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長野県で障害と仕事を考える交流会vol.1 開催レポート

アートで培ったアクセシビリティとインクルーシブへの取り組みを企業活動へ

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アートプロジェクトの企画運営を行う制作会社、株式会社precog。コロナ禍を機に、これまで制作してきたアートプロジェクトがそもそも届いていない人がいることに気がつきました。障害や病気などが理由で外出しにくかったり、コミュニケーション方法が限定されており、一般的な方法ではアートを楽しめなかったりする人たちです。

「どうやったらすべての人びとにアートを楽しんでもらえるか」

新たな命題とともに”横断と翻訳”をテーマにかかげ、アクセシビリティとインクルージョンを目指して様々な試行錯誤を繰り返してきた4年間。

重度障害がある人たちがどうしたら映画を楽しく鑑賞できるかを考え、環境や道具、映像の工夫をおこなう「劇場をつくるラボ」の他、対話を通じて表現や創作の環境における課題を共有し、表現の可能性をひらく「GOOD DIALOGUE LABORATORY」など、さまざまな取り組みをおこなってきました。

試行錯誤を通じて同社が次第に確信していったのは、「ユニバーサルな取り組みは一方向なものではなく、誰にとっても気が付かなかった新しい世界の見え方を教えてくれるもの」ということでした。

precogの担当者・篠田は次のように語ります。

「昨年11月に軽井沢で開催したまるっとみんなで映画祭では、性や障害の多様性をテーマにかかげて約300名が来場し、普段混ざらない人同士がお互いを認識し合うことで共生の感覚が生まれました。そこで、共生推進のために文化芸術は何ができるのかということを考える企画を実施したいと思いました」

こうした中、障害者差別解消法の改定により2024年4月から合理的配慮が義務化。「障害者の雇用促進等に関する法律」施行令等の改正により、障害者の法定雇用率が2024年4月から2.5%となりました。2026年4月からは2.7%と段階的に引き上げられます。

そこで、precog代表の中村が拠点を置く長野県軽井沢町の周辺地域を中心に、企業や行政などと対話を重ねました。見えてきたのは、障害者雇用を行う企業の担当者が現場で様々な課題や悩みを抱えている実態です。

企業の担当者にヒアリングを実践すると、「人事担当者同士が語れる場がない」「他企業の実践を知りたい」「意見交換できる場がほしい」という声が聞こえてきました。

「企業の障害者雇用という文脈で、precogがアートを通じて実践してきたことを活かせないか」

まずは企業の担当者間、または障害のある方と場作りをしている人同士で話ができる場をつくってみようということで実現したのが今回の「障害と仕事を考える交流会」です。

障害者雇用にまつわる企業同士の交流から模索する

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今回の開催にあたって全面的にご協力くださったのは御代田町にあるコワーキングスペース「Gokalab」。ここは単なるコワーキングスペースではなく、”働くを考える”をテーマに様々な形態ではたらく個人や組織がつどい、新しい切り口で常に「働く」を刷新している研究所でもあります。

さらに、長野県における文化芸術活動の担い手支援を行っている信州アーツカウンシルのゼネラルコーディネーター・野村政之さんも、「障害者雇用の現場でアートのワークショップが貢献できることはきっとあるはず」と、企業との連携をともに模索します。

様々なステークホルダーの後押しが、今回の交流会の実現につながりました。

【開催概要】
■開催日時
7月25日(木)15:00-18:00(受付は14:30より)
■開催場所
Gokalab(ゴカラボ)
■参加費
無料
■プログラム(予定)
15:00-15:15 はじめに
15:15-15:30 障害者雇用の事例共有
15:30-17:30 障害者雇用についての課題共有のグループワーク
17:30-18:00 おわりに/交流時間

当日の参加者紹介

<人事部 障害者雇用担当 成澤健司さん>

製造業の障害者雇用担当。会社が障害者雇用に力を入れる方針になって半年前に雇用された。入社前は一般的企業で10年ほど勤務しながら並行してNPO法人場づくりネットでの活動も。さらにその前は侍学園を運営するNPO法人で働いていた。

企業の中で社会的に利益を生みながら障害者雇用や社会的責任を達成していくという意味では、支援者と企業のはざまで動いている。今日はいろいろな方と交流できたらいいなと思って参加。

<信州アーツカウンシル ゼネラルマネージャー 野村政之さん>

一般財団法人長野県文化振興事業団が設置しているアーツカウンシル推進局で、長野県の文化芸術を担う人たちを支援しているのが「信州アーツカウンシル」。社会と文化芸術をつなぐ活動をおこなってきた中で、文化芸術が企業にとってどう活用できるのか知りたいと思い参加した。

県内の企業にヒアリングすると、障害者雇用の文脈で、人事部や人事担当者の研修などにアートが使えるかもしれないという返答をもらった。それまでは障害者福祉の文脈でばかり考えていたが、障害者雇用の現場でもそういったニーズがあるのか、と気付きがあった。

<甥っ子に障害がある 福田さん>

Gokalabの2Fの研究員で、Gokalabマネージャーのキムさんからこの交流会について教えてもらった。甥っ子に障害があり、甥っ子が将来どうなっていくのかという思いがあった。地域の障害者支援施設やボランティア団体で創作活動の支援をしたりしている。はじまりの美術館の見学にも行った。甥っ子の将来を考えるために参加した。

<吉田工業株式会社 橋本さん>

望月にある吉田工業株式会社で総務人事を担当。障害者雇用の窓口であり、障害者生活相談員という役割も担う。現場で仕事をしている人がいる中で、どういう頻度でどう関わり合ったらいいのか、どんな方々にどう接したらいいか日頃から悩んでいる。

会社としては270名の社員がいて、障害者雇用は6名。自分は中途入社で入っているが、障害者雇用の方の中には入社する前から働いている方もいれば、新たに入社していただいた方もいる。障害のある方も含めてその会社で働いている方が気持ちよく働いていくにはどうしたらいいのかを考えるために参加。

<株式会社FONZ 櫻庭大輔さん>

SAWAMURAや川上庵、酢重といったブランド展開で飲食事業を手掛ける株式会社FONZの人事総務担当。社内では障害や外国人、LGBTQ、高齢者などのダイバーシティについてそれぞれ担当がいて、櫻庭さんの専門は障害。入社前は20年間障害のある方と接する仕事をおこなっていた。前半10年間は障害児むけの療育や教員として、後半10年は就職支援、定着支援の仕事。現在の株式会社FONZでは、企業の中から障害のある方の採用や定着を狙って制度や仕組みづくりをおこなっている。今回参加した経緯はprecog西さんから一本のメールをもらったこと。

<株式会社precog 代表 中村茜>

これまで25年ほど舞台芸術をつくる活動をしながら様々な都市を回った。オリンピック・パラリンピックを機に、2018年から障害のある方に芸術を届けるという機会をもらい、障害や性の壁をこえて芸術を楽しむという大きな祭典を日本財団とともに開催。
様々な文化や言語の人たちと芸術をつくってきたが、自分の身の周りに芸術文化を届けることを怠ってきたなと思うようになり、地域の中の障害のある方や外国人に芸術を届けることを始めた。

アートのよさは、これまで出会っていなかった人たちが、新たに出会う場を作れること。アートは利害関係を超えて協同でき、これまでなかった価値を生み出す透明な器だと感じている。今年の4月から合理的配慮が義務化されるようになったが、見える障害だけでなく、見えない障害についてもアートを通じてアプローチできないかと考えた。

組織の中で合理的配慮や多様性に対する意識を育むうえで、そこについてなにかできることがないか、と社内で考えている。3年前に軽井沢に移住してきたことをきっかけに、長野でまちづくりや活気づくりにつなげていきたい。

<株式会社はたらクリエイト 清水綾奈さん>

社員の9割が女性でかつ子育て中という株式会社はたらクリエイトで人事労務総務などバックオフィス全般を担当。障害者以前に、キャリアを断絶した人の復帰にテコ入れし、個人に合わせた働き方をカスタマイズして「はたらくをクリエイトしよう」という事業をおこなってきた企業。障害がある人でも働きやすい事業や環境を試行錯誤してきた。
障害者雇用について勉強したことも専門の経験もなく、聞きかじったことなどで今までやってきたため、とりあえず誰かの話を聞きたいという思いで参加。

<ほっちのロッヂ 唐川恵美子さん>

在宅医療をメインとする診療所「ほっちのロッヂ」。通所介護として高齢者や障害のある方が通ってくる場所でもあり、病児保育、訪問看護も実施。様々なケアの業務を担いながらまちづくりにもかかわっていくという活動をしている中で、文化企画を担当。いろんな方と一緒にアート活動を取り入れていくということをやっている。芸術界隈で舞台や美術館の仕事をしている中で、劇場や美術館に足を運べない人にどうやって届けたらいいかということを掲げていて、今は診療所で働いている。
ほっちのロッヂを運営する法人は本社とあわせると100人規模で、約2%は障害のある方。事業を通じて子供の時から顔見知りの方を雇用したという事例もある。
軽井沢の産業医として関わることも増えてきて、障害者雇用やメンタルヘルス、離職率を抑えるための相談などをうけている。

<Gokalab 金久美さん>

信州アーツカウンシルの野村さんやprecogの中村さんと話す機会を持つ中で、地域の企業をお繋ぎするということをGokalabとしてできればいいかなと思っていた。ここを起点に東信から長野県へ、良い取り組みができたらいいなと思っている。

<小川さん>

去年東京から長野に引っ越してきて、今は御代田にある会社で働いている。ろう者。

各社の取り組み事例紹介

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「自分の常識が一般企業では非常識」

成澤さんの場合

障害者雇用の目的は、明確に法定雇用率の達成です。
うちは社員が1000人程度なので、法定雇用率からすると障害者を25人以上雇用していないといけないことになりますが、現在の雇用数は22名です。身体障害の方も知的障害の方も精神障害の方もいらっしゃいます。

半年前に私が入社するまでは障害者雇用数は15人でしたが、未達成が続くと社名が公表されてしまうこともあり、障害者雇用に力をいれたいということで担当者として雇用されました。入社してから半年で7名雇用しました。7名ともなんとか半年続けているというのが一番かなと思っています。

私が入社する前から働いている方たちは現場作業をおこなっていますが、私が入ってから新しく雇用した方々に関しては、掃除の仕事、A型事業所と連携したお弁当の仕事、社内カフェの運営など、一緒に仕事をつくりながら働いています。

進める中で感じているのは、自分の常識が一般企業の中ではかなり非常識だということです。たとえば私は、精神障害の方にとっては安定出勤が一つのハードルであり、週に1回休むくらいは想定内だと思っていました。しかし、企業で普通に働いている方からしたら「ちょっと休み過ぎなんじゃないか」と感じてしまったようです。

違いを受け入れる文化がまだないのだと思うので、障害があっても環境を整えれば会社で働けるんだ、ということを理解してもらっていけたらいいなと思っています。私は障害者雇用の専属担当ではありますが、人事の仕事だけではなく総務の仕事もあり、なかなか理解促進の部分に着手できずに他の業務に時間をとられてしまっているという状況です。

Q.面談の頻度は?
長く働いている方に関しては面談をしたことがない方もいらっしゃいますが、担当部署から困っていると声がかかった場合は、事業所、親御さん、ご本人と合わせて4者面談を月に1回程度で行います。私が入社してからの方は、支援機関の方に月に1回きてもらって3者または2者面談をやっています。

Q.周囲の理解のために社内研修をしている?
管理職の研修会も予定されていますが、大きな会社なので簡単に考え方を普及できるわけではないと思っています。知識を持ってもらう意味は大きいと思いますが。

Q.採用活動の流入経路は?
もともと採用が決まっていた方が3名いて、あとの4名は、通勤圏内の就労継続支援A型事業所や就労移行支援などを回ってお話をし、ご紹介いただきました。

Q.障害のある従事者への対話と周囲や経営層への理解はどう使い分けている?
組織が結構大きいので、正直経営層までは届いていないと思いますが、直属の上司に頑張っていることを伝えています。今2.23%の雇用率が2.5%まで届いたときに、経営層にもしっかりやってると判断されると思っている。個人的にはあまり数字は気にせず「仕事の評価はおれがするから、勝手に自分で自分を評価しないでください」と伝えています。上司がうまくやってくれているのもありがたいです。

Q.新たに採用した4名の障害種別は?
4名中、2名が知的障害で、2名が精神障害の方です。知的障害の2名は双子で、もともと別々に就職させるように学校卒業時から言われていたんですが、続かなかったんです。そのあと2人揃ってA型作業所に行き、そこで「2人でいると一番聞きやすいから頼りになる。2人でやるとやりやすい」と教えてくれたんです。「2人にとって別々の場所に通うタイミングは今なのか」「決めるのは2人なのではないか」と考え、2名一緒に雇用しました。とても可愛らしくて面白い2人です。

Q.A型と連携は、家族との関係が脆弱になりがちな中で良いアイディア。
ジョブコーチ(職場適応援助者)の方が就労支援機関に入ってもらっているという話を聞いてA型事業所と連携を始めたのですが、非常にやりやすかったです。ただ一人急にやめてしまった方がいて、今困っている状況ではあるんです。

Q.「ちょっと休み過ぎじゃない?」と言ったのは同じ部署で働く人?
僕の直属の上司で人事の副部長なんですが、人事というだけで障害については専門ではないんです。そういうもんなんです、といえば柔らかく受け入れてくれる方です。普段お弁当の配達をしている方なので、その方が休んでしまうと僕がお弁当の配達をしているのを、なんとか受け入れてくれています。

Q.一般社員の常識と成澤さんの常識を埋めるためには?
結局研修会ということになりがちですが、研修に参加しても身につかないのではないかと考えています。一番は、雇用した障害者が職場に定着して、元気に働いているところを周りに見てもらうのがいいのかなと思っているし、僕はそこに向けて一生懸命やりたいなと思っています。以前の職場で、養護学校から研修に来た男の子は、仕事はできなかったけれどめちゃくちゃ元気に挨拶をする子でした。あまり雰囲気がよくない職場でしたが、その子が人に会うたびに「お疲れ様です」「おはようございます」「お先に失礼します」と丁寧に挨拶をするようになって、職場の雰囲気がよくなったんですよ。2週間の研修後には、「あの子、頑張ってるね」という声が聞こえてきたことがありました。

継続雇用に必要なスタンスとは? 

株式会社はたらクリエイト 清水さんの場合

障害者雇用の状況でいうと、人数としては1−2名で法定雇用率を達成するのですが、現時点では未達です。はたらくリエイトは、子育てでキャリアが断絶したなどといった様々な課題を全部「条件」と呼んでいます。そもそも会社のあり方として、条件の部分で悩みやジレンマを抱えている人たちに対して働き方を提案するということをやってきた。
そういった背景もあり、障害者についても障害を一つの条件だと捉えてチャレンジしていいます。

これまでに精神障害の方にアプローチしてきました。病院でうつなどの診断を受け、障がい者就業・生活支援センターを利用しながら就労に向けて頑張っている方が、両立して働けるように環境を整えています。ですが、例えば就労時間でいうと週20時間というラインに乗せて安定して働いてもらうのが非常に難しいです。環境を整えているつもりでも、なかなか安定しない難しさがあると感じています。

精神障害の方を迎えるにあたって、社内に知識がある人間がいなかったので、業務で従事してくれるスタッフと、業務は別にして、会社の悩みを話せるスタッフでチームを組みました。考え方としては合っていたと思うが、現場で実際迎えての意識の接続が難しかったです。7ヶ月で離職してしまいました。対策が練れたかというとまだ練れていないし、課題をうまく言語化もできていない状況です。

うちは精神障害にしか対応したことがないので、そこならではの悩みなのかもしれないんですが、両立のラインって実際むずかしくないですか、というのが肌感です。その人の力が発揮できるようになるためには、もうちょっと手前のステップがないと、実際企業に入った時に違和感がありました。それが就労移行事業所なのかもしれないですが……。成澤さんが入社後6ヶ月継続しているっていうのが本当にすごいなと思いました。

Q.パートタイマーにもフレックス制を適用しているが、精神障害の方が安定して継続するためにはどうしたらいい?
(成澤さん)
6ヶ月継続していることのすごさを社内ではなかなかわかってもらえることが少ないので嬉しいです。精神障害の方について、前職で経験したことですが、自分で自分を低く評価してどんどん働けくなってしまう傾向があるんです。それに合わせて時間を減らしたり条件をゆるくしていったんですが、最近はそれが違うかもしれないって思うようになりました
今は、最初に決めたことをぶらさないようにしています。
例えば一人週5でスタートした方が、途中で週4にしたいと言ってきたんですが、「ダメです」って言ってます。そのラインを譲ってしまうと、週4になった後もまたつらくなったら週3に……とどんどん働けなくなって最後は休職ということになりかねないですよね。行けるチャンスがあるのに簡単に減らしてしまうのは良くないと思ったんです。僕にとってもこれはチャレンジですが、勤務時間を約束して、それを全うするというその成功体験をつないでいってあげることが大事かなと思っています。まずは一緒に決めたことを1日、1週間、1ヶ月、とできた体験を重ねていって、その次にフレックスがあると思っています。精神障害の方は、できることをできないと自分で思い込んでいる場合もあるので、こちらが決めてあげることも大事だと思っています。

Q.時短勤務希望に対し、現場との調整はどうしてる?
(橋本さん)
3交代制24時間勤務の工場で、本人の状況から時短で働いてもらっています。不稼働時間を作りたくないので、時短で働くということは、逆に長く働く人がでてくるということ。そこに関してはその方の障害の状況などを伝えて現場の人に理解してもらって今は継続できています。

(櫻庭さん)
企業は経済活動なので、雇用するとなると最低賃金分のパフォーマンスを発揮してもらわないと難しいです。福祉的就職となると企業視点では乖離があり、マッチングがうまくいかないということで、就労選択支援というサービスが新たにできることになりました。
安定という点では、特に精神障害の方は体調に波があるので、就労によってこちらで生活のリズムをつくってあげることが大事かなと思いました。体調が整ってないから働けないのではなくて、働いていないから体調が整っていないという考え方もあります。

Q.精神障害の方が急にお休みした時にそれをカバーする仕組みは、子育て家庭がお子さんの状況で急にお休みする場合と似ている?
(清水さん)
似ていると思います。弊社では、その時間その場でできない状況が発生するのが当たり前という認識でお仕事配分を設計しています。そういう意味では同じなんですが、精神障害の場合、それとは違う配慮が必要になってくると、そのカバーにあたる労力が突出して多くなり、バディになった相手が疲弊してしまいました。そこら辺も課題だと思っています。

全国それぞれの店舗で障害者が働く環境を当たり前にしていく 

株式会社FONZ 櫻庭さんの場合

「一人ひとりが誰に対しても配慮ができる組織をつくる」という雇用目的が全社に周知されています。その一つとして障害者雇用も生まれますよ、という位置づけで。外国人や性的マイノリティの方も同じです。

事務スタッフだけでみると障害者の法定雇用率は未達です。日本国内に80店舗ほど展開しているので、各店舗1人以上の障害者を採用して活躍してもらうことで、各店舗で障害者の方が働いているのが当たり前の状態にしたいと考えています。去年から私が着任し、現在はまだ道半ばです。

法定雇用率は、あくまでも会社の雇用目的を達成するための目標値の一つだと考えています。目的達成のため、積極的に障害者雇用をおこない、現在の雇用数は精神50%、身体25%、知的25%です。

障害者雇用において今抱えている課題は、ナチュラルサポートの視点がなかなか定着していかないことです。トータルで3年半は福祉支援がありますが、それを過ぎると制度上支援を受けることができません。3年半べたづきで支援していると、制度上の支援が切れた後に立ち行かなくなってしまいます。徐々にナチュラルサポートに移行していくためにも、当初からナチュラルサポートの形成を考えていく必要があります。

支援者はその点を意識しないといけないと思っています。
本人任せではなく、報酬がある以上福祉ではなくビジネスなので、ビジネスの現場としてその方のナチュラルサポートをどう考えていくかが課題です。

Q.ナチュラルサポートの形成は内側からやるしかない?
支援機関など福祉に携わる側もナチュラルサポートのことを考えないといけないと思います。最初はもちろん定着支援を手厚くしなくてはいけないと思いますが、福祉の方々も支援後を考える視点を持ち合わせてほしいです。

Q.福祉が制度後も支援するのは?
(成澤さん)
人によっては支援が終わっても何かあったら連絡してねと声をかけてくれることもあれば、終わりだよってばっさり来られることもあります。

(野村さん)
制度的には就労移行期間が終わっているが、必要を感じてサポートをつなげている話を聞いたことがありますが、それはサステナブルではないと思いました。

Q.支援先を広げるにはどうすればいい?
(成澤さん)
障害があって就労の意向がある人たちと企業の人も含めた交流会のようなものも大事なのかなと思います。

(野村さん)
制度的な役割分担を超えるコミュニティを関係性の中で薄く形成するということですよね。

(成澤さん)
支援者って本当はいらないですよね。本当は友達がいっぱいいるのがいいと思うんです。ただ、障害の特性でなかなか友達を作れない人もいますが。

Q.1店舗に1人の障害者雇用は孤独ではない?
会社で障害のある人がどんな働き方をしているかを伝えるために、「ダイバーシティインフォメーション」という社内報をつくりました。その中で、活躍している人を紹介し、親近感を感じてもらったりモチベーションをあげてもらったりということにつなげていきたいと考えています。

Q.障害の特性を周囲にどの程度周知する?
本人意向もあるので、ケースバイケースで、周知は正社員にとどめてほしいという人もいるし、業務に支障をきたすので全員に周知したいという人もいます。

また、ヘルプマークバッチをつくったので、これから導入を予定しています。
例えば障害のある方がお客様と接する仕事をする場合、お客様が何も知らずに普通に声をかけて、不安などから思考停止になってしまったりすると、クレームにつながり、本人もますます業務が怖くなってしまいます。それを避けるために、支援や配慮が必要だと周囲に伝えるのがヘルプマークです。

もともとは東京都がラバー製のものをつくっていましたが、東京都に許可を経て、クリップタイプで安全につけられるものを作りました。本人がつけたいかどうかをまずは確認し、周りのスタッフが必要とおもうかどうかも鑑みて、本人が納得して必要となればつけるようにしようと思っています。

今のところ、それまでの生き方によって、ぜひつけたいという方もいれば、つけたくないという方もいます。

まとめ:継続した交流と議論で社会的な価値を認めていく

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企業活動の中で障害者をどう雇用していくか、現場の困り事を相談する場所がこれまであまりなく、今回のような交流会は今後も重ねていきたいという声が多く聞こえました。

また、今後は企業担当者だけではなく、就労支援センターの担当者やその他のサポーターを含め、この地域ならではの支援を形成していきたいという声も。今回話題にあがった発達障害や精神障害や知的障害だけではなく、重度障害がある人の働き方をどう考えるのかという問題提起や、働くという選択肢だけではなく働かないことも選択肢として尊重し、その人がその人らしい人生を歩むために情報を集めたいという意見もありました。

こうした議論に対し、precog代表の中村は「ネットワークやコミュニティのサステナブルな仕組みづくりにアートの力を発揮できるのではないか」と言及しました。

中村「障害もそうだけれど、アートも値付けができない世界。アートの価値を予測することは難しいんです。社会的な価値を生み出していくことに重きをおいていて、利益はそこに付いてくるものだと信じて創作活動をしてきました。それを労働といっていいのかを悩みながら会社を続けてきましたが、障害者雇用はその考え方にも通じるのではないか、と探っています」

障害者雇用には、資本主義的な意味合いでの利益追求だけでは説明しきれないものがありそうです。障害者とともに働き、生きる中で感じられるお金やサービスには還元できない価値を言語化していくことが求められています。

障害者雇用をめぐっては、継続した交流や議論の場と同時に、アート活動を通じて育んできたナレッジの活用に期待が高まりました。

▶︎「障害と仕事を考える交流会vol.2」はこちら


ざこうじ るい
長野県在住フリーライター。WEBメディアでの企画執筆の他、広報・レポート記事や企業哲学を表現するフィクションも執筆。数字やデータだけでは語りきれない人間の生き様や豊かさを描くことで、誰もが社会的に健康でいられる社会を目指す。重度心身障害児含む4児の母。

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