ガイア連合武器密輸課職員の日常   作:プルータス

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メシア教式ペルソナ召喚術

 少々時が流れ、ガイア連合内でのメシア教への認識は『メシア教日本支部』『海外のメシア教』に分裂していた。そして後者に関しては不倶戴天の敵だが前者に対しては「コイツら普通の日本人じゃね」「油断はできないけど思ってたよりショボい」となり始めた。

 メシア教日本支部のノーガード戦法が功を奏したと言っていい。内情について問い合わせればだいたい直球で返ってくるので日本支部の実態をガイア連合が把握するのは容易かった。

 探りを入れた以上、妨害や怪しいとする根拠が無ければシロだと言わなければならない。「調査してみた結果、よくわかりませんでした。チャンネル登録お願いします」という文言はメシア教以上の敵である。もちろん個人で日本支部を怪しむのは勝手だ。

 戦後に日本支部を主導していた過激派勢力はオカルト的に虫の息だった日本を離れ、海外へと戦場を移した。極東の僻地で国民の宗教観が特殊でほぼ鎮圧済の地に長居するメリットが薄かったのだ。まさかその後アホみたいに才能を持った連中があちこちに生まれてガイア連合という一大勢力になるとは夢にも思ってなかったろう。

 残された勢力はやる気の薄い天使と単なる日本人と一部のテンプルナイトである。張り切っている一部を除けば宗教団体というより霊能互助団体としての色が強い。

 能力としては他の地方有力霊能団体より少し上程度でしかないが、他の団体との最大の違いはその政治的立ち位置だ。中身が外に出た後とはいえメシア教。元々いた天使の残した封印へ干渉する正当な権利やアメリカ本国のメシア教との交渉権など、ガイア連合が今後必要になる権利を売り込むことで連合の傘下ではなく同盟者として振る舞うことに成功した。

 タイミング的にも完璧だったのは見事としか言いようがない。遅ければガイア連合と根願寺の繋がりが直通になり今の立ち位置にはいられないし、早ければ持ち味をアピールする前にガイア連合への借りが大きくなり他の団体と同じ立ち位置まで埋没してしまっていただろう。

 

 ガイア連合の転生者たちの話題がメシア教日本支部から自衛隊の迂闊で残念な転生者によるやらかしへと移り変わった頃、ペルソナ使い内でメシア教のペルソナ使いとの合同レベリング企画が立ち上がった。

 ペルソナ使いは常に人手不足だ。他の覚醒者も手が余ってるとは言えない状況だが、ペルソナ使い内でしか戦力の融通が利かないという点で他より深刻だと言える。クソ雑魚筆頭のスライムニキが前線に出るのを止めきれない人手不足ぶりである。

 式神による戦力かさ増しも影時間やメメントスに対応できる特殊仕様にする必要がある事からあまり有効ではない。メティス(偽)がまだハム子ネキに届いてないあたりからも察してほしい。

 そんな状況なので使えるものは選り好みせずに使う。メシア教日本支部という少々出処の怪しいペルソナ使いではあるが遊ばせておく余裕なんぞないのだ。最低限どれくらい戦力になるかを把握しておく必要がある。

 というわけで現地民ペルソナ使いの混世魔王くんとシャーロックさん、ついでに顔見知りのボクが合同でチームを組みマヨナカテレビへ挑むことになったのだ。

 

 

「というわけで今日はよろしくねリーダー。コレが怪しい動きをしたらシバいていい許可は得てきた」

「いくらなんでも扱いヒドくないです?」

「一番立場の低い俺に言われても」

 混世魔王くんとそのチームメイト4人(1名ナビゲーター)、シャーロックさん(片眼鏡)、ボク(サングラス)とジョーズマンと新戦力の一反木綿型式神『スタンド』くん。戦力としては充実してる。記録用撮影ドローンと共にマヨナカテレビを進む。

 一反木綿型式神は戦闘力と携帯性と飛行能力がある代わりに思考能力が低いタフガイだ。うまく運用するにはRPGのごとくいちいち命令しなければいけないので使い勝手が悪いとよく言われる。あとダサい。

 しかし戦闘中に手が余っている奴がいるなら話は別である。もちろんボクのことだ。毎回大声をだすのも大変そうなのでボタンを押す組み合わせで『前衛を庇え』『敵に攻撃しろ』『戻ってこい』と指示できる片手用コントローラーを作ってもらった。周囲に敵影無しならボクのもとに自動的に帰還する。

 スキルもあえて攻撃スキルを持たせず、体力増強と耐性付与のパッシブスキルで固めてある。殴られたときに自動的に殴り返す『反撃』スキルも持たせてあるので戦線維持能力が高く仕上がったと自負している。今回はこの子の実戦テストも兼ねている。

 第一敵影発見。まずはシャーロックさんのペルソナを使わせてみる。

 

「では見ててくださいね」

 敵に鋭く踏み込む

「ペ」

 踏み込みで生まれた力を腰、肩と流れるように運ぶ

「ル」

 アロワナが獲物に食いつくが如く高く美しく拳が弧を描く

「ソ」

 そして自らのこめかみに拳が鋭く突き刺さる

「ナァッ!!」

 パキィンと砕ける音とともにシャーロックさんの上半身が大きく揺らぎペルソナ『シャーロック・ホームズ』が背後に現れる。

『ソニックパンチ』

 シャドウにホームズパンチが突き刺さり消滅させる。うん。

「どうでしたかわたしのペルソナ」

 

「撤退でいいかなリーダー」

「はい撤退で」

 無の表情になった混世魔王くんに撤退の指示を出してもらう。たぶんボクも同じ表情してる。

「そんな!? わたしまだいけますよ?」

 うるせぇそんな事はふらついた足元をどうにかしてから言え。お前にシャーロック・ホームズは贅沢すぎる。ロックで十分だ。

 

 

 ペルソナ3でのペルソナ召喚は死の気配のする召喚機の引き金を自ら引く事で死に立ち向かう精神を見せてペルソナを呼び出す方法だ。

 それをメシア教が聞きかじって何とか形にしたのが今の『殺意全開で自らに拳を突き立てつつ絶対に死なないという覚悟で踏みとどまる』珍妙な儀式なんだろう。メシア教(というか元の一神教)が自害をタブーとした宗教なのも関係してるかもしれない。

「結局どうしましょうね。今日は解散しときますか?」

「ちょい待って。上に相談してみる」

 変人に巻き込まれたリーダーと裏ジュネスの拠点で相談する。他のメンバーはロックの状態を診ている。パンチドランカーになりそうなペルソナ召喚だ。

 ドローンにスマホを繋いでメシア教式ペルソナ召喚術の動画を切り抜く。ついでにその後にスロー再生したものと「閲覧注意」を貼りショタオジのスマホに送信する。

 

神主:お茶吹いた

神主:なにこれ

ウサギ:メシア教のペルソナ召喚ですよ

ウサギ:さすがにアレなんで古い召喚補助具買ってあげていいですかね

神主:おけ

神主:カード式の型落ちなら仙台に在庫あるみたい。話は通しとくね

ウサギ:あざす

 

「というわけでちょっと仙台行ってくる。30分くらいで戻るから時間潰しといてね。ついでに買ってくるものとかあるかな?」

「ちょっと何言ってるかわかんないですね」

 トラポート使えば仙台支部なんて近所よ。購入手続きのほうが面倒かもしれない。

 

 カード式ペルソナ召喚補助具はマヨナカテレビ式、つまりペルソナ4のペルソナ召喚をもとに作られたサポートツールだ。ペルソナ4では自分の手に生み出したカードを握り潰す事でペルソナ召喚する。そのカードを生み出す工程をあらかじめ作ってあるカードで代用するのだ。ちなみに握り潰したカードは再生する。

 ペルソナ召喚の補助具としては一番クセがなく、バージョンアップによって精神負担軽減などの恩恵がある一方でバージョンアップのたびに買い換える必要があるので金食い虫でもある。

 

「ペルソナ出しても頭が痛まないんですが、何かのチートですかコレ」

「あんなやり方ならそりゃ頭も痛むでしょうね」

 現在の隊列は剣撃主体の混世魔王くんとかくとうタイプのロックと一反木綿型式神スタンドくんが前衛、ジョーズマンと混世魔王くんのチームメンバーが後衛。最後方、ポツンとひとりイナバシロウサギとなっております。

 サボってるわけではなくバックアタックへの警戒である。『警戒』スキル持ちで、攻撃性能はともかく回避と防御ならそれなりにできるので時間稼ぎくらいならできる。

『後方にシャドウ1体発見。接近してきます』

「おっと、了解。足止めに向かいます。雑魚だからゆっくり来ていいよ」

「了解です。なんならそちらで倒しちゃってもいいですよ」

 たおす? たおす倒すたおす。

 言われたことがすぐに理解できず頭で反すうする。そういや右手に握ったこの短刀、敵を斬るための物だったな。ほぼ防御用でたまに隙をつくるために投げてたので忘れていた。

 いつからだろう。切れ味より頑丈さを優先し始めたのは。

 いつからだろう。敵を斬ることなくションボリすることすらなくなったのは。

 ヨシッ。やってやる。

 気合をいれて斬りつける。シャドウに微量のダメージを与える。反撃を危なげなく避ける。敵の攻撃に当たる気はしないがこっちの攻撃も相当ショボい。チクチクやってやるわ。

 

 

「あのー。もうそろそろ手出ししていいですかね」

「ゴメンもうちょっと! あと5発、いや6発で終わるから!」

 申し訳無さそうに混世魔王くんが聞いてくるが、ここまできたら自力で倒したい。すまないがもうちょい待っててほしい。短刀を握り直す。

 ふよふよとスタンドくんがボクのもとにやってくる。向こうの戦闘が終わって一定時間無指示だったから持ち主に帰還してきたようだ。かまってる暇はない。

「あっ」

 シャドウの攻撃がスタンドくんに向かう。

『反撃』

 ゴシャリと強力な一撃をおみまいされシャドウが散っていく。

「あああああああぁぁぁぁ!!」

 

「あのー、少し相談いいですかね?」

 悲しみながらもレベリングを続け、一時休憩中に混世魔王くんから声をかけられた。慰めならいらないよ。

 相談内容を要約すると「身元保証人のスライムニキがクソ雑魚すぎて心配。何かあれば自分の保証も切れるし、前線から遠ざけれませんかね」である。ペルソナ使いならみんな一度は思うことだ。

 外部に開かれたとはいえガイア連合は基本的に転生者のための組織だ。そのサービスを十全に受けるためには転生者か転生者の身元保証が必要になる。混世魔王くん本人の属性はともかくペルソナがダークカオス系のパーティなのでスライムニキからの保証は文字通り生命線だろう。

 スライムニキは人望があり社会人スキルのバカ高い男だが欠点が2つある。クソ弱いこととそれなのに前線に出たがることである。

「まあ、手はないことはないね」

「ホントですか?」

「うん。キミがマヨナカテレビを解決すれば何とかなるはず」

 現在ペルソナ使いはメメントス、マヨナカテレビ、タルタロス、某邪神と四正面作戦であたっている。あとは非戦闘員とその戦場からのドロップアウト組だ。タルタロスと某邪神はそれぞれ個人で担当してるので戦力の大半はメメントスとマヨナカテレビである。

 どちらかを解決した場合、いくらかの戦力以外はもう片方にまわされる。そうなれば戦力に余裕ができるとともに上から指揮する人間が必要になってくるだろう。いわばペルソナ使いの総大将だ。

 メメントスを担当している承太郎ニキはそういった調整は向いてないのでスライムニキがその地位に就くことになる。承太郎ニキからの支持があれば確実だ。

 総大将に就いてしまえばその仕事で追われ、前線に出る余裕はなくなるだろう。つまりマヨナカテレビを解決すればスライムニキを後方に引っ込めさせられる。

「マヨナカテレビを解決って言われても」

「黒幕のアタリをつけてくれればペルソナ使い上層部で踏み潰せるから頑張ってね」

 一応ボクも(タルタロス以外から)応援要請があれば(タルタロス以外なら)優先的に受けるようにしてる(タルタロスを除く)のでサポートくらいはする(タルタロスだけは勘弁な)。

 

 

スライム:おつです。うちの子たちどうでした

ウサギ:おつです。いい子達でしたよ

ウサギ:メシア教のについてはレポートあげときました

スライム:この方式のペルソナ召喚でうちのペルソナのパワーアップワンチャン?

ウサギ:ないね。ぶっちゃけタルタロス式の下位互換

スライム:(‘・ω・`)

ウサギ:パワーアップと言えば小耳に挟んだんですが

ウサギ:『デモニカ』がもうすぐロールアウトだそうですよ

スライム:おお、デモニカと言えばストレンジジャーニーの

ウサギ:そう。スーパーなパワードスーツです

ウサギ:しかも今回はショタオジも一枚噛んでる代物

スライム:デモニカということは本来は未覚醒者向け

スライム:つまりそんなにお高くならないはず

スライム:来ちゃうかな。とうとうオレtueeeできる時代が

ウサギ:へっへっへ。いやまだ実物見ないことにはね

スライム:ハッハッハ。ちと気が早すぎたかな

 

 

 その後。紹介されたデモニカのクソ雑魚仕様に嘆き、それでも注文しようとページを覗くと書いてある「タルタロス、マヨナカテレビ、メメントス未対応」の文字。

 知ってる! これ中に式神使ってるからそれを特殊仕様にしないといけないやつだ!

 

ウサギ:飲もう

スライム:飲もう

 そういうことになった。

 

 期待を裏切られたクソ雑魚ペルソナ同盟はオールで飲み続け、同居人の惚気や戦力の愚痴を吐きながらへべれけになり、朝方に潰れかけの状態でスライムニキを送り届けてスライムニキの同居人たちに睨まれることになる。お高めの寿司を土産に包んでもらったのでそれで許してほしい。




メシア教日本支部:ぶっちゃけ乗っ取られてる。過激派をやんわり本国に送り返したり別組織に居場所リークするのは謀殺だと思うの。
メシア教式ペルソナ召喚術:駆け込んできたペルソナ使いのために使用方法を頑張って探した。ペルソナはオカルト的にマイナーかつローカルすぎる。調べた結果を自分たち用に改造してる点でわりとショタオジからの評価は高い。ただし絶対にガイア連合のメンバーには使わせない。
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