日本の『カウンターエリート』『ピーター・ティール』は何処に? 昔ネオコン、今カウンターエリート?
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アイン・ランドの『水源』を愛読したトランプと河野太郎が意気投合する?
昔ネオコン、今カウンターエリート?
日本の『カウンターエリート』、日本の『ピーター・ティール』は何処に?
[2025・5・13・火曜日]
1989年生まれの石田健氏の『カウンターエリート』(文春新書)を読みました。
出版社の宣伝文句は以下の通りです。
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「何かが間違っている」。そう主張し、政府やメディアなどを「既得権益化したエリート」として批判する〝カウンターエリート〟が支持を集め、世界中で地殻変動が始まっている。シリコンバレーで生まれた彼らの思想を手がかりに、その背景や論理、これから起こる変化を徹底解説。ニュース解説メディア『The HEADLINE』編集長、初の著書。
彼らは単なる「反エリート」ではなく、自らの「何かが間違っている」という主張を掲げ、支持を広げている。背景にあるのは、世界的投資家ピーター・ティールや暗黒啓蒙の思想家カーティス・ヤーヴィンらが支持する「奇妙な右翼サブカルチャー」だ――。
なぜリベラルなシリコンバレーは、保守派に転向しつつあるのか?なぜ世界で同時多発的に、新たな政治家が台頭し、既存秩序を揺るがしているのか?石丸現象や兵庫県知事選、韓国の戒厳令などに共通する背景とは?
リバタリアンからポッドキャストに台頭するマノスフィア文化、反Wokeまで広範な思想を読み解く。
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本書は石田さんの初めての著書のようですが、なかなか面白く一読しました。
ネットに出てきた「カウンターエリート」の定義は以下の通りです。
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counter elite
既存の政治体制の頂点にあって権力の維持,拡充をはかっている権力エリートないし支配エリートに対立して,正反対の目標や異なる体制の樹立を目指す個人ないし集団を総称するもの。
今日この意味における対抗エリートの存在は,資本主義諸国家のみならず社会主義諸国家における知識人の諸「宣言」や意見表明 (→憲章 77 ) などを通じても看取される。
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石田さんによると、ドナルド・トランプ大統領自身が「カウンターエリート」で、その下に集ったイーロン・マスクや副大統領のJ.D.ヴァンスや初期の段階からトランプ支持を打ち出していた世界的投資家ピーター・ティールや暗黒啓蒙の思想家カーティス・ヤーヴィンらが支持する「奇妙な右翼サブカルチャー」など、彼らに共通するのは、既存の「リベラルな秩序」に挑戦するカウンターエリートという潮流だとのことです。
『カウンターエリート』と並行して、アンジェラ・ネイグルの『普通の奴らは皆殺し インターネット文化戦争 オルタナ右翼、トランプ主義者、リベラル思想の研究』(Type Slowly)を読了したのですが、この二つの著作にはいろいろと知的刺激を受けました。
ネイグルさんの本の読後感は次回に記すとして、まずは『カウンターエリート』ですが、「カウンターエリートは、右派あるいは保守思想と親和性が高いこともあるが、リベラル・保守といった政治的イデオロギーと無関係なことも多い」そうです。
冒頭、「カウンターエリート」のシンボルともいうべきビーター・ティールの「思想」解剖。ティールの本はあまり翻訳されていないので参考になりました。ナイスですね?
多様性を唱えるリベラルな方々は、ティールのような「保守派のゲイ」は認めたがらないようで、そのことに、ティールは違和感を表明しています。
私などはゲイであろうがなかろうが、レーガンを支持した中には、ゲイもレズもいたでしょうから、そんなことはどうでもいいと思っていました。
というのも、昔出た本で、マ−ヴィン・リ−ブマンの『大統領をつくった男はゲイだった』(現代書館)という本があります。30年前(1995)に訳出された本です。元左翼で、後にレーガン支持者となったゲイの自叙伝ですが、こういう人もレーガン支持者にいるという「多様な支持層」を見て、共感を覚えたことが私にはありますから。
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ティールは2016年の共和党全国大会のスピーチでこう語ったそうです。
「(自分の幼少期に)世の中で議論の的になっていたのは、どうやってソビエト連邦を負かすかだった。今、大きな議論になっているのは、誰がどのトイレを使うべきかについてだ。私たちが抱えている本当の問題から、注意をそらしているだけだ。誰がそんなことを気にするのだろうか?」
たしかに、自由世界にとっては、いまは中共帝国主義をどうやって負かすかが大事な時です。そういう時に、地球温暖化がどうのこうのとかならまだしも(?)LGBTや不法移民の措置などで時間や金を浪費するのはおかしい話でしょうね。
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元民主党員で、クリントンやゴアやオバマなどを支援していたマーク・アンドリーセン(シリコン・バレーの大物)は共和党、トランプ支持に転向したそうで、こんなことを述べているそうです。
「社会で最も恵まれた人々、最も成功した人々が、子供たちを最も政治的に急進的な機関に送り、アメリカを憎む共産主義者になる方法を教えている」
なんか日本でもあてはまる警句ではないでしょうか。1980年前後にも、元民主党支持者の知識人がレーガン支持者になっていきました。いわゆる「ネオコン」(新保守派)といわれた方々です。ノーマン・ポドレッツなど。40数年前、彼らの活躍に大いに期待しました。
同じように民主党支持者が多かったシリコン・バレーでも元民主党支持者がトランプ支持に転向している。
昔ネオコン、今カウンターエリート?
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アイン・ランドの『水源』(ビジネス社)をトランプが愛読しているエピソードなども紹介されています。またシリコンバレーの多くの起業家が、彼女の『肩をすくめるアトラス』(ビジネス社ほか)も愛読しているそうです。
この二冊の本、いずれもビジネス社から刊行されています。ものすごく分厚い本です。少し拾い読みはしましたが,ほぼ「積ん読」してもう20年ぐらいでしょうか?
ここまで言われ続けているアイン・ランド。河野太郎さんでさえ(?)アメリカ留学中に『水源』を読んだとか。河野太郎には負けたくありませんね(向こうは英語原書を読んだようですが)。
河野外相はアイン・ランドとの出会いについて、こう述べています(2018・4・17付け毎日新聞)。
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「The Fountainhead(水源)」を手に取ったのは、留学先の米ジョージタウン大の長期休暇の時だ。待ち合わせ中のワシントンの書店で背表紙が目に飛び込んできた。入学前のサマースクールで、イラン系のルームメートが読んでいたのを覚えていた。「どんな本?」と聞くと彼はしばらく考え、「ロビン・フッドは良くない、という本だ」と言った。彼の解説はこうだ。「ロビン・フッドに助けられ、金を受け取った人たちは努力しなくなるので良くない。自分で努力するのが大事だ」
迷わず読み始めた。ロビン・フッドは出てこないがストーリーが面白い。登場人物の語りに引き込まれ、建築家の主人公に共感した。「俺はこう思う」と言って聞かず周囲に流されない。「今の流行はこうだ」と言われても、「そんなの関係ねえ」と相手にしない。忘我されてもあきらめない。(中略)。
著者がリバタリアニズム(自由至上主義)の思想家なのは、だいぶ後に知った。読んでいる時は政治的背景は意識せず、主人公の生き様に自分を重ねていた。「ロビン・フッドは良くない」という解説は言い得て妙だと思う。ルームメートがそう語った場面をいまだに鮮明に覚えている。
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『水源』を読んで大統領になったトランプさん。よもや『水源』を読んだ河野さんが石破さんの次に首相になって、日米首脳会談で、「あんたも読んだの?」と『水源』談義をして意気投合するなんてことがあったりしたら?
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では、ごきげんよう(本欄で紹介した作品に御関心のある方は、ブログの文中の作品のリンクをクリックして註文してみてください)。







