レズビアンを理由に迫害を受けるおそれがあるという十分理由のある恐怖を有するとし難民認定された事例 | 弁護士江木大輔のブログ

レズビアンを理由に迫害を受けるおそれがあるという十分理由のある恐怖を有するとし難民認定された事例

テーマ:行政訴訟

判例時報2556号などで紹介された裁判例です(大阪地裁令和5年3月15日判決)。

 

 

本件は,強制退去処分を受けたウガンダ国籍のレズビアンである原告が,ウガンダではレズビアンであることを理由として迫害を受ける恐れがあるとして難民認定を求めた行政訴訟です。

 

 

判決は,次のようなウガンダでの同性愛を取り巻く法律などの状況を踏まえると,ウガンダにおいては、同性間の性行為が違法とされている上、同性愛者は処罰の対象となるものであるとの認識が、改善されている傾向がうかがわれないではないものの、依然として根強いことも認められること,「難民」とは、「人種、宗教、国籍若しくは特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見を理由に」迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するものをいうところ,原告がレズビアンであることをもって「特定の社会的集団の構成員であること」に該当するといえるとしました。

 

・ウガンダ憲法
 ウガンダ憲法21条は、性的指向には言及しないが、平等及び非差別を規定し、ウガンダ憲法31条(2a)は「同性間の結婚は禁止される」旨規定している。
・ウガンダ刑法
 ウガンダ刑法第145条は、自然の理に反する人間同士の性交を行う者等は、罪を犯しているとして、終身刑を科す旨規定している。
・2014年反同性愛法
 2014年反同性愛法2条は、ある人物が同性愛の罪を犯す場合として、他の同性の人物の肛門又は口に、陰茎又は他の奇妙な器具を挿入する場合等を定め、この罪を犯す人物について、有罪であれば無期懲役に処するものとする旨定めていた。なお、2014年反同性愛法は、同年(平成26年)2月24日にC大統領が署名し、成立したものの、ウガンダ憲法裁判所は、同年8月1日、法案の成立に際し、憲法上議決に必要な定足数(議員の3分の1)が議会において満たされていなかったことを根拠に、同法は無効であると宣言した。

 

・UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)作成のウガンダの出身国情報(2017年度版)

警察は、2015年(平成27年)1月、HIV/AIDS検査クリニックの開設を支援した9人の男性を「自然の摂理に反する性的行為」を理由に逮捕した。警察は逮捕された者の内4名は逮捕時に性的行為を行っていたとしたが、逮捕者たちはその罪状について争っている。男性たちは強制的な肛門検査を受け、保釈された。
 警察は、2016年(平成28年)8月4日、カンパラにおいて、ウガンダのプライド・イベントの一環であったLGBTI の美人コンテストを散会させた。16人(ほとんどはウガンダ人のLGBTI の権利擁護の活動家)が逮捕されたが、1時間後に釈放された。警察による虐待を恐れて6階から飛び降りた男性が重傷を負った。警察は引き続き、合意に基づく同性愛行為の容疑をかけられた男性とトランスジェンダーの女性に対して、強制的な肛門検査を実施した。このイベントに関しては、警察がトイレに隠れていた出席者やクラブを出ようとした者を殴打したという複数の報告が存在する。
 警察は、同年9月24日、100人以上がI の浜辺でのプライド・パレードに参加するのを妨げた。
 警察は通常、LGBT に対する暴力事件を捜査せず、むしろ被害者を逮捕・拘束している。しかし、近年では、警察の幹部レベルとLGBTコミュニティとの間の協力関係は向上しているという複数の市民団体の報告もある。数件においては、例えば暴徒による暴力から守るなど、警察がLGBT の人々の支援にまわったという記録もある(しかし、LGBT 被害者はしばしば、保護拘置された。)。

 

・英国内務省作成の「国別政策および情報ノート ウガンダ:性的指向および性自認と性表現」(2019年4月)

C大統領を含む一部の政治家及び政府のメンバーは、性的少数派を公然と非難した。その他の法律は、あからさまに反LGBTI ではないが、LGBTI の人々を逮捕し嫌がらせをし、LGBTI の人々を擁護し支援する団体の活動を制限するために時として利用される。
 警察及びその他の政府機関による行為を含め、LGBTI の人々に対する人権侵害は過去から行われていた。逮捕及び/又は勾留されたLGBTI の人々は、屈辱、肉体的及び性的暴行等の虐待にさらされ、強制的肛門検査を受けさせられたと報告した。

  警察は通常、事件を調査するためにほとんど何も行わず、場合によっては事件を容認することさえあるため、警察官でない私的な個人はとがめられることなくLGBTI の人々の権利を侵害し続け、ほとんどの場合これらの行為は法執行当局によって暗黙に容認されている。警察はまた、LGBTI の人々に対する違反をうまく調査できないという心配な傾向を示した。ほとんどの場合、そのような事件を援助及び調査する代わりに、警察は反対にLGBTI の人々を逮捕し、性的指向と性自認に基づき彼らを起訴することを好む。

 ウガンダ警察はまたもやその年のウガンダにおけるLGBT の人々の権利の最大の侵害者だった。LGBT の人々の権利を侵害する傾向が高いというこの事実は、特に法律に抵触することとなる場合、警察がLGBT の人々としばしばより多くの接点を持つという事実と、警官隊メンバー内のLGBT の課題に関する知識と理解の水準が低いということで簡単に説明がつく。2017年(平成29年)には、LGBT と疑われる人々の恣意的逮捕に関連する9件の事件が記録されていた。多くの場合、警察はLGBT と疑われる人々を、単に同性愛者であるという疑いで逮捕し勾留する。その後、彼らは、引き延ばすための罪を着せる、

 

・ヒューマン・ライツ・ウォッチによる報道

 ヒューマン・ライツ・ウォッチとアムネスティ・インターナショナルは、成人間の同意に基づく同性愛行為容疑、若しくは性的少数者(LGBTI)に見えたというだけで逮捕された人々が少なくとも17人いることを確認している。
 ウガンダの団体である人権啓蒙推進フォーラム(HRAPF)の報告によると、2007年(平成19年)から2011年(平成23年)の5年間では、同性間行為の容疑では23件の逮捕しか確認されておらず、訴追に至ったケースはなかったそうだ。暴力や差別の被害を受けた性的少数者(LGBTI)は、自らも逮捕されるのではないかと怖くて、警察には事件を告訴できないと話す。

 2019年(令和元年)10月4日にLGBTI の人々の権利を求める活動家が襲撃され死亡した事件があった。その数日後、倫理・品位担当大臣は、記者団に対し、議会は、ゲイの人々のいわゆる「助長と募り」を犯罪化し、合意による「重大な」同性行為に対する死刑を含む法案を提出する予定だと語った。提案された措置は、同性愛の明確に定義されていない「助長」を犯罪化した2014年反同性愛法を反映しており、初期の草案には「重度の同性愛」に対する死刑が含まれていた。

 

 

 

 そして,レズビアンである原告が,ウガンダの警察署で,レズビアンであることを理由に逮捕、勾留等されたとの原告の供述等は、これと整合する傷痕の写真やB病院作成の医療記録、S医師作成の診断書及び意見書に裏付けられており,ウガンダにおける同性愛者の置かれた状況に矛盾しないので、相応の信用性を有するとし,原告はレズビアンであることを「理由に迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有する」ものであると認められるから、原告は難民に該当すると認められるとしました。