見逃された道路陥没の脅威、下水管腐食の速さに「リスク甘く見ていた」…維持管理体制も脆弱に
破損した敷設42年の下水道管内では、極度に腐食する「50ppm(ppmは1万分の1%)」を上回る高濃度の硫化水素が滞留。陥没発生時、厚さ約50センチのコンクリート製管路が同10センチ前後まで消失していた。
県の第三者委員会が今月19日に公表した報告書で浮き彫りとなったのが、県の管理体制の不備だ。22年の定期点検では、管路内を流れながら撮影する浮流式カメラによる調査で腐食の進行が確認されていた。鉄筋の露出も捉えられていたが見逃され、県は「直ちに修繕が必要な状況ではない」と判断。23、24年に高濃度の硫化水素が計測されても対応は変わらなかった。
報告書は、県に対し「腐食・損傷のリスクの高まりを推測できた」と指摘。「調査結果や修繕実績の蓄積・共有が十分ではなく、適切な対応・判断が取れなかった」「実務経験が豊富な者が少ないなど体制が十分ではなかった」と断じた。
「硫化水素のリスクは長年、軽視され続けてきた」。同委員会メンバーの森田弘昭・日大特任教授(68)(下水道工学)はそう話す。1987年には日本下水道事業団により腐食防止のための指針が作成されたが、「下水道の整備が優先される中、『腐食の影響は何十年後』と捉えられ、リスクが十分伝わっていなかった」。
総延長約50万キロ、地球12周分に及ぶ日本の下水道網では、老朽化に伴い、道路陥没につながる破損が年1000件以上起きている。
八潮のような大規模事故のリスクは各地に潜む。国土交通省が全国5000キロの敷設30年以上の大型管路(内径2メートル以上)で実施中の特別重点調査では、昨年9月末時点で75キロが1年以内の修繕や更新を要する「緊急度I」と判定された。損傷の大半は硫化水素によるものという。
国交省は調査を踏まえ、新年度から法定点検の対象・頻度を増やすなど点検体制を強化する方針だ。だが、それを担う自治体側の維持管理体制は、人口減に伴う技術職不足により脆弱(ぜいじゃく)化しつつある。
森田氏は「下水道の仕組みも硫化水素の怖さも分かっていない自治体が増えている。国が硫化水素に詳しい専門家チームを組織し、全国に派遣するなどの対策が必要だ」と訴える。