宝具エミヤ②
続きは?の声をガクブルしながら無視して過ごしていましたが、総合点が1000超えちゃった連絡を受けて諦めて続きを書きました。蛇足の2ページ目はちょいと腐っているので苦手な方はスルー下さい。1ページ目だけで話としては完成しています。 最近やっとスタックフィードなるものの使い方が少し分かりました。pixivの使い方をまたひとつ覚えたよ! ちょっと前までブックマーク登録するときのコメント欄を、自分が作品管理するときどんな話だったかメモするところだと思っていたのが恥ずかしい思い出・・・ ◯◯が△△してる□□な話とかいうわけわからんメモ書きを見た皆様の心情を思うと憤死しそうデス。指ささないで下さいっ許してぇ( ;∀;) ■デイリー16位ありがとうございます。エミヤスキー同士がたくさんいらっしゃるようでうれしいです!つ、つづき、続きデスカ!?R18部はデスネ、ええと、その・・・ガイアの規制が入りました!
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「一旦、私の座に帰ろうと思う」
光満ちる新緑の森の中、地面に座りエミヤが調理した兎のパンチェッタ巻きローストと魚のマリネ、リンゴのタルトを肴に酒を飲み交わし騒いでいた屈強な男たちがそのひと言で黙り込み、辺りを沈黙が支配した。
己の座への怒涛の突撃が終わってから、自分はというとなぜかあの三人から追い出されるようにクー・フーリンの座に来ていた。
だがしかし、座の主であるランサー(クーでいいと言われたが、結局こちらのほうが呼びやすためそう呼んでいる)はちょっと行ってくると言ったまま帰ってこず、その部下や縁のあるものたちがエミヤの相手をしてくれている。
料理をねだられ、稽古に誘われ、私の生きた時代の話をせがまれたりと何かにつけて構われる。
てっきり元守護者であり主人のひいては朋友の生きる宝具となったこの身が珍しいか、料理に釣られてかまわれているのだと思っていたが、どうも様子がおかしい。
座の主不在のままにこの身がここにあることに幾ばくかの居心地の悪さを覚え、己の座に一旦帰ろうとしたところの周りの反応に不信を抱く。
と、おもむろに輝く貌の騎士が近場にあった茸をむしり取り差し出した。
「エミヤ殿、こ、この食材などまだ使ったことがなかったのではないでしょうか!」
「……」
それを皮切りに、皆続々と言葉を連ねる。
「おい!エミヤ!おおおオレと勝負だ勝負!」
「ええと、なんだ、その、この前貴殿が言っていた将棋というものをだな、教えてはもらえんだろうか」
「も、もっとゆっくり、ゆっくりしよう!な!」
何をこれほど必死になっているのだ……
――――怪しい、あやしすぎるぞ!
大体にしてランサーの座に来る際に、セイバーもギルガメッシュも何も言わなかったというのが今思えばおかしい。
セイバーであればシロウご飯です!と、自分の座に連れていこうとするか、こちらの座に来ても飯を強請って着いてくるはずであるし、ギルガメッシュにしても初めに出向するは我の座に決まっておろう等とのたまうはずである。
――――すごく、いやな予感がした。
「なに、またこちらには来ることになるだろう、それでは一旦帰らせてもらう」
そう言って地面に腰を下ろしていたところをすくりと立ち上がれば、
「こ、これが今すぐ食べたいんです!!」
ガバリと右腕をとられ茸を顔に突きつけ懇願される。
「……ソレは笑い茸だ。残念だが食用ではない」
振り払って前に進もうとしたところで、今度は反対の腕を骨が軋むほどに掴まれる。
「勝負はどうなるんだ勝負は!逃げるのか!?」
「逃げるもなにも勝負はついさきほどしたばかりだろう。今度来た時にまた手合わせ願おう」
今度は振り払おうにもギシギシと尋常でない力で締め付けられているため動かせない。右腕も再度囚われいよいよ身動きがとれなくなった。
「キミたちは何をしたいのだね!」
少々強引な手段に出ようとしたところで胴体にガバリと抱きつかれる。
「将棋と囲碁とラン●リングエ●ジェルを教えてくれると言っただろう!!」
「ら、ラン?なんだねソレは?!話題にものせたことがないぞ!!」
「そうだ!昼寝だ!昼寝して飯食ってそんでまた昼寝しよう!!」
「寝ることと食べることしか頭にないのか!ええい、足にしがみつくな!」
振り払って前へ進もうとするが、己がどう足掻いたとて武の誉れも高い屈強な男たち数人がかりで押さえつけられてはどうにもならない。
――――いったい、何だというのだ!?
いい加減堪忍袋の緒が切れそうになったところで、蒼い突風が吹いた。
「シロウに何をするーーーーーーーー!!!」
ズゴーーーーーン!!
私の腰に抱きついていた者に飛び蹴りを食らわした後、足にしがみついていた者をぐしゃりと踏みつけ続けざまに回し蹴りと膝蹴りを繰り出し周囲にいた者たちを残さず吹き飛ばす。
もくもくと舞った土煙が徐々に晴れたそこに、蒼いドレスを身にまとった金髪が見えた。
「シロウ!大丈夫ですか!?」
辺りに警戒をしながら問われる。
「いや、私は大丈夫なのだが……」
「やはり、こちらのほうが足止め人員が豊富だと言われてもランサーなどに任せるのではなかった!よもやシロウに無体を働くなど!」
やはり足止めされていたのか……
「いや、おそらくはキミの言う足止めというのを忠実に行おうとした結果であるのだと思うのだがね……」
「そーだぜ、セイバー、そいつらに悪気はねぇよ…っとオメーらサンキュ、だいじょーぶか?」
セイバーが飛んできた後方からのんびりとした声がかかる。
「「「クー(御子)(殿)!!!」」」
セイバーに飛ばされた面々が、ほっとしたような非難するような声を上げる。
「いや、ワリーワリー、思ったより時間かかっちまった」
「たく、おせー!まー、エミヤの料理はありえねーくらい旨かったしな、しゃーなし水に流してやらぁ」
「手合わせも楽しかったですしね」
「現世の話も興味深かった」
「ハハ!だろーだろー、てことでアーチャー、迎えにきたぜ」
「いったい私に内緒で何をしていたのだね?」
「まぁ見てのお楽しみだな」
「満足していただけるかと思います。さあ、行きましょう」
晴れ晴れしい顔のセイバーに手を引かれ向かった先は己の座……
己の……
…………座?
――――ここは、どこだ。
己の座に着いたはずが、濃い緑の匂いと陽の光に照らされた空間に出た。
木々の隙間から、やけに神聖を湛えた湖も見える。
あまりにぽかんとしている姿が面白かったのか、セイバーがクスリと笑った。
「シロウの座がアレではあまりに寂しいと思いまして、英雄王発案で“りふぉーむ”なるものをしてみたのです」
いや、リフォームというかすでにもう別の空間なのだが――――
「空とか森とか基本の空間はオレがつくった。ちなみに四季と朝昼晩のサイクルもばっちりつくったぜ」
「湖とこれから向かう先の設計の基本を私が。湖にはギルガメッシュに魚を放してもらいました。今日は久々に鯖の味噌煮が食べたいです」
「それは、構わんが……(湖なのにサバがいるのか?)」
そこで、ふと肝心なものが見当たらないことに気づく。
「私の剣群はどこにやったのかね?」
「ん?あー、アレなー」
こっちこっちと誘われるままに進んだ先で、光を反射する透明なカーテンのようなものが空からかかっているのが見えた。
「ギルの野郎がみっともないとか言ってここに押し込めさせてたぜ」
……あれか、体裁の悪いものは押入れに全部押し込めておけというやつなのか!?
押し入れはゴミ箱ではないぞとついその収納術に関してぶつぶつとつぶやきながらカーテンをめくった先には、見慣れた赤茶けた大地に剣群が思いの外整然と並んでいた。
空はかつての赤く燃えがあるソレではないが、この空間だけはいつか見たあの別れの夕焼け色に染まっている。歯車は無くなっていた。
「綺麗に並んでいるが……これは本当にあの英雄王がやったのかね?それに、一本とんでもない原点が混じっているようなのだが……」
冷や汗がたらりと流れる。一目で誰もが畏敬の念を抱くであろうソレは、静謐な蒼き炎を刀身に纏わせ、形状はどこかギルガメッシュが持つエアを彷彿とさせる。
己が座にはセイバーの剣をはじめとする聖剣魔剣駄剣の複製が幾万ほど混在しているが、それらの剣を合わせたとしても敵わぬ存在感がある。
構造すべてを解析することなどできないが、それでも読み取れたソレは、神によりアダムとイヴが追われた後智天使ケルビムとともにエデンを守るために置かれた剣の炎(ラハット・ハヘレヴ・ハミトゥハペヘット)の原型、“リットゥ (マルドゥクの炎の剣)”。
乖離剣エアの原典はメソポタミア神話の創世叙事詩「エヌマ・エリシュ」であるが、その叙事詩の中心に据えられているのがマルドゥク神だ。
言うなればエアとリットゥは親子兄弟関係にある剣……
……なぜこんなところにバビロニアの最強神が持ったとされる“神造兵装”の真作が置かれているのだ!!?
だいたいこんなモノを置かれても使いこなせるわけがない。心臓に悪いだけだ!
「剣は餞別だそうです。『我の所有物であるなら真作も持っておらねばな』などと言って適当に入れていました。ちなみに、収納したのは英雄王が連れてきた大工たちです」
「大工?」
訝しげに眉を顰めれば、セイバーとランサーが顔を見合わせわけあり顔で笑む。
促されるままに歩を進めた先で、突如として森を抜けた。
そこには……
ありし日の衛宮士郎の思い出の中だけにあった武家屋敷が、実在をもって、その確かな存在を主張していた――――
「な!これは!!」
驚きと懐かしさと幾分かの寂寥の念を感じ、胸が締め付けられる。
セイバーとランサーがいたずらが成功した子供のような無邪気な笑顔でこちらを見つめていた。
――――ああ、君たちには本当に敵わない。
万感の想いを込めて告げる。
「セイバー、ランサー、ありが『遅いぞ雑種ども!!』」
バーン!!と盛大に音を響かせてギルガメッシュが玄関を開け放ち叫ぶ。
「宴だ!!雑種、疾く肴の準備をしろ!」
告げるだけ告げて自分はずんずんと家の中へ戻ってゆく。
それにひとつため息をついて。
はぁ、まずは、メシ使いの仕事をさせてもらおうか――――
――――
――――――――
セイバーの希望に答え、鯖の味噌煮を含む和食を中心とした献立は好評だったようで、セイバーはむろんのこと、ランサーもギルガメッシュも黙々ガツガツと箸をすすめてくれた。
今は縁側でアサリの酒蒸し、モツ煮込み、茸のバター炒めなどを肴に酒を飲み交わしている。
夜空を見あげれば、まさか、月と星の配置まで再現しているとは思わなかった。
無駄に芸が細かい。
「それにしても、オマエ私服黒ばっかなのな。もっと他にねーの?」
上下黒の出で立ちのエミヤに、ランサーがもっといろいろ着ろよと軽口をたたく。
「キミのアロハの趣味のほうが理解しかねる」
「なーにおー!?」
「ふ、雑種どもが何を着たところで代わり映えもせぬわ。だが、キサマの国には馬子にも衣装という諺があったのだったな、どれ、そのうち我がキサマらに何かめぐんでやろう」
「「いらん(ねー)!!」」
「英雄王、私はシロウの着流し姿が見たい」
「ははっ!よいぞセイバー。なればそなたにはメイド服を『エクスカリばりますよ』」
「そう照れずともよい。オプションで猫耳もつけてやろう。そういうのが下界では流行っておると聞いたぞ」
「お、いい趣味してるねぇ」
「……それ程まで私を貶めたいかギルガメッシュ!!ランサー!!」
うがーっ!!と武装して庭でやり合いだした姿に、鎖で巻かれギルガメッシュに盾にされたランサーを見て相変わらず幸運値が低いのだななどとつまらないことを考えながら思わず笑みがこぼれる。
「ふ、ふはっはははははっ!!」
(((シロウ(雑種(アーチャー))が笑った!?)))
はぁはぁと呼吸を整えて、眩しいものを見るように目を細め三人を見やる。
「キミたちはここでもそうなのだな」
目頭に溜まった涙を拭い、伝えねばと思っていたことを口に乗せる。
心の底からの謝意と親愛の情を込めて、伝える。
――――「オレ、すごく、幸せで、みんなでこうやっていられることがうれしいよ……ありがとう」
磨耗し果てた己が、今この瞬間は柔らかく笑んでいるのだろうと、思った。