【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録 作:Lilyala
またはちゃんと知識継承の出来た霊的組織
始まりは当然に
自分が〝ナニモノ〟なのか、という事を理解したのは、本当に突然だった。
──ぐちゃ、ぐちゃ。
黒い霞の様な何かが〝母だったモノ〟を貪り、自らの上に乗る黒い霞が
だからこそ、俺は生き残る事が出来たのだろう。
──ガァァァァッッ!?
即座に噛み付いたのだ。腹筋だけで上半身を起こし、黒い霞──いや、実体を持ち始め〝俺〟の記憶にある姿そのままの【餓鬼】に。
痛みに暴れ狂う餓鬼の力は先程までとは比べ物にならないぐらい弱々しく、〝ぼく〟の記憶が確かならば、四歳児に過ぎない俺を振り解く事すら出来ない。
そんな餓鬼とは裏腹に、俺の方は噛み付いた瞬間から出所不明の超パワーが漲っているらしく、残った左腕で簡単に餓鬼を振り払う事が出来た。
「……ふむ」
失った右腕のせいで少しばかりふらついたが、何とか立ち上がり、壁に激突して怯えた顔をこちらに向ける餓鬼に視線を向ける。
「俺の右腕は美味かったか?」
一歩、また一歩と踏み出し、怯える餓鬼を追い詰める。──そして。
「気付かない
母親を貪り喰っていた二体目の【餓鬼】を蹴り飛ばす。
窓ガラスをぶち抜いて吹き飛んでいく二体目。それを尻目に見送り、一体目を指差し、告げる。
「飯代はお前の命でいいぞ。腹減ってきたしな」
◇
星一つ無い黒い空。照らされている訳でも無いのに何故かハッキリ見える町並み。
〝ぼく〟の記憶には存在せず、〝俺〟の記憶ではゲームだった筈の世界。そんな世界で
片目から流れる涙は〝ぼく〟のモノか、それとも〝俺〟のモノか。
どちらにせよ確かなのは、この世界は本当にクソで、救いは無く、いずれ終わるという事だけだろう。
◇
──数時間前、餓鬼二体討伐直後。
「まさか
暮らしていたアパートの外壁に背中を預け、喰われた筈の
キッカケは最初の餓鬼の血肉を飲み込んだ時だった。一体目が動かなくなるまで蹴り続けている時は気付かなかったが、最初に噛み付いた時に噛み千切っていた血肉が口の中に残っていたらしく、口の中の異物を飲み込んだ際に右腕に違和感を感じたのだ。
その時、俺は漸く自分の右腕から血が流れていない事に気付いた。
出血多量で今すぐ死んでも可笑しく無いにも関わらず、痛みすら和らいだ事に。
後の事は語るまでも無い。動かなくなった餓鬼が光となって散るまで、生きたまま喰らったのだ。二体目を追いかけてまで。
(……原作的に言うなら【丸かじり】辺りかねぇ)
作品によって出たり出なかったり効果が違ったりするが、ざっくり説明するならばHP吸収攻撃というやつだ。
他にも【暴飲暴食】や【吸血】等の同じ効果のスキルもあるが──腕の再生速度やその為の必須行動的に【丸かじり】で間違い無いと思う。
とはいえ何の問題も無い訳では無い。
悪魔を食らっておいて何を今更と言われるかも知れないが、まず可笑しいのだ。
四歳児である〝俺〟が小学生ぐらいの大きさである餓鬼を二体も喰らったのにも関わらず、体型に変化が無い。
ついでに空腹感こそ薄れたが、満腹には未だになっていない。──そして。
「何というか……〝薄い〟んだよな、この腕」
時々、黒い霞に戻る様に揺らぐ腕を見ながら溜め息を吐き出す。
たぶんこの腕は原作世界で〝マグネタイト〟と呼ばれる物質?か魔力?的な何かで形作られているだけなのだろう。
確か悪魔を形作るモノとして作中で扱われていたし、お金や素材にもなっていたし。
個人的な感覚で言えば、肉やら米やら現実世界のモノを食べれば普通の腕に戻る気もするが、確証は無いし、その余裕も無い。
ここは未だに悪魔が蔓延る【異界】の中なのだから。
(……取り敢えず動くか)
まずは現状の把握と自身の強さを調べる。未来の事は未来の俺に任せる事にしよう。
◇
スライム、餓鬼、ウィルオウィスプ。現実になったこの世界で一番辛い敵は誰か?と問われたら、俺は間違いなくスライムだと答える。
「【
正直言えば、どれも大差無いと言えば大差無いのだが、
「【
気合で何とかなる混乱や幻覚と違い、毒は自然回復するまでの間、灼ける様な痛みに耐えながら敵を探し、喰らい続けなければアッサリ死ぬ。……いや、自分の感覚を信じるならば、そう簡単に死にはしないと思うのだが、ゲームの時とは違ってHPが見えないという事が想像以上に辛く、どうしても臆病になってしまう。
とはいえ俺はまだマシなのだ。何故なら〝奴ら〟が見え、抗えるのだから。
「うわぁぁぁーッ!手がっ!手が!」
「な、なんなのよっ!ワケわかんないっ!──あっ」
「だ、だずげでぇ……」
街のそこかしこから聞こえる悲鳴。電信柱から垂れてきたスライムに溶かされ、餓鬼に生きたままバラバラに解体され、ゆらゆらと飛び回るウィスプに焼かれながら逃げ惑う人々。
彼ら、彼女らは何も〝見えず〟何も〝分からず〟気がつけば死んでいく。殺されていく。
もちろん俺も最初は助けようとした。
だがすでに襲われた人達を治す手段が手元には無く、避難誘導するにも何処が安全かわからない。
この時点で俺にどうしろと案件なのだが、それ以上に厄介だったのが、一般人にとって状態異常が致命的過ぎた。
覚醒していないと【アギ】で四桁食らう世界は伊達では無く、
そんな地獄の様相を呈している街中を駆け抜け、片っ端から悪魔を薙ぎ倒す。
非覚醒者から見れば、虚空に向かって殴る蹴る噛み付く動きをする
目的地はこの街に幾つかある寺社。
この世界が【女神転生】の世界なら、神仏はもちろん葛葉やライドウ、またはその類似能力者が居る筈だと信じて。
だが、現実は非常。
やっとの思いで辿り着いた一つ目の寺はすでに
三つ目、四つ目の寺も似たような感じで、投げ付けられた仏像を蹴り砕く羽目になったり、仏像の代わりにスライムが鎮座していたりとやりたい放題だ。
思わず内心で救いは無いのかと神に祈ったら、遠くから「主を信じるのです……!さすれば救われるでしょう……!」等とほざく、たぶん一神教か
そうこうしている内に〝ぼく〟の知っている最後の寺が見えてきた。
ぱっと見た感じ悪魔の姿は見えず、代わりに今にも砕かれそうなぐらい頼りない結界?の様な白い靄を纏ったガラスの様なモノも見える。
これは〝アタリ〟か、と喜んだ瞬間、
──パリィィィィンッッ!
ガラスの割れる音と共に結界?は砕け散った。
「
心の中で総統閣下になりながら急いで駆け付けると〝ぼく〟の記憶の中にある見覚えのある姿が。
「坊っ!?」
「話は後だッ!離れてろッ!」
一番近くに居た餓鬼を掴み、ウィスプに投げ付ける。さらに距離を詰めてスライムを蹴り飛ばし、二体目のウィスプを噛み砕く。
「なんか出来る事はッ!?」
「アタシには黒い靄にしか見えないッ!」
「了解ッ!」
返事と共に投げ飛ばした餓鬼を潰されているウィスプごと踏み砕く。
〝見える〟と〝見えない〟の差が激し過ぎるこの世界では草薙の剣クラスの霊剣でも無い限り、非覚醒者は戦力にならないし、数えてはいけない。しかも霊剣が有ったなら
──幾らなんでも多過ぎだろクソがっ!
たぶんこの辺りで唯一人間が〝残っている〟場所なのだろう。先程までは徒党を組んでいるレベルだった悪魔達が気が付けば小隊規模となり、今では中隊規模にまで増えている。
さらに耳に飛び込んできた足音が
──見捨てて逃げるか?
と、一瞬でも考えたのが駄目だったのかもしれない。
「ぐっ──!」
知らぬ間に近付いていた餓鬼に殴り飛ばされ、本殿をぶち抜いて床に転がっていた。
周囲に居る避難民達から向けられる不審な視線と、俺の身体から流れる血を忌避する感情。正直この時点で俺が戦う意味の大半が消え失せている気がするのだが、
「大丈夫ですかっ!?」
「きゅ、救急箱っ!救急箱は何処だ!」
「オマエラどけっ!手が空いてる奴は清潔なシーツか何か探してこいっ!」
〝俺〟が見捨てるには善人が多過ぎて、母親に
とはいえこのまま戻ってもじり貧なのは確実。何か無いかと周囲を見渡した俺の目に飛び込んできたのは──大きな地蔵菩薩だった。
右手に錫杖、左手に宝珠。菩薩でありながら
さらにお地蔵様は閻魔の慈悲の顔でもあるらしく、
流石は日本。
まぁ、今はそんな事はどうでも良い。大切なのは地蔵菩薩の右手には
「ヒャッハーッ!」
成人男性より少し長いぐらいの錫杖を右手に寺の外に飛び出し、悪魔を凪ぎ払う。
その途中、本家より随分若い新田美波の姿が見えた気がしないでも無いが、生憎〝俺〟はアイマスよりラブライブ(初代)派閥。すぐに頭からその事を追い出して、道中に拾っておいた(たぶん)魔石を左手で砕き、錫杖を構える。
「仏の顔は三度あるらしいが〝俺〟は斎主なんでな。一度で黄泉に送ってやるよ」
悪魔を黄泉に叩き込めるかは知らんがな。
◇
俺達らしくヒーホー族なのは外せないよね