「電気代安くなる」記者宅を訪れた片耳イヤホンの男 点検商法の相談増加、悪質業者に注意

「電気のメーターのチェックです」「分電盤を点検させてください」-。電力会社などをかたる人物が点検名目で住宅を訪ね、契約を持ちかける「点検商法」の相談が近年、増加傾向にある。東京都内の記者の自宅にも昨年、電力会社を名乗る業者が訪問したが、社名を調べると悪質な訪問販売だった可能性が浮上した。不審な点があればその場で契約せず、管理会社や相談窓口に問い合わせることが重要だ。

よぎった「闇バイト」の可能性

「おはようございます。電気の点検に参りました」

昨年11月上旬、勤務のない土曜の午前9時前。記者が暮らすマンションの一室のインターホンが鳴った。定期点検だと思ってオートロックを解除すると、「株式会社○○です。電気代が今より安くなるか確かめるので、検針をさせていただきます」と告げられた。

突然訪ねてきた業者が名乗ったのは、契約していた電力会社ではなく、聞き覚えのない社名。近年、高騰が続く電気代だが、業者によると、メーターを確認するだけで過剰請求かどうかが分かるという。

ただ、こちらも記者の端くれ。社名や説明に違和感を覚え、「義務ではないですよね」とぶつけると、「義務ではないが、他の部屋の方は別日に済んでいる」と返答された。今度は向こうから、「平日は仕事か」「1人で住んでいるのか」と、個人情報や生活パターンを探るような質問を重ねてきた。

マスクで覆われた業者の顔にふと目を向けると、左耳にイヤホンのようなものをつけている。犯罪組織から指示を受け、訪問業者を装って強盗の下見をする「闇バイト」の可能性も頭をよぎり、背筋が凍った。「どのような理屈で、電気代が安くなるかが分かるのか」などと少し強い口調で聞き返すと、相手は唐突に帰っていった。

「火事になる」契約迫る事例も

業者が残した名刺の社名をインターネットで検索すると、「電力会社が変更になるといわれ、疑わずに契約してしまった」「書類に記載した番号に何度も電話がかかってくる」といった投稿が確認された。中には、契約して高額請求を受けたという声も。あのまま点検を受けていたら、記者もトラブルに巻き込まれていたかもしれない。

国民生活センターによると、点検に来たと言って商品やサービスを契約させる「点検商法」に関する相談は、令和4年度は8166件だったが、6年度は1万9248件と約2・36倍に増加。7年度は12月末現在で1万3825件で、前年同期(1万2922件)を上回るペースで推移している。

中でも急増しているのが、玄関や洗面所などに設置されている分電盤の点検に関する相談だ。7年度(12月末現在)は4289件で、前年同期(553件)から約7・76倍となった。電力会社の委託業者などを名乗る人物から、「すぐに交換しないと漏電で火事になる」などとその場で契約を迫られ、高額請求を受ける事例が報告されている。

経済産業省によると、分電盤やブレーカーの点検は、電力会社などが法令に基づき、4年に1回以上の頻度で実施しており、点検日時は事前に書面で案内しているため、突然、訪問してその場で交換の契約を持ちかけることはないという。点検作業員は身分証を携帯しているといい、確認が必要だ。

同省や国民生活センターは、少しでも不安がある場合は、その場で契約せずに、地域の電力会社や、最寄りの消費生活センターに相談するよう推奨。自治体の消費生活センターなどの窓口を案内する全国共通の3桁の消費者ホットライン「188(いやや!)」の活用も呼び掛けている。(佐藤侑歩)

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