カルデア若返りエミヤとホロウ時空②
今日新しく追加されたクエスト?にも関わるような内容にアレンジしてみました。
※終局特異点クリア条件のヤツ
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「一時的にサーヴァントを受肉させる薬?」
ㅤ手渡された小瓶に入っていたカプセル型の薬を一粒摘み、ダヴィンチに疑問を投げる。
ㅤ見た目は青と白、二種類の色をしたごく一般的な風邪薬。けどその中には、微弱な魔力が粒上に混じっているのがわかる。
「ホントは違う用途で使ってもらう予定だったんだけどね…今回だけは特例で服用を許可するよ。────そう、これは言葉通りサーヴァントを受肉させる類の薬だ。効果はたしか、えーと、十日ぐらいだったっけ」
「解説中にすまない。そもそもの話だ。それ以前に、何故受肉する必要がある?目的は現地で発生している異状の調査の筈。念には念を、なのかもしれないが」
ㅤ先程服装をどうするか考えていた時、いつの間に用意していたのだろう。紺色のトレンチコートにジーンズパンツ、黒のハイネックなどがマイルームのベットにどっさり置かれていた。
ㅤ町の住民に溶け込む為にはぴったりな服装だと判断し、ある物の中から数種類選んで袖を通す。
ㅤ納得してないが、女性陣からみれば自分流のコーディネートセンスがあまりにも酷いらしく。ㅤ
ㅤそれで結局、顔馴染みのある女性サーヴァント達がチョイスした服を着ることになった。
「君が準備している間に再度調べてみたよ。今回の擬似特異点は、以前レイシフトした新宿と同類の可能性が高い。私達の歴史から切り離された世界。そのままにしていても、なんらこちらには悪影響を及ぼす事の無い特異点だ」
「それなら別に俺がレイシフトする必要性はゼロなのでは?」
「可能性が高いってだけで、確定事項じゃない。もしも、万が一の事を考えておいた方が、マシュや立香達の為になるとは思わないかい?僅かに残っている可能性を、ゼロにしなければならない」
ㅤそれに、と言葉を続ける。
「その冬木の聖杯戦争が既に終結している。そんな時に新たなサーヴァントが出現したとなれば他のサーヴァント達が黙っていないわけが無い」
「なるほど、了解した。であれば、この調査中は偶然冬木に訪れた旅人を装えばいいって事だな」
「まぁそんな感じで頼むよ。その他の細かい設定は全て君に任せるからさ」
ㅤそれが今から約十三時間前の会話。
ㅤその後は何の問題もなくレイシフトし、真っ先に衛宮邸へ向かう。
ㅤ受肉しているので当然徒歩なのだが、運良く知り合いとは誰とも遭遇することはなかった。
ㅤレイシフトから小一時間で衛宮邸に到着。
ㅤ土蔵で昼寝をしている未熟者に、おもわず拳で鉄槌をくだしてしまった。そもそも呑気にぐーすかと目の前で寝る未熟者が悪い。頬を叩いても起きる気配がないので、しょうがなく毛布を投影してコイツにかける。夕方になり六時を少し過ぎれば、衛宮邸にやって来たのは三名の女性。
ㅤ桜、セイバー、ライダーだ。ライダーの訪問は予想外だったが、その驚きをどうにか隠して出迎える。最初は少しだけ怪しんでいたセイバーとライダーでも、俺は燕青のように上手く変装する事は出来ない。元が衛宮士郎なので、誤魔化し様はいくらでもあった。
ㅤそして次の朝。呆れるほどに寝こけている衛宮士郎を無理矢理目覚めさせ、今に至る訳だ。
ㅤドスドスと、二人分の足音が響く。
ㅤ先を歩く者は目的に迷わずズンズン進み、後ろにいる者は目の前の人物の後を急ぎ足で追う。
「あの…すいません、どちら様です、か?」
ㅤぎこちなくそう言うのはこの衛宮邸の家主であり、聖杯戦争の勝者、衛宮士郎だ。俺はこの衛宮邸に今日から世話になる(予定の)旅人。事情の知らない周りからみれば、立場は逆にみえるかもしれない。いや、誰がみてもそううつるだろう。
「どちら様、だと?取り敢えずは、ただのしがない旅人、と名乗っておこう」
「真面目に答えてください、お願いします」
「…………ふむ。流石にこれでは少し無理があったか」
「少し所じゃないぞ!!ていうかほんとなんなんだよアンタ!さっきから屋敷中を歩き回るなり隅にホコリがあるだの清掃が行き届いてないだの!いっそのこと不法侵入で訴えてやろうか!?」
「俺が躊躇もなしに、屋敷を玄関から入った時点で通報する時間は幾らでもあったんじゃないか?衛宮士郎」
「ぐっ…そ、それは」
「ハ、これだから未熟者はいつまでも未熟者なのだ。遠さ…コホン、お前の教師、或いは師匠からにでも、うっかり体質がうつってしまったんじゃないだろうな」
「………………」
ㅤ遂に無言になった未熟者こと衛宮士郎は、そのまま黙って桜達が待つ居間へ向かっていった。
ㅤ勿論俺もついていくのを忘れない。
ㅤ
◆ ◇ ◆
衛宮士郎side
ㅤ突然現れた正体不明の青年と居間に入れば、やっぱり桜とイリヤはあんぐりと口を開けて驚いていた。そして目の前にいる───
「あの────シロウ?これはどういう」
ㅤいつもは何事にも応じないセイバーでも驚きを隠せないでいた。なにせ、双子のようにそっくりな容姿をしている青年が俺の後ろに立っている。雰囲気は何処と無く、あの皮肉屋なアーチャーを連想させた。実際のところ、よくわからない。
「居間に入らないのか、君達」
ㅤ混乱状態にある俺達のことなど露知らず、旅人と名乗る青年は居間にあがっていく。少し遅れて反応を示した俺とセイバーも後に続いた。
『いただきまーす!』
「いただきます」
「…は?」
ㅤそれぞれ微妙に違った合掌が響き渡る。
ㅤテーブルには焼き魚を主菜にした朝食が、実にズラッと六人前。この場にいるのは七人だが。
「この朝食は君が作ったのか。今朝からご苦労様だな。何度も言うけど、俺なんかが食べていいのか?どこの馬の骨なのかも分からない男を」
「私は大歓迎ですよ?最初は驚きましたが、料理の仕上げや盛り付け時の的確なアドバイスをしてくれた御礼です。それと、私の事は桜と呼んで貰っても構いませんから」
「む……あぁ、ありがとう桜」
「はい!」
「………何か大切な物を奪われた気がする」
◆ ◇ ◆
「…聖杯戦争に興味、ねぇ」
ㅤ藤ねえから条件付きで宿泊の許可がおりた、俺そっくりの自称旅人。ドッペルゲンガーと疑われてもおかしくないほどによく似ている。
「世界には同じ顔の人間が三人いるってよく言うだろ?もし俺が此奴のドッペルゲンガーならとっくにこの世からおさらばしてるって。聖杯戦争に興味、というか、冬木で開催された第五次聖杯戦争に興味があるんだよ。あらかじめ言っとくけど、俺は大した魔術師じゃない。この状況を変に引っ掻き回す気はないので安心してほしい」
「聖杯戦争に興味を持つのは、別に構わないわ。もうとっくの昔…半年前に終結してるんだから。私達が知りたいのはそこじゃないのよ。わかるでしょう?」
ㅤイリヤは男の眼を真っ直ぐ見る。
「下の名前は訳あって名乗れないが…名字は、いいか。これは偶然なんだ」
ㅤ男はしぶしぶ『エミヤ』と名乗った。