ガイア連合武器密輸課職員の日常   作:プルータス

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はたらく後輩泥酔編

 後輩ちゃんは瓶を大きく傾けて飲み干し、乱暴に床に置くと同時に深いため息をつく。目は獲物を捉えた肉食動物のようにすわりきっており、対して身体は脱力しきった状態で床に投げ出されている。どう見ても酔っぱらいです。本当にありがとうございました。

 これが自宅ならばそっとしておくのだがここはガイア連合支部の通路である。自販機からマッスルドリンコだけが売り切れている。彼女の周囲に転がっている空き瓶を見るにここで飲み干してしまったのだろう。心底関わりたくないでござる。

 遠巻きにこちらを覗くギャラリーに淡い期待を込めて視線を送る。お前らここでいいところ見せれば彼女ができるチャンスだぞ。

 全員に目を逸らされる。ふぁっきゅー。だがボク自身も知り合い相手でなければこんな酔っぱらいに関わろうとはしないだろう。

 

「どうしてこうなっちゃったんですかね」

 コチラを認識したのか彼女の言葉が漏れる。彼女の現状を伝えるには少々長くなる。

 ・メシア教がエジプトに攻め込んできて多神連合と合戦。余波でエジプトが酷いことに。

 ・キレたエジプト神話系神々が無差別にミイラ化呪詛を撒き散らす。一時的に盛り返すも多神連合が撤退。

 ・単独になったエジプト神話、奮戦虚しくメシア教に敗走。一部のガイア連合に頼った生き残り以外は魔界に撤退する。

 そしてガイア連合を頼った神も大変らしい。新天地に神殿を建設したり信仰の地盤を作ったり生き残った信者を何とか食わせたりとてんてこ舞いである。食料などの配送を手伝ったがあれは厳しい。

 生き残った中に後輩ちゃんに加護を与えたフェニックスもおり、日本での知名度の高さを活かしてカツカツの状況を切り盛りしていたものの無理がたたってダウンしている。ダウンした結果、後輩ちゃんに与えられた加護が使用不能になってしまったそうだ。

 ある程度地力があれば加護なしでも大丈夫かもしれないが、後輩ちゃんは最近覚醒したばかりのうえ覚醒直後から加護を貰ったので加護なしの状況になれていない。現状後輩ちゃんが使えるスキルは『アギ』オンリーである。

 頑張って積み上げてきた物が崩れたのである。やけっぱちになっても不思議はない。ボクの隣のモーさんに視線を送ってみる。式神とはいえ一応女性型なので頼れるかもしれない。

「あー、なんだ。運が悪かったと思って諦めな」

 モーさんの言葉にもぬるりと眼球を動かすだけである。ダメじゃん。そう思ったとき、霊視ニキが自販機でイワクラの水を買い、瓶の首をねじ切って後輩ちゃんに差し出す。

「全部メシア教が悪い。ともに天使どもをブッ殺そう!」

 脱力していた後輩ちゃんの腕がイワクラの水をがしりと掴んだ。

 

 

「ご迷惑をおかけしました」

 通路を片付け終え、カフェに場を移してから後輩ちゃんは改めて謝罪する。結局ボクは何もしてないけどな。

「もう飲み過ぎはだめだよ? マッスルドリンコに年齢制限はないけど身体に良いとは言えないからね」

「すみません先輩。式神作成スレで気合い入れる時は魔剤を飲んでからと書いてあったもので」

 女子高生の彼女にとっての魔剤はマッスルドリンコなのね。式神作成スレを漁るようになったキッカケがレベリングの反省会だったので強くは言えない。

 マッスルドリンコで『happy』を引いて浮かれたままマッスルドリンコを買い占めてあのザマだったらしい。強制的に幸せになる『happy』が切れる時に喪失感が激しいらしいので下手な麻薬よりたちが悪いかもしれない。

「でもおかげで目が覚めました。がんばってレベルを上げて天使たちを焼き殺してフェニックス様に捧げようと思います」

 澄んだ瞳で物騒な事を言う。あらやだこの子ったら想像よりはるかに過激な信者。どうすんだこれ。

 話を聞いていた霊視ニキが立ち上がる。

「今からなら暇がある。手頃な異界でレベリングするぞ」

「はいっ! よろしくおねがいします!」

 反メシア教として波長が合ったのかな。ふたりが店を出るのを見送る。

「ウサギ野郎も当然行くんだよな?」

 モーさんに首を掴まれて連行される。ペルソナがウサギなのであってボク自身はウサギではないことを主張したい。霊視ニキとモーさんという強力なコンビと組めるのはありがたいけどメシア教天使ブチ殺し派という熱には巻き込まれたくないというお気持ち。

 後輩ちゃんが『トラポート』を使えなくなった以上、武器密輸課としてのバックアップは出来なくなる。だが弓道ニキやバフ盛り親父ニキなら声をかければレベリングを手伝ってくれるだろう。

 後に霊視ニキが「ウチの若いもんは血の気が多い」と言うほどに過激派反メシア教過激派として名を上げる後輩ちゃんこと不死鳥推しネキ。彼女がまだ大人しかった頃の話である。

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