華々しい英雄の活躍の裏にもそれを支える多くの脇役がいる。これはそんなお話のひとつ。
ボクが所属しているガイア連合巌戸台支部武器密輸課のなんでもない日常だ。
「今回のブツだ。頼んだぞ」
「了解しました」
台車の上には大型の箱が6つ。今回の客はチームでまとめて武器を管理するつもりらしい。こちらとしては手間が省ける。
万が一に備えて式神を同行させ、スマホの地図に目的地を打ち込む。
重要なのは確信だ。できて当然、ここに行けるのは当たり前という確信がなければ移動魔法は難しい。
自分の顔を1枚はがすイメージをすることによってボクの異能は発動する。
「ペルソナ」
人間大のウサギが背後に現れ、魔法を発動させる。
『トラポート』
「ちわー。三河屋でーす」
「あらサブちゃん。いつもご苦労さま」
客と取り決めた符丁を交わしてから伝票にサインをもらう。これで労働完了。実働1分の重労働であった。
「いやー助かるよ。いくらオレたちでも銃刀法には勝てんからねぇ」
「コッソリ持ってって捕まったらコトですしね。徒歩ならともかく交通機関はやめときましょ」
今回の客のリーダーと雑談する。いくらガイア連合が地方の救世主と言われてても民間団体である以上堂々と武器を持ち歩けない。そこで創られた部署こそが武器密輸課である。他人に名刺渡すと通報されそうな部署名だがその場のノリとネタで動く頭ヒーホー族が多いのがオレたち。つまり転生者のガイア連合上層部だから仕方ない。
「ではできれば帰りもご贔屓に。お客さんみたいにちゃんと下準備してくれてるのは大歓迎ですよ」
ボクは転生者である。とはいえ特筆することもなく普通に高校を卒業し、実家を離れて磐戸台の大学に入学してキャンパスライフを楽しんでいたザ・一般人である。
ネットの掲示版でこの世界がメガテン時空であることを知り星霊神社のオフ会でペルソナ使いに覚醒した。
そこまでは順調だったのに覚醒したペルソナが完全に非戦闘型。戦闘中に使える魔法がトラフーリのみという悲しみ。ちなみにトラフーリは逃走魔法、トラポートは瞬間移動魔法。ざっくりピッピ人形とルーラをイメージしてもらえればあっている。
ポケモンで言えば秘伝技要員。それがボクのペルソナ『イナバシロウサギ』の評価だ。
とはいえ戦闘こそできないが便利は便利。霊地に今回のように武器を密輸したり救護班やショタオジのような人員を送り届けたりと悪くない働きをしていると自負している。ついでに給料のマッカも良い感じにもらえる。
「もうこんな時間か」
転生者スレを追い、たまに書き込んでいるともう日が変わる時間帯だ。ふと思い立ち、式神と連れ立って外に出る。頼れる式神のジョーズマンを伴えば危険もない。たまたまタイミングが合ったときには見物したくなる。
12時。マトモな時間は終わり『影時間』が始まる。世界はオドロオドロしく変貌し遠くに見える月光館学園が変形し魔の塔タルタロスへと変わる。
女神転生シリーズの姉妹作ペルソナシリーズ。外伝から派生したペルソナシリーズの3作目の舞台こそがこの巌戸台港区でありメインダンジョンがタルタロスである。
作中では人類滅亡を主人公たちがくい止めるためにタルタロスを登っていた。つまり放置すれば人類滅亡のトリガーになるかもしれない。
ガイア連合は『終末』を前提に活動しているが、それは人類滅亡と=ではない。文明滅びるけど備えてしぶとく生きようぜ、が基本目標だ。
「戦闘力、欲しいなぁ」
戦いは式神任せ。レベルアップしても速と幸ばかりが伸びてアイテム投げても威力がでない。背が小さくて侮られがち。
ペルソナ『イナバシロウサギ』の便利な性能に助けられてはいるものの、たまにコンプレックスがあふれでてしまうのだ。
タルタロスに単騎突撃するシルエットを内心応援しながら『イナバシロウサギ』を出して背中を撫でる。
やべっ、ハム子ネキと眼があったわ。