7,000円で買った炊飯器を10年くらい使い続けている。
さすがに酷使してしまったか、内釜がべろべろに剥がれてきた。ポジティブな性格なので「ヴィンテージ炊飯器」とあたかも良いもののように呼んでいたけど、買い替え時なのかもしれない。
よく無職になっていた10年前と比べて、今は生活も安定している。ここらで炊飯器をグレードアップしてやろうか!
そう思ってネットで調べていたところ、どれを買えばいいのか分からなくなってしまった。1万円以下のお手頃商品から10万円を超える高額商品まで、いろいろありすぎるのだ。
例えば奮発して、生涯を共にする覚悟で10万円の炊飯器を買ったとする。それで炊いたご飯がもし、7,000円の炊飯器で炊いたご飯と、さほど変わらなかったら――?
相当なダメージを受けそうだ。なんか失敗しそうな気がしてきた。ダメだ。やめます。買うのやめる! さっき「ポジティブな性格」とか書いちゃったけど、あれ嘘です。
ということで、慎重派の私は、
「新しい炊飯器を買う必要があるのかどうか」
から考え直すことにした。
シリコンスチーマーでご飯を炊いてみる
まず思いついたのが「炊飯器以外でごはんを炊く方法」だ。
家にある調理器具で解決するなら、それが一番財布にやさしい。
そういえば以前、電子レンジだけで調理できるとラクだなと思い、シリコンスチーマーを買った。
スチーマーでご飯が炊けるんじゃない?
スチーマーに添付されていたレシピブックを見ると、白いごはんの作り方が載っていた。やっぱり炊けるんだ。作り方はざっくりこんな感じ。
米(1合)を洗う→1時間ほど浸水させる→水を切り、200ccの水といっしょにスチーマーに入れてフタをする→レンチン8分で完成
めちゃくちゃ簡単!
さっそく試してみたところ……
盛大に吹きこぼれた……!
ご飯は意外にも普通にうまかった。でも、ちょっとかたい。一粒一粒の主張が強い。吹きこぼれて水が足りなくなったのが原因か?
後でレシピブックを読み返したら「吹きこぼれる場合があります」と、しっかり書いてあった。ちゃんと読まなくてすみません。
でも、ご飯を炊くたびに吹きこぼれた水分を掃除しなきゃいけないのって、正直しんどくないですか? 耐熱皿などを敷けば被害は抑えられるけど、米1合に対して、洗い物がスチーマーに耐熱皿って、なんかフェアじゃない。洗い物のダルさが勝っちゃう。他の方法を探そう。
冷凍ご飯OK派だから、一気にたくさん炊きたい
ネットでいろいろ調べてみると、吹きこぼれにくい「炊飯用のシリコンスチーマー」が存在することがわかった。
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すばらしい商品。知らない間に炊飯界がここまで発展していたとは……。
商品の説明やレビューを見てみると、一度に炊ける量は2合くらいまでが推奨っぽい。なるほど。それだと週に5回は炊く必要がある。「一気にたくさん炊いて冷凍派」の私にとって、週5は「うっ!」となる頻度だ。
世の中には2種類の人間がいる。冷凍ご飯がNGな人と、OKな人だ。
私はOK派で、朝起きてすぐレンチンして食べられるのがありがたいと思っている。
なので、一度にまとめて5合のご飯を炊き、炊きたてご飯をもりもり食べて、残りを冷凍保存する。そして冷凍ご飯のストックがなくなってきたら、また炊く。これが自分の炊飯サイクルだ。
5合は無理だとしても、せめて3合くらいは一気に炊いて冷凍保存したいところ。スチーマー以外にいい方法はないか――?
柾式炊飯術(まさきしきすいはんじゅつ)に出合う
ネットが大好きなので、ネットで情報収集を続ける。すると、こんな本を発見した。
『ご飯の炊き方を変えると人生が変わる』。なんて力強いタイトル。ちょうど単行本が売り切れていたので、電子書籍を買ってみた。
筆者の真崎庸(まざき・よう)さんは、東京都中野区の和食店「柾(まさき)」の店主。本書は、柾式のおいしいご飯の炊き方「柾式炊飯術」がまとめられている。
柾式炊飯術をめちゃくちゃざっくり説明するなら、
「鍋とガスコンロを使って短時間でご飯を炊く方法」
である。家にあるフタつきの鍋なら、だいたいなんでもOKで、土鍋やル・クルーゼなどの蓄熱性の高い鍋は向いていないそう。
そして、柾式炊飯術の求める「おいしいご飯」の定義は、次のとおり。
一粒一粒を噛み締めることができ、口の中ではらりと解ける。
内部は完全に火が通っていてやわらかく、外側がしっかりとしている外硬内軟(がいこうないなん)の状態に仕上がるのが理想。
このように炊いたご飯は、旨味を強く感じやすく、粘りや甘さを引き出す炊き方ではないにも関わらず、なぜか甘いと感じる人が多いそう。
これは……試してみたい!
レミパンで柾式炊飯術に挑戦!
家庭のガスコンロの火力だと、口径18センチくらいの鍋で、生米2〜3合分を炊くのがやりやすいそう。5合を口径24センチで炊くこともできるが、かなり工夫が必要らしい。
残念なことに、口径18センチの鍋のフタを持っていないので、今回はちょっと大きくなってしまうが、口径24センチの「レミパン」で3合を炊いてみたい。
料理愛好家の平野レミさんが監修する万能フライパン「レミパン」。炊飯器と同様、10年以上も使い続けている。ちなみに平野レミさんは元々、シャンソン歌手だった。
用意するもの
- ザル
- ボウル
- 1合(180cc)の計量カップ
- 冷蔵庫に米をしまう保存容器
- 鍋
- 鍋のフタ
- おひつ
最後の「おひつ」とは、炊いた飯を釜から移し入れておく木製の器のこと。
炊きあがったご飯を木製のおひつに移すと、余分な水分を吸い取って、ご飯の仕上がりをよくしてくれるそうだ。おひつは持ってないので、今回はボウルとペーパータオルで代用することにした。
【手順1】米をきれいに洗う
昔はガシガシと力強く洗っていたが、精米技術の上がっている昨今の米は、やさしくスピーディーに洗うのが鉄則らしい。
【手順2】浸漬米を作る
水に浸けて1時間以上、しっかり吸水させる。吸水させた米=浸漬米。
【手順3】鍋に浸漬米と水を入れる
今回は浸漬米3カップで炊いてみる。入れる水の量は、浸漬米3カップあたり400ccが目安。鍋の大きさや形によっては、水をもう少し追加したほうがいい場合も。今回は目安どおり400ccで。
【手順4】フタをせずに、全開の強火で着火
着火から沸騰までの時間が長くかかると、米のデンプンが溶け出し、粘り気が出る。粘り気は熱の伝わり方を悪くするので、全開の強火で一気に炊き、粘り気を出さないのがポイント。
【手順5】沸騰し、お湯が泡立ってきても強火のまま
すごく泡立つが、吹きこぼれるほどではなかった。
【手順6】泡立ちが減ってきたらフタをする
米が水面よりも上に出ると、湯に触れていない部分に火が通らなくなってしまうそう。そのため、ご飯の表面が見える前にフタを閉め、鍋の中の温度を上げ、残りの湯が鍋いっぱいに湧き上がるようにする。
【手順7】鍋底からチリチリ小さな音がし出したら、ごく弱火の蛍火(ほたるび)にする
チリチリ音は、鍋の中の湯がなくなって鍋底の米が焼け始めたサイン。音は小さいので耳をすまそう。
【手順8】蛍火にしてから約3分半で炊きあがる
火を止めてフタを開ける。蒸らしは不要。しゃもじがサクッと入ると、よい炊きあがりのサイン。鍋底にご飯がはりついているが、無理に剥がさないでOK。
【手順9】鍋からご飯を取り出す
おひつに移すのが理想だが、持ってないので今回はボウルに移して、その上から布巾代わりのペーパータオルをかけた。
食べてみよう!
着火から10分くらいで完成!
早い。あっという間だ。いつもよりツヤツヤしている気がする。
そして、気になるお味のほうは……
う〜〜〜〜〜〜〜〜まい!
おかずなしで一杯食べられるぞコレ……。芯まで火が通っているのに、歯ざわりが良い。炊飯器でテキトーに炊いていた今までのご飯と比べると、明らかに炊きあがりの状態が違う。うまくて声を出して笑ってしまった。
柾式炊飯術の面白いところは、ご飯を炊いて終わりではなく「お焦げ」を作るところ。
鍋底に飯粒がはりついた鍋を再度蛍火にかけ、15分ほど放置すれば、パリパリのお焦げができる。
そのまま塩をかけてパリパリかじると、せんべいみたいでうまい! お茶漬けにするのもオツとのこと。
ちなみに、柾式炊飯術の火力調整は「全開の強火」と「蛍火」の2段階だが、その間に「中火」を入れることで「お焦げなし炊飯」も可能。
お焦げあり/なしのフローを、ざっくりまとめてみた。
鍋の種類によって微調整は必要だが、基本はこんな感じ。
お焦げあり炊飯の場合、「泡立ちが減ってきたらフタを閉める」「チリチリ音がしたら蛍火にする」など、視覚と聴覚による判断が必要。
それに対してお焦げなし炊飯は、沸騰から2分後に中火&フタ閉め→1分後に蛍火→5分後に炊きあがりと、時間で管理する。
炊飯器、買い替えるのやめた!
柾式炊飯術を知ってから、1カ月が経った。
鍋で炊くのがすっかり定着したので、炊飯器を買うのはやめた。今は「羽釜を買うか、HARIOのご飯釜を買うか」で迷っている。おひつも欲しい。
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強火で一気に炊きあげる柾式炊飯術は、火の通りを良くするために浸漬米を使うのが大事なポイント。
でも私は今まで、洗った米を炊飯器に入れてすぐ炊飯をスタートする人生を送ってきたので、「浸漬米を毎回つくるのはちょっと面倒かも……」と、最初は思っていた。
この点については、「炊飯1回分ずつに分けて保存する」ことで気持ちが楽になった。
浸水させた470gの米×3。下段のザル&ボウルで浸水させている米は、洗米当日に炊く用。上段は後日炊く用
これなら、水を切ってそのまま鍋に放り込める。めっちゃ楽だ。ちなみに、お焦げはたまに楽しむ程度でよしと思ったので、お焦げなし炊飯が定着。
いろいろ試した結果、米470gを浸水させて600g強になったものを、水550ccで炊くスタイルに落ち着いた。
それなりに食欲旺盛な私(37歳・男性)の場合、炊きたてのご飯を一杯分食べると、残りはご飯一膳用の保存容器3つ分に。これを冷凍保存する。
鍋(レミパン)で炊くようになってから、冷凍ご飯も確実においしくなった!
趣味「ご飯を炊く」になりました
今までは米を炊くのが億劫だったのに、最近は毎回楽しみながら炊いている。「ご飯のうまさ」が「面倒」に勝ってしまったのだ。おいしいご飯、すげえ……。
ちなみに、はじめて試した時に、盛大に吹きこぼれてテンションが下がってしまったスチーマー炊飯だが、吹きこぼれない方法を編み出してしまった!
その方法とは……
「泡立ちが収まるまで、フタをしない」
柾式炊飯術の「フタなしで全開の強火」をしている時に、「スチーマーも、フタなしなら吹きこぼれないんじゃないの?」と思いついて、試してみたら本当に吹きこぼれなくて、ちっちゃいガッツポーズが出た。
米1合を炊く際、「600Wフタなしで8分→200Wフタありで6分」など、フタを閉めるタイミングとW数の調整をすると、吹きこぼれることなく、おいしいご飯が炊ける。ナイス発見。
基本は鍋で、たまにスチーマーで炊飯する生活をしばらく続けてみようと思う。みなさんの炊飯スタイルはどんな感じですか?
今回紹介した本
記事だけでは説明不足のところもあるので、気になった人はぜひ読んでください。出汁の取り方やご飯に合うおかずのレシピ、炊き込みご飯の炊き方も載っています。「美味しいとはどういうことか」の章では、真崎さんの食との向き合い方がつづられていて、エッセイとしても面白い。オススメの本です!
この記事を書いた人
うない いちどう
コンテンツメーカー・ノオトのライター&編集者。気さくな人柄。日常のどうでもいいワンシーンを紹介する「#本日の地味なハイライト」をTwitterで更新中。
Twitter:@EinsWappa