正義の味方がカルデアに来た話
Fate初心者にも関わらず、妄想が止まらずまた書いてしまいました。エミヤと衛宮士郎のコンビが好きなんです。UBWは泣きましたよ。
今回は、藤丸立香(ぐだ男)やマシュ達を助ける為にカルデアに彼らがやって来ます。ご都合主義的な世界観ですよ。Fate初心者だから難しいことは分かりません…。色々と間違えているかもしれませんが、そこは暖かい目で見てください。ちなみに、エミヤはまだ出てきてません!本編は序盤で力尽きました…。もしかしたら、いつか加筆修正するかもしれません…。
2018年02月13日~2018年02月19日付の[小説] ルーキーランキング 41 位に入りました。
びっくりです…!ありがとうございます!
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「…どうにかしないと…」
目の前のモニターに映し出される様々なデータを、ここの部屋主であるロマニ・アーキマンは先程からしらみ潰しに隅々まで見つめていた。そのモニター画面には、何やら複雑な数値と方角がズラリと並び、それはとある位置を示しているように見える。
「このままじゃ、駄目だ。いずれ問題が起きてしまう」
誰かに対して言っているのではなく、自分に言い聞かせては、今の状況を一刻も早く対処しなければならないと彼は必死にその頭をフル回転させている。
「…早くしないと…藤丸君が壊れてしまう」
焦りと不安を滲ませた彼の瞳は、一心不乱に膨大な数値と睨めっこしていたが、暫くして一つのデータに辿り着く。
「これは…」
彼は僅かに瞳を見開いた。
たった一つ、こちらが送ったサインに正常な反応を示した数値があった。それを見た瞬間、無意識に手に力が入る。
頼む。頼むから…返事をくれ。
僅かな希望を込めて、彼は恐る恐るそのデータが示す数値に向かって、小さなシグナルを送り始めた。
「…こちら、人理継続保障機関フィニス・カルデア。応答願う」
シグナルと共に、音声のデータも数値化して目標に飛ばす。それを繰り返すこと、数回。しかし、彼の耳に届くのは不安を煽るような電子音の雑音だけ。
「……」
…届かなかった、か。
ロマニ・アーキマンの瞳が不安で揺らぐ。だが、ここで諦める訳にはいかない。また再び調べれば良いだけのこと。藤丸君が今、このカルデアで人理修復の為に必死に毎日頑張っているんだ。ドクターとして、いや、仲間として少しでも彼の力にならなければ。
気持ちを切り替えるように、深呼吸をした彼が再びその手を動かそうとした時。
電子音の雑音が、突然波長を変えて別の音声へと変わった。
『ー…と…ーー…がー…ー、……応…答願う。…ー…応答願う。そちらは、人理継続保障機関フィニス・カルデアか』
それは、彼にとって救いの手が差し伸べられた瞬間だった。
*
「…え?それは、どういうこと?」
藤丸立香は、突然告げられた言葉に思わずコップを片手に固まっていた。
先程レイシフトから帰還し、手渡されたココアの甘い匂いを感じつつ、これからゆっくりと味わうところだったのだ。多忙な日々の中で、唯一休める時間であっただろう、その一つが一瞬にして壊されてしまったのだが、彼はそんなことで怒る人物では無い。むしろ、怒るどころか今は驚いた表情で目の前に座る人物、ロマニ・アーキマンへ視線を向けて、ただただ呆然としていた。
「その言葉の通りだよ、藤丸君。君には暫くレイシフトはやめてもらう」
至極真面目な瞳で、Dr.ロマンは強く言い放つ。
彼がここまで強気な態度を示すのは珍しく、しかも、このカルデア内で総指揮を務める彼が今、相応しくない言葉を発しているのは気のせいだろうか。
「…えーっと…」
「Dr.ロマン。それは私も分かりかねます。今の状況を貴方もよくご存知でしょう。なぜ、急にレイシフトを中止するなんて…」
藤丸の隣に座っていたマシュ・キリエライトも藤丸と同様、戸惑いを抱きつつ疑問を口にした。そんな彼女はレイシフトから帰還したばかりの為か、少し疲れているようにも見える。だが、藤丸もマシュも消して疲れているなんて弱音は吐かない。少なくとも、Dr.ロマンは彼らの弱音を今までで一度も聞いたことがなかった。
彼らの姿を見てDr.ロマンは、僅かに目を伏せる。そして静かに言葉を口にし始めた。
「僕はね…心配なんだよ。藤丸君を半ば強制的に巻き込んだ僕が言う事ではないけれど…。君達が人理修復の為に毎日必死に頑張っているのを僕は嫌という程、知っている」
そうだ。
彼らは、こんなにも小さな体に人類の未来という想像もつかない大きなものを背負っている。それは、どんなに苦しいものだろうか。僕やダ・ヴィンチちゃん、英霊達の前では明るく振舞っているが、心の奥底は彼らにしか分からない。それは、ぼんやりとした霧がかかって黒い何かが蠢いているかもしれない。痛いほど苦痛なのかもしれない。
「…僕はカルデアの現総指揮官の前に、一人のドクターだ。君達の心身を心配するのは当たり前のことだよ。必死に戦っている君達に、僕なりに何か出来ないかと毎日模索していたんだ」
「…Dr.ロマン」
頭を少し下げたまま話すDr.ロマンの表情は藤丸達の位置からはよく見えない。
まさか、彼がここまで考えていてくれていたとは思わなかった。今でも、レイシフトや他の場面で自分達を幾度となくサポートしてくれているだけでも十分助かっているというのに。現に、今こうやって無事にレイシフトから帰還出来ているのもDr.ロマンのお陰だ。
「でもね、それがやっと見つかったよ!」
ガバッと今度は勢いよく頭を上げて嬉しそうな表情を見せたDr.ロマンに、藤丸達は再び驚く。さっきから、落ち込んだり喜んだりと忙しい人だな、と彼らは思うが口にはしない。
「見つかったって…一体、何を見つけたんですか?」
藤丸がそう尋ねると、目の前の彼は待ってましたと言わんばかりの無邪気な笑顔で答えたのだった。
「勿論、この人理修復に協力してくれるマスターさ!」
*
それは、すぐにこのカルデア内で広まっていった。藤丸立香の他に、別のマスターが来るらしい。
その噂は良くも悪くもカルデア内の職員と英霊達の興味の的になってしまった。藤丸なんて、カルデア内を少し歩けば様々な英霊達に噂は本当か、どんなマスターが来るのか、魔術協会からの援助なのか、藤丸と契約している英霊達はどうなるのか、など興奮状態で詰め寄られるものだから、ここ最近は迂闊に出歩くことも出来ない状態だ。
「はぁ…、なんでこんなことに…」
カルデア施設内の人目につきにくいとある場所で藤丸は盛大に溜息をつく。何故、マスターである自分がコソコソと過ごさねばならないのか。レイシフト以外では安寧の地が欲しいと切に願うが、多くの英霊達が蔓延るこのカルデア内では、それは無意味な願いだと知っている。
あの時、Dr.ロマンが発した言葉をいまいち理解出来なかった藤丸とマシュは何度も彼に尋ねたのだ。
藤丸は頭を抱えながら、数日前のことを思い出していた。
「…え?協力者?マスター?」
「何を言ってるんですか…?協力者って…唯一、このカルデアと繋がっていた魔術協会でさえ、何も動きは見せないというのに…」
意味が分からないという表情を包み隠さず顔に露わにした、藤丸とマシュはその頭にいくつもの疑問符を浮かべている。それを、Dr.ロマンは受け入れて説明を補足する。
「君達の言いたいことは分かるよ。このカルデアにいる英霊達のマスターは、藤丸君だよ。それは、変わらない。ただ、僕はさっき言ったろう?君達の心身が心配だと。特に藤丸君。君は唯一のマスターだ。レイシフトする度に、その魔力や身体を酷使する。…ううん、レイシフトだけじゃない。あらゆる場面で多少なりともマスターとして無理することがあるだろう」
彼の口調は穏やかだが、それはどこかいつもと違っていた。
いくらカルデアから四割程の魔力を英霊達に供給しているとはいえ、マスターの彼にかかる負担は重い筈だ。
「だから、僕は少しでも君達に休んで欲しいんだ。それは、身体だけじゃない。心もだ」
その言葉に、藤丸とマシュはハッとした顔になる。
「…僕は君達だけに重荷を背負わせたくはない。でも、僕は戦えるわけでもない。他の英霊達も結局はマスターである藤丸君、一人の力が必要になる」
「…つまり、マスターであるが故に先輩を休ませることは難しい、ですか?」
Dr.ロマンの話から、隣に座るマシュが徐ろに口を開き、彼へと確認をするように問いかける。彼女の言葉に、Dr.ロマンは静かに頷いた。
「…ドクター…」
「だからね、僕はもう一人のマスターを探すことにしたんだ」
そう。
少しでも藤丸君のマスターとしての負担を減らせるように。
Dr.ロマンの想いに藤丸とマシュは、思わず黙ってしまう。だが、肝心なところを聞かなかければならないと、藤丸は再び問う。
「Dr.ロマンの気持ちは分かったよ。正直、そこまで思っていたなんて、知らなかった。…ありがとう。…でも、そんな都合よく協力してくれるマスターなんているの?」
「ふふ、それが居たんだよ」
しかし、そんな彼の言葉に、なにやら得意げな顔で口角を上げるDr.ロマンは更に話を続けた。
「このカルデアは、レフによる爆破によってカルデオスの磁場の影響で時間軸から外れてしまった。故に、外部からの繋がりは一切出来ないと考えていた。でも、僕は遂に外部との連絡に成功したんだ…!そもそも、時間軸から外されたって言うけど、時間軸とは一体何処を基準にしているのか、それに別の時間軸の可能性だって…」
キラキラとした瞳で自分の思考について語り始めたDr.ロマンに、藤丸は長くなりそうだと判断し、その話の先を促す。
「詳しい事は、俺には分からないから簡潔に頼むよDr.ロマン。一体、どこのマスターが俺達に協力してくれるっていうの?」
うんうん、と隣に居たマシュも頷きながらDr.ロマンの次の言葉を待っている。
「あ、あぁ…ごめん。話が逸れたね。そうなんだよ、僕が外部との接触の際に、唯一反応を示した場所が一つだけあったんだ。…それは、別世界。所謂、並行世界ってやつさ」
「「……」」
思わず、藤丸とマシュは無言になる。
想像もしていなかった返答に、まるで彼の言葉に信憑性が持てない。その代わりに、疑いの目がDr.ロマンに向けられる。つい、忘れてたけどこの人もなんだかんだで、ずっと働き詰めなんだよなぁ…。
「ちょ、ちょっと!まさかとは思うけど、僕の頭がおかしくなったって思ってない⁉︎僕は至って正常だからね⁉︎だから、二人して僕をそんな目で見ないでくれ!」
「いや、だって…俺もレイシフトで、いくつもの時代に行ってて、まだ知らない時代にいるマスターからの協力って言うんならまだ理解出来るけど…」
「並行世界…。本当にそんな場所があるんですか?」
彼らの冷静な思考にDr.ロマンは一人熱くなっている事に若干の恥ずかしさと虚しさを抱きつつ、ぎこちない咳払いをした。
「こ、コホン!それは、信用していい。僕がダ・ヴィンチちゃんと共同して、あらゆる技術を持って捜し当てた場所なんだからね。とりあえず、その並行世界の住人のマスターと無事に連絡を取ることが出来たんだ。こちらの状況は、全部とまでは流石に言えないが、大方の説明はした。勿論、我々は貴方達を騙すつもりなど毛頭無いことを踏まえて誠心誠意に、我々を助けて欲しいとお願いしたよ」
「…それで、相手のマスターはその願いに応じたってこと?」
「…信じられません。なんてお人好しなマスターなんでしょう」
「君達が驚くのも無理はないよ。だって、僕でさえ、まさかそう易々と協力してくれるとは思わなかったからね」
「ちなみに、そのマスターって人は本当に信用しても良いんだよね?このカルデアに関わるって事は、信頼できる人じゃないと…」
藤丸が抱く不安は最もだ。外部から見ず知らずのマスターが、このカルデアに足を踏み入れるというのは側から見れば異常なことだ。だが、それほどまでに、この状況が切羽詰まっているということでもある。
それに、Dr.ロマンは少しでも早く藤丸を休ませてあげたいと思っていた。彼自身は今は気付いていないかもしれないが、このままでは心身共に崩壊するのは目に見えている。その崩壊を食い止めるのは、僕やマシュ、ダ・ヴィンチちゃん、ここの英霊では無いと知っている。それが出来るのは、きっと"彼"しかいない。
Dr.ロマンは穏やかな瞳で藤丸を見つめた。
「藤丸君。それは、大丈夫だよ。僕が助けを求めた時、そのマスターは何て言ったと思う?」
彼は子供のように笑って答えた。
「『事情は分かった。後は俺達に任せろ。必ず、君達を助ける』の即答だったよ」
*
「Dr.ロマン。そろそろ、並行世界のマスターが来る時間帯じゃないのかい?」
藤丸立香、マシュと共にダ・ヴィンチはカルデア内の召喚部屋へと訪れていた。他の英霊達には今から行おうとしている事は内緒にしている為、やむ終えず、いまカルデアの時計は夜中を示していた。
「まぁ、もう少し待ってみようよ。それに、こちらの世界と向こうの世界での時間の進行速度が同じとは限らないなからね。今は、あちらのマスターが指示した通りに召喚準備を整えるしかないよ」
そう言って、いそいそと召喚部屋を動き回るDr.ロマン。そんな彼を眺めつつ、ダ・ヴィンチは久しぶりの期待感を高めていた。
「うんうん!それにしても、並行世界からのマスターとは実に興味深い!一体、どんな人が来るのか純粋に楽しみだねぇ〜!」
「ダ・ヴィンチちゃん、一応忠告しておくけど、あちらのマスターが来た瞬間に質問責めは無しだからね」
「おや、駄目なのかい?マスター、君は私の好奇心を抑えろって言うのかい?」
「少しは我慢してよ」
うずうずと効果音が当てはまりそうなダ・ヴィンチは、マスターの忠告に"善処するよ"と一言だけ返事をしつつも、その瞳は興奮気味だ。
…駄目だ。あれは完全に人の話を聞いていない。
呆れた溜息をつけば、マシュが心配そうに近づいて来る。
「先輩、大丈夫ですか?」
「あぁ、大丈夫だよ。マシュこそなんだか緊張しているようだけど、やっぱり不安?」
心配してくれるマシュ対し、笑顔を見せた藤丸は、いつもと違うマシュの表情を読み取る。やはり、外部からの干渉というだけあって、今の彼女の姿は武装していた。
「正直なところ、少し心配です。Dr.ロマンの話を聞く限りでは、あちらのマスターは悪い人ではないようですが、やはり不安は付きまといます。もし、先輩に何かあったらと思うと…」
「マシュは優しいなぁ」
「そ、そんなことは…!当たり前のことです!」
少し焦ったような仕草を見せる目の前の彼女に思わず、素直な気持ちが溢れる。
彼女はいつだって、自分の傍にいてくれては、その身を盾にし、あらゆる攻撃から未熟な自分を守ってくれる頼りになる存在だ。だが、それだけではない。幾度となく経験した過酷なレイシフトでも、周りの人達を思いやれる心優しい少女だ。
「ありがとう、マシュ」
穏やかな瞳を彼女に向けた後、Dr.ロマンから召喚の準備が出来たという合図が送られる。今から、召喚の儀式が始まるのだ。
心配そうに見つめるマシュを背後にして、藤丸は静かに魔方陣の前に立った。
これから、一体幾つの危機を乗り越えればこの人類が平和になるのかは分からない。こんな自分がどこまで戦えるのか分からない。
でも、それでも救いたいのだ。
少なくとも、このカルデアやレイシフトに関わった英霊達には辛い思いをさせたくない。
だから、だからこそ。
どれだけ小さくて細い光だろうとも、少しでも、ほんの僅かでも誰かを救える可能性があるのなら、自分は迷わずそれに手を伸ばす。足掻いてみせる。
藤丸は魔方陣に向けて手を伸ばす。
何度も口にした詠唱が紡ぐ。
「誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者」
その詠唱と共に魔方陣が淡く光り始める。
柔らかな光がこの部屋を少しずつ満たしていく。
「汝三大の言霊を纏う七天」
次第に、膨大な魔力の塊が眩い光と共に魔方陣の中央に現れ始めた。そして、魔方陣の周りには強い風が吹き荒れ、これから召喚される存在の大きさを表しているようにも思える。
「抑止の輪より来たれ」
瞳に映るのは、希望という名の眩い光。
「ーーー天秤の守り手よ!」
藤丸が叫ぶように詠唱し終わった瞬間。
目も開けられないような光と、耳を塞ぎたくなるような爆音と共に、魔方陣の中央にそれは現れた。
「…っ!」
暫く、その姿は煙に巻かれて上手くは見えなかった。この場にいる皆が、自然と口を閉ざして、その視線の先を見つめている。この部屋には、爆音の余韻が残り、パラパラと小さな音が不気味に響くだけだ。
そして、ようやく召喚されたであろう人物が口を開いた。
「…いてて。やっぱり別世界への召喚は色々と別次元だな」
少しずつ目の前の煙が晴れていく。
「あ、貴方が…?」
そこで、やっと藤丸も口を開いた。その声は、緊張で小さく震えている。
周りにいたマシュ達も固い表情で、その人物を静かに見つめていた。それは、今、召喚されたこの人物は我々にとって味方になり得る存在なのか、見極めているようだ。
魔方陣にいた人物の姿が、はっきりと露わになっていく。
赤みを含んだ明るい髪に、特徴のある眉。
鍛えられている身体に対して、その顔には優しい瞳。
その外見は青年の姿をしていて、恐らく20代だろうか。
そして、彼はこちらを見て優しく笑ったのだった。
「あんた達が俺に助けを求めて来たカルデアの人達か?安心してくれ。今から"俺達"が助けるから」
その言葉は、強く、温かさを含んでいて、
「そうだ、自己紹介が先だったな」
不覚にも、目の前に現れた男に抱いたものは、
「俺は、衛宮士郎だ。これから、よろしく」
ーー…まるで、正義の味方だと思うほどの憧れだった。
何度も戻ってきてしまう✨