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隠れたビターチョコレート/Novel by 水原佐喜

隠れたビターチョコレート

3,643 character(s)7 mins

バレンタインイベのネタバレを含みます!

エドエミ良いなぁ、と思って勢いだけで書きました何の纏まりもありません(笑)
お付き合いして間もないエドエミ。布教も兼ねてあげます。
二人だけで密やかに恋人としての関係を築いている二人ならどんな感じなんだろうと書き出しましたが…纏まってない感。でも良いんです、エドエミ興味持っていただけたらそれで!
それでは拙いながら、少しでもお楽しみいただけますように。

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死屍累々と化したカルデアの食堂に備わるキッチンを見つめ、エミヤは一人小さく吐息した。鼻に付く甘い匂いはこの時期ならではというものであるが、どうにもキッチンの惨劇を前にその現実逃避に浸る気にもなれない。
聖バレンタインデーと言われるこの時期、女性サーヴァントはマスターに対してその感謝を示すべくカルデアのキッチンでそれぞれがお手製のチョコレートを用意したのだ。この数日を要したチョコレート用意の過程において数多の問題があったのは事実であるが、エミヤにとって思い出すと頭痛の込み上げるものであるため敢えて今は思い出さないようにした。
さてどこから手をつけて片付けていくか、そう一人頭を悩ませようとした刹那のこと。唐突とキッチンの扉が開いては、七大騎士クラスに属さないエクストラクラス、復讐者の巌窟王がキッチンに姿を現した。そうしてエミヤの前に広がる惨劇を見るや、珍しくその表情に驚愕を湛えている。
「……敵襲にでも逢ったような顔だな、ウェイター」
「敵襲の方が私にとっては気楽だな。それよりどうかしたのかな、巌窟王。食堂に何か用事でも?」
「何処も騒がしくて敵わん、静かに過ごせる場所を探していた」
眉間に皺を寄せ忌々しげに言う相手にエミヤは苦笑を返すしかない。浮き足立つ女性サーヴァントの気持ちも分からなくはないのだが、なにせ外はマスターを探して回る声が響いている。キッチンは後片付けのため暫く立ち入り禁止と宣言しているため、ささやかな静寂が現在も保たれていた。今回のバレンタインデーに伴う最大級の功労者たるエミヤに、英霊の誰も逆らう気はないのである。
そんな立ち入り禁止の触れをまるで無視してこうして食堂へ足を運んでいる巌窟王であるが、彼は根本として主人たるマスターの命令以外に従うことが少ないためエミヤも最早気には留めていない。彼一人は基本、場を妨げる行為など一切しないのだからエミヤにとっては立ち入りを咎める理由も存在しなかった。
「これからこの現状を片付けるが、その音が邪魔でないのならゆっくりしていくと良い」
「結構だ。外の金切り声よりはよほどマシだ。煙草は吸うぞ」
言うや否や早速慣れた手つきで煙草を咥え火をつけつける相手に、此処は禁煙だと言いかけたエミヤであったが言葉に出すことはしなかった。代わりに自身の投影魔術を用いて、灰皿を用意する。それを片手に一度惨劇の場を離れれば、キッチンの真正面の位置にある椅子に腰掛ける巌窟王の前にそれを置いた。
「……用意の良いことだ」
「一応、此処は禁煙なのでね。匂いのつかない程度にしてくれたまえ」
「善処するとしよう」
巌窟王の返答に満足げに頷いて、エミヤは惨劇たる現場を片付けるべくキッチンへ足を向けた。


どれだけの時間が過ぎただろか。巌窟王エドモン・ダンテスは片手間に煙草を咥えながらキッチンを片付けるエミヤの様子を眺めていた。もう間も無く、エミヤの作業は終わるだろう。
黙々と片付けを進めるエミヤを眺め、ふと気になった疑問がエドモンの口から溢れ落ちる。
「お前は、この騒がしいパーティには参加しないのか?」
「男性陣には全員、昨日のうちにマスターが渡しているからな。お返しはその時に渡しているから、女性陣に混ざる気はないよ」
片付けの作業がひと段落ついたエミヤは、言いながらキッチンから食堂の方へと足を進める。そうしてエドモンの隣に置いてある椅子へと腰掛けると、ふと思い出したようにエドモンへと顔を向けた。
「そういえばマスターから聞いた話をだが、君はコーヒーを淹れたそうだな?彼女が美味しかったと言っていた」
「受け取っているものがある以上、返すのが通りというものだ。作家連中を相手に淹れていたからな、それぐらいの方法は心得ている」
「なら、君がコーヒーを好む…というわけではないのかね?」
「睡眠も食事も必要のない身体だ、こだわりも好みもない。マルセイユにいた頃と味覚も変わっていることだろう」
言葉の真意をはかるようにエミヤの双眸を覗くエドモンだったが、エミヤは相変わらず穏やかな眼差しをエドモンに向けるだけである。
「……ウェイター、言いたいことがあるならはっきりと言え」
「私の名前はエミヤだと名乗っているはずだが? …まぁ良い。巌窟王、君がもし良ければなんだがチョコレートの処分を手伝ってくれないか」
「チョコレート?あのカカオの菓子か?」
「あぁ。女性陣の見本用にと私が作ったものなんだが、処分するのを忘れていてね。片付けている時に思い出した。どうだろうか」
「あァ、お前との茶会も悪くないな」
思いがけない提案に面喰らうエドモンであったが、特別断る理由も存在しなかったためそれはしなかった。その反応に僅かに喜色で頰緩めるエミヤは、椅子から立ち上がるや再びキッチンへと姿を消していった。

数分して、再びキッチンから姿を現したエミヤは片手に小箱を持って現れる。エドモンの前に置かれてから丁寧に開封されたその箱の中身は、ガトーショコラと呼ばれる代物だがエドモンにとってそれはさして重要ではない。
「コーヒーか紅茶か、君の好みはどちらかな?巌窟王」
「お前が淹れるものならどちらでも構わん。それとも、お返しに俺が淹れてやろうか?マスター同様、お前からの贈り物としてこの菓子はいただくが」
手袋を外してから、ひょいと小箱のチョコレートの一片を摘んでエドモンはそれを口に運ぶ。口の中に広がる仄かな甘さは、エドモンにとってどこか懐かしさを思わせた。控えめの甘さに舌鼓を打てば、エミヤがばつ悪そうに視線を泳がせる。
「いや、私ごときが君に手間を取らせるなど。それに見本に作っただけの代物を君に贈るなど……」
「なら、お前のチョコレートの価値を他で補えば良いだけの話だろう」
「他?」
疑問符とともにエドモンへ顔を向けるエミヤに、くつくつと喉を震わせる。がたりと席を立ち上がりエミヤと向かい合うと、僅かにある身長差にエドモンは微かに眉を寄せた。だがすぐに彼の銀髪の後頭部へ手を廻せば、強引に自身へと引き寄せてその唇を塞ぐ。刹那の出来事に面喰らうエミヤだったが、自身がエドモンに唇を奪われたと理解すれば目に見えて頰を赤く染めていく。
「なっ…きみ、は……っ!」
「座っていろ。すぐに淹れてくる」
生娘を思わせる反応に微笑み浮かべては、エドモンは颯爽とキッチンの中へ消えていく。そうして彼が約束通りコーヒーを用意している物音を聞きながら、エミヤは先程の感触と温もり確かめるように自身の唇を撫でた。

やがて運ばれてきたつがいのコーヒーカップに注がれたコーヒーの水面を見つめながら、エミヤは隣に優雅に座る彼の姿を見つめる。飲むも飲まないも自由だと言われ運ばれてきたコーヒーは、優しくエミヤの鼻腔をくすぐった。
隣ではエドモンが、エミヤ手製のガトーショコラを食べながらコーヒーを嗜んでいる。また一欠片を頬張れば、手にした爪先をぺろりと舌で舐めた。その一連の動作が妙に獰猛で、それでいて確かな色気を放つもので思わずエミヤは視線を逸らす。
「そう意識するな。此処で襲い組み敷くほど俺は獣じみていない」
そんなエミヤの視線に楽しげな声で返せば、ありありと不満を表情に描いたエミヤがエドモンを見つめる。
「それとも、お前は言われる方が良かったか?口付けをすると」
「そういう問題ではない」
「…なら、部屋のベッドの上でも俺は構わないが?お前はそうではないだろう」
「っ、巌窟王…!」
冗談とも本気とも取れるエドモンの言葉に反論しようとエミヤが口を開きかける刹那、彼の、病的なほど白い爪先がエミヤの唇に触れた。
「名だ」
普段は手袋に隠れる爪先が、まるでガラス細工に触れるような繊細な優しい手つきで愛おしげにエミヤの唇をなぞる。この男はいつもそうだった、声に出すことは少ないぶん他の全てで特別であるとエミヤに伝える。
「……我が名はエドモン・ダンテス。名で呼べ、エミヤ」
その声が、その眼差しが、その仕草が、その全てが、エドモンのエミヤへの愛情表現に他ならない。決して二人の時以外には見せないその全ては、エミヤへの深すぎるほど深い愛情を物語っている。
マスターと、この施設を運営するダヴィンチ女史の二人以外に知られていない二人の関係を、エミヤもまた他言する気はない。復讐鬼として現界する彼が自分の傍らぐらいでは人間らしくいてほしいと思う反面、自身もまた彼の愛情が嬉しかったからだ。だからこそ、応えようと拙くも不器用ながらにエミヤは口を開く。
「エドモン、私は…っ」
「今は黙れ、エミヤ」
言葉の続きは、彼の再びの口付けによって声にはならない。だが先程より優しく、甘い口付けに応えるように、エミヤは彼の首裏へ手を廻した。

Comments

  • 鴉八丸
    November 29, 2022
  • sisui
    February 14, 2017
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