私が一般向け解説書『楽しく学べる「知財」入門』(講談社現代新書)を刊行してから、早くも8年。この間、知財を巡る環境は劇的に変化した。
たとえば、文章、画像、動画、音楽など、これまで人間しか作ることができないと考えられていたものを、簡単な指示を出すだけで生成AIが易々と作り出すようになった。実際に、インターネットはいつの間にかたくさんのAI生成物であふれている。これは従来の「知財」の保護の枠組みでは想定されなかったことだ。
また、SNSにおける知財をめぐる「炎上」のほか、インターネットを通じた国境やリアル・バーチャルの垣根を越えた知財トラブルも急増するなど、誰もが「知財」について意識せざるを得ない状況となっている。
それでも、「知財」の基本知識とリテラシーさえあれば、現場で直面する問題の多くは回避できる。本書は、豊富な事例を通じて読者の知財リテラシーをアップグレードすることを目指したものである。堅苦しく構える必要はない。興味深いエピソードを多数盛り込んだことで、楽しみながら「知財」の最前線を学べる内容となっている。エキサイティングな「知財の世界」をご堪能あれ!
(※本記事は『世界は知財でできている』から抜粋・編集したものです)
「読む・見る・聞く」は自由にできるか?
次に、第二の疑問である「無制限にAIに学習をさせてもよいのか?」について考えてみたい。
AIにきちんと仕事をしてもらうためには、AI開発のための学習は不可欠であり、その学習には大量の良質なデータが必要となる。たとえば、チャットGPTなどの生成AIは、クローラーと呼ばれるロボットプログラムをインターネット上で巡回させて情報を収集したり(クローリング)、特定の情報のみを抽出したり(スクレイピング)することで、大量のウェブページのデータを利用可能にしている。
このようにAIに大量のデータを学習させることは問題とはならないのか?学習段階に留まっていれば、特許権や意匠権や商標権など産業財産権の効力は及ばないが、著作権の観点ではどうであろうか?