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真綿の(中)/Novel by あちは

真綿の(中)

8,756 character(s)17 mins

本当にあった怖い話。
我がカルデアにアサシンエミヤいない。

以上のことからもわかるように、捏造甚だしいです。なんでも許せる心の広い方向け。
カルデア施設やレイシフトの仕組など、こうだったらいいなで書いています。その他色々と違うよなぁ~と頭抱えながら書いています。全ては藤ねえの仕業だ!

一か月に一本あげられたらいいなと思っていたらもう8月でした。藤ねえの仕業だ!
なのにまだ終わらない。藤ねえの仕業だ!

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何でも許せる人向けです。





 その女性はカウンターの向こう側、近いとも遠いとも取れない絶妙な位置に止まり、こちらをひたと見つめる。
 まっすぐに向けられるその瞳は何も知らない無垢な子供のようで、慈悲深い母のようで、そして大切な誰かを守ろうとする瞳であった。
 それにしてもよく似ている。ありえないが、遠い記憶の少女が成長したのなら目の前に立つ女性と瓜二つになるのだろう。唯一違うところを挙げるとするのなら、その目元だろうか。目の前の女性のたおやかな目とは違い、少女のそれは 好奇心に光り輝く勝気なものであった。
 改めて白の衣を纏った女性を観察する。倒れるより前に横目で見ていた映写室のスクリーンに映っていたセイバーのマスターとは僅かに帯びる魔力の質が異なるように思える。休養のためと半ば強引に私室に閉じ込められていた間にマスターからは聞いた話では、自身が小聖杯の役割を持つ彼女を独立した世界にそのまま置いていくわけにはいかないためサーヴァントとしてカルデアに招いたということだった。フードの男に加えさらに胃の痛くなるような話に内心苦悶の表情を浮かべたが、自分が気をつけさえすれば最低限の接触で済むだろうと高をくくっていた。よもやここまで早く、向こうから接触してくるとは思ってもいなかった。
 何か、言わなくては。
 そう口を開くが、ポンコツな声帯は掠れた空気を出すだけで本来の働きを放棄してしまったようだ。

「ごめんなさい。貴方のこと、マスターやセイバー……アルトリアから聞きました。彼らを責めないであげて。私が無理に聞き出したの」
「……そうか。それで貴女は私に何が聞きたいのかね?ご覧の通りやることがあって忙しくてね。それに改めて訪ねられても何も話すことはない」

 明らかな拒絶だ。隠すこともしなかった。彼の妻であり、勝ち気な少女の母である女性と和やかに茶を飲みかわせるほどエミヤの中では今回の一件の整理がついていないし、これから出来る気もしない。
 アイリスフィールは取り付く島もない態度に若干たじろいだが、呼吸をひとつすると胸の前で祈るように手を組んだ。

「お願いします。私たち二人にとって大切な人の話よ」

 まるで哀願するかのようなポーズをとってはいるが、胸を張りこちらを射抜く視線は決して引かないと語っていた。
 再びの無言。

「……どうか、手短に頼む」
「ええ!ありがとう!」

 話してくれるまで何時間でも居座りますとでもいうような視線に、結局折れてカウンターほど近くの椅子までエスコートしてしまっている。
 昔から、芯の強い女性が見せる理不尽なまでの要求にはめっぽう弱いのだ。姉と慕う存在の遠吠えと共に繰り出されるわがままにはいつも振り回されてきた。
 席に着いたアイリスフィールはさっそく本題に移ろうと身を乗り出すが、何のもてなしもしないというのは己の沽券に関わる。少し待ってくれとキッチンに戻ったエミヤは、ティーポットとカップと二つ。それから少し悩んでカモミールの葉を用意した。ウォーターサーバーから熱湯を出し、ポットとカップを温める。全体が温まったら湯を捨て、葉を適量いれ二人分の湯を再び注ぐ。すぐに砂時計を返し、ポットにカバーをかぶせる。そして、トレンチにソーサーとカップ、ポットを置き一連の動作から目を離さないアイリスフィールのもとへ向かった。
 歩く度あたりに漂うほのかに甘い香り。カモミールティーには心身をリラックスさせる効果がある。時折夜に眠れないと泣きついてくるアリスのためにホットミルクとは別に用意していたものだが、まさか自分も使うことになろうとは。
アイリスフィールの座る椅子の後ろへ回り、さもこれが本職ですともいわんばかり滑らかな動作でカップを置く。ちょうど砂時計も全て落ちたので、そのままカモミールティーを注いだ。

「とてもいい香りね。うちのメイド達でもここまでの腕の持ち主はなかなかいないわ」
「どうも、レディ。褒めても何もでないがね」

 そのまま向かいの席につき、美味しそうにカップを傾けるアイリスフィールを眺めながら、自分もカップに口をつける。
 軽やかな花の香りが鼻腔をくすぐり、ゆっくりと食道を通りながら胃が熱くなる。気休め程度になればいいと考えて淹れたものだが、案外気持ちが安らぐものだ。知らぬ間にこわばっていた肩の力が若干緩んだのが自分でもわかった。
 コト、とソーサーの鳴る音に視線をあげると、テーブルに肘をつきカップを両手で包みこむようにして持っているアイリスフィールと目が合う。

「さて、私に話したいこととは?」
「ええ。貴方も知っていると思うけどこのカルデアに新たに召喚されたアサシン。貴方と同じ真名をもつ、エミヤについてよ」

 やはり、そうか。
 彼女と私の共通点なんて彼以外ないのだから当たり前だが、それでも他の話題であったらいいと思っていた。そもそも彼女は「私たち二人にとって大切な人」と言っていたのだ。
 そこから導きだせる答えなんて一つしかないというのに。

「その前に、アサシンのエミヤは、彼は衛宮切嗣という認識であっているのだろうか」
「ええ、間違いないわ。今の私は聖杯の末端だから、本来持ち得ない聖杯戦争の記憶や私の家族の記憶も持っているの。そこから考えるに、彼はアインツベルンが優秀だったらという正史とは異なる世界線において守護者となった衛宮切嗣、その人よ」

 ある程度の推測はしていたが、改めて突きつけられると息の詰まる事実だ。今にも落ちそうなつり橋の最後の一縄を切られ、谷底に叩きつき落とされたような感覚でもある。
 深く、溜息をつく。
 自然と下がっていた頭に視線を感じるが、今は顔を上げることが出来ない。

「それで、彼が衛宮切嗣だとして、私に一体何の用があるというんだ」
「……キリツグと貴方の関係は、先ほども言ったようにマスターから聞きました。貴方が英霊となった経緯も。キリツグが守護者になったと知った時、私が感じた衝撃を貴方も感じたことでしょう。その全てを分かち合えるなんて考えていません。そんな傲慢な事、決して思う事は出来ない。でも、その痛みを少しでも共有することができる私たちなら、彼を救う事が出来るんじゃないか。そう思ってここにやってきたの」

 顔をあげる。そこには愛する人が世界に捕まった絶望よりも強く、必ず守ってみせると決意した人間の持つ光があった。彼女はこの状況下でも絶望するとことなく前を向いている。たとえ世界にあらがってでも衛宮切嗣を守ろうとあがき続けるのだろう。彼女は強い。 ……自分とは違って。

「具体的に、どのように彼を救おうと考えているんだ?」
「ええ。キリツグと少し話をする機会があってわかったのだけれど、彼は私のように正史の記憶を持ち合わせていないの。守護者となったキリツグは、誰にも理想を理解されずたった一人で歩き続けてしまった。ひとりぼっちなのよ。だから、世界の意思とは離れた場所にあるカルデアでは、せめて心穏やかに過ごしてもらいたくて……。」
「ここでは彼に平穏な時間を与えたいという事はわかった。しかし、それに私がどう関わってくるのかがわからない。私の預かり知らないところで勝手に彼を支えてやればいい」
「……初めてキリツグと会った日のこと、今でも思い出せるわ。まるでここにいる彼みたいに世界に絶望して、一人ぼっちで、それでも前に進んでいた。正しく人形であった私にも彼が孤独な人だとわかった。でも、そんな彼が、私に家族というものを教えてくれたの。世界を教えてくれて、夢を見ることを教えてくれた……。今の私がいるのは、キリツグのおかげ。キリツグがいなかったら、私は笑う事も泣くことも慈しむことも恨むこともないまま、ただ壊れる日を待つことしかできなかったでしょう。そんな彼が、私の目の前で一人ぼっちでいるなんて見ていられないの。私がもらったたくさんの宝物を、今度は私がキリツグにお返しする番なのよ。……そしてその最初のお返しが家族の温もり」

 アイリスフィールはそこで言葉を切ると、どこか緊張した表情を浮かべた。カップを包んでいた白魚の手がエミヤへと伸びる。テーブルの上で知らぬ間に固く握りしめていた拳の上に温かな重みが加わった。カップを触っていたからだけではない、血の通った人間の、いやそれ以上の温もりが手の先からじんわりと広がっていくのがわかる。ふと手にこめていた力がぬけた。そしてそれを待っていたかのように絡まる指と指。

「それが出来るのは私と、あなたしかいないの。エミヤさん」

 ぐっと彼女の指に力がこもる。どくん。まるで指先から注ぎ込まれた溶岩が心臓に流れこんだように、鼓動が大きく脈打つ。熱い。彼女の触れる場所から広がる熱に全身が侵されてゆく。

「私だけじゃ足りない。私がいなくなったあと、彼が亡くなるまで側にいてくれたあなたもいてこそ、やっとここにいる彼に本当の家族の温もりを感じてもらえるんじゃないか。そう思うの。だからエミヤさん。どうか私に協力してください。彼に、キリツグに家族とは何なのかということ、一緒に教えてあげてほしいの」
「私、は…。」

 言葉に、詰まる。
 アイリスフィールは家族を教えてあげたいといっている。しかし、自分は本当に彼の家族となりえたのだろうか。地獄のような世界から救い出しくれた、彼の。
 決して他人ではなかった。生存者を望むことさえおこがましいほどの惨状の中、二人が手を取りえた奇跡は、他人と割り切ってしまえるほど簡単なことではなかったはずだ。
 あの時、二人は出会ったことでもう一度生まれ変わったのだ。男は誰か一人でも救えた人間として。少年は救われた人間として。
 それが二人にとって幸運だったのかはわからない。あるいは、そこで潰えたほうがよかった命なのかもしれない。だけど彼らは地獄のなか手を取り合ってわずかな時間を共に過ごした。
 彼から名前ももらった。彼を「じいさん」と呼んだ。それが家族ということなのだろうか。それが自分にはわからない。

 彼の最期なら、おぼろながら思い出せる。月の光を浴び、彼が浮かべたのは安らかな笑顔だった。
 馬鹿な子供の愚かしいまでの約束を聞いて彼は逝ったのだ。
 それは呪いの言葉だった。
 世界の果てまで歩いてなお、歩き続けなければ己の価値を見出せないような機械を作り出してしまった。
 その呪いの言葉は、しかし彼にとっては甘露にも似た響きだったのだろう。そうして彼はようやく安心することができたのだ。世界のため師を殺して、妻を殺して、子を救えなかった男が最後にようやく己の荷を下ろすことができたのだ。
 穏やかに死んでいく人の顔を初めて見た。
 長く細い呼吸ひとつ。そしてもう動かなくなる。
 人の死ならあの場所で嫌というほど見た。あたりに怨嗟の声渦巻くなか目にした凄惨な死は目を逸らしたくなるほどに残酷で、あの頃の自分にとっての死とはそういうものであった。
 しかし彼の死はそれらとは全く異なり、静かで穏やかでそして美しかった。月明かりに照らされる彼の横顔を眺めながら、同時にそれは己の心に黒い点を残してった。

 彼を殺したのは俺だ。

 体が冷えるのも構わず、彼を見つめ続けながら考えていたことはそれだけだった。
 彼は自分の言葉を聞いて旅立った。人はそうではないというかもしれない。寿命だったから仕方がないのだと。しかし幼い心に一度刻み込まれた傷は、他人がいくら諭したところで癒すことはできないのだ。
 アイリスフィールは、自分を彼の家族だという。
 本当にそうなのだろうか。子が親を殺す。そんなことは古今東西世界中どこにいたって聞こえるありふれた物語だ。いっそ陳腐とすら言えるだろう。
 しかし、親を殺した先もなお、子は親と家族であると言えるのか。ましてや血縁関係もなく、家族と証明出来るものと言えば吹けば飛ぶような紙っぺら一枚だけの関係であったとしても。
 彼とともに過ごした時間を否定するわけではない。ただ胸を張って肯定することが出来ないだけだ。
 そんな自分が彼女の願いを叶えてあげられるとは到底思えない。
 そんな厚顔無恥なこと出来やしない。

 柔らかく包まれていた左手に右手を乗せる。
 その行動に喜色を浮かべ、きらめく瞳でこちらを射抜いたアイリスフィールが口を開くよりも先に、言いきる。

「すまない」

 かさつく指先で傷など付けないよう注意しながら、一本一本彼女の指をほどいてゆく。先ほどまで痛いほど力がこめられていた指は、思いのほかあっさりと自分の手を解放してくれた。そっとテーブルの上に戻した時には、その手はガラスのように無機質に見えた。2センチ先の指先からはもう温度を感じられない。

「すまない。私では貴女のお力にはなれない」
「……どうして、と聞くことも許してもらえないのかしら」
「それも、どうか。ただ、あなたの行いがうまくいくよう心から願っている。それは、誓って本当だ」

 引き止められるかと思ったが、彼女はすべてを見通すような澄んだ瞳を向けるだけで、その心配は杞憂となった。

 本当に素晴らしい女性だ。やるじゃないか、じいさん。
 だからこそ強く思う。彼らの美しい「家族」のなかに自分というシミを落としたくはない。

「私も、貴方のことを願っているわ」
「何を、とは聞かせてもらえないのだろうな」
「ええ、当たりよ。美味しいお茶をどうもありがとう。貴方とお話することが出来て本当によかったわ。また、こうしてお茶を頂きに来てもいいかしら」
「私の能力を買ってくれるのなら、喜んでその技を披露しよう。その際うるさい蘊蓄に付き合って頂ければこれ以上嬉しいことはない」

 その言葉にアイリスフィールは微笑むともう一度、ありがとうと呟いた。エミヤは静かに席を立ち、彼女の椅子の背にまわる。背もたれを引き、立ち上がった彼女に右腕をさしだす。流れるように食堂の出入り口までエスコートされる姿は、まさに生まれながらの貴族であった。

「ここまでで結構です」
「そうか」
「貴方とこうして話すことができて、本当に嬉しく思います。この奇跡に、感謝を。それでは」

 そう言うと、彼女は踵を返しリノリウムのような光沢を放つ廊下を歩いてゆく。エミヤは、緩やかな曲線をえがく廊下の先に彼女の背中が消えるまで見送っていた。
 右腕にかすか残るアイリスフィールの温もりと消えた重みに、心がざわつく自分を心底嫌悪しながら。


*****


 Dr.ロマンに呼び出されたどり着いた管制室で聞かされた話は、容易には承諾しがたいものであった。
 曰く、先日定礎復元を終え冬木にまたしても不審な動きがみられるため、調査に赴いてほしいという。

 新たに召喚された赤いフードのアサシンと共に。

 精一杯視界に入れないよう努力していた赤色がマスターの隣にいるのはそのためか。ここで顔を顰めるのはあからさますぎるためなんとか抑えたが、マスターを見つめる視線に非難の色が混ざってしまうことは許してもらいたい。
 顔中に謝罪の念を浮かべるマスターが言うには、冬木を熟知しているロード・エルメロイは先の戦いで負った負傷のため絶対安静が義務付けられているため不参加、その他冬木を知っているサーヴァントの中で最も効率の良い編成を組んだらこうなったという。
 確かに、調査ということでマスターが同行しない今回のレイシフトにおいて、単独行動スキルを持つ自分が選ばれることは納得できる。しかし、なぜ同行者が彼になるのか。他にも組みようがあるはずだとマスターに進言したが、ごめんと言いながらも編成を変えるつもりはないようだ。納得のできるものではなかったが、同行者が静かに自分を待っている状況でこれ以上駄々をこねることも出来ず、結局首を縦に振るしかなかった。
 マスターと話がまとまったところで、機をうかがっていたのか赤いアサシンがスッとエミヤの前に足を進める。

「アサシンのサーヴァントだ。特に協力するつもりはないから勝手にやってくれ」
「……アーチャーだ。そうさせてもらおう」

 そう言うとアサシンは踵を返し、エミヤを待たずコフィンへと向かう。

「アサシンはああ言ってるけど、できるだけ単独行動は控えてね」

 続いてコフィンへ向かうエミヤの背中にかけられるマスターの言葉。それはまるで、向こうに協力する気がないのならと正直ホッとしていたエミヤの内心を読んでいるかのようだった。
 なぜだろう。マスターは私と彼の間に横たわる問題を知っていたのではなかったのか。
 振り返り見つめたマスターは、先ほどと変わらず申し訳なさそうにレイシフト作動範囲外からエミヤを見ている。
 帰ったら訳を聞かせてもらおう。そう決意して、淡く青色の光を放つコフィンの扉が開くのを待っているアサシンの隣に足を並べる。

 背、俺より低いな。

 横目で彼を盗み見ると、被ったフードのてっぺんを見ることが出来た。目測で10センチは違うだろうか。
 遠い過去の自分は、彼のことを見上げてばかりいた。年齢に似合わず老獪した風貌とガタのきた身体に心配をすることは多々あったが、不思議と頼りないといった印象を受けたことはなかった。もちろん、生活面は口を挟まずにはいられない事だらけだったが。
 そんな彼のことを、身長と言う表面的な部分ではあるが小さいという感想を自分が抱いたことに素直に驚いた。
 そのことに、無情な時の流れを感じながら、開いたコフィンに乗り込み目を閉じる。
 形はどうあれ、彼と共に闘う。
 遅れてやってきた理解に、胸が音を立てたのがわかった。その音の指す意味を考えないように心を無にする。

――アンサモンプログラム スタート。
――霊子変換を開始 します。
――レイシフト開始まで あと3、2、1……
――全行程 完了(クリア)。
――グランドオーダー 実証を 開始 します。

 武骨な機械音声が聞こえ伏した瞼の向こう側に光を感じると、すぐに身体が希薄になってゆく感覚に襲われる。強制的に引き起こされる気絶と似たその感覚に、全ては夢なのではないか、そんな馬鹿げたことを思ったりした。


*****


「これでよかったんですか」

 二人が無事に冬木にレイシフトしたことを確認した幼きマスターは、いつの間にか隣に佇んでいたサーヴァントにそう問いかける。

「ええ、私のわがままを聞いてくれてどうもありがとう」
「ほんと、今回限りにしてくださいね。アルトリアを説得するの大変だったんですから、アイリスフィールさん」

 にこやかにほほ笑むサーヴァント、アイリスフィールはあら?と意味ありげに首を傾げる。

「けれど、マスターも本当に反対していたわけではないでしょう?あなたはこれが本当にエミヤさんの嫌がることだったなら、そもそも協力なんてしないはず」
「……どうしてそう思うんですか?」
「わかるわ。だってあなたはここカルデアで多くのサーヴァントを従えているのよ?英霊という存在になるモノ達なんて、誰だってどこかしらのネジが壊れているもの。そんなモノの集まりを今まで破綻させることなく扱いこなしてきたあなたは、意識的にしろ無意識的にしろ相手の超えては一線の見極めることが出来る人なのでしょう」
「どうなんだろう、俺にはわかりません。がむしゃらになってやってきたらここまで来ていたというところが正直な話で」
「きっと、何事にも一生懸命なあなただからこそこうして多くのサーヴァントが貴方の力になっているのよ」
「どんな理由があるにせよ、俺と戦ってくれる仲間には常に感謝しています。特にエミヤは右も左もわからない頃から一緒にいて色々教わってるし、食事面はまかせっきりだから、今回の事がいい方向に転がるならと少し強引だけど貴方の提案にのってみました。……でも、ほんとに大丈夫なんでしょうか?」

 二人を送り出したはいいものの未だ不安をぬぐい切れずにいる少年に、アイリスフィールは春の日差しのような柔らかな笑顔で答える。

「大丈夫よ。だって二人は私の家族なんですもの」
 
 それは、一見疑うことを知らない少女の浮かべる笑みのようであったが、よく見ると、世界を知りそれでも信じることを当たり前とする聖母の笑みであった。

「……そうだね。貴方の家族なら乗り越えられる」
「ふふ。そうですとも!ところで、レイシフト先の状況は映像で確認できるのよね?」
「ええ、映写室で確認できますよ。案内しましょうか?」
「ありがとう。でも、アルトリアに案内してもらうから大丈夫よ」
「アルトリアか……。貴方って、穏やかそうに見えてその実、けっこう強引ですよね」
「ほら、母は強し、っていうでしょう」

 そうして彼女は美しく笑った。

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Comments

  • Mad*Dormouse

    続き正座待機ヾノ。ÒдÓ)ノシ バンバン!!

    May 18, 2019
  • med

    November 18, 2018
  • 竜床(753周防)
    August 26, 2017
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