政府は25日、日銀の審議委員に中央大名誉教授の浅田統一郎氏と、青山学院大教授の佐藤綾野氏を起用する人事案を衆参両院の議院運営委員会理事会に提示した。両氏とも金融緩和と財政出動に積極的な「リフレ派」とされ、高市早苗首相の意向を反映したとみられる。政策委員の中でリフレ派は1人から2人に増えることから、日銀の利上げ路線が後退する可能性を指摘する声も出てきた。
浅田氏は理論経済学を専門とし、3月31日に任期満了を迎える野口旭審議委員の後任となる。佐藤氏は国際金融論などが専門で、6月29日に任期を終える中川順子審議委員から引き継ぐ。任期はいずれも5年で、国会の同意を得た上で任命される見通しだ。
浅田氏、佐藤氏はリフレ派として知られる。現在の日銀の政策委員のうち、リフレ派は野口氏1人だが、今回の人事で2人に増えることになる。市場では、積極財政を掲げ、利上げに慎重とされる首相の考えが反映された人事だとの受け止めが多い。
首相は昨年10月の就任以降、政権の経済政策を議論する日本成長戦略会議に参加する有識者や経済財政諮問会議の民間議員にリフレ派を起用してきた。
日銀の政策委員は総裁と副総裁2人、審議委員6人の計9人で構成される。政策金利の上げ下げなどを決める年8回の金融政策決定会合で議決権を持つ。足元では今春の追加利上げも取り沙汰されるが、ある市場関係者は、今回の人事を踏まえ「早期利上げの議論に影響が出るかもしれない」との見方を示す。
ニッセイ基礎研究所の上野剛志主席エコノミストは「利上げ路線が頓挫するようなことはないだろうが、日銀は政府との調整の必要性を認識したのではないか」とみる。さらに「首相が長期政権を見据えるなら、政策委員の中でリフレ派の多数派を作ることもできる」とも語る。
ただ、リフレ派で固めることは、政権にとって不安要因にもなり得る。それは為替への影響だ。
25日の東京外国為替市場では、日銀の人事案が報じられると、運用上の魅力が低下するとの見方から円を売ってドルを買う動きが強まった。過度な円安はインフレを加速させかねない。上野氏は「円安が進みすぎると、抑止するために利上げを容認せざるを得なくなるだろう」と指摘する。(中村智隆)