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The Works "零れる言葉" is tagged "腐向け" and "槍弓".
零れる言葉/Novel by 珀神

零れる言葉

2,319 character(s)4 mins

あちゃさんにちょっかいかけるキャスニキのお話。
カルデア日常編(らしきもの)です。

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食堂に入るとアーチャーが厨房に居た、まぁ、いつもの風景だ。
いつもと少しだけ違うのは、喧嘩相手が居ないせいか黙々と手を動かしている。
あぁ、槍の俺はレイシフトに出ていたな、と思い出す。
女が3人寄らずとも、こいつらが2人揃えば喧しい事この上無い。
嫌なら近づかなければいいものを、何かと一緒に居る様は、嫌よ嫌よも何とやら。
しかも片方は別の自分でもあるものだから、むず痒くて仕方ない。
「よぉ、今日は静かだな」
カウンターに近づきながら声を掛ける。
ちらり、とこちらを一瞥して視線をまたまな板に戻す。
「君か、小腹でも空いたのかね?」
「まぁ、そんな所だ」
小気味のいい音と共に刻まれていくキャベツの千切りを眺めながら頷いた。
「今は手が離せない、少し待ってもらう事になるが」
「構わんよ、今すぐに何か食わなきゃ死ぬって訳でもねぇさ」
「…そうか」
短く返事をしながら、量産されていく千切り。
確かに職員と英霊の数を合わせれば食事を取る人数は多いだろう。
とは言え、既に大きなボール3つ分程の千切りが鎮座ましましている、これ以上作ってどうするつもりなのか。
少し見回すと、周りには見事に千切りしか無い、普段ならもっと手際よく準備を進めるはずが、やたらとキャベツを刻み続けている。
大変解り辛いが、おそらくこれはぼんやりと考え事をしている状態だ。
ただ無心でキャベツを刻むアーチャーを見て、ふと、思い付いた事を口にしてみる。
「槍の俺がいねぇと寂しいかい」
確信半分、からかい半分。
何をふざけた事を、と鼻で笑うか怒るか、さて…。
「…そうだな」
手を止めないまま、ぽつりと呟いた。
「…」
「…ん?」
一瞬何を言ったのか解らず首を傾げた。
それが肯定の言葉だと気付いて思わずぽかんと顔を見る。
ちょ、何だコイツどうしたすげぇ素直に答えたぞ、聞いた俺の方が恥ずかしい!
しかも、答えた本人は自分が何を言ったのか気付いていない、笑い出しそうになるのを必死で堪える。
「…?…っ、違う!」
肩を震わせる俺を視界の端に捉えたのか、ハッとして声を張り上げたアーチャーに堪え切れず吹き出してしまった。
「そんな訳があるか!」
真っ赤な顔で必死に吠えている。
「…何を言ってるんだ私は…!」
苦々しい顔で小さく呟く様に笑いが止まらない、今更だろ、オイ。
「随分と可愛らしい事を言うじゃねぇか、喧嘩別れでもしてたか」
ぐぐっと息を飲んで歯噛みする、反応が良すぎて腹が捩れそうだ。
「煩い!まったく、どのクラスになろうとくだらん事しか口に出来ないようだな、君達は!」
流石に包丁から手を離し、いつものように腕を組んで嫌味っぽく言っているが、おーおー、すっげぇ早口。
もうそれ図星ですって自分からばらしているようなもんだけどな、お前。
「むしろ、喧しい狗が居なくて清々している所だ!」
「誰が狗だコラ」
何ともまた、見事なタイミングで戻ってきたランサーが、食堂の入り口からアーチャーを睨み付けていた。
やっと納まりかけていた笑いが再燃する、何だこいつら俺を笑い死にさせる気か!
「ランっ…!」
「本当に口が減らねぇなてめぇは、可愛げが無ぇにも程がある」
がつがつと大きな足音を立てながら、アーチャーに近づき、バン!とカウンターに派手な音を鳴らして手をついた。
「まぁまぁまぁまぁ」
さらに食ってかかろうとするのを手で制す、噛み付いたら噛み付き返すのがこいつの性分だろうが。
拗れてもそれはそれで面白いが、今はそうじゃねぇだろ?
「何だ、あんた関係ねぇだろうが」
制した手をぱちんと弾かれて、痛い痛いと大袈裟に手を振る。
俺もお前なんだからまったく無関係と言う訳でもないんだが、まぁ今は置いておこう。
「そうでもねぇさ、なぁ、エミヤ?」
にたり、と笑ってその笑顔を向けながら、わざと真名で呼ぶ。
「なっ!キャスター、余計な事を言うな!」
不意打ちに耳まで真っ赤にしたアーチャーがまた叫ぶ。
その様と、俺の笑みとを見比べていたランサーのこめかみに青筋が走った、赤い目が煮えたぎるように揺れる。
「…どういう意味だ、事と次第によっちゃあ容赦しねぇぞ…?」
おそらく今、ランサーの頭の中では俺らの浮気風景でも再生されているんだろう、もうちょっとでドス黒いオーラを吹き出しそうだ。
「エミヤがな…」
言いながら立ち上がり、挑発するようにランサーに互いの鼻先が触れ合いそうな距離まで顔を寄せる。
勿論、癇に障りそうなにやけ笑いを貼り付けて。
「あ゛?」
「…お前がいないと寂しくて仕方ないんだとよ」
一瞬の間。
「…は?」
「きさっ…!キャスター!!!」
たっぷりと含みを持たせて放った一言に、拍子抜けしたランサーは間の抜けた返事をし、自分の発言をあっさりバラされたアーチャーは一際でかい声で叫んだ。
「そう言う事だから、まぁ頑張んな」
呆けた表情のランサーの肩にぽん、と手を置く。
「お、おぉ…」
さっきまでの怒りはどこへやら、拍子抜けしたままの顔でこくこくと頷いている。
視界の端でアーチャーが双剣を構えるのが見え、やばいやばいと脱兎の如く逃げ出した。
あー、面白ぇ。
いやまぁ、普段から事ある毎に惚気られてるんだから(しかも無意識に!)これぐらい正当な仕返しだろ。
一頻り笑った後で、はた、と気がついた。
しまった、これからしばらくの間、飯時に仕返しを食らうんじゃないか…?
…。
…まぁ、面白かったし、しょうがねぇか。


…案の定と言うか、その日からしばらく俺の味噌汁には具が入らなくなった。
地味な嫌がらせに、アーチャーの怒りを見た気がして、黙って啜った。

Comments

  • ツキ影
    March 13, 2018
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