歳をとると、自分の身体の短所だけでなく長所もわかってきて、そのおかげで助かること・アドバンテージになることがある。私の場合、インフルエンザなどにかかった時にカップヌードルを食べるのもそのひとつだ。
ネットで検索すると、インフルの時にはカップ麺を食べるな、という助言が見つかる
インフルエンザにかかった時にはどんなものを口にしたらいいのか? 一般には、食べやすいものや消化しやすいもの、口当たりの良いものだろう。オンライン診療のクリニックさんのページを見ても、だいたい、そうした食べ物がすすめられている。そうした助言のなかに、「コンビニで買える食べ物」についてのセンテンスがあったので紹介する。
消化がよいおかゆやうどん、スープ類、ゼリー飲料、ヨーグルトなどは、食欲がないときでも取り入れやすく、コンビニやスーパーでも手に入ります。
https://www.clinicfor.life/telemedicine/flu/about/wi-031/
おかゆや雑炊はパウチタイプの商品もあり、保存しやすく手軽に利用できるため、ストックしておくのもおすすめです。
ホットスナックなどの揚げ物や、カップ麺などの胃腸に負担がかかる食品は避けたほうがよいでしょう。
このように、消化に良さそうな食品がおすすめされていると同時に、ホットスナックなどの揚げ物やカップ麺が胃腸に負担のかかる食品として「避けたほうが良い」と記されている。不特定多数の人に対する助言としてまっとうだと思うし、とりあえずで選ぶならこのとおりにやるのが良いように思う。
ところがこの身体はインフルの時にカップ麺を欲してやまない
しかし人体には個人差があり、人にはそれぞれ、機能が強い部分も弱い部分もある。頭痛が起こりやすい人、便秘になりやすい人、吐き気に悩まされやすい人、皮膚が弱い人、等々があると同時に、頭痛が起こりにくい人、便秘になりにくい人、吐き気に悩まされにくい人、皮膚が強い人がいる。個人の身体機能をつぶさに眺めると、平均から外れた個人差や例外的な性質を見かけることが稀ならずある。
私の場合、病気の時の胃腸の消化能力が異様に高いことがそれだと思う。
子どもの頃の私は消化器系のトラブルが絶えず、嘔吐や下痢が起こりやすかった。私も大変だったが、いちいち病院に連れていかなければならない親も大変だったと思う。ところが年を取るにつれてそうしたトラブルが起こりにくくなり、中年になって気が付いてみると、たいていの人よりも嘔吐や下痢が起こりにくく、特にインフルエンザやコロナウイルスなどに罹患している時にも食が太いままであることがわかってきた。
そうしたことを反映してか、40代のある時期から、私は「風邪をひいたらカップヌードルを食べる」という習慣を身に付けるに至った。
私のお気に入りは、なんといってもカップヌードルのトムヤムクン味だ。インフルエンザやコロナにかかってもこいつがむしょうに食べたくなる。初めてコロナウイルスに罹患した時はさすがにちょっとしんどさを感じたが、それでも完食したし嘔吐することもなかった。簡単に作れ、簡単に食べられ、風邪っぽくても味がちゃんとわかり、身体が暖まり、塩分がたっぷり入っているのが素晴らしい。
インフルエンザなどにかかっている時に食べるカップヌードルのことを、私は「食べる点滴」と呼んでもいる。昔は熱が出て開業医にかかるとやたら点滴をされたものだった。自分自身も医師のはしくれになってみると、別に点滴じゃなくてもいいし経口補水液が買えるし……などと思ったりする。しかし点滴であれ経口補水液であれ、水と塩分を補ったほうが好ましい場面というのはある。発熱している時や発汗が絶えない時、水と塩分は普段より身体から失われやすくなる。腎機能や心機能に問題がないなら、ある程度水と塩分を補い続けながら余った水分や塩分は腎臓をとおして排泄しておけば、脱水を避けつつ、汗もいくらでもかける状態を維持しながら発熱が終わるのを待てる。
そこで輝くのがカップヌードルだ。
食べやすさや消化吸収の問題さえクリアできるなら、カップヌードルはある程度まで理想に近い「食べる点滴」になる。水分の補給と塩分の補給の両方ができる。それだけでは少し水分が足りない気がするので私は白湯もいくらか用意し、スープは最後まで飲んでしまう。身体が暖まり、汗がどっと出る。あわせてアセトアミノフェンなども内服し、汗をどうにかしてからひと眠りすると、休めた感じがして良い。
無味乾燥な点滴やおいしくない経口補水液と違って、栄養を身体に入れたぞという手ごたえもあり、空腹感が改善するのも良い。ああそう、ほとんどどんな時でも空腹を感じるのも、私の身体の強みだと思う。具合が悪い時にもちゃんと腹が減り、食べたいものを食べられるのは本当は軽視できないことのはず。そうしたうえで「食べる点滴」として水分と塩分を補給できるのだから、ありがたい限りだ。実際はサムゲタンやミネストローネスープ等でも構わないし、他のカップ麺でも構わないのだろうけど、私はカップヌードルのトムヤムクン味が食べやすいようなので、備蓄は欠かせない。
私によく似た胃腸の機能を持っていて、私と同じぐらい空腹になりやすい人で、心臓や腎臓や糖代謝などに特別な障害を持っているわけではない人なら、たぶんこの手は使える(と思う)。その際は、もちろん他のカップ麺でも構わないし、もっとお行儀良くやるなら暖かいそうめんとか、スープのたぐいが好ましかろう。とにかく、自分の身体が受け付けられる範囲内で好んで食べられるものを選ぶよう、意識したい。
食べられない人は食べられないし、食べられない局面ももちろんあるので悪しからず
繰り返しになるけれども大事なことなのでもう一度断っておく:「インフルエンザなどにかかったらカップヌードル」というやり方は、全ての人におすすめできるものではない。私と同じような体質を持った人で、インフルエンザやコロナにかかっても腹が減り、嘔吐や下痢が起こらず、食べたいものを食べたいと感じられる人にしか適用できない。そうでない人におすすめすべきは、もっと食べやすく、消化に良く、刺激の少ない飲食物だと思う。循環器などに問題をかかえている人も、別の手段が必要になるので、あしからず。
あと、私と同じ体質のはずなのに嘔吐や下痢が出現していて食べ物を受け付けない時は、それはそれで大事だ。早めに医療機関にかかったほうが良いように思われる。
[追記]:はてなブックマークの人から、『ドカ食いダイスキ!もちづきさん』の最新話(19話)がまさに風邪の時の食事の話だと教えてもらった。もちづきさんでも風邪の時は食欲が落ちるようだけど、でも結論は相変わらずのようで。油そばは水分補給に向いておらず、カップヌードルに比べると「食べる点滴」としての有利をとりにくい気はします。でも治った後ならいいのか。ましてや、油なんて……