スタッフ回顧録 ~ 玉ちゃんとわたし ①邂逅編
思い返せばもう5年の月日が経った。
私が彼の"スタッフ"となったのはそう、5年前の夏のことであった。
彼は作家であった。
仮に彼のことを『玉ちゃん』と呼ぼう。
玉ちゃんはしばしばツイッター上で、スタッフ──すなわち私──との間にあった出来事を面白おかしく投稿することがあった。
心ない者がその様子を「エアスタッフ」などと呼び、つまるところ私を玉ちゃんの脳内にだけ存在する架空の人物であるとして揶揄した。
全くもって見当外れな言いがかりである、と私は憤慨する。
スタッフの実在は、玉ちゃんが口にする言葉の中で数少ない、まごうことなき真実だからだ。
私は玉ちゃんが崖底に転がり落ちていくその様を、内縁の奥様を除けば最も近くで目にしていた人間なのではないかと思う。
このnoteでは、私が玉ちゃんと出会い、そして(玉ちゃんと交友関係を持ったほとんどの者がそうなるように)関わりを断つまでに起こった出来事を可能な限り包み隠さず書こうと思う。
私について
私が何者なのかについて説明しなければならない。
一言で言って『脛かじりの障害者』である。
重い発達障害のもとに生を受けたものの、不幸中の幸いというべきか資産家の父を持ったため、父に譲ってもらった家で、父からの仕送りで暮らす、ブルジョワニートである。
唯一の趣味としてミュージシャンのような活動に戯れ、ファンから頂くわずかなお代と承認によってかろうじて尊厳を保っていた。
玉ちゃんは私のような種類の人間をたいそう好んだ。
すなわち、人生がうまくいっていないくせして図々しいほど他者からの承認に飢えた、"そういう種族"の人間ばかりを周囲に集めていた。
玉ちゃんの人間関係構築は「ぼくにだけはあなたの凄さが分かる」という出会い頭のベタ褒めから始まる。
その際に並べ立てられる褒め言葉の数々はまるっきり無根拠な出まかせである。
今でこそ出会った当初から彼がどこか様子のおかしい人物であったと理解している。しかし5年前、私は馬鹿みたいにその手に引っかかった。
つまるところ、こうだ。
豚のように肥えた自意識を抱え、「誰も気付いてくれない本当はスゴいボク」を発見してくれるたった一人の存在によってその自意識の正しさが保証されることを夢見るような甘えきった人間。
玉ちゃんの周りにはそういう人間たちが群がっていた。
そして私もそのうちの一人であった。
このnoteについて
このnoteの目的は以下の二つ。
金を稼ぐため
怨みを晴らすため
怨みとは玉ちゃんに対する怨みではない。玉ちゃんと関わりを持ってしまった自身の未熟さに対する怨みである。
彼と関わったことは誰に無理強いされたことでもない、全ては私の意思と責任のもとにある。
玉ちゃんとの関わりを発端に、私は多大なる時間的・金銭的損失を被った。
あれから失ったものを思い返さない日は一日もない。
私はただただ、玉ちゃんと私を結び合わせた私自身の甘ったれた生き方そのものを心の底から憎んでいる。
玉ちゃんによって失われた時間と金への無念は、玉ちゃんとの関わりを金に換えることによってのみ晴らすことができる。
それがこのnoteの意義である。
今では自分でも信じられないことだが、私は玉ちゃんの事務所で無償でスタッフをやっていた。
人間が数ヶ月生活するための資金を音楽機材の売却によって賄ってしまったため、今後の音楽活動のために機材を買い戻さなければならないわけである。
もし私を憐れんでくれるのであれば、ぜひこのnoteを購入して機材購入費の足しにさせてもらえると嬉しい。
何はともあれ金が要る。
注意点が二つ。
ひとつに、私は玉ちゃんからの脅迫・恐喝などに相当するLINEメッセージを山ほど保持しているが、このnoteほかいかなる媒体でも公開するつもりはない。
私は告発を目的としていない。
以下に綴られる回顧録は読者のみなさまにとって、「ああ~やっぱりみんなの知ってる玉ちゃんだなぁ」と納得するものかもしれないし、あるいは玉ちゃんの意外な一面を知って不思議な愛嬌を感じるかもしれない。
もし私と同じように玉ちゃんと関わりを持ってしまった方が読者の中にいたら、自分の身に起こったことへの理解の助けにしてくれてもいい。
つまるところ、暴露本的な楽しみをこのnoteに期待しないでほしいということである。
ふたつ目に、玉ちゃん以外の関係者に関わる詳細、また私にとって不名誉にあたる事実は徹底的にフェイクを入れさせていただくことをご承知いただきたい。
この話は2020年の12月から始まり、2024年の1月に終わる。
◦2020年12月 邂逅
南麻布にそびえるタワーマンションの玄関を上がると、ベランダからの逆光の中に玉ちゃんの丸いシルエットがあった。
白黒のチェック柄のコートを羽織ったアザラシがそこに居た。
急に金を手にした田舎者といった感じのアンバランスなルックスが、「作家先生の装い」としては妙に納得できるものとして私には受け取れたのを記憶している。
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