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鬼の撹乱/弓兵エミヤの憂鬱/Novel by rangetsu

鬼の撹乱/弓兵エミヤの憂鬱

5,236 character(s)10 mins

おかしい……私は萌えたぎるままにベオ李を書こうとしていたんだ……
なぜ清ぐだとネログダになった……
とりあえず長くなったので投稿します。

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 さて、人間が減ったカルデアと言っても、0になったわけではない。食事睡眠排泄、生命活動はもちろん行われているしそれに付随する雑事ももちろんだ。
 比較的カルデア居住歴が長い家事の英霊、もしくは執事の英霊ことエミヤは、彼の居城厨房ではなく洗濯室にいた。
 巨大ランドリーがならぶここに好き好んで来るサーヴァントはいない。エミヤも着たくてきたわけじゃない。
 第一級戦闘装備三角布+エプロンでその決意と覚悟を示す彼は白い大きな塊の仕分けに入る。
 シーツだ。寝る時のシーツと布団。
 サーヴァントたちは狂戦士と一部を除くほとんどが人間のような生活を送っている。いくら生体反応が魔力で再現されたものでも、シーツはよれるし汚れる。故に定期的に提出させ洗濯する。
 週に1回はシーツを洗濯。これ大事。問題は、汚す連中である。案の定よごれのひどいシーツが混じっている。これはアンデルセンとシェイクスピアのどちらかか? 寝床で書きものしながらコーヒーとクッキーはやめたまえ。
「エミヤ……」
 と、申し訳無さそうな声がして、汚れ物入れを持ったロード・エルメロイ2世――諸葛孔明が入ってきた。
「いつもどおりその赤い籠にいれておいてくれ。いつも別に持ってきてくれて感謝している」
「こういうものの洗濯を人に任せるのは非常に心苦しいのだが――」
「ならば、今日は手伝ってくれないか? マスターがここに来る可能性がある。今日明日あたりで月のものが来る時期だ」
「承知した。どう分ければ?」
「汚れのないものはその白の籠、染みがあるものは緑、特にひどいものは青にいれてくれ。汚れの基準は……このあたりだな。軽いこちらはおそらくブーディカあたりがハーブティーをいれてうっかりこぼしたもの、これぐらいなら軽い。ひどいのはこちら。おそらくモーツァルトが作曲中にインクを飛ばしたものだ。
タンパク質の汚れはオレンジ。精液と血液がついていたらあの赤だ。漬け置きともみ洗いをするのと、マスターに見られないようにやるのでな。一度隠す」
「……毎度毎度、すまん」
 エミヤの仕事量を見て、再度ロードは謝罪する。
「君のシーツなんぞ汚れてるに入らない。クー・フーリンやフェルグスのシーツなんぞ毎回焼却処分したくなる」
 エミヤがやりたくないがやらなくてはいけない仕事はこれだ。洗濯物の内染み汚れのひどいものは高性能ランドリーに入れる前にそれぞれ別の処理をする。タンパク質汚れもそのひとつだ。
「あの連中、セックスと戦闘が一括りなのではないか? 歯型と精液と血液痕ばかりで、2割は再使用不可能、雑巾にするしかない。シーツだって数に限りがあるというのに……」
 エミヤの愚痴を聞いて、ロードが胃のあたりを押さえる。
「……と、あなたに聴かせることではなかった。気にしないでくれ」


 マスターのおとん及びおかん役を自任する英霊たちの胃痛案件として、古代の英霊たちの性的価値観と、現代人の価値観があまりにもかけ離れているのがある。
 少女の時代は一夫一妻、同性愛もようやっと社会的人権を得てきた程度なのに、英霊たちときたら多夫多妻ジャスティス3PもOK!、同性愛フォーエバーむしろ異性愛よりよくね? が多いのだ。
 キリスト教が広まった後の英雄はまだいい。その前なぞ少女がカルチャーショックで卒倒するレベルだ。
(本当に……あの時は油断していた。次はない)
 苦い記憶が脳裏をよぎる。あの件は少女のトラウマになっている。あれがなきゃもうちょっと、今みたいな拒絶反応を起こすことはなかったと思う。
 仕分けは人手が増えたのですんなり済んだ。 汚れのひどい順に回り始めたランドリーは、洗濯乾燥全自動。場所を変えた所にシーツ用の全自動折りたたみ機もある。それが終わったら、ジャックやナーサーリー、お菓子好きの彼らに頼んで各居室に分配、お礼にお駄賃。
 ここまでは毎度の流れだ。
 赤茶けた色に染まったシーツをバケツに入れて、エミヤは洗濯室の奥まった、そして視界の外になる場所に隠した。少女が来なくなったら回す。最初は自分で洗濯していたマスターだが、今はレイシフトで忙しいので、洗濯係を買って出た女性サーヴァントにお願いして任せていた。
 しかし汚れの酷いものは自分で洗いにここまでやってくる。ちょうど月のものが始まる時期だ。今日明日あたり、こそこそ隠れながらやってくるだろう。
 羞恥心があるというのは素晴らしい。王族や貴族の英霊は、身の回りの世話はやってもらうのが当然なので、そこに意識が行かない。身の回りの世話を周りに任せるのが一種のステータスであり、経済を回す行動だったのだ。
「ありがとう。助かった」
「明日も来ようか?」
「マスターとの座学では?」
「今はメディアとの薬草学の授業がメインでね。時間がかかるので私の方は休講状態だ」
「ならば是非頼む」
 二人が洗濯室を出たところで、入れ違いに少女が入ってこようとしていた。
「おや――清姫」
 マスターの洗濯物係だ。
「あら、ごきげんよう。早く出て行ってもらえますか?」
 中身の見えないようにされたビニール袋を抱えている。ちょうど一人分の着替えの量に見える。
 清姫は、嬉しそうな、嬉しそうでいて心にかかる靄があるような表情だった。
「それとしばらくここには入らないでくださいまし」
 それだけ。清姫は洗濯室に消える。
「……今日じゃなかったかな?」
 洗濯を清姫がしにきたということは。しかしそうではなかった。厨房に戻ったエミヤはメディアから亊の詳細を聞かされる。
「体調不良で寝込んだ?」
 ちょっとした鬼の霍乱である。


 少女は、目覚めた時から体の具合が悪いのを自覚していた。
 体は丈夫なほうである。風邪以外大きな病気にかかったことはない。けれども、たまに調子の悪い時というのはあって、今日はその調子の悪い時に生理が重なってしまい、めったにない事だが頭痛と倦怠感で起きるのが億劫になっていた。それはいけない。熱はないのはわかるし今日一日を乗り切れば明日には元通りのはず。たまーにあるのだ。
 少女は生真面目である。属性:秩序・善、もしくは秩序・中庸。そのあたり。具合が悪くても熱がないのであれば多少の調子の悪さは無視して今まで生活してきたし、今日もそのつもりで起きだし――
「貴方は病人です。今日はねていなさい」
 ナイチンゲール婦長にさとされ、布団に入った。病気なら、休んでも誰にも怒られない。
「熱もないし血圧も普通だし、疲れが出ちゃったんだね。皆には伝えておくから、2.3日はゆっくり休養しようか。ごめんね、僕がきちんと仕事をしないから」
 と、Drロマニに謝られてしまった。そんなこといいのに。
 グランドオーダーのために少しでも行動すべきだと思う。でも、でも。優しい言葉で、休みなさいと言われると。甘えたくなるのだ。
 布団を被り、氷枕に頭をうずめ。少女は寝返りをうつ。頭痛がする。心臓の鼓動に合わせずきんずきん。苦しくて寝返りをうつと、その動きでまた頭が痛い。
「マスター?」
 やや舌足らずな声を聞いて、少女は目を開けた。真っ赤な衣装に金色の髪、若草色の綺麗な瞳の皇帝が、優しげなほほ笑みを浮かべてベットの横に膝をつき、少女の顔を覗き込んでいる。
「どうだ? 具合の方は?」
「大丈夫」
「お主の大丈夫はあまり信用ならないからな……ほら、余に本当のことを告げよ。頭はまだ痛むのか? 頭痛に関しては余は詳しいぞ」
「ずきずきする。でもこれ、たまにある痛み方だから、ほんとに、大丈夫」
「でも、痛いのであろう?」
「……うん」
「辛いのであろう?」
「ちょっとだけ」
「マスター。耐えられるから大丈夫。というのを余は聞きたいのではない。余はな、かわいいマスターに甘えて欲しいのだ。皇帝に甘えられるなんてめったにないサービスだぞ? だぞ?」
 少女は笑った。声にはせずに。声を出すと響いて痛いから。
「耐えられても、辛いのであれば辛い、でいいのだ。余は大好きなマスターに健やかで笑っていて欲しいのだ。ほれ、余に申してみ。余は皇帝であるからな! 何でもサービスしちゃうぞ!」
「……一緒に、寝て?」
「添い寝を希望するか! よいよい。ではちょっと端に寄れ」
 と、ネロは晴れやかに笑って、少女の布団の中に入ってくる。
 薔薇の皇帝はその名の通り甘やかな匂いで、少女は頭痛がほんの少し遠ざかるようで嬉しかった。不快にならない程度の力で抱いてくれる手の中、ちょっと身体の位置を調整し――あの豊かなマシュマロの中に顔を埋める。
「ムッ! マスター!」
「暖かくて柔らかくて、ネロ。ここで甘えていいんでしょ?」
「むぅ。一本取られたな。存分に甘えるがよい」
 鷹揚な許しの声。
 再度ネロの甘くて華やかな香りを吸い込んで、少女は少し眠ろうと思った。


 洗濯物を終えた清姫がマスターの部屋に戻った時、見えたのはまず泥棒猫の後ろ姿だった。
 瞬間的に部屋の温度が上昇する。
「シー。シーだぞ。今眠っているぞ、騒いだら起きてしまうぞ。まだ痛がっているんだぞ」
 機先を制した皇帝の言で、宝具はひっこめる。
「そこで何をしているのか、教えてもらえますか?」
 まずはこの売女を部屋の外に出す。それから殺す。それからマスターのお世話をする。
「うむ、何かしてほしいことはないかと聞いたら、添い寝を所望された」
 マスターをたぶらかす女はすべて悪だ。悪だ。
「ほれ、そんな怖い顔をするな。反対側が空いている、主も近う寄れ、3人で寝ればマスターも寂しくないであろう」
「……」
「ならばほら、場所を交代しよう。余がマスターの背中に行くからな、ここにお主が来るといい。特等席だぞ。マスターのすぴすぴ寝顔だぞ」
「……」
「むぅ。余好みの美少女だというのに頑固な……清姫よ。前々から言おうと思っていたが、与えるだけではマスターの苦痛になるだけだぞ? マスターの苦痛になるのがお主の望みか?」
「どういう意味ですか? 私はこんなにも、マスターを愛して愛して愛して愛して愛して愛して、愛しているのに」
「その愛、よく分かる。生前の余もそうであった。ローマの民を愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛し抜いた。だがな、愛とは思いだ。思いとは重いのだ。
 愛を押し付けるだけでは、その重みに耐えかねて愛するものが苦しんでしまう。これは本当だからな。余の実体験だからな。
 清姫。マスターはお主のことが好きだ。好きだから主の愛を受け取ろうとする。しかし重荷をマスターに負わせ苦しめたいか?
 愛するならば、受け取ることも大事なのだ。愛だけではなく、苦しみや悲しみを受け取り、共感する。与え続けるだけでは一方的な満足だ。主は与え続けているだけだ」
「受け取ってますわ、マスターのことならなんだって――」
「いいや、否。清姫。マスターは優しい。マスターの優しさは、苦しみや悲しみを、人にあげようとしないことだ。人には善きことだけ、悪いことは己が引き受ければ良い。
 それはよいことであり悪いことだ。マスターが自然に与えるものは、清姫を思いやるものだけだ。それではマスターは救われない。
 故に放っておけない。人類救済の重荷をマスターは誰にも背負わせまい。苦しみや焦燥は胸の奥に封じ込めてしまう。
 吐き出せぬ苦しみを吐き出させ、流せぬ涙を拭い、行き場のない怒りを叩きつけられる砂袋とならなければならない。
 真にマスターのことを思うのであれば、マスターに思いやられる女になるな。マスターが、すがりつく女になれ。
 お主は一番それに近いのに、お主がすがりつづけるから、マスターは辛いのだ」
「私は――」
「すがりついておる。マスターの愛にな。愛したい愛したいとすがりついておる。だからマスターは、お主に頼りたいとすがりつけない」
 長広舌をやめ、ネロはマスターの背中側に回る。
「ほれ、第一歩だ。マスターにすがりつかれろ。頭痛って辛いのだぞ? 余は今だって痛かったりするんだからな。 
 清姫は戸惑いつつ、マスターの前に横になった。少し眉間にしわが寄っている。寝苦しいのだろうか。氷枕を頭の下に敷くも、寝苦しいのか首を振るう。
 そのまま、マスターは、清姫の胸に顔を埋めた。
「……!」
「ほらな。そのまま動くなよ。絶対だぞ。お主体温低いから、気持ちのいい枕なのだ」
 薔薇の皇帝はごきげんに、かわいい美少女二人を抱きかかえた。

Comments

  • ぽやっと

    美少女サンドかわいい・・・

    June 18, 2016
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