AIは「発酵」できない 研究のパイオニア・甘利俊一氏が鳴らす警鐘
人工知能(AI)の活用を誤れば、「人類の家畜化」が進む――。
そう警鐘を鳴らすのは、AI技術に不可欠な深層学習(ディープラーニング)の源流となる研究を半世紀前に手がけ、パイオニアの一人として知られる数理工学者の甘利俊一さん(90)だ。
AIの興隆は人間をどう変えるか。2月に住居を訪ねると、つい先日卒寿を迎えたとは思えない快活な語り口で迎えてくれた。
「人類の家畜化」を懸念
「人工知能って、最近お世辞を言うでしょ。でもだまされちゃだめ」
早速、飛躍著しい「チャットGPT」などの生成AIについての解説が始まる。
甘利さんはAIの深層学習の先駆的理論「確率的勾配降下法」を1967年に論文発表。他にも脳の仕組みを数理モデルで解明する研究を進め、「数理脳科学」を確立したほか、統計学に応用される「情報幾何学」も独自に切り開いた。
2025年11月には科学や芸術分野の優れた功績をたたえる「京都賞」を受賞した。
今も、長年の研究拠点である理化学研究所や特任教授を務める帝京大に、それぞれ少なくとも週1回訪れる。研究者たちと論文の議論をしたり、AI研究の歴史に関する講演をしたりと多忙だ。
簡単な英文メールの作成などは、生成AIの無料版を活用しているという。「今や60代も70代も働き盛りの時代。生成AIといった便利なものを使わないのはあり得ない。ただし危険性を認識した上での利用が大事」と語る。
甘利さんが懸念するのは「人類の家畜化」だ。生成AIを使えば、深く考えなくとも、簡単に文章やプログラムを作成できるようになった。調べ物もあっという間に答えが出る。
「人間の思考力が低下して、AIの言いなりになる危険性がある。本来は考える過程に苦しみがあるからこそ、楽しみに到達できる。今後は苦しみも楽しみも人類全体で減っていくのではないか」
二面性にひかれ数理工学の道へ
甘利さんは「考える」ことに、多くの時間を割い…
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