周囲に視界を遮るものはなく、道を進みながら近づくと、位置によって黒いシルエットの見え方が大きく変わる。切り妻の屋根の連なりは、街並みのようにも見える。
北海道伊達市郊外、内浦湾を望む丘陵の緩やかな斜面地に建つ。入院治療を必要としない精神障害者の社会復帰を支援する援護寮(生活訓練施設)だ。定員20人のすべてが個室で、原則2年以内とされる訓練期間中、利用者はここを「自分の家」として過ごす。
エントランスは東南側の2階にある。20人が生活する建物の入り口としては狭い感じだが、設計者の藤本壮介氏によれば、全体を住宅的なスケールでまとめた結果だという。平面構成上は、5.4m角の正方形を角度をつけて並べ、間にできる三角形のスペースをジョイントにしてつないでいる。食堂とリビングルームでは5.4m角の平面を使い切っているが、個室部分では北側を廊下に割り当てた。各室の角度は、部分と部分、部分と全体のバランスを考えながら設定した。