ランサーくんは触りたい
両片思いのサラリーマン、エミヤ先輩と新卒ランサーくんが外資系企業で働く現パロです。
操作間違えて消してしまったので上げ直しです…いいねやコメントくださった方、本当にすみません。
会社の繁忙期にいろいろあって二人が急接近します。
時系列に並んだ三本目となりますが、一話読み切りで楽しめるように作っているつもりなので、最初にこの話を読んだとしても、意味がわからないことはないと思います。
【使用上の注意】
・二人共自分が受けになるなんて想像したことがないので攻め二人みたいになってる
・きすしーんがあります
・私自身は弓槍すきーです
・コバルト文庫くらいのレーティングを目指しています
・えっちしーんはないので槍弓派の方もお楽しみいただければ幸甚です
今回は2本め書いてる時にどうしても入れたくて入れられなかった「ランサーくんに彼シャツ着てほしい」という私の欲望を叶える願望器です!テンポが気に入っているので、楽しんでいただけると幸いです。
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濡れた唇の艶めかしさに、エミヤは思わず目を細めた。
陶器のように白い彼の頬に添えた、浅黒く無骨な自分の右手の親指で、彼の唇のふちを微かに、なぞる様に触れた。
「ランサー」
低い声で言葉を紡いだ唇の形で、彼の唇に自分の唇を重ねた。拒まれないかと様子を覗い、ためらいがちに舌で彼の唇の隙間を舐めた。彼の口からふっと笑うような息が漏れた。
彼は自ら唇を開き、エミヤの唇をいたずらっぽく舐め、啄むようなキスを返した。彼が応えてくれた事が嬉しくて、青い髪に指を差し入れるように彼の後頭部をかき抱き、口腔に夢中で舌を差し入れた。
──彼はどんな表情で私とキスをしているのだろうか。
彼の表情を確認しようと目を開けたが、景色はぼんやりと白く霞み、よく見えなかった。
「…………」
微睡みの中、エミヤは薄く目を開けた。
カーテンの隙間から、柔らかい朝の光が差し込んでいる。部屋は静かだ。耳を澄ますと、エアコンの音が微かに部屋に響いていることがわかる。タオルケットからはみ出し、空調にさらされた腕は少し冷えている。
エミヤはベッドの上に横たわったまま、タオルケットを引き寄せ、しばらく夢の余韻を味わった。さらりとした手触りの柔らかな青い髪の感触がまだ右手に、温かくて柔らかい感触が唇に残っている。
たっぷり10分もそうしていると、だんだんと目が覚めた。タオルケットを捲り、名残惜しげにゆっくりと起き上がる。ベッドの上にあぐらで座ると、枕元の時計を確認した。時刻は目覚ましが鳴る予定の、10分前だ。
意識がはっきりしてくると、エミヤはため息をつき、頭を抱えた。
「またか……なんて夢を見ているんだ。私は」
甘美な夢の後に残るのは、いつも苦い後悔と自己嫌悪ばかりだ。
いつだって夢に出てくる相手は決まっている。今年の春に新卒で入社し、エミヤの元へ配属されたクー・フーリンだ。彼は本社の役員と血縁があるエリートで、青い髪と赤い瞳を持つ、アイルランド出身の美しい青年だ。
配属初日から、その美しさに、エミヤは心を奪われた。
生意気で口は悪いが、エミヤを先輩として慕ってくれている。エミヤも尊敬する先輩になるよう努力している。
──それなのに、どうしてこんな夢ばかりを。
まさかエミヤがクー・フーリンに劣情を抱いているなど、天地がひっくり返っても彼は気が付かないだろう。
起きている時は理性でどうにでもなるが、夢の中は制御できない。夢の頻度は緩やかに増えている。よくない兆候だと思うが、抗いがたい程に、夢はいつでも甘美だった。
──そもそも、私はノーマルのはずだ。彼があまりに美しいから、脳が誤認しているか何かの間違いなのだろう。そうに違いない。そうだと言ってくれ。
エミヤはまくらに顔を押し付け、くぐもった声でぼそぼそと呟いた。
「万が一にも、本人に悟られるわけにはいかない。絶対に」
今が繁忙期でよかったと、エミヤは心の底から感謝した。仕事が忙しければ忙しいほど気がまぎれる。目の回るような忙しい日々にこれほど感謝したことはなかった。再びため息をついて、ベッドから下りた。
青い髪の彼を好きだと自覚して数か月。気持ちは知らずうちに育ち続け、なにもできないままに、夏が来た。