――――「それで、キミたちは私に何か弁明はあるのかね」
白髪に褐色の肌の偉丈夫が、鋼色の瞳をすがめて静かに尋ねた。普段は皮肉気に笑んでいるその口元がよくみると少しひきつっている。
ここはエミヤの座。本来、歯車の軋む音だけが聞こえる赤く乾ききった剣の墓場であった、が……
見るも無残、天に坐した歯車はひしげ歯車の機能はすでに果たせそうにない。そのひび割れた空の隙間からは目に痛いほどの黄金の輝きがもれている。さらに、無限に突き刺さっていた剣群もまたその大半を残骸に散らし、光と緑に満ちた活力あふれる空間と、リンゴの木がたわわに実り蒼く澄んだ空と湖が美しい空間に侵食されていた。
思わず、なんでさっと自分の昔の口癖が出そうになるのをぐっとこらえる。そこに、
――――「シロウ、嫁に来てください」
――――「アーチャー、まぁツラかせや」
――――「喜べ贋作者、我の財宝の末席に加える栄誉をやろう」
この頭の痛い状況を作り出した三者が、ひとりは毅然として、ひとりは眩い笑顔で、ひとりは尊大に言い放った。
「……いったいどういう状況なのか全くわからないのだがね」
「アラヤに衛宮士郎を宝具登録するよう私たちで要請しました」
何気なくセイバー……アーサー王、アルトリアが言ったその言葉にぎょっとする。
「それは……なかなか難しいと思うのだが……」
便利な掃除屋をそうそう手放すはずがないと信じられない気持ちで答えると、
「それが案外すんなり受け入れやがったぜ、なあ、」
クー・フーリンが二人をチラと見る。
「ふんっ、我がしろと言ったのだ。受け入れぬわけがなかろう」
「たわいないものでした。円卓の騎士を召集するまでもなかった」
「オレもあいつら呼ばなくても別によかったかもなー。てか、エアはやりすぎだったろ」
ハハッと豪快に笑い、満足げに頷きあう三人にエミヤは脂汗がにじむのを感じた。
こいつらは、イマなんと言っていた?エンタク?アイツラ?エア?
一瞬、三人が円卓の騎士と赤枝の騎士団を引き連れギルがメッシュが天地を乖離しかけている様子が脳裏にまざまざと浮かびかけ……頭を振って、考えないことにした。
「それで、私は結局どうなったのだね……」
どこか疲れた様子で問うたエミヤに、
「ハッ!雑種が、これだけ説明しても理解できぬとは頭の程度が知れようぞ」
「シロウへの侮辱は私への宣戦布告とみなすがよいかギルガメッシュ。まだ突然のことで混乱しているのでしょう。――――シロウの所有権はアラヤから私たちに委譲されたのです」
「そーそ、アラヤの掃除屋改め俺らの【宝具エミヤ】になったってーワケよ」
怒涛の簡潔すぎる説明がきた。
「な、な、だが、しかし……」
確かに、ラインがいつのまにか三人と繋がっているが、混乱して何が言いたいのかもわからず言いよどむ。
「あんま深く考えんなって!オレらはオレらの好きなようにしたんだからよ。オレらの所有つっても、おめーも好き勝手すりゃいいんだ」
ニカッと底抜けに明るい笑顔で蒼き槍兵が言い、ぐしゃりと色が抜け落ちた髪をかき回す。
「そうです、シロウ。貴方が正義の味方となるのなら、わたしは正義の味方の味方となりましょう。差しあたっては、妻になってください」
そう言って騎士王はエミヤの手をとりうやうやしく口づけた。
あまりのことに頭が真っ白になっていると、ギルガメッシュがエミヤの顎にそのしなやかな指を這わせくいと上に持ち上げる。困惑の表情のエミヤに神世の赤き瞳を嗜虐にきらめかせ、耳元に唇を寄せた。
「つけあがるなよ贋作者。キサマの手癖の悪さには吐き気がする。が、しかし、その醜態もここまで愚直に至れば我を笑わせよう。ゆえに許す、これからも我を興じさせよ」
その艶やかな声に思わず背筋が震える。
――――「まぁ、あれだ。てめぇはだまってオレらに幸せにされてりゃいいってこった!」
荒廃の空気が支配していたエミヤの座に、さわやかな新緑の風が吹いた。
期待しかない!!!!