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「運用型クリエイティブ」で変わるこれからのデジタル広告

デジタルマーケティングを推進する上で、広告クリエイティブの最適化と言っても、実際のところ何が正解なのか分からない、メディアのパフォーマンスの最新状況は把握しても、スピード感をもってクリエイティブ制作を改善する手立てや体制がない……など、頭を抱えているケースが増えてきています。

そこで「クリエイティブを運用する」という思想で、広告クリエイティブ制作のクラウドサービスを設計・提供している株式会社リチカの事業開発責任者・妹尾浩充さんをゲストにお招きし、博報堂DYホールディングス戦略投資推進室インダストリーアナリスト・加藤薫が「運用型クリエイティブ」の考え方について深掘りしていきます。

メディアとクリエイティブ、どちらのほうが重要なのか?

加藤:今回の対談は、博報堂DYベンチャーズがリチカに出資しているご縁で実現しました。妹尾さん、まず自己紹介をお願いできますでしょうか。

妹尾:これまでに、映画やコンテンツのプロデューサーを経て、その後マーケティングの業務を経験した後、リチカにジョインしました。

現在は、主に公認パートナーシップを結んでいるMeta(旧Facebook)やヤフーとの共同研究やアライアンス連携、また事業会社や広告会社の皆さまにデジタルマーケティングのプロセスを一気通貫してご支援する商材開発などを行っています。本日は、広告プラットフォームの皆さまや多くの企業さまのマーケティングをご支援するなかで得られたナレッジや考え方をお話できればと思います。

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株式会社リチカCMO・妹尾浩充さん

加藤:デジタルマーケティングの現場では、効率的な広告運用をするために、メディアの予算配分を通じて、媒体やプラットフォームにどう出し分けていくかに意識が向きがちです。妹尾さんは、この点をどう思われていますか?

妹尾:あるメッセージを企業からお客さまに伝えるとき、「Who・誰に」「When・いつ」「Where・どこで」といった要素は、もちろん重要だと思います。

しかし、本来もっとも大切なのは「誰の、どのような問題を、どういうふうに解決するのか」というメッセージ。これはどのメディアに広告を出稿するかではなく、クリエイティブに何が書いてあるのかによって変化します。そう考えると、クリエイティブが持つ意味は非常に大きいのではないでしょうか。

加藤:脱Cookieの流れなど、個人を特定するターゲティングがやりづらくなっていくにつれ、クリエイティブが活躍する余地も広がっていくのでしょうか?

妹尾:そうですね。従来のテレビCMがマスに情報を届けるのと違って、デジタル広告はメディアのユーザーごとにターゲティングできるため、効率的な出稿やデータを踏まえた改善ができるのがポイントでした。

しかし最近は、機械学習でのターゲティング精度向上をコアな価値としているメディアも増えています。さらにはメディアも複雑化するなかで、媒体への最適化というのも非常に大きなテーマになっています。そうしたときに、見る人、見るとき、見る場所に応じたクリエイティブこそ、コンバージョンへと繋がる潜在的なお客さまのターゲティングになるのではないでしょうか。

クリエイティブを軸にデジタル広告の運用を行う「運用型クリエイティブ」

加藤:リチカの掲げる「運用型クリエイティブ」、この概念について詳しくお伺いできますか?

妹尾:一言でまとめると、クリエイティブを軸にデジタル広告の運用を行うことです。今までもA/Bテストなどさまざまな形で行われてきました。しかし、より戦略的にデジタル広告に取り組むうえで、もう少し上位概念から捉え直していくことが大切です。

ポイントは3つです。1つ目は、まずは動画と静止画を両方配信すること。

2つ目は最適化。メディアの中で見られているもの、それもいつどのように見られているのかも異なるのでこの部分をきちんと最適化します。

最後が運用です。メッセージの戦略をプランニングして、クリエイティブの量産体制を作って広告を回していくプロセスそのものです。


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動画と静止画の広告、どちらのほうが成果につながる?

加藤:1つ目のポイントだと、「動画と静止画、成果が出やすいのはどちらだろう?」という基準でつい考えてしまいますよね。

妹尾:そうなんです。ですが、成果を出すためには「動画と静止画、どちらもやる」というのが正解でして。

この根拠の1つとして、Facebookが公開しているデータがあります。動画と静止画の両方を配信した場合と、静止画しか配信していない場合を比べると、両方配信したときのほうがコンバージョン率が17%高かったのです。


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妹尾:
また、弊社とヤフーとの共同研究でも、静止画と動画の広告を両方クリックしたユーザーは3.7%しか重複していなかったというデータがあります。

ここから、動画と静止画で配信される先が分かれているために、反応するユーザーがそもそも違うのではないか、と予想できます。

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妹尾:さらに、静止画と動画の役割がそもそも違うということも考えられます。静止画で伝えられる情報量は限定的です。なので、すでにニーズが顕在化した層に対して、ハードルの低いアクションを起こすのに向いています。

一方で、まだ自分自身でもニーズに気づいていない潜在層に対しては、動画を通じて、一定の説明が必要です。テレビCMの役割と近いため、動画のほうが相性がいいのはイメージしやすいのではないでしょうか。

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妹尾:また、静止画広告のみだと、ユーザー層がどんどん磨耗していき、広告成果が落ちていくとよく聞きます。それは顕在層だけを獲得しようとし続けているからであって、潜在層の育成やニーズの顕在化ができていないから起こるのではないでしょうか。

加藤:広告フォーマットの特性で「静止画=顕在層、動画=潜在層」という形になっているというのは、とても理解できます。

クリエイティブ制作でもっとも大切な要素はメッセージ

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加藤:クリエイティブの中でもいろいろな要素がありますよね。結局、何が一番大事なのでしょうか?

妹尾:これは大きく2つの観点があると思います。

1つは、無形商材か有形商材か。有形商材であればその物自体のビジュアルが与える情報量が非常に多い。一方で、無形商材の場合は具体的な商材は目に見えないので、ベネフィットが提供できる商品なのか、テキストで伝えなければいけません。

もう1つは、より正確な情報が必要かどうか。生活者が購入につながる最後の意思決定をするときは、より正確な情報を求めます。つまり、テキストが与える影響が大きくなるのです。

イメージ喚起するにはビジュアル、より正確な情報を届けるにはテキストが適しています。獲得目的であれば、テキストの重要性は一層高まります。

加藤:なるほど、面白いですね。

妹尾:ただ、テキストもイメージもやはり要素でしかなくて、より成果に大きく影響するのは結局、何を伝えたいのか。つまり「メッセージ」なんです。

デジタルだと、「とりあえずコピーのA/Bテストをしよう、ビジュアルのA/Bテストをしよう」と安易に考えてしまっていた部分が今まであったかな、と。

A/Bテストで検証すべき対象はコピーやビジュアルではなく、その上流にある「誰のどんな問題を解決するのか、どんなベネフィットで解決できるのか」。リチカでは、このメッセージ自体の検証に最も価値を置いています。

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加藤:確かにそうですね。テレビCMを作るときは、何をメッセージとして投げかけるのか丁寧に練り上げていくのに対して、デジタル広告になった瞬間に要素を分解してしまう。

メッセージを検証していくうえで、「運用型クリエイティブ」の考え方が活きるのですね。

妹尾:はい。たとえば、Yahoo!、YouTube、TikTok、Instagram、Facebookではそれぞれの視聴者や視聴態度、UXが違うので、最適なクリエイティブの形式も当然異なります。

しかし、何が最適化なのか分かっていないために、同じクリエイティブをいろんな媒体でそのまま出してしまっているのが現状なのかな、と。

加藤:単にテレビCMをデジタル広告用にリサイズすればいい、というではなく、運用という概念で最適化していくのですね。

妹尾:そのとおりです。デジタル広告はテレビCMと違って、最初の2秒で離脱されてしまう。冒頭にキーメッセージがないと何も伝わっていない状態になるので、そもそも作り方の発想が違うんです。

メッセージが当たって初めて運用がうまく回り出す

加藤:先日、とある運用型広告を担当している現場の方にヒアリングしたら、CMからデジタル広告のリサイズした際のクリエティブの確認に時間がかかってスピーディーに出稿ができないし、メディアの運用実績からPDCAをまわそうとすると、クリエイティブ変更のスピードが追いつかず実施が2~3週間も先になってしまうと嘆いていました。

妹尾:この時代、テレビCMだけで施策が終わることはほとんどありません。テレビにもデジタルにも出稿することを前提に、撮影や素材手配をしないといけないですね。

加藤:それに、メディアの効果検証までをレポーティングするチームと、実際に広告を制作するチームが分断されているケースが多いことも課題ですよね。

妹尾:やはり戦略から制作、そして運用まで一気通貫していることが鉄則だと思います。どのプロセスで、どの数字をどう活かしたいのか? KPIが明確になっていること、さらにクリエイティブとメディアの担当者が、同じ数字をしっかりと認識することが重要です。

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加藤:チーム全員が同じ目線で取り組むことで、それぞれの持ち場の改善が効くのですね。ここでいう「同じ目線で取り組むためのKPI」には何があるべきでしょうか。

妹尾:成果が出るときのキーサクセスファクターは、メッセージです。「この商品やサービスは、このお客さんのこんな問題を解決する」という価値自体を示すメッセージが当たって初めて、運用全体がうまく回り始めます。この意識を全関係者が持つことですね。

加藤:目を引くデザインとか、そういった表面的なところではなく、もっと本質の部分ですね。

妹尾:はい。「CTRを最大化しよう」という目標がよくあると思いますが、正直あまり意味がないと思っていて。そのメッセージで誰を連れてくるのか、もっと全体的に捉えなければいけません。それが結果的にCVRにも影響してくるのだと思います。

加藤:適切でないKPIや部分最適化のせいで全体が歪んでいく。いろんなところで起きていそうですね。

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妹尾:私たちが動かそうとしている生活者は、あくまでも一人ひとりなんです。運用側のチームだったとしても、プランニング側のチームだったとしても、お客さまは一人。いかにこのデジタルマーケティング自体が全体最適を見つめ続けられるか、ですね。

もしかすると、正しいメッセージのデジタル広告を出すことは、リアル店舗によい看板をつけることに近いのかもしれません。

間違った看板で集まったお客さまは顧客単価も低いし、そもそも定着しない。正しいお客さまを集められる看板があれば、自然といいお客さまが定着しますよね。

加藤:クリエイティブが、看板に偽りがある状態になってはいけない、ということですね。

妹尾:そうですね。ただ、生活者も配信面も、テクノロジーによって多様化しています。そこを最適化しようとすると、人力だけでは難しく、大量に実装するときには一定の枠組みが必要です。テクノロジーによって多様化したものは、テクノロジーによって最適化していくべきなのかなと思っています。

クリエイティブは、勘や経験が物を言う分野と言われていて、手を付けきれなかった部分があったと思います。だからこそリチカは、クリエイティブ×テックで、スピーディーにこの課題を解決していく。そこに我々の役割を置いていると認識しています。

これから、デジタル広告はあらゆる場面に登場する

加藤:なるほど、大量実装しても再現性があるのは、リチカさんの中で定義や検証ポイントが整理されているからなのだと思いました。この考え方とそれを実現するためのツールがセットになっているのが、リチカさんの強い信念なんですね。

妹尾:おっしゃるとおり、思想と実装はセットです。考え方のフレームワークがあって初めて運用ができるのであって、道具だけあっても運用はできません。

仕組みはもちろん、その発想自体に価値があると思っているので、思想と実装の両方を支援していきたいと思っています。

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加藤:現状のスクリーンを中心としたメディア接点だけでなく、サイネージや様々な場所に広がるIoTデバイスなども含めて、博報堂DYグループでは「生活者インターフェース」と呼んでいます。今後はそうした場所にもデジタル広告は入っていって、企業と生活者の接点は広がっていきますよね。

妹尾:まさに「生活者インターフェース」は非常に増えていると感じます。最近の取り組みでいえば、タクシー広告やエレベーター広告がBtoB領域では人気ですね。

あと、まだ私たちは関与していないのですが、トイレにディスプレイが付いてくるというのもあって。いわゆるODM広告が広がってきているな、と。

加藤:このように条件が広がっていくと、クリエイティブを自動生成して検証することになっていくのでしょうか?

妹尾:クリエイティブを作っていく過程も自動化されていくはずです。これは私たちのミッションである『Switch to The Rich. クリエイティブで、世界を豊かに。』にも繋がっており、リチカも一翼を担う存在でありたいです。

企業が伝えたいメッセージがあったとしても、いろんなメディアが多様化していて、生活者も多様化している。その課題があるために最適な形で伝えられない。この負をテックの力で解消していきたいなと。

加藤:博報堂DYグループのクリエイターたちも、何をどう提案していくか、メッセージに対してかなり知恵を絞っていますが、デジタルでももちろん一緒なんですよね。

メッセージの検証や改善のためにツールを使う。表面的なクリエイティブだけではなく、その思想をどうやって伝えていくのか。ツールに使われてしまうのではなく、思想とツールを組み合わせる。たくさん発見がありました。

妹尾:今、一人の生活者の心を動かそうとしたとき、広告主や広告会社、あらゆるプレーヤーがいろんなことを考えてようやく1つのクリエイティブ、施策ができていますよね。

そこで意外と重要なのが、この分断をなくしていくためのメッセージと数字、そして配信の最適化。誰のどんな問題を、どうやって解決するのか。さらに、そのプロセスを何をもって検証していくのか。まさに、思想と実装によって分断をなくし、一気通貫させるコミュニケーションとそのアウトプットが大事だと思います。

加藤:いいですね、思想と実装。ぜひ、私たちもご一緒していきたいと思います。本日は本当にありがとうございました。

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●プロフィール
株式会社リチカ  事業開発責任者/ビジネスプロデューサー 妹尾浩充

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株式会社IMAGICA(現 株式会社IMAGICA GROUP)のデジタルメディア営業職として、キャリアをスタート。コンテンツ、映画プロデューサーとして活躍。その後、Amazonプライムビデオにて「ドキュメンタル」「バチェラー・ジャパン」などオリジナルコンテンツを中心にマーケティングマネージャーとして携わる。2019年、株式会社リチカにジョインし、事業開発責任者としてMeta・Yahoo! JAPANなど広告プラットフォーム事業連携や新規事業開発などを行っている。

博報堂DYホールディングス 加藤薫

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戦略投資推進室 インダストリーアナリスト
1999年博報堂入社。営業職として菓子メーカー・ゲームメーカーなどの広告業務に携わった後に、2008年から博報堂DYグループ内メディア系シンクタンク「メディア環境研究所」にて国内外の生活者調査やテクノロジー取材に従事。2021年4月より現職。スタートアップ企業との連携を促進し、社会へのインパクトを創出すべく活動中。

記事企画=博報堂DYホールディングス戦略投資推進室
(執筆=矢内あや 編集=鬼頭佳代/ノオト)

※本記事は生活者データ・ドリブン・マーケティング通信 https://www.hakuhodody-ventures.co.jp/news47/ からの転載です。


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