インタビュー

首相のカタログギフト「三権分立ゆがめる」 専門家が指摘する弊害

聞き手=千葉卓朗

 高市早苗首相(自民党総裁)が、衆院選で当選した党所属の全議員315人に、1人当たり3万円、総額1千万円相当になるカタログギフトを配っていた。首相は「法令上、問題ない」とするが、高安健将・早稲田大教授(比較政治学)は「三権分立の権力間の緊張関係をゆがめ、民主政治の発達を阻害する」と指摘する。問題点を聞いた。

 ――首相は、政治資金規正法には抵触しないと主張している。

 「抵触しないにしても、行政のトップである首相が、衆院の議席で3分の2を超える自民の国会議員に対して物品を贈った今回の行為は、三権分立の権力間の緊張関係をゆがめるものだ。首相は、政府予算案を早急に成立させたいとして、異例の速さの審議を国会に求めてもいる。この状況で、自らが代表を務める政党支部を介して国会議員に広く物品をばらまくのは非常に不用意で、政治資金規正法の基本理念に示される民主政治の健全な発達を阻害する」

 ――一昨年の衆院選と昨年の参院選では、派閥の裏金など「政治とカネ」の問題もあって自民は大敗した。

 「多くの有権者は、自民の裏金問題に嫌気がさしていた。にもかかわらず、今回の衆院選では首相の人気で自民が大勝した。その途端に、政治に金品が絡むような問題がまた出てきた。永田町の金銭感覚のおかしさが、結局なにも変わっていないことを、よく表している。政治資金の元手が献金など人々から集めたお金であるという意識も薄い。裏金問題に関与した自民議員も、多くが今回の衆院選で復活した。元の木阿弥(もくあみ)の状態になりつつある」

 「結局、カネの絡む政治のあり方が、自民の議員にとっては、人間関係を作る手段としてメリットがあるということなのだろう。こうした状況では、有権者は政治とカネの問題に関与した議員を落とし続けるしかない。だが、そればかりもやっていられないので、最後は有権者の方が諦めてしまうことになりかねない。政治資金を適切に使う政治家を、有権者が育てていく必要がある」

 ――首相も大半の自民議員も、政治資金で総額1千万円相当の品を300人以上の議員に贈ることについて、問題視されることが理解できないといった反応だ。

 「大きな批判を浴びた石破茂前首相の時の商品券とは1人当たりの額や中身に違いがあるにせよ、高市首相のカタログギフトも、世間には似たような行為に映るのではないだろうか。高市首相には裏金問題の反省は感じられないし、権力を抑制的に使う姿勢もみえない。大与党のもとで民主政治の健全な発達が徐々に阻害されていかないか懸念している」

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