ置いて、部屋が移動になった際にはすぐに動けるようまとめていたエミヤは依然変わらず鼻を刺激する香りにむっとしながら振り向く。その先には部屋の掃除に勤しむエミヤの姿を鑑賞するがごとく優雅にベッドで足を組み替え、新しいタバコへ火をつけるエドモンがいる。
「…この際部屋に忍び込んでくることへは言及しまい、しかしルールは守ってもらいたい。ここは禁煙だ!」
ピキッと額に浮かんだ青筋に肩をわなわなと揺らし、人差し指を勢いよく突きつけたエミヤがとうとう声を荒らげた。
あらゆる時代の英霊を集めたカルデアで、出典の異なるエミヤは自分以外のサーヴァントへ大きな敬意を抱いている。それは一般人が歴史の偉人を敬うのと同様で余程気心の知れた仲、特に青いランサーや金色のアーチャーなどでなければ立ち振る舞いを気をつけて接しているのだ。
だが、その我慢も堂々と目の前でルールを破るポスト金ピカの巌窟王を前に脆くも崩れ去った。
つかつかと寄ってきた自分を見上げるエドモンの変わらない表情へ、さらに唇を尖らせたエミヤは手に灰皿を投影して鼻先に突きつける。
部屋は禁煙、それは正常に運営していた時のカルデアのルールで実際喫煙するサーヴァントが守っているかは定かでない。そして今の管理者のドクターも火災に気をつけてくれれば別にいいよーなんてゆるゆるの姿勢を見せているが、それはそれとして生真面目なエミヤは腕を組んで肩を怒らせた。
「さらに寝たばこという現代のルールも疎かにする姿勢はいただけないぞ、巌窟王!さぁ、この灰皿に…ッ!」
くどくどと小言を言っていたエミヤは突如ふぅっと顔に吹きかけられた煙に、視界を奪われ大きく咳き込んだ。虚を突かれて思わず吸い込んでしまった煙の不快感に加えて、目がぴりぴりとして鼻が慣れない匂いに悲鳴をあげる。
堪らず腕で顔をかばい、ゲホゲホと荒い咳をしたエミヤが煙の直撃を受け涙の滲んだ瞳で、恨めしそうにタバコをふかすエドモンを睨む。
「巌窟王…」
「いいだろう?」
地の底を這うような非難のこもった声にも、素知らぬ風でにやっと悪い笑みを見せてくるエドモンにもはや怒る気力も失せたエミヤが空を仰いでため息をつく。
「…ああそうだな、もう構わないよ」
こういう輩には注意をするだけ無駄だと知っているエミヤはそれ以上の文句を喉の奥に引っ込め、小さな主張として灰皿をベッドサイドのテーブルに置いて片付けの続きを始めた。
その夜、自室にも関わらず床に余分な毛布を引いて横になったエミヤは、消灯時間になって自然と電気が消えた部屋で瞳を閉じていた。
もちろん押しかけてきたエドモンは当たり前のように部屋のベッドを使っている。エミヤもかの巌窟王を押しのけてまでベッドに対する執着はなく、また同じ寝具で仲良く添い寝をする趣味もないためこの形へ落ち着いていた。
休息の前にマスターへ部屋の変更を頼んだため、明日には新しい部屋のベッドで休めるだろう。どんなところでも寝れるように鍛えてはいるが、それでもやはりちゃんとした寝具で休めるに越したことは無い。
最近では変更の理由に慣れたマスターの大変だねという労いの笑みを受けて、仕方のないこととはいえこんな馬鹿馬鹿しいことへ労力をかけさせてしまう自分をエミヤは心中で反省した。
もういっそ次も同じ被害にあった時には諦めようか、しかし親しいわけでもなく何ら生まれ育った環境にも共通点のない相手との共同生活はおそらくかなりのストレスとなろう。
さらに相手にも友好的な何かがあるわけでもなく、考えれば考えるほど付きまとわれる理由がわからない。
相手はフランス人の復讐鬼、自分は日本人で人類の守護者。そしておよそエドモンが人類の破滅を楽しむものとしたらエミヤはそれをあらゆるものを削ってまで阻止し、存続のためにすべてを捧げるのだ。
正反対とも言える性質の違いに謎は募っていくばかり、もぞりと寝返りを打ったエミヤは瞳を閉じたまま眉間にシワを寄せてマスターのためにもこの奇妙な日々のきっかけを探る。
…だが本当に思い当たるふしがないので安定の行き止まりへたどり着く、エドモンとは元々話をするような相手ではないのだから当然か。
しかしたった1度だけちゃんと言葉を交わした時の記憶にふと思い当たり、行き止まりからの脱却の光としてそれを懸命に掘り起こす。日常の記憶に埋もれてしまうほど些細なもの、その時の世間話にもならないほんのかすかな会話が引っかかる。
あの時、自分とエドモンは何を話したのか…
難航する記憶の採掘作業に、何気なく背後のエドモンへ意識を向けて様子を窺おうとしたエミヤは、ベッドの中ではなく自分のすぐ傍らから感じる気配に瞬間瞳を開く。
刹那気づいた時には被っていた毛布を彼方へ飛ばされ、ぱちくりと瞬いた瞳の前では明かりの鈍い部屋でぼんやりと浮かぶエドモンのくすんだ白髪と紅い瞳に射すくめられた。
「な…に、を?」
呆然と問いかけるエミヤに、笑みを深くしたエドモンは白い亡霊のような手で褐色の頬を撫でると、もう片方の手で今はまだ力の抜かれたエミヤの手へ指を絡ませ、まるで恋人同士のように甘く床へ縫いつけた。
「了承したではないか、今更生娘のフリをするとはますます面白い」
「きむ…!?えっなっなっ…ッ!!??」
もちろんエミヤにはまったくこれっっぽっちも心当たりのないことを言って、するすると顔を撫で果ては小さく頬へ口付けを落とすエドモンへ、エミヤの頭は一瞬にして沸騰したように熱が上がる。
ぼんっと音がなりそうなほど熱を上げたエミヤは思考が現実逃避をするのを必死に叩き起して、休息をとる前にされたことを思い出していき、その中で一つ顔にタバコの煙を吹きかけられたことがピコンと輝きを放つ。
たしかどこかの隠語では顔にタバコの煙をかけるのは『今夜お前を抱く』という宣言だったような…あああ!!??
聞いた覚えも乏しい、この世においてほとんど役に立たない知識が今まさに顔中へキスをし終えたエドモンがエミヤの艶やかな唇を奪おうとした寸前で思い出された。
そして自分の対応、今の状況、今まさに置かれている危機へ戦場にいる時よりも早く回った頭が導き出した答えにエミヤはぞわっと全身の毛を逆立て、思わず目の前の世界的にも有名な巌窟王を殴り飛ばしたのだった。
翌日、サーヴァントの身でありながらげっそりとやつれたエミヤが叩いたのはカルデアの誇る叡智を司るサーヴァント、レオナルド・ダ・ヴィンチ女史の工房だった。
ノックの後に入ってきた顔を見て、ここのところ通いつめている常連へ肩をすくめたダヴィンチは、昨夜どこかから聞こえた踏みつけられた猫のような悲鳴の理由を察する。
「ダヴィンチちゃん、本を借りてもいいだろうか?」
「またかい?もうこれで何回目だと思ってるんだ。改めて言っておくけど人種の特徴なんて大まかなものだから君が困っているのは純粋な相手の個性だよ、こ・せ・い」
そう言いながら手渡したのは人種の特徴を面白おかしくまとめた娯楽本、その中でもフランス人を特集したものだった。
曰くフランス人は恋が多いだの主張がハッキリしているだの服は10着しか持たないだのそんな他愛もない話が綴られている本をまるでお守りのように抱いたエミヤは、昨夜の体験にぶるぶると小さく震えながら必死に拳を握りしめて主張する。
「あんなものが個性であってたまるか、きっとなにか理由があるはずなんだ。フランス人は褐色の肌のものにはちょっかいを出さずにいられないとかそんな何かが!」
「意地だね〜もっと簡単なことに気づけば楽になれるというのに…おや、これはまた意外な人が来たものだ」
傍から見ればとてもわかりやすいエドモンの行動を、ダヴィンチからすると必死に曲解しようとしているように見えるエミヤの努力へ頭の中で無情にも無駄の二文字を送る。
図書カードがあったなら一枚丸々埋める勢いで借りている本をエミヤがすがりつくようにページをめくっていると、前触れもなく工房の扉が勢いよく開いた。
そこから姿を現したのはダークモスグリーンのコートを羽織り、頬に真新しい殴り跡をつけたエドモン。軽く視線を巡らせたエドモンは扉の音で過敏に背を跳ねさせ、恐る恐るこちらを振り向く目当ての人物へ表情を緩ませる。
「こんなところにいたのか、エミヤ」
「げぇ…巌窟王」
「いい声で啼くじゃないか、それを何故昨夜しない?」
「あれは誤解が起こした事故だ。それくらい君ほどの人物であればすぐにわかるはずなのだがね」
「クッハハ!面白い書物を読むのだな。それはもしや俺を知ろうとしてのことか?」
皮肉を無視してエミヤの腕の中にある本をさりげなく奪ったエドモンはパラパラとページをめくり、学識高い彼では目にしたことがない表題へニヤニヤと口の端をあげた。
「おそらく考えていることとは違うが動機はそうだ。君はあまりにも理解不能な部分が多すぎる」
相手のからかうような調子にムッとしながら、エミヤは儚いわらの希望へすがっている自覚はあるため顔をそらす。
昨夜の事件もあってか、互いの声は平坦でも空気はどことない居心地の悪さを醸し出している。自身の庭である工房の空気を澱ませる2人へ、これまで見守るに徹していたカルデアの最終兵器がとうとう焦れて手をパンッと叩いた。
「うーん、君たちさぁいっそ1度お付き合いしてみたらどうだい?」
「ダッヴィンチッ…!!??」
「何故その口を開く?叡智の女史よ」
まさかの裏切りへ目を向くエミヤとまるで今存在に気づいたというような尊大なるエドモンへ知的な瞳を輝かせたダヴィンチは、二人の間へ割って入ると互いの手を取った。
「だってこのままだといつまでたっても平行線じゃないか、しかも片方の精神汚染がどんどん進むってデメリット付き。それはサーヴァントのケアを担当しているものとして正直見過ごせない、でもここで接触禁止を言い渡すともう片方に影響が出るだろう?2人ともカルデアの主力なんだ、できれば円満に解決してもらいたい。そこでだ!エミヤ、君が彼を拒むのは彼が理解出来ないからだろう?」
「む、まぁ…そんなところもあるがそ」
「なら理解すればいいじゃないか!お試し期間というものだよ、嫌になればとっとと別れてしまえばいい。その時には君もこちらが発令する禁止令にも幾分か素直に応じてくれるだろう」
否定はできないので肯定を返した瞬間我が意を得たりとばかりに言葉を遮って、うまいこと主張をねじ曲げたダヴィンチにエミヤの口がぱくぱくと言葉を失う。
そんな自分を置いてダヴィンチの提案を聞いたエドモンは顎をさすり、ニヤッと見慣れた狡猾そうな笑を返すのを見てエミヤはトントン拍子に進む話へ頭を抱えた。
「無論、色恋の礼儀は知っているのでな。なるほどな、面白いことを言う」
「ね?どうだろう、一旦引いてみるってのは。あとここだけの話、付き合ってみてからの方がああいうのは言うことを聞くものだよ。いつどこで襲いかかってくるかわからないものに怯えるより、首輪をつけてしまった方が楽じゃないかい?」
うずくまるエミヤと視線を合わせるようにしゃがんだダヴィンチからひそひそと囁かれることへ顔をあげると、言われてみれば確かにこの提案にはエミヤの旨みもある。
このまま付きまとわれ続けてはエミヤの精神衛生上も宜しくない、マスターへの迷惑や摩耗してきたことによりもしも戦闘に障害が出てきてしまってはとても笑えない。
冷静になった部分が好感触を見せるのに対し、ダヴィンチの提案に見え隠れする打算へ根っからのお人好しであるエミヤは眉を下げた。
「…ぐ、う…もしも本当に巌窟王が何かしらの想いを抱いているのなら酷く失礼だと思うが…」
「本人ノリノリだよ、大丈夫大丈夫」
「…う、……わかっ…た。その提案、私も受けよう」
さっきまで胃を痛めるほど悩んでいた相手に対しても気遣うエミヤにこれだから変な虫がつくんだと言いたいのを我慢して、微笑みを見せたダヴィンチはエミヤの手を取って立ち上がるとそのまま2人に握手を促した。
まるで停戦協定のような絵面だがこれはれっきとしたお付き合い宣言である。念のため。
「よし!じゃあこの時から君たちはカルデア公認カップルだ。お付き合いは節度を持って、相手の嫌がることはしないこと、あと魔力供給♂の場合にはレディナイチンゲールがいるから避妊具をつけることを念頭に、清く正しくねっとりと楽しむんだよ」
「なっ…!?実は楽しんでいるだろうダヴィンチちゃん!公認だと!?まさかそれを言いふらしはしないだろうな?私と巌窟王は当面の間仕方なく…ッ」
パァっと輝くような笑顔で臆面もなく言い放たれたいろいろ聞き捨てならないことに、エミヤが噛みつこうとした瞬間繋いだ手を強く引き寄せられた。
途端に接近したエドモンの端正な顔に面食らうエミヤへ、真紅の瞳が一瞬ドキッとするような優しい色を帯びて揺らめく。
その水面にぐっと唾を飲み込む喉から顎へと手を滑らせたエドモンは、情熱的な仕草とは違って、どこか平坦に恋人という関係になった男へ囁いた。
「エドモン・ダンテスだ」
「なに?」
「巌窟王ではない、曲がりにも我が恋人を名乗るのであれば呼び方を改めよ」
「そ、そう…だな。…エドモン」
がっちり腰を抱かれてかろうじて相手の名前を復唱するエミヤに、チョロイなぁ…と胸の中で呟いたダヴィンチは、押しの強いものと押しに弱いものという最悪の相性の2人を合わせてしまったことにそっと手を合わせた。
それから一旦エドモンとは別れ、マスターの招集の元素材集めのレイシフトを終えたエミヤは、宣言から半日も経っていないのにマスターから例のエドモンとの関係を口にされ、恨むぞダヴィンチちゃん…と小さく呟いた。
救いだったのは、ダヴィンチからは経緯も合わせて聞いたようで、マスターの少年から送られる視線には哀れみが殆どを占めていたことか。
「ダヴィンチちゃんから聞いたよ、また大変そうだねエミヤ」
「苦労をかけるな、マスター。まぁこれで頻繁な引越しからは解放されることだろう、私にはそれが嬉しい」
「それよりももっと苦労が増えることになるに1票!」
「縁起でもないことを言わないでくれ!まったく、これまで以上なんて想像したくもな…」
マスターの前に立ち、食堂の扉を開けたエミヤが瞬間硬直する。
突然立ち止まった長身の体にぶつかって鼻を押さえたマスターは、何故か一向に動こうとしないエミヤにしびれを切らして、目隠しとなっている逞しい体の脇から顔を覗かせ目をむいた。
「わっ!!何この花!!えっ!?」
そこには食堂を埋め尽くす花、花、花…花屋が五、六軒越してきたのかと思うほどあらゆる色や種類の花が咲き誇っている。
呆然としていると花園の中でもすぐにわかる暗い色のコートを着た男が進み出、その顔を見た瞬間マスターは背後でぐっ…!と胃痛に苦しむサーヴァントの声を聞いた。
「マスターか、美しかろう。この私自らが厳選した花々だ。私の心を華やがせた礼に世界を花で埋め尽くしたかったが出来そうになかったのでな、手始めにここを埋めてみた」
「…へぇー、いったいどこから持ってきたんだろうね」
「しっかり!しっかりしてくださいエミヤ先輩!」
最早現実逃避気味に色つややみずみずしさも一級品の花を手に取って見てるマスターの後ろで、マシュに介抱されたエミヤはよろよろと立ち上がり、とても自分の持ち合わせた常識では計り知れないフランス人のエドモンへよっこらよっこら背を向けた。
「おおエミヤ。…おや、もう休むのか?」
「文化の違いに疲れてしまってね…約束通り私の部屋には許可がない時は忍び込まないこと、これは絶対…ぜっっったいに守ってくれたまえ」
(二回言った)
(結構限界がきてますね)
「いいだろう、私もそこまで暇ではない」
ハッと肩を揺らすエドモンに思わずこれまで自室に侵入された思い出が蘇り、こめかみに血管が浮かんだエミヤは自制心を総動員させて引きつった笑顔を浮かべてみせた。
「ッ!ふふ…そうか、ではおやすみエドモン」
大人だ…流石ですエミヤ先輩…というマスターとマシュの声を励ましに、一刻も早く心労の塊のような男から逃れようと背を向けたエミヤは、いつの間にか目の前に出現したエドモンに目を瞬かせる。
そして瞬間移動をしたのかと理解したと同時に仰け反りかけた時、体制を崩すエミヤの背を抱いた巌窟王の指先が軽く顎をあげる。
「おやすみ、Ma petite chatte」
頬に軽いキスをされたと同時にフランス語らしき言葉を囁かれたエミヤは、意外にも大人しかったエドモンにほっと胸をなでおろした。
ちなみにサーヴァントは基本的に召喚システムの恩恵からどんな時代、国でも通じる言葉を話している。しかし自国語を話そうと思えばその限りではなく、おそらくエドモンは意図的に母国のフランス語を話したのだろう。
英語なら学んだがフランス語には親しくないエミヤは聞き流してしまったが、食堂にたまたまいたフランス人サーヴァントとすべてのサーヴァントの言葉が理解できるマスターは、そうはいかなかった。
ざわっ…とよからぬざわめきを立て、目を真ん丸く開いてエドモンとエミヤを見ている特定の視線。
その何やらよからぬ含みを持たせているものに安らぎかけた胸がまたドクドクと鼓動をあげ始め、エミヤはとりあえず手近のマスターにすがりついた。
「ま…?しゃ…?なっ何を言ったんだ?訳してくれマスター!」
「訳せるか!!」
あの温厚なマスターが顔を真っ赤に染めて、さらには乱暴に頼みを断った姿に、何を言われたかはわからないが何かを察したエミヤはとうとう顔を覆って崩れ落ちる。
まさか自分が『俺の可愛い子猫ちゃん』と呼ばれてるとは思わないエミヤの受難は始まったばかりである。