ある日、ふと思った。
“牛タンをたらふく食べたい”
と。
そう、
牛タンを
たらふく
むさぼり食いたい。
しかしながら以前とは違って、外食が若干しづらい状況である(※5月に執筆しました)。
そこで、牛タンを一本丸ごと買うことにした。最近ではネットでも「でかい塊の肉」が買え、こんな業務用みたいな肉が簡単に手に入る。
とはいえ、牛タンは好きだが知識には乏しい筆者。どこで買えばいいのか? また、せっかくのでかい肉も、料理初心者の僕には手が余らないか? ただ焼くだけというのも味気ないし。
というわけで、今回はアドバイザーに迎えることにした。知人のミート高沢さんである。
ミート高沢さんのお肉好きは尋常ではない。365日食べることは当たり前。週5日は焼肉屋に通い、残りの週2日は牧場や畜産に交渉し日本中の和牛を買いまくっては、自ら美味しい食べ方を研究しているそう。なお、ミート高沢さんがお肉料理を振る舞う「秘密の肉会」には、焼肉屋をはじめ、肉の卸屋、料理研究家、板前など様々な人が集まっているそう(参加してみたい……)。
助っ人にはうってつけである。さっそく、購入先やおすすめの食べ方などを聞いてみよう。
手軽に購入できる、高沢さんおすすめ牛タン
まず、牛タンの購入先を悩んでいます。高沢さんは、牧場や畜産に直接交渉しているそうですが、僕でも気軽に買えますか?
残念ながら買えないと思う。僕でも20件~30件は電話して、1件譲ってもらえるかどうかだから(笑)。まあ、個人に売っても利益にならないから仕方ないよね。
となると、ネットやスーパーで買うしかないですか?
そうだね。ただ、正直ネットで購入するとなると、信用できないところが多いかもしれない。冷凍販売だし、ブランド牛でもないから。ただ、その中でもいくらか信用できるタンはあるよ。
ぜひ、教えてください。
1つは、楽天などで購入できる「オールミート」という会社のタン。ここは日本の焼肉屋やステーキ屋さんにも卸しているお肉の会社なんだよね。それに、レビューにも良いコメントが多いから信頼できると思う。僕も実際に購入したことがあるよ。
肉の卸会社! それは頼もしい!
もう1つのおすすめは、冷蔵を全て自社で行なっている「コストコ」のタン。コストコは他の業者を通していないから温度管理が一定なの。つまり、冷蔵保存する際の温度差をなくすことで、肉の品質を保つことができるんだよ。
温度に差があると、品質が下がるんですか?
タンってドリップ(※)がすごい部位なの。もちろん洗ってから真空にかけるんだけど、洗いが足りなかったり、輸送段階の温度変化が激しいと、中でドリップしてしまい臭みが出るんだよね。でも、コストコのタンはほぼ血が出ないからすごい。ちゃんと血抜きをしていて、冷蔵の温度管理がしっかりしている証拠なわけ。
※[ドリップ]
冷凍した食材の細胞内にある氷が溶け出した赤い水分。同時に食材の旨味成分も流出してしまう
なるほど。ちなみに買ってから冷蔵庫で保存する時の温度は、何度くらいがベストなんですか?
0度に近いと良い状態が保たれるかな。だから、冷蔵庫で保管する場合はチルド室がオススメ。ちなみに、薄い真空パックは質の悪いものが多く、鮮度を保てないから肉にも悪影響なんだよね。そういう意味では、さっきのオールミートの真空パックは厚くてしっかりしているよ。あと、家庭で購入する場合は、あらかじめ皮を剥いでくれている牛タンの方がいいと思う。そのまま調理できて便利だよ。
真空パックさえもお肉に影響するとは……。
料理ビギナーでも簡単!「究極に柔らかい、牛タン一本おでん」のレシピ
というわけで、買った牛タンを調理していく。
そして、もう一つの悩みのタネが「調理法』である。これもミート高沢さんに聞いてみよう。
タンには『タン先』、『タン中』、『タン元』、『タンサガリ』って4つの部位があるんだけど、今回のタンはどちらもタン先は切り落とされているよね。タン先は味が強い一方で焼いて食べるには少々硬い部位なの。だから、カットしているんだろうね。ちなみに、今回は1本丸ごと煮込んでもらおうと思う。お店だと普通、タン先以外を煮込むことはしないので、家庭ならではの贅沢な料理だよ。
では、作ってみよう!
【材料】
塊の牛タン:1つ(今回は2つ購入したため、同時に調理)
長ネギの青い部分:1本
生姜:一片
水:1200cc(だし汁用)
白だし:150cc(だし汁用)
※白だしは8倍に薄めて使用。 商品によって濃度が違うため、薄味のうどんかけ汁程度の倍率が目安
【作り方】
鍋を眺めるくらいしか特にすることもないので、師匠に経過を報告してみた。
あぶないあぶない。すぐ蓋をした。
食らう! でかい肉を!
眼前には塊の牛タンがドドンと2つ。迫力がとんでもない。
まずはオールミートのほうからいただこう。いや、「いただく」なんて行儀のいい感じじゃない。「食らう!」だな、これは。
軽くナイフを押し当ててみるとフワッフワ。驚くべき柔らかさだ。
一本まるごと自分のものなので、どんな厚さに切ったっていい。
となれば、もちろん「極厚」でしょう。
はじめは、なにも付けずにいっちゃうか。
うわ~、やわとろ~(やわらかくてトロトロの意)
やわらかさへの賛辞として「歯がいらない」という表現があるが、これは歯どころか顎もいらない。いや顎はいる。とにかく超やわらかい、ということが言いたい。
いつか有名な牛タン専門店で食べた茹でタンを彷彿とさせる美味さだ。
薬味でもひと通りいってみる。個人的にはわさびが優勝。ジューシーな肉に、わさびの爽やかな辛さがクセになる。
続いてはコストコのタンのターン。こちらもフワッフワである。
あまりのやわらかさゆえ、フォークで持ち上げるとほろりと崩れてしまう。箸でもスッと切れてしまうほど、やわやわだ。
個人的には、こちらのタンの方が好み。より柔らかく、旨味が濃い感じがした。これも全て、たゆまぬ温度管理の努力の賜物。ありがとう、コストコの温度管理担当の人。
ごめんなさい、コメを我慢できませんでした。だし染み染みの牛タンを、白米の上でバウンド。うんまい!
なお、牛タンのエキスが染み出た煮込み汁もごちそうだ。黄金に輝くだし汁を、牛タン丼の上にたっぷりかけて…
万能ネギを散らせば、シメの牛タン茶漬けが完成。ミート高沢さん曰く、今回のレシピのだし汁は関西系とのこと。確かに、関東人の僕には新鮮な美味しさだった。
最っ高~。まさに舌を巻く美味しさでした。
というわけで、“牛タンをたらふく食べたい” という夢が叶った。ミート高沢さん、そして何より牛に感謝…。
ミート高沢さんによれば、低温調理機などを使うとさらにクオリティが上がるとのことだが、今回は普通の鍋しか持っていない&料理ビギナーの筆者でも簡単にできる方法を教えていただいた。必要なものは時間だけ。在宅勤務で家にいる時間が長い今こそ、うまい牛タンを存分に食らう好機かもしれない。
【取材協力】
肉の写真しか載ってないミート高沢さんのインスタグラムはコチラ!
https://www.instagram.com/meat_takazawa/
取材・文/小野洋平(やじろべえ)
撮影/榎並紀行(やじろべえ)
【プロフィール】
小野洋平(やじろべえ)
1991年生まれ。編集プロダクション「やじろべえ」所属。服飾大学を出るも服が作れず、ライター・編集者を志す。自身のサイト、小野便利屋も運営。