本物の船を山の中に埋める!? 壮大なセットの制作秘話「ペンディングトレイン-8時23分、明日 君と」

本物の船を山の中に埋める!? 壮大なセットの制作秘話「ペンディングトレイン-8時23分、明日 君と」

TBSでは、毎週金曜よる10時から山田裕貴主演の金曜ドラマ『ペンディングトレイン-8時23分、明日 君と』を絶賛放送中。同じ電車の一両に乗り合わせた見ず知らずの乗客たちが、未来の荒廃した世界へワープし、生き抜くためにサバイバル生活を繰り広げる予測不能のヒューマンエンターテインメントだ。

この世界観を支えるのは、オープンセットとスタジオに建てられた美術セット。今回は、美術プロデューサーの二見真史氏と、デザイン担当の野中謙一郎氏の2人に話を聞いた。

――ドラマ「ペンディングトレイン」を制作すると聞いたときどのように感じましたか。

二見:“従来の連続ドラマの規模で成立するのか”というのが率直な感想でした(笑)。荒唐無稽な話なので、電車でなくバスにした方がいいんじゃないか、図書館とかカフェの方がいいんじゃないかなど、いろいろな意見がありましたが、電車のような規模が大切だというプロデューサーの企画意図を尊重し、昨年の7月ごろから打合せをスタートさせました。実際の駅で行う撮影や車両セットは、つくばエクスプレスさんにご協力をいただきました。特に車両のセットは、使用していない車両をお借りし、緑山スタジオに移築しています。

『ペンディングトレイン―8時23分、明日 君と』美術セット

――緑山スタジオの屋外に建てたオープンセットについて教えてください。

二見:オープンセットの規模はおよそ200坪。緑山スタジオの周りの、実際の地形も生かして撮影しているので、そこも含めると600~800坪ぐらいになるのではないでしょうか。足場をつくって高い場所にも樹木を植えました。これは数年に一度あるかないかくらいの規模です。

野中:200坪の平地に土で凹凸をつけ、樹木を植林し、電車を設置しました。準備期間はわずか1か月でしたが、樹木の並べ方や車両の角度にもこだわって、車両が美しく見えるアングルをつくることができたと思っています。SF要素の強い作品だからこそリアリティがないといけないと思い、コケや岩など細かい部分まで気を配っています。ちなみに車両上部にあるパンタグラフを支えるがいし(電気を絶縁し、電線を支えるための器具)や車輪の一部は、3Dプリンタを活用して我々で作成しました。僕たちがつくった車両には外装のキズもありますが、つくばエクスプレスさんに見ていただいたら、とても喜んでくださいました。

二見:制作スタッフですら「ここもつくっているの?」と驚くぐらいのつくり込み(笑)。ちなみに電車の前でよく焚火をしている広場に埋まっている鉄骨の骨組みでは、「文明が崩壊した未来」を表現しました。電車の架線が通っていたトラス構造(鉄骨を三角形に組んだ湾曲力に強い構造)の名残りというイメージです。

野中:第3話から出てきた田中弥一(杉本哲太)の住処のセットも緑山スタジオ周辺の山の中にあります。監督から「田中は大きな木の根っこに座らせたい」という要望があったので、掘った穴に、作成した根っこを設置し、周囲にコケを足すなどの装飾を施しました。

二見:また第5話では、5号車の全乗客の念願であるお風呂が登場。もともとプロデューサーからお風呂エピソードを盛り込みたいと話を聞いていたので、当初から風呂釜をどうしようかと悩んでいました。そんなとき以前見に行った線路跡地のトンネル付近に、古い配電盤の大きなボックスが残されていたことを思い出しまして。それでオープンセットのトンネルの脇にも密かに配電ボックスを置いておきました。きっと風呂釜になるな、と。

『ペンディングトレイン―8時23分、明日 君と』美術セット

――屋内に建てた電車のセットについても教えてください。

野中:緑山のスタジオ内に、電車の中を主に撮影する電車セットを建てました。つくばエクスプレスさんからお借りしたパーツから3Dモデルに起こしているので、実際の車両と全く同じサイズ感の内装をつくることができました。

二見:また電車の片側に、50センチ角のLEDモニターを、幅17メートル×高さ4メートルになるように組み立てて、車窓に樹海の景色などを映しています。それにより、ロケ先と変わらない状況を、簡単につくり出すことができました。天候や時間帯に左右されないという利点もあります。

野中:オープンセット同様、車内セットも、物語が進むにつれて生活感を出しています。第2話では、棚をつくったり、中央に仕切りをつくったり。定期的に車内清掃も行われていますが、生活感出すための“汚し”も施しています。

――実際のセットを見たキャストの反応はいかがでしたか?

二見:撮影は、外側はオープンセットで、車両内部はスタジオセットで行われています。つまりオープンセットとスタジオを行き来しながら撮影しているんです。クランクインはオープンセットで迎えたのですが、あまりにリアルだったせいか、「オープンセットで多めに撮ったほうがリアルになりそう」という声がありました。でもその後スタジオセットを見たキャストの皆さんが、「セットでもぜんぜん変わらない…」と驚かれていました。

野中:あの反応はどちらもうれしかったですし、僕たちもモチベーションにつながりましたね。

――第5話からは新たに、6号車の乗客も登場しました。

二見:6号車の乗客は、村のような場所で暮らしているという設定。村はロケで千葉県の山奥に、セットを建てて撮影しました。車両内の撮影は5号車と同じセットを使っています。

野中:車両セット自体は5号車と同じですが、先頭車両なので運転士席を作ってくっつけてあります。また、台本に“個室仕様になっている”という説明書きがあったので、木の枝などを使って電車の中を区切りました。5号車とはまた違う印象に仕上げました。

二見:ここでもLEDモニターが活躍。5号車の撮影時は主に樹海の風景を映していますが、6号車では違う風景を映して、まったく違う場所に見えるような工夫をしています。

野中:また6号車の乗客の情報から、直哉(山田裕貴)たちは樹海に打ち上げられた船、しかも船体の一部が突き刺さっているクルーザーを目にします。この船は、本物の船を持ってきて実際に山の中に埋めました。

『ペンディングトレイン―8時23分、明日 君と』美術セット

――さまざまな趣向を凝らしたセット。制作していく中で、大変だったことや印象にのこっていることはありますか?

野中:今回、僕が楽しんだ点は苦労した点でもあるのですが、やはりリアリティを追求したことでしょうか。樹海にしろ、車両しろ、オープンセットにしろ、トコトン本物に近いものをつくるというのが僕たちデザインチームの使命でした。

二見:オリジナル作品なため、美術セットも、原作や史実など参考にできるものがないので、まず僕たちのほうがどんな世界観でできるのかをまとめた「コンセプトアート」を作成しました。それをプロデューサーや監督にプレゼンし、賛同してもらってから制作しました。いつも以上に監督やプロデューサーと密なコミュニケーションが取れた結果、よりよい良い作品づくりができたとうれしく思っています。

ドラマには、キャストだけでなく多くのスタッフの想いと努力が詰まっている。細部にまでこだわった美術セットや小道具があるからこそ、作品によりリアリティが増し、映像に力を加えているのだ。

 
 

■番組概要
[タイトル]
金曜ドラマ『ペンディングトレイン―8時23分、明日 君と』
[放送日時]
毎週金曜よる10時~10時54分

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