日経「星新一賞」受賞作を味わう 受賞3作がAI使用
9作品の全文を紹介
理系的な発想力を問う短編小説を公募・表彰する第13回日経「星新一賞」の受賞9作品が決まりました。一般部門(対象制限なし)のグランプリは、しゃみずい氏の「ゲノムの塔」。一般部門の受賞4作品のうち3作は創作過程で人工知能(AI)を使用しています。ジュニア部門(対象は中学生以下)のグランプリは飯島敬大氏の「虫は歌う、ぼくらとともに」です。9作の全文を一挙に紹介します。
一般部門グランプリ「ゲノムの塔」
Subject:恩師に奉る一書(私的懺悔=ざんげ=)を伴う覚書)
From:黛 郁人(まゆずみ いくと)
To:煤賀 胤明(すすが たねあき) 博士
Date:2045/9/11 23:11 …続きを読む
ジュニア部門グランプリ「虫は歌う、ぼくらとともに」
「今日の天気は、雪のち晴れのち熱風のち雷です。ご注意ください」
ぼくたちは、朝から晩まで天気情報をずっと聞いている。天気を知らないと命取りになるからだ。「今日の学校は15時から17時だって」となりの木に住んでいる山田(やまだ)が教えてくれた。 …続きを読む
一般部門優秀賞(アマダ賞)「並行自己調停株式会社」
複数身体システムの契約書にサインしたのは、七年前の秋だった。
「効率化」――企業が提示したその単語は、私にとって魔法のような響きを持っていた。一つの意識基盤を三つの身体(からだ)に同時展開できれば、睡眠時間を除いた活動時間が三倍になる。 …続きを読む
一般部門優秀賞(ULSコンサルティング賞)「エリンネルング」
宇宙船《エリンネルング》の壁は、微(かす)かに震えていた。それは金属の共振ではなく、もっと有機的な律動――まるで心臓の鼓動だった。遺伝子工学者の私は、診断モニターに映る波形を見て背筋を凍らせた。
「……また変化している」 …続きを読む
ジュニア部門準グランプリ「未来販売機」
壊れかけの自動販売機で未来が買えると聞いた。それも、本当に壊れかけじゃないといけないらしい。
僕は、街を歩き回り、やっとその枯葉のようにくすんだ色をした一台に出合った。きっと多くの人に使われたのだろう。 …続きを読む
ジュニア部門優秀賞「夢の灯」
―西暦二一二五年―
人類は睡眠を過去のものとしていた。遺伝子工学とナノテクノロジーの進歩により、脳の疲労を瞬時に消し去る「E.C.(Un Esprit Clair)錠」が開発され、誰もがこれを飲んで一日中活動し続けた。 …続きを読む
ジュニア部門優秀賞「となりの星は」
「来月の旅行、楽しみだね!」
「そうだね! 私、毎日弟に自慢してるの」
月面第一小学校、六年二組の教室は、修学旅行の話でもちきりだ。
毎日見上げているあの青い地球に行ける日は、もうすぐ。 …続きを読む
ジュニア部門優秀賞「コウノトリパーク」
コウノトリさんが、運んでるんですよぉ、と飼育員の甘い声が響く。
白い卵形座席の中には、私と、隣に座る息子しかいない。座席に施された特殊加工で、ノイズは一切入ってこなかった。「コウノトリさんはぁ、この、おっきぃなお口で、みんなを運んできたんです!」 …続きを読む
【これまでの受賞作一覧】