ガイア連合武器密輸課職員の日常   作:プルータス

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前回までのペルソナ使いのペルソナ名を盛大に間違えておりました。すみませんでした。
混沌魔王ではなく『混世魔王』でした。本家から借りてきたペルソナ使いなのに申し訳無い。
頓西南北さまありがとうございます。


終末シェルターのテスター

 いつだって私は怯えていた。

 どれほどのお金を貯め、どれほどの人たちと交流し、どれほどの優れた能力を持とうとも死んでしまえば無となる。それを私は体験として知っている。

 ガイア連合に入り、死んだほうがマシと言える覚醒修行を修めてもなお私は自分の死が怖い。修行で自分の死と向き合った結果悪化した気もする。

 この先にある破滅に対処するためには異界で悪魔狩りをして力を得る必要があると頭ではわかっている。だが、もしもその途中で死んでしまえば同じ事ではないかと理由をつけて動かないままでいる。

 暗い部屋で自らの火炎魔法『アギ』で火をつけたロウソクを膝を抱えたままぼんやり眺める。せっかく修行で得た力もこんな使い方しかできていない自分が嫌になる。

 わかっている。私はただ自分の死の恐怖を忘れるだけの『なにか』を持っていないだけだ。

 メシア教への復讐で異界に挑む男がいる。友人を護りたいと武器をとった女がいる。モテたいというだけで悪魔を狩る男がいる。金のために、式神を得るために、人生をエンジョイしたいために戦う彼らがいる。私は彼らのようにはなれていない。

 自分を育ててくれている両親への愛情も、学校で笑い合う友達への友愛も、私が奮い立つ理由にはならなかった。

「やあ、こんばんは人の子よ」

 ロウソクの火から小さな火の鳥が現れる。悪魔?

「警戒しなくていいよ。遠い昔に僕を崇めてくれていた子の縁で君の火に繋がったようだ。今日は満月だからね」

 穏やかに語る小さな火の鳥に悪意は感じない。

「僕の名はフェニックス。こんな姿でできるのは人生相談くらいだね。何か困ったこととかあるかな?」

 私の人生にようやく火が灯った気がした。

 

 

 

 という話だったんだけど、キミのキャラ違わない?

「そりゃマジで今オレっちの身体死んでっからね。電話繋がってよそ行きにピシッとしてる時と作ってもらった火山に身体放り込んでる時のその場のノリで話してるマジヤバなオレっちを同じにしてもらっちゃ困るというかマジでアタマとろけてるんでキャラブレブレなんもしゃーないッス」

 このやたらと早口なヒッポウ(レベル1)はフェニックスの客対応用端末である。本体は異界を調整して作った火山で死んでるところだ。

 

 

 自衛隊(というか五島部隊)、メシア教日本支部、根願寺のバックがついたことによりガイア連合の使用可能な武器の選択は広がった。

 ある程度の武器ならば持ち歩きも許可され、武器密輸課の手を借りなくても異界に挑む事も可能になった。できるとなればやりたくなるのが人間。今は新しい武器を自ら持ち込んで挑むのがブームである。

 これに対して武器密輸課は喜んだ。なにしろガイア連合の人数は増える一方なのにトラポート持ちは希少だからである。黒札(最近支給された転生者の証)限定サービスにすべきという案まで出てきたくらいだ。

 武器密輸以外にも人員の輸送など求められているサービスは多いので仕事が無くて困るということはない。通常輸送課(車両や列車、船で輸送する)の仕事で緊急性のあるものを肩代わりしたりもする。

 

 少々我が身に余裕ができたので、今回はエジプト避難シェルターに差し入れに来たのだ。前回は蟲キチネキの要請により夢野先生の既刊をまとめて図書コーナーに寄贈したが、あれは少女漫画文化を知っててこそ楽しめる作品だということに後から気づいた。

 少女漫画のメタネタを少女漫画を知らないまま読んでもスルーされてしまう。次回から夏休みという前フリからの夏休み全カットは腹を抱えて笑ったが、少女漫画初心者にはわかりづらいだろう。

 もともとエジプト勢は日本文化を勉強しようとしている。ガイア連合と仲良くなるには日本文化とオタク文化を知るのが一番だとどこかのウサギが吹き込んだからだ。まったくどこのどいつだ。

 そんな理由から日本文化の入門として入りやすい漫画を求められていた事もあって、今回は様々な漫画を寄贈しに来たのだ。図書館の守護神、手塚治虫漫画も多めに入っている。

 

 エジプト避難シェルターはガイア連合製対終末シェルターのテストケースのひとつである。避難してきたエジプトの墓守たちにテスターとして住んでもらいデータを貰うことで今後のシェルターにいかしている。自給自足型のシェルターの実働データは貴重で、かつ住民の故郷に寄せるカスタマイズということで技術者たちが喜んでいる。蛍光色に発光してるのもいる。

 ガイア連合としては実際に住む人間を募集しなくていい上にオカルトを知ってる相手なので話が通じやすい。エジプト勢としては住処と異界に臨時神殿をつくってもらえる上に仕事でありガイア連合との繋がりをもてるのでニッコリ。

 ただしエジプト勢は多神連合に恨まれているので、現在はシェルターの場所を知っているのは少数だ。不死鳥推しネキに強請(ねだ)られても教えるわけにはいかない。

 漫画を寄贈し、せっかくだからとフェニックスに会いに来たところだ。やたらとノリが軽いというか、人間で言えば温泉に浸かって深く考えずに喋ってるようなものなのか?

 

「ウチの信徒ちゃんの加護についてはマジ申し訳ないってーかどうにかしたいんだけど流石のオレっちも死にすぎたってーかうまく転生(まわ)れてなくて取りこぼしちゃってる感じなんすよね」

 曰く、各地に貯めてあった信仰貯金を回収しながら墓守の一族(一族と言っても小さな村を作れる規模)を保護しながらエジプトから日本まで地球を半周。襲いかかるメシア教過激派を追い返しながら長編映画五本くらいできそうなくらい厳しい旅路だったらしい。なお毎回クライマックスでフェニックスが死ぬ。

 フェニックスの不死は本質的には『再生』ではなく『転生』である。死んだ際に次の自分自身に転生しているのだ。ものすごく厳密に言えば『前世の記憶と能力を完全に受け継いだ別神』になっているわけだ。『スワンプマン問題』に近い。

 何がマズイかというと、『厳密には前世の別神』ということで契約の継承が不十分なまま次の死を迎えていた事だ。前世のさらに前世の契約ということで不死鳥推しネキの加護契約が上手く継承されないまま流れてしまったのだ。

 本来ならば継承されなくても暫く生存していたり死んだ場所に留まっていれば自動的に契約が継承される。今回は不死鳥の仕様と状況が噛み合ってなかったのだ。

「ボクとしては、もう前の加護は諦めて新しい加護を貰ったほうがいいんじゃない? と思うのだけど」

「オレっちの本体が蘇ったら新しい加護用意しとくんでそんときゃオナシャス。もしかしたらエジプト神話じゃなくて日本神話の一柱として覆面参戦するかもしれないんでそんときゃマジよろです」

 

 ヒッポウと別れ、今度はハトホル神に挨拶に行く。残存エジプト神話勢としてはフェニックスと並ぶ位ある悪魔だ。

「いやしかしガイア連合には感謝しかないな。これはもうウチの信徒たちをガイア連合の嫁に出すしかないのでは?

 クレオパトラとかどう?」

「ビジネスライクでいきましょうよビジネスライクで。お互いWin-Winを目指しましょうよ」

 本体が死んでることもあって呑気なフェニックスと違い、ハトホルはなかなかに厄介だ。ボクが未婚とみるやグイグイ結婚させようとしてくる。ハトホル自身もすすめられる女性たちも美人なのが更に厄介。下手を打てば人生の墓場入りである。

「正直こちらとしては借りが大きすぎてどうすればいいのかわからんぞ。ガイア連合への借りもキミ自身への借りも返す手段がない」

「ああ、それならちょいと頼みたいのですが」

 ちょうどやってみたいことがあったので頼み込む。土産物に本来はNGである細工することになるので、ボク自身の貸しはこれでチャラでいいだろう。製作費と仕込み用のマッカを渡す。

 ハトホルも快く細工を引き受けてくれた。

「ふむ。重みを誤魔化すために簡易結界を張って中身を浮かせて……」

 

 エジプト神話が滅び、逃げ延びてきたエジプト勢。彼らは自らが思っている以上にガイア連合に恩恵をもたらしている。

 なにしろ守護する神は主神も戦神もいない二柱。日本とは真逆の土地からの超長距離移動。さらには孤立無援。

 これほどまでに悪条件が重なったエジプト勢がガイア連合に頼ることができたということは、この先メシア教に破れた勢力がガイア連合を頼りやすくなったということだ。最悪の条件のエジプト勢が行けたのだから、それよりはマシな状況の勢力が辿り着けないことはないだろう。少なくともそう思わせることで最期の玉砕よりガイア連合を頼りに生き残ろうとする選択肢が生まれる。

 ガイア連合としては自身の戦力、特に転生者をメシア教過激派との戦いの矢面に立たせるつもりはない。つまり支援することで矢面に立ってくれる戦力が欲しい。その戦力をエジプト勢が導いてくれるのだ。

 また、これから落ち延びてくる神話勢力はまずエジプト勢に日本でのセオリーを教えられることになる。その恩によって直接エジプト勢を責めることはなくなるだろう。

 

「久しぶりだね。ちょっと背のびた?」

 売店の店番をしている褐色少女にペルソナを介して話しかける。概念存在であるペルソナをフィルターにすることで会話がお互いの母国語へと変換される。ペルソナによっては動物とも会話ができる。やり方を知っていればペルソナ使いなら誰でも使える小技だ。ボクがエジプト勢の支援にまわされた理由でもある。

「ウサギの兄さん久しぶり。このままなら兄さんの背を抜かす日も近いよ」

「ハハハ、コヤツめ」

 まだ中学生くらいの年なのに目線の高さがあまり変わらない恐怖。これ以上伸びませんように。小さくなぁれ小さくなぁれ。

 そのまま適当に雑談をする。店番ちゃんは他の女性陣のように肉食動物の気配をしていないから安心できる。店番ちゃんも暇だったのかシェルター内での出来事や娯楽が少ないことへの愚痴が流れる。

 適当に話しながら知り合いに渡すためのエジプト土産を買い込む。ハトホルサブレー、フェニックス温泉まんじゅう、千年パズル、ペナント、ピラミッド模型。

 まだシェルターの市場が外に開かれていないため、ほぼテスト生産のレア土産物だ。木刀や竜が巻き付いた剣のアクセサリもカゴに入れていく。男はいつだって少年心を持ってるものなんだ。店番ちゃんがアホを見る目で見てくるが負けたりはしない。

 精算を済ませたタイミングでハトホルに頼んでいた品がちょうど届いたので受け取る。

 こちら、山吹色のお菓子でございます。




ペルソナ式翻訳術:ペルソナは本体などに語りかける際に相手の母国語にフィルター変換して話す。ケルトのクーフーリンが日本語で語りかけてくるのはこのため。そのフィルターを活用することで相手の母国語で相手に届き、相手の言葉を日本語で聞くことができる。
 ペルソナによって変換が異なり、例えば魔獣『ケルベロス』だと動物とは流暢に話せるが人間には「オレサマ オマエ マルカジリ」になる。なお外道『スライム』だとノイズが酷すぎてマトモな受け答えは期待できないだろう。

ウサギ追い:ウサギの狩猟法としてメジャーなやり方。3方向から音を出しながら近寄る事でウサギの逃げ道を誘導し、仕掛け罠や待ち伏せた猟師によって狩る。
 今回の話には関係ない。ホントダヨ?
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